まっしろな闇 > 続・キリにて > 18 Page 120 : ひとりじゃない を読んだ感想 | ||
投稿者:早蕨 2020/04/23(木) 21:52 | ||
[表示] 続・キリにて、読了です。 濃密な文章と描写、難しい展開にお疲れ様です! の一言じゃ足りない気がするのですが、それ以上の言葉が見つからないので一先ずお疲れ様、という事で。 まず続・キリにてを読んで凄いなあと思ったのは、ザナトア宅やキリの情景がこれでもかと綺麗に書かれている事。キリにモデルがあるのかは分からないですが、これだけ密に書く事というのは、ただ筆が乗っただけでは書ききれない、何度も何度も読み返したであろう跡があるような気がしました。何より自分には書けないなと思わされるところばかり。ゆっくりゆっくり読み、音や匂いを感じていくだけでも、続・キリにては手の込みようが伺えます。凄い。 情景を書き込めるって、場の雰囲気や細微空気が読み手にも細かく伝わるって事なので、ただ物語が展開していくだけではない、それこそ読み手によって様々な感じ方がある読み応えのある文章だと感じました。 キリに訪れたのはアメモースを飛べるようにする事。それは誰が見ても分かるのですが、ただアメモースが飛べるようになる事に専念するだけでなく、過去登場したキャラクターの過去と新しいキャラクターが綺麗に織り交ざっていく様、ブラッキーの豹変、と次を読ませる展開は流石。アメモースの事を忘れていた訳ではないですが、ブラッキーの豹変からはもう頭はそっちに向いてしまっていてひたすら文字に引っ張られるばかり。 どうやってアメモースが飛べるようになるのか、はたまたこの話では手掛かりに止まるのか等中々予想は難しかったですが、アランがザナトア宅に戻った時に既に飛べるようになっている、という展開はそうだよなそう来るよなと納得……。水神様との話からも、ひとりじゃないという最後のサブタイトルからも分かる通り、アランの閉ざした心が僅かでも氷塊する音が聞こえたような、そんな光景が、また光が見られて良かったです。本筋へ繋ぐ話、と言うと聞こえは悪いかもしれませんが、とっても綺麗に次へ繋がっていて、気になるばかり……。 あと外せないのは水底の森ですね。いやあ、本当、これ苦労しただろうなあ、とお前にそんなん言われたくないわという感じだと思うんですが、神秘的な空間を、何書いてんのこれ、と読者に思わさずに書くのって本当に難しいと思うんですよ。クラリスとの再会も嬉しいですし、古来より伝わるキリに根幹に関わる話は絡めるの大変そうなのに、これだけ自然につなげて来るの本当凄い……。 水神様やクラリスとの会話がこの章での大切なところだと思いますし、アランにとって大切な時間であったと共に、また秘密を抱えてしまうという描写が切なさ出ててぐっときます。キャラクターの秘密は読者の秘密にもなる訳で、こんなもん自分が言ったるわくらいに思えて、いかに読者として引っ張り込まれているかという話でもあって、そこから後半にある、「彼等二人を見ていると、入る隙間が無いという一抹の寂しさが過った」でスイッチが切り替わる。これだけ濃密な時間を過ごしたキリだけど、ただの通過点でしかない事。それ自体に寂しさを覚えるのですが、別に愛郷もなく悲哀ないとアランは言っている。何かを探しているその探し物を想像し、うんうんと勝手に頷いて完全に気持ち悪い人だったのは内緒。 次に繋がるお話であり、まっしろな闇にとってもとても大切なお話だと思うこの章は、首都編から続くアランが一つ何かに区切り(言葉が難しい区切りじゃないかもしれませんが)となり、新たに起こる物語の波がどんどん楽しみになるお話でした。 いやあ、本当にお疲れ様です。(結局お疲れ様としか言えないんですよね) [33]
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投稿者:海 2020/04/27(月) 19:24 | ||
