名前も声も知らない を読んだ感想 | ||
投稿者:オンドゥル大使 評価:とても良かった! 2014/12/28(日) 22:09 | ||
[表示] こんにちは、オンドゥル大使です。『名前も声も知らない』、完結おめでとうございます。随分と時間がかかりましたが、感想を送りたいと思います。 まずレベルの高い文章が毎回展開されて驚きの連続でした。『もしプラ』の時もそうですが、びっくりするほどの高密度の文体とそれを支える基礎が作品をきちんと引き立たせていますね。飽きさせない展開に毎度熱くなります。あとはやめさん特有のポケモン視点、トレーナー視点入り混じっての戦闘の迫力、バトルの緊張。そして、絶妙なところで切るバランス感。いやぁ、憧れますね。 アニメキャラ総出演も胸が熱くなるところ。特にシンジでしょうか、私が読んでいて「これ!」と思えたのは。きちんとアニメのキャラクター性を理解したうえで書いている。それも、半端な読み解きではない、細部まで読み込んだうえで自分色を出した圧倒的オリジナリティ。それがこのセイエイトーナメントを彩るバトルの場面で発揮される様は感嘆の息が出ます。キャラクターの魅力をきちんと読み解く。これは意外に難しい事で原典キャラクターは人気を博しやすい分、その読み解き方を間違えれば大いに滑ります。しかしはやめさんのキャラクターは毎度生き生きしている。それもバトルという場面に置かれたキャラクターの勝利を渇望する様、戦いにおいて洗練される人間達の心の動きが克明に描写されていて、なるほど、となります。戦う、というのは人によってかなり描き方が異なる部分、殊にポケモンバトルとなれば十人十色と言っても過言ではないので、はやめさんのいい意味でセオリーを破る描き方は緊張とそれを上回るカタルシスの発露が素晴らしいバランスを奏でています。 最後の最後に彼らの旅路はまだまだ続く事や、セイエイトーナメントは序章でしかないような描き方もされていますがどうでしょうか。気になりますね……。 さて、読んでいて少し気になった事をこの先は少し。 回を経るごとにどんどんと描き方の密度が増しているのはいいのですが、少しばかり読みにくいバランスかと(主観ですが)。多分、一万ちょいで一話切っていると思うんですが一万は密度と照らし合わせると読みにくい事もあります。ただこれは主観なのであまり気にしないでも。 もう一方は体言止めの効果をうまく扱えていないことでしょうか。体言止めはここぞ、という時に使うもの。乱発すると少し威力が下がります。あと、もう少し軽い言い回しというか、戦闘の重厚さを描きたいのは分かるんですが、重々しさが過ぎる場合もありました。 あとはやめさんは文学に傾倒されていらっしゃるので文学めいた書き方が多くって、それはいいんですが、文学だけではなく、マンガや映画(特に実写)、劇作やドラマも観る事をお勧めします。これは一辺倒過ぎると結果的にインプットの割合が限られてくるので、多方面からインプットすることではやめさんの技術ならばさらに向上出来ると思います。 あと本当に、本当に個人的なんですがアユムとユウリがくっつかなかったのが惜しいところ。 なんていうかライバル以上の関係にはならなかったのがどうしても……。もちろん、はやめさんの狙いはトーナメントとそれに付随するバトルとドラマなのですから何も間違っていないんですがね……。もしプラの時も思いましたが恋愛要素は少し欲しいです。ヒロインを出すのならば特に。多角的に攻める事が出来るので作品としても強みが増します。 また先ほど激賞したアニメキャラですが、逆に言うとアニメの描き方に終始していてはやめさんがアニメのポケモンが大好きなのは分かるんですがもっとアレンジというか「外し」が欲しかったところではあります。「外し」というのは意図的にキャラクターを崩すことで、利いている部分もあるんですがちょっと物足りなかったです。もちろん、アレンジが過ぎても駄目ですけれどね……。 なんだか全体的に上から目線な感想になってしまいましたが、はやめさんは本当にこれからが楽しみなんです。どこまででもうまくなれる予感がします。自分にないものを言っているだけなので私の意見にあまり固執せず、はやめさんの想像力がどこまでも豊かになるのを見届けたいと思っています。 改めて、一ファンとして、読者として、面白い作品をありがとうございました! [15]
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投稿者:はやめ 2014/12/29(月) 12:39 | ||
[表示] オンドゥルさん、感想ありがとうございます。 辛口になると仰っていたので、いかなる意見も受け止める覚悟を決めていました。 この感想をいただいたとき、何度も何度も読み返してしまうぐらい、本当に嬉しかったです。 普段からオンドゥルさんとはチャットやTwitterなどでたくさんお話させていただいていますが、これほど私という人間を見ていることに驚かされ、改めて親しみを覚える気持ちです。 指摘や意見は自分では捕らえ切れなかった部分の再確認と反省に繋がるので、オンドゥルさんの口からここはこうした方が、というお話を聞けてよかったです。それも、指摘の根拠が強い説得力を持っているため、私としても「ああ、そうだよね!」と唸らずにはいられませんでした。感想に対して言うのもおかしな話なのですが、オンドゥルさんって本当に文章上手だなと思わず感嘆しながら食い入るように読みました。それでは、ひとつひとつ返して行きたいと思います。 ポケモン視点とトレーナー視点の両立について。 前作『もしプラ』の反省から、ポケモンに対してもっと生物的なアプローチを仕掛けようと思いました。ポケモンは生き物である、ということを意識に置きたかったのです。前作は比較的物語の鍵を握る伝説のポケモンだけに視点が集中していたので、今回は割と万遍なくポケモンとトレーナーの関係そのものを包括する狙いで、深く心情描写に切り込んでいきました。 「飽きさせない」ためにどうするかは、常に付き纏う課題ですよね。展開を練るときにはこのことを必ず念