ナナシマ数え歌 を読んだ感想 | ||
投稿者:コロポン 2014/03/19(水) 05:01 | ||
こんにちは、コロポンです。随分間が空いてしまったのですが、読了いたしましたので改めて感想を書きにまいりました。とってもノスタルジックで、すてきなお話でした。 この短編集にテーマとして「子供と自然(≒ポケモン)との対話」をはめ込んでみるとしたら、この小説の根本にあるものは「時間」ではないでしょうか。ナナシマは、千年と続いてきた雄大な自然とポケモンの生態系の宝庫であることが作中で描写されています。さらにはかつて栄えた別の文明が、今の住民とは別の歴史を築いていたことも示唆されています。 一方で子供は島の未来です。少なくとも、人間の住民にとっての未来ではあります。ナナシマの住民は変わりつつあります。つまり彼らは、「神を祀り、祈りをささげる場としての「祭り」を放棄し(ているのかはわかりませんが、少なくとも)「祭りの形をしたマガイモノ――市場の原理と欲望渦巻く闇」を楽しみ始めています。本文から読み取ることはできませんが、もしかして都市開発を進める動きだってあるかもしれません。それは住民の生活をより便利にし、若者の放出を止める手立てにもなるけれど、一方でナナシマの美麗な自然を壊す行為でもあります。子供は都市開発(たとえばその提案があると仮定して)を受け入れるか、またより個人的には、ナナシマを出るか出ないか、それぞれがその岐路に立たされていると言えます。「映画館もショッピングモールもない。あるのはさびれた商店街と、森に覆われた離れ小島だけ」というような状況に、若く刺激を求める彼らは辟易しつつも、それぞれが自然と触れ合う経験をしてナナシマへの郷土愛を深めているようです。であれば、取られる選択肢はそう悲観的なものでもないかもしれません。 作中で語られていない謎もたくさんあるのですが、ひとまずここで筆を置きます。ぜひまた何か、ここで書いてらっしゃってください! 真っ先に読ませていただきます。 ありがとうございました。 [03]
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