叛骨の強奪者 を読んだ感想 | ||
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投稿者:海 2018/04/01(日) 20:18 | |
[表示] こんにちは。こちらでは初めまして、海です。ツイッターではお世話になっております。以前から拝読したいと思っていたもののなかなか手を出せずにいた叛骨の強奪者、このたびようやく拝読しました。開いて気付いたんですが、2015年から続けておられたんですね。およそ二年半の長い年月を跨いでしまいましたが、ようやく一読できほっとしております。 さて、感想とさせていただきます。なんといいますか、、まとまる予感はしないので、非常に読みづらくなるかとは思います。ご容赦くださいませ。 いや〜すごい……私、読んでいてジェットコースター感覚な小説を読むのが楽しくて好きなんですが、思っていた以上にジェットコースター、それも血塗れ、闇の中へ突き進んでいって、見えない感じ。この先一体どうなるんだろう、この人の言っていることは本当に正しいのか、内通者は誰なのか、気になる〜と読んでいたら終わってしまいました。内通者の話が出てきたの割と早かったのに、未だにはっきりと内通者が誰かという答えが出てこない(そもそも内通者が本当にいるのかどうかもわかりませんが)。展開は、いい感じにアップテンポで無駄がないのに、特に内通者関連の描写や流れはすごく丁寧に描かれていますよね……一人一人、イトハ、ホオズキ、ジュノーと、一人ずつ疑いを潰していくようにヒイラギが慎重に事を進めていた故ですが、これを描ききっておられるはやめ先生の手腕に拍手が鳴り止みません。私は当初スターミーが内通者がいると報せた時にヒイラギ同様真っ先にイトハさんを疑ったんですが(ごめんイトハ)その話は後ほど。ま、そういうわけで自分の脳味噌では到底断言できそうにもないので、予想を立てるというより、内通者に関しては流れに身を任せて行く末を見守ろうかなという感じです。はやめ先生の頭の中には当然ながらその答えがあるわけで、それを覗き見したくなってしまいます。 『叛骨の強奪者』。 このタイトルを見て勝手に、この物語は地の底に叩き落された誰かが復讐を誓い泥に塗れて藻掻くようなそういう泥臭いものをどこかイメージしていたんですね。勿論、シリアスであることや重い展開の数々であることはツイッター等の噂で流れておりましたので、そんな言葉通りの軽いものではないだろうとは思ってましたが。いやはや、いい意味で当初の期待を裏切られたような気分です。 泥どころか血。激しい攻防戦。いえ、むしろ防戦一方という印象が強かった第四話までのopening stage。選ばれ集まったスナッチャーの面子は皆文句の付けようななく優秀であり、身体能力の高さは勿論のこと、頭の回転の速さも一般人のそれとは常軌を逸するものでしょう。特に波動を操るヒイラギは、(彼は自身を戦闘マシーンと自虐しておりましたが)群を抜いたあらゆる意味での強さを誇る戦闘要員であることは読んでいても痛いほどによくわかりました。そんな彼等にも関わらず、敵は更に上を抜いていく。少数精鋭の彼等を嘲笑うかのような、圧倒的な数、そしてスナッチャーサイドが力を合わせてようやく倒すことができるような個の力。苦しめるだけ苦しめて、それでも最後には勝つ、ような甘い世界じゃないというのが第四話。また後々のミュウツーやラティオスラティアスの際も、彼等はミッションを成功することができずに、今まで来ています。それって、話の構成としてもすごいなー、と素直に思います。失敗した中でも収穫はあった、というような慰めのような結論を出していますが、でも、敗北しているのには間違いないじゃないですか。ヒイラギが司令官を疑うのも無理はないなと思います。ちょっとくらい勝たせてあげてくれ、と思います(笑)まあそうもいかないのがこの物語なんですよね、30話まで読んでその空気にも大分慣れてきましたし、決してその空気が嫌なわけではありません。むしろ賞賛といいますか。