[表示] >早蕨さん ご感想、ありがとうございます! キリのモデルとなった町はあります。湖は地元が関係していますのでこの場では伏せますが、白い町並みはスペインの南部にあるアンダルシア地方をモデルとしています。画像検索かけたらこんなん現実に存在するんやと目を丸くするようなエキゾチックな町の写真が並びますので良かったらググってみてください。きれいですよ。 情景描写に力を入れたのには理由があって、まずキリという町が水神にまつわる文化をはじめとして四季や時間、空の移ろいを重視しており、キャラ達をくるんでいる世界の様相について丁寧に書きたかったこと、そして、ラナを中心として回っている章にも関わらず、続キリ序盤から最終120話にかけてラナの直接的な心理描写を書いていないという点が大きいです。彼女の内面を直接書かない分、彼女の周囲であったり、彼女が周囲に何を行動として示しているかを描く方に文章が嵩んだので、自然と厚くなりました。情景描写を使った間接的な心理描写も好きです。それこそ仰るように、読み手によって様々な感じ方が生じますから。綺麗でいいし、意図がよく分からなければよく分からないでいいし、こうかなと思うことがあればそれも一つの正しさだと思うし。一応旅する話なので、小説を読みながら、キャラクターだけではなくキャラクターの居る世界の空気感が伝わったらいいなと思っていました。きっとそれは人それぞれ違う景色になって、それが小説の面白いところですよね。とはいえもしかしたら退屈でしつこい側面もあったかもしれませんが、それも愛嬌ということでどうか。 黒の団が関わらなければ世界は時に結構美しくて、美しいだけで済むんだよなと思います。観光みたいなものでね。 アメモースがもう一度飛べるようになる展開って十中八九誰からしても「そりゃそうだろ」という目に見えた展開で、とはいえやたら序盤で引っ張るのが茶番臭くなるのは不本意で、アメモースだけでなくいろんな要素を含んでいるのを同時に進めていなければならないのをなんとか纏め上げるのに必死だったので、次から次へと放り込まれてくる展開に没入してくださったのは有り難いです。ブラッキー豹変からは完全にアメモースどころではなくなるので(アメモースパートとしては再度飛翔への決意を固めた後なので心理的にはそれほど大きな問題ではなくなっている)、ブラッキーに注力してもらって正解です。 アメモース飛翔まで引っ張っておきながらあっさりと(実際は決してあっさりではありませんが)飛んだのは拍子抜けにならんかとちょっと難しい部分ではありました。まだ完璧ではありませんが。ただ、アランの閉じた心が、アメモースの飛翔を通じて僅か開く瞬間を目指してずーーーーーーっと沼展開を書いていたので、その光見えた瞬間が伝わってほっとするばかりです。暗闇が長いほど光はまばゆい……。 >本筋へ繋ぐ話 いや、全く聞こえ悪くないです。まさに続キリはそういう話です。見抜かれている……。 水底の森、本当、最初言ってくださった綺麗な情景描写の最果てというか、遂にほんまにファンタジー世界に飛び込んで、作者の中ではこの異世界を書いたのは続キリ後を見据えた上でのことなんですが、ブラッキー暴走で混乱させておいて続けざまに読み手さん置いてきぼり確定要素を書くというファンタジックな展開を書くことになかなかびびってもいました。自然になってましたかね!?それなら良かったんですが……。「何書いてんのこれ」って思ってもらっても全くおかしくないです(実際、アランも「????」ですから)。水神が「理解しなくてもいい」と言っているのは、水神からアランへのメッセージであり、水神(作者)から読者へのメッセージでもあります。よく解らなくてもいいんですが、「いつか理解する時がくる」です。 こんなもん自分が言ったるわwありがとうございますw水底での出来事はアランにとっては重要ですが、結局アランは、キリという町からしてみると外部者であることには変わりありません。寂しいことですが。実際水底での出来事を考え無しにべらべら喋って、黒の団だけでなくクヴルールからも本気で口封じにかかられたら、エクトルがいるとはいえ(むしろエクトルが……)無力な彼女は終わりです。 >「彼等二人を見ていると、入る隙間が無いという一抹の寂しさが過った」でスイッチが切り替わる。これだけ濃密な時間を過ごしたキリだけど、ただの通過点でしかない事。それ自体に寂しさを覚える 寂しいと思ってくださる有難さ。思い入れが無いわけでは勿論無いんですけどね、複雑ですよね。彼女は逃げて、探す、旅人なのです。 なんかこう、丁寧な早蕨さんの感想を読みながら、没入してくださったんだなあということがしみじみ伝わって、それは作者としては目指す物語の形で、何度言うねんという感じですが、本当に有り難いです。 この続キリ編を通じてもう一度黒の団へ関わっていく覚悟を固めたアランが、果たして今離れている人たちやポケモンたちとどう物語を作っていくのか、よろしければ今後も温かい目で見守っていただければ幸いです。 こちらこそ、たくさんの感想を書いてもらって本当にありがとうございました!!(平伏) [35]
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