彼等は遊びでやっているわけではなくプロとしてここにいますし、作戦の失敗など今までも数えきれぬほど恐らく経験してきているでしょう。しかしそれにしても、敗北してもまた前を向き次のミッションや次やるべきことに頭を切り換えていく、その精神力が凄すぎて……。彼等のこれまでの過去が簡単に語れるものでないことはわかっていますが、筆舌しがたい怒濤の人生を生きてきたことは、明かされている過去話等からも、戦場での生き様からも読み取れます。しかし、なんと報われないことか。はやめ先生もなかなか鬼ですね。ギリギリの戦いをした末に得る勝利というのはなにものにも代えがたい美酒でしょうが、叛骨は基本見事なまでにギリギリの戦いをした末に負けるんですよね……きついですね。よく書けるなと思います。といった流れの中でようやく勝てたな、と思ったのがマナフィ護衛のお話ですね……ハガネールキャプチャ成功も私の中ではかなり印象深いです。マナフィも内通者の話が大分拗れているしヒイラギはあえて悪役を背負い村人から非難を受け胸くそ悪いことになるし(目的のためとはいえ)、その直後にヒイラギ脱退だったので素直に喜べるかというとそうでもないのですが……第一話から因縁の相手としてずっと戦い続けながらも負け続けていたJをようやく追い詰めることができたのは、人間同士(主にイトハとヒイラギ)の連携や信頼が深まり、どんな事態でも決して諦めずその場その時で最善を尽くし必死に食らいついた結果でしょう。Jの生の声を聞き、焦った声を聞き、そしてヒイラギがJを問い詰めたあのシーンは、ようやく届いたか、と手を握りしめたくなるようなシーンでした。得た情報は悲報にも等しいかもしれませんが、私はあのシーン、好きですね。叛骨を読んでいると、苦しい、苦しい、その先にある、苦しい中でようやく自らの力でたぐり寄せたもの(それの中身がなんであろうと)、というのはたとえ冷静に見れば薄らとした希望でもえらい光り輝いているように感じられるんだなあと思わされます。その展開の仕方凄いですよね……はやめさんのような方だからこそできるんだなと思います。崖への突き落としっぷりもすごい(めちゃくちゃ褒め言葉)ですが、崖の登らせ方もまた面白い、すごい。一足飛びには事は上手くいかない、けれど続けていれば、諦めなければ、あるいは視界を広げて周りを見て力を合わせれば、掴めるものがある、というのをなんか、感じます。はやめさんがそう感じて欲しくて書いているのかはわかりませんが(もしかしたら意図しているものとは、全然違うかもしれない)、でも、私は少なくとも読んでいてそう感じました。面白い。本当に面白いです。まあこの先もっと辛いことがあるんだろうことは容易に察し出来るので、手放しで「きっとこれから上手くいく!」とは少しも思ってはいないんですが……ヒイラギ抜けましたしね……。 ところでヒイラギ脱退に関して個人的に思ったこと(あくまでめっちゃ個人的な感覚なのではやめ先生の意図とは違うだろうとわかっていながらなんですが)とか、叛骨を読んでいて全体的に考えてたことなんですが。 叛骨読んでる方がどういう感覚で読んでおられるのか解らないんですが(他の人の感想見ておりません)私基本的にこういうシリアスは将来的にキャラが幸せになることを切に願いながら(同時にきっと最終的には誰かしらは幸せになるだろうと割と信じている)、読むことが多いんですけど、叛骨を読んでるとびっくりするほど「このキャラクターたちは幸せにならないのかもしれない」と思ってしまうんですよ…………むしろ「全員死亡なバッドエンドすら十分有り得る」すら思うし「少なくとも幸せにはならないだろう」くらい既に覚悟を決めながら読んでる…………んですよ…………いや、わかんないんですけどね!?どんなエンドになるかは作者様のみぞ知ることなので!!!!なんか、こう、ヒイラギさんは除名されたけどこれは恐らく死んではいない流れだろうとは思うんですよ、しかし、ここまであまりに身も心も(いや身体的にほんまに)生死ギリギリのライン際の戦いを展開していってるので、いくらプロで場慣れした面子とはいえそのポケモンたちも含めてここまで味方が誰一人死んでない奇跡について逆にすごいといいますか。凄いんですよ。まあその結果こそが彼等がここに選ばれて立っている所以なんですけどね。それはわかってるんですけど、一般庶民感覚として彼等が生き延びてるのが凄すぎて(いや実際ヒイラギも今まで彼が経験した中で指折りに危険な状況であるというような自覚描写あったんだからそりゃこれは生き延びてるの凄いという感覚はあながち間違っては……いない……きっと……危険という言葉すら弱い。死ぬ作戦と思った方がいいと思ってます(自戒))、ヒイラギ除名は……逆に安心したといいますか(語弊ありすぎる)。 いやキナギの長様含めて犠牲者は既に沢山出ているけれども、そうじゃなく、メインキャラクターがいつか絶対死ぬ、そんな気がしてならないまま読んでいて、激しい戦闘シーンに突入するたびに「この人はここで殉死するかもしれない」と察して死に際を焼き付けんとした目で見ているんですね(ひどい)……。いやもう、容赦なく叩き付けられたり世にも恐ろしい石化のレーザーが飛び交ったり寄生されたり骨折ったりetc、一歩間違えれば死ぬじゃないですか。間違えれば、というか運がちょっと悪ければ死ぬじゃないですか(彼等は運でなく実力で生き延びていることはわかっていても)、誰かがピンチになって、ちょっと助けが遅れていたら死んでいたかもしれない、そういう場面ばかりじゃないですか。読んでいて恐ろしいですよ(褒め言葉)。だからこそ死なずに一度区切りがつくたびに「ああ良かった生き延びてくれた」と安堵する気持ちと、「これは次で急に死んでいく前触れなのかもしれない」と鬱(褒め言葉)になりそうになる気持ちとでぐるぐるするわけですよ……。 だからこそ「死」という形ではなく姿を消したヒイラギの展開は、残されたスナッチャーの現場二人からとってみればまったくもって穏やかではないけれど、一読者である私は「このヒイラギはきっと死んでいない」という前向きな目(まあ死んでないからといって無事であるかどうかはまた別問題ですけど基本的に死にさえしなければどうにかなると思ってるちゃらんぽらん)で見れたこの瞬間にどこか胸をなで下ろしたわけでした。つまり、誰かが途中離脱することは絶対にあるだろうと覚悟していたので……その点心積もりがあったおかげで、ヒイラギの離脱が(断定はされていないにしろ)恐らく、死んでいない、少なくとも「死んだ」とはっきりは示されていない離脱は、意外となるほどなあとうまいところを攻めたという風に受け取ったといいますか。ヒイラギは、オツキミ山で自分を替えのきく戦闘マシーンだと言っていましたが、これも伏線の一つだったわけですね。替えがきくし、ジュノーにとってみれば命令に逆らわない面倒な波動使いなど使い捨てて、代わりの波動使いを探すだけ。合理的。流れとしても。まあ……スレートとかカラマネロ等の前例を見る限りヒイラギが無事であるとは到底考えられない点は……考えるのも恐ろしいですが……。 しかしまあ言う今後の展開も大変なんだと考えれば胸が痛い……ヒイラギがこうなったからといって誰か重要な面子が死ぬ可能性は十分ありますしね……むしろ死ぬくらいで思ってます……はい……もしかしたら死よりもショッキングな展開が待ってるかもわかりませんが……全てははやめ先生の手の中……はい……全てを奪い、すべてを失う……。。。 まあ、絶望は蜜の味。わかります。 いや〜マイナスなこと言ってるように聞こえてるかもしれないので一応断っておくと、誤解を生んだら良くないんですけど、あれなんですよ、面白い……めっちゃ面白いんですよ……とってつけたように言ってすいません……面白いんですよ……ここまで「これ死ぬわ」って思わせながら、絶妙に「どうやって生き延びるのか」を見せてくれる、それがいいですね〜面白いですね〜辛いんですけどね〜面白いんですよ〜先が気になります。 はあ〜印象っていうかなんかボケボケした感じの感想ばっかりになってすいません!もうちょっと内容にツッコんだこと言った方がいいのは解ってるんです、解ってるんですけど、ちょっとこのあたりで今回は。内容とかキャラについてはまた別でお送りさせてください。 ちなみに私はメインキャラではホオズキさんが好きです。若い二人もすごく、良いんですけど……ツボはホオズキさんですね〜二人の活躍の裏にああいうおじさまがいるの、いいですね〜。厳しいですけど、優しさ、のようなものが滲んでいるように感じられて。それは、若者を見守ってる雰囲気からくるものだと思います。親子レベルの年の差ですからね……彼も若者を見て思うところがある描写がありますし、うーん、良い。 ところで私はイトハとホオズキは距離を測りかねてるということが最新話で言われていましたが、サントアンヌでのホオズキ・イトハペアが実に好きだったので、また見れることは幸せです。ヒイラギには申し訳ないんですけどね。いやもう、ホオズキさん好きとしては、ホオズキとイトハが仲良くなる程にホオズキさんの孤独が浮き出るようで実はちょっと寂しかったので……あの……イトハとホオズキのペアは好きなんですけどね!勿論!殺伐した空気を和らげてくれる、若いエナジー溢れた、みずみずしさが!孤高なホオズキさんの心の壁を溶かすイトハさんの包容力が!差し込む光が!ネックレスが!お互いに信頼し助け合い成長する姿が!まさにオアシスのよう!でも書きながら思いましたがやはりホオズキさん、好きです。 イトハとヒイラギは若さ故に流れに向けて逆らったり、信念に対し真っ直ぐだったりしますけど、たとえばホオズキさんはヒイラギに対して、 >「小僧、いい加減処世術を学べ。ここで踏みとどまれば、おまえやわたしたちはまだスナッチャーでいられるんだ」とか、 > 「もっと大人のやり方があるだろう。おまえは青二才だ」 とか、言う人なんですよね。大人として、若者を御そうとする。そしてホオズキさんも、ジュノーのサカキ暗殺ミッションは断ろうとして(命令に逆らおうとして)、『ハマユウ』と『イチジク』をきいた途端にあっさりと引き受けましたが……まあ、ちらばった伏線(薬指の指輪……ちゃんと付けているあたりが……すごく……好きなんですよね……)から予感はしていましたが、そういうことですよね、きっと……。ホオズキさんのそういうところが好きなんですよね〜。はい。だから、ホオズキさんの過去話をものすごく楽しみにしています。そういえば、ふと思い出したんですがホオズキさんってセッカに家を構えているというのは、ゲームでも確かにまさかの元ロケット団がセッカにいましたが、ホオズキさんはあの元ロケット団をモチーフにしてるんですかね……?ヒイラギがいなくなったことは寂しいですが、ホオズキさんの活躍が増えるのは正直楽しみです……()しかも本格的にホオズキ回になりそうですしね。ようやくホオズキさんのことがもっと解りそうですね。わくわく……まさかのミュウが見えないホオズキさん……そこに自分で焦るホオズキさん……どんな展開になるのか、めちゃくちゃ楽しみにしてます〜! はっ気付いたら普通にホオズキさんの話もしてしまった。ではばたばたとすみません!比喩を存分に使った繊細で豊かな、しかし熱烈な文章から語られる、レンジャーや波動の設定、使い方、ポケモンの技や動き、特性等々、フルに使っていて、読む側としても頭をフル回転させて勉強させていただきながら読んでおります。このあたりもちゃんと触れたいですね、後日! また、読みながら、内通者としてイトハやホオズキ等を探る場面やイトハとヒイラギが歩み寄る場面など、当時リアルタイムで追っていた人は楽しかっただろうな〜羨ましいな〜と重いながら読んでいました。もっと早く手に取っておけばその幸せを味わえたんだなあと後悔する一方、これからは私もようやくそのリアルタイム勢に加われるのだと思うと、喜ばしいことこのうえありません。どうぞ、はやめさんのペースでこれからも更新を続けていただければ嬉しいです。先は暗闇ですが、その暗闇こそが至高。はやめさんだからこそ書けるこの世界、今後ともめちゃくちゃ応援しております。 それでは、失礼いたします。またお邪魔させてくださいませ。 [16]
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投稿者:はやめ 2018/04/02(月) 21:40 | |
[表示] 海さん、感想ありがとうございます。 もしプラの頃から毎回読んでくださって、今作もこうして手にとってハマっていただけたので内心舞を踊りながら更にガッツポーズしています。 感想を読んで、アツい感想だと思いました。メインシナリオだけでなく、随所の細かな伏線や全体の所感に触れてくださったおかげで、私としてもこれまで描いてきた方向性を俯瞰とともに再確認することが出来、大変参考になりました。 濃密な文章の中の想いをしかと受け取り、執筆の糧にしていきたいと思います。 今作に関して、恐らく読者の方は、本当に先の展開が予測出来ないのではないかなと思っています。それも今ではひとつの持ち味なのかなあと認識しているところです。でも、作者としては読者様の予想をお伺いしたい気持ちもいっぱいあります。ただ、そうなると「予想がつかない」「何が起こってもおかしくない」と返されてしまうのですがね(苦笑) 先行きの不透明感、手探りの緊張感を楽しんでいただければ、狙い通り……という手ごたえです。Second Stageまでは内通者をめぐる謎解きを中心に組み立てたので、まだ暗中模索感が強いと思います。章ごとに少しずつ雰囲気は変化していく予定です。 >特に内通者関連の描写や流れはすごく丁寧に描かれていますよね…… 内通者というファクターを通して、チームの結束を逆に浮かび上がらせるような構図にしておりまして、ここら辺は恐らく海さんはうすうす勘付かれているのではないかと。内通者を出すという方針が固まったとき、これはなんとなく上手くいくかなというイメージが湧きました。 不可視の敵に対して、それまで生き方が違うゆえに手を取り合えなかったものたちが、少しずつお互いを認めて、より大きな力の流れに立ち向かっていく……私自身が好きなシチュエーションでもあります。というか、叛骨の90%ぐらいは私の好みで構築されていて、本当に私が好きなものをあれやこれやと詰め込んだ感じです。 >私は当初スターミーが内通者がいると報せた時にヒイラギ同様真っ先にイトハさんを疑ったんですが(ごめんイトハ) 気になりますね〜 作中と同じ根拠でしたか?? ・『叛骨の強奪者』というタイトルについて 「地の底に叩き落された誰かが復讐を誓い泥に塗れて藻掻くようなそういう泥臭いもの」 なるほどなるほど! なにせ「叛骨」=権威・権力・時代風潮に逆らう、ですからね…… 泥臭さ自体は作品の中にもエッセンスとして取り込まれていると思います。 何度負けても立ち上がる、という構図はもがいたりあがいたりすること自体に等しく、そういった意味である意味泥臭さはあると思いますので。 また、反骨ではなくあえて「叛」骨にしたのは、字面としての重々しさを出したい所以があるからなのです。自分としては結構というか譲れない拘りです(まあ、使っている以上は……)。あえて難しい字を使っているので。サブタイも「決別」ではなく「訣別」としているのは、そういう理由から来ています。 何が「叛骨精神」を示すのか、そもそもこの作品で「叛骨精神」とは何なのか、強奪者の意味、叛骨+強奪者が合わさるとどうなるのか、そういったことはまだ触れておりません。Phase16「勇者に焦がれる」がちょっと仄めかしているぐらいでして…… 謎解きが終わったら、その辺りが今後の話になっていく予定です。 >少数精鋭の彼等を嘲笑うかのような、圧倒的な数、そしてスナッチャーサイドが力を合わせてようやく倒すことができるような個の力。 「個」の力は、ネームのあるキャラで意識しています。Jやサカキ、ミュウツーやサンダーなど、一定の格を持ち合わせた面々は多分必要以上に強くしているかもしれません。 これは多分本家のキャラクターを出したり扱うことを、慎重にやろうという自分なりのリスペクト精神の表れなのだと思います(名前も声も知らないでシンジを優遇していたのはそういう理由も大きいですね)。出すなら、思いっきり強くして活躍(暗躍)させたい。 「数」は組織の規模や脅威度、力の保有数につながると思います。数の暴力で、少数精鋭のスナッチャーを疲弊させて、モブが単なるモブに終わらず一構成員としてしっかり彼らに爪痕を刻んでほしいなという想い(なんか歪んだ愛だな)から来ています。 敵、私は強くしたいタイプなんですよね……それはもうとことん。そうしたら、勝てた時の喜びもめちゃくちゃ大きいと思うんですよ。スナッチャーが勝てないのはちゃんとした理由があるのですが、それを棚に上げても敵の圧倒的な強さに何度も心折られそうになりながら、自分たちに残されたものを大事にしつつ立ち上がって欲しいという作者なりの愛情なのです(だから歪んでいる)。あと国際警察の警視総監が世界の危機を察知して、各地方の政府に協力要請して立ち上げる勢力の仮想敵どまんなかなので、正直これぐらいじゃないと示しがつかないなとも思います。 >それって、話の構成としてもすごいなー、と素直に思います。 普通、勝ちますもんね。ポケモン小説でもここまで負け続きなのは多分珍しいのではないでしょうか。そうすると逆に読者の方にとってストレスフルな展開が続くので、そこを内通者の謎やヒイラギ追放というアクセントを挟み込んで何とか続きが気になってもらえるよう必死に仕掛けている、という感じです。負ける分はそこで許してください。 ・マナフィ編とハガネール戦の戦果について >Jの生の声を聞き、焦った声を聞き、そしてヒイラギがJを問い詰めたあのシーンは、ようやく届いたか、と手を握りしめたくなるようなシーンでした。 >得た情報は悲報にも等しいかもしれませんが、私はあのシーン、好きですね。 ありがとうございます。うれしいです。当初書いていて大変高揚感のあるシーンでした。やっぱり今まで苦渋を味わわされた敵を少しずつ追い詰めていくプロセスを書くのはたまりませんよね。 「総員に通達。王冠を棄却し、撤退せよ。本任務は失敗した。繰り返す、総員撤退せよ」 Jにこう言わせることが出来たのは大きな収穫でしたね。 自分としても、Jはポケモン世界に珍しいレベルの「悪」、アニポケでも壮絶な末路だったので、打ち負かすタイミングは慎重に検討していました。 Jのターンを終わらせて、本格的にヒイラギたちが「内通者」という形なき虚無に立ち向かっていくためのきっかけとしても、あそこでJに一時的な引導を渡すことにしました。 >叛骨を読んでいると、苦しい、苦しい、その先にある、苦しい中でようやく自らの力でたぐり寄せたもの(それの中身がなんであろうと)、というのはたとえ冷静に見れば薄らとした希望でもえらい光り輝いているように感じられるんだなあと思わされます。 これは嬉しいですね。 負けてもなお立ち上がる が、全てを失ったと思っても残されたものがある、というテーマに呼応しているのですが、そのうっすらとした、ほんの小さな手掛かりや希望、0.1ミリの光明が大逆転の一手になることもあります。自分の人生観と多少影響している(かどうかは微妙)かもわかりませんが、置かれた状況でどうにかやっていけば、何かしらは残るのではないかという考えがあるのかもしれないですね。 ヒイラギたちの思想も似たような感じで、彼らは戦場に身をおき続けているから、私たちが日常生活の中で見過ごしてしまうような些細な変化にも目を配り、それをひとつひとつ大事にするような人たちだと思うんですよ。 敵から何かを奪うことは、自分たちも奪われることがある(反撃されると同義)という覚悟を決めなければいけないので、ヒイラギ・イトハ・ホオズキはそれを承知で戦いに臨んでいます。ここら辺はヒイラギが強奪者として割り切っているようで割り切れていない微妙な振幅にも影響しています。 >一足飛びには事は上手くいかない、けれど続けていれば、諦めなければ、あるいは視界を広げて周りを見て力を合わせれば、掴めるものがある、というのをなんか、感じます。 いやあ、この文面を読んだとき、ちょっとグッときましたね。 叛骨を読みながらそう感じてくださったんですか。それが合っているとか合っていないかと答えることも出来るんですけど、私としては読者の方がどういう風に感じてくださってもいいですし、というか感じさせることが出来たんだなあという感慨がまずありますね。難しいですからね、作品の力で人の心を揺らすっていうのは……何か感じてくだされば、それはとても嬉しいですよ。 まあこの先、まだまだ辛いことは、ありますね……そういう作品ですからね……。ただ根底にその海さんの仰るような考えを、彼らが持ち続けることが出来るのであれば、一矢報いるチャンスはいずれ訪れると思います。 >ヒイラギ脱退に関して個人的に思ったこと >叛骨を読んでいて全体的に考えてたこと この辺り、ものすごく興味深く、それでいて「なるほど」と思いながら読ませていただきました。これは私がもし読者だったら、置き換えてみると、多分海さんと同じことを考えるんじゃないかなと思いまして。私はアニメ観てて好きなキャラが死にそうな時に「死ぬな死ぬなよ絶対死ぬな頼む死なないでくれぇ〜〜(懇願アンド土下座)」という想いで視聴するので、よくよく考えたら私は作者なのでその気持ちを忘れていた気がします。 「このキャラクターたちは幸せにならないのかもしれない」 「全員死亡なバッドエンドすら十分有り得る」 「少なくとも幸せにはならないだろう」 いやはや、すごいな(苦笑)前に似たようなことを言われたことがあります。 既に覚悟を決めて読んでおられるということですね。でもそうしていただけるとこちらとしては何やっても大丈夫だな(語弊がありすぎる)という安心感が生まれるので、ありがたいですね(?)。 >いやキナギの長様含めて犠牲者は既に沢山出ているけれども、そうじゃなく、メインキャラクターがいつか絶対死ぬ、そんな気がしてならないまま読んでいて、 メインキャラが死ぬのと、ゲストキャラが死ぬのでは意味合いが違いますからね。メインが死ぬ時の喪失感たるや、という感じです。 >激しい戦闘シーンに突入するたびに「この人はここで殉死するかもしれない」と察して死に際を焼き付けんとした目で見ているんですね(ひどい) なるほどなあ…… やっぱり作者なのでそういう視点はありませんでした。ただ、ヒイラギたちはよく生き延びてるなと思うことはしばしばありますが。自分でも海底神殿は状況が窮地すぎて、ヒイラギはこれ以上無理したら死んでしまうぞと困りながら書いていました。 >だからこそ死なずに一度区切りがつくたびに「ああ良かった生き延びてくれた」と安堵する気持ちと、「これは次で急に死んでいく前触れなのかもしれない」と鬱(褒め言葉)になりそうになる気持ちとでぐるぐるするわけですよ……。 それは読んでいて疲れそうですね(他人事かよ)。 というか、叛骨の強奪者とは「そういう」作品なんだなというのを、おぼろげではありながらも、書いている自身として改めて認識する次第です。私は「気楽に読んでください」とかいってますけど、どの口でそんなこと言えるねんって感じですよね(苦笑)。展開が否が応でもそうさせてはくれないというか。 >オツキミ山で自分を替えのきく戦闘マシーンだと言っていましたが、これも伏線の一つだったわけですね。 そうそう、仰るとおりなんですよ。本当の意味で「替えが利く」と。 今後はですね、この「代わりの波導使い」が物語の焦点となってきます。本当に出てくるのかよっていうね。ただ、ジュノーは代わりと簡単に言ってますが、ヒイラギは波導使いの中でもそれなりに位置するはずの戦士で、その代わりを簡単に招き寄せられるのかという点ですね。 >もしかしたら死よりもショッキングな展開が待ってるかもわかりませんが むしろ、私はそっちを今作で強調して描くべきかなと思っていたりします。意地の悪い言い方ですけど、私はあの手この手でスナッチャーをどうやって窮地に追い込むかずっと考えているので、状況が良くなればまた新たな試練が訪れるのは間違いないです。 死なせるの、本当に勇気が要りますからね……。死んだら二度と出てこられないですし。あと、死んだら苦しみから解放されてしまうので、本当に最後の最後の手段だなと。 今のところ壮絶さを出すためにキナギ民だったりラティだったり、外部の協力者は石になってもらってますが、私もそうやすやすと「はい、イトハ死にます」とかは出来ないので…… 正直カラマネロは最初死ぬ予定だったんですけど、思うところがあって取りやめたぐらいです。 ただ、ただですよ。海さんが仰るとおり、この戦いで死者が出ないのはかえって不自然なぐらいで、逆に作品自体の説得力を損ねてしまう恐れがあるなとずっと書き出しから思ってきました。もし死者ゼロ人だったら都合が良すぎる。ですので察していただければ。 >サントアンヌでのホオズキ・イトハペアが実に好きだったので、また見れることは幸せです。 おお、ありがとうございます! プラズマレムナントに拍手くださってましたしね。気に入っていただけたのかなと思っていました。 私もあの二人の、あの時限定の、甘美な空気感はとてもお気に入りです。ヒイラギとイトハはやっぱり初々しさとエネルギーに満ち満ちていますが、ホオズキがどちらかと関わるとそこにアダルトな匂いが醸成される感じが自分としてはあるんですよね。彼の存在は、主人公やヒロインという立場でこそありませんが、叛骨の強奪者に必須で、それも要となる雰囲気を持った人物ではないかなと思って、私も大好きなキャラクターです(というか書いている人達、特にスナッチャーや悪役陣に対する思い入れは全員平等に深いものがある)。彼はオツキミ山編、ヒイトに集中するため、完全に出番をあえて無くしましたが、それでも叛骨の中で「好きです!」という声をたくさんいただけて、キャラクター自体をうまく動かすことが出来ていたかなとホッとしております。 >「小僧、いい加減処世術を学べ。ここで踏みとどまれば、おまえやわたしたちはまだスナッチャーでいられるんだ」とか、 > 「もっと大人のやり方があるだろう。おまえは青二才だ」 とか、言う人なんですよね。 おおー、そこを引用してくださってありがとうございます、うれしいです。スナッチャーや作中きっての年長者として、彼は他の人間とは明らかに違った感覚や価値観を持っています。いうなればストッパーというか、一歩引いた目線で考えられる人かなと。考えれば考えるほど自分で言うのもなんですがカッコいいおじさまだなと大変気に入っています。 ただ、自分がそういう年齢にはまだまだ程遠い(それこそヒイラギやイトハと同年代)ので、こういった年長キャラを描けるかどうかは結構挑戦であります。その辺は自分の父親の言動とかもモデルにしていたりと。 ヒイラギには色々と責められましたが、ヒイラギもまた道半ばの戦士なので必ずしも彼の言うことが全て正しいということはありません(それを示唆するかのように組織から追放という形になっています)。 Twitterでも言いましたが、これからの展開は「The EX-Rocket Part」――ホオズキのための章なのです。ぜひぜひ期待してくださいね。 >読みながら、内通者としてイトハやホオズキ等を探る場面やイトハとヒイラギが歩み寄る場面など、当時リアルタイムで追っていた人は楽しかっただろうな〜羨ましいな〜と重いながら読んでいました。もっと早く手に取っておけばその幸せを味わえたんだなあと後悔する一方、これからは私もようやくそのリアルタイム勢に加われるのだと思うと、喜ばしいことこのうえありません。 いやあ、この部分も読んでいてグッときましたね……。なんて嬉しい言葉を! でも、わかります。私も他の人の連載を「もっと早く読めばよかったなあ」と思うことは何度かありました。「リアルタイム勢に加われるのだと思うと、喜ばしいことこのうえありません」とまで言っていただけて、これから自分としても楽しんでくださる熱心な読者様が増えたことに全身全霊で感謝を申し上げたいと思います。 叛骨は感想をいただくうちに、確かに自分にしか書けないのかもしれないと少しずつ自信を持てるようになりました(正直、最初は異端児のような作風だと思うこともしばしばありましたので)。海さんの見解もたくさんお伺いしたいので、ぜひまたお待ちしております。本当にありがとうございました! 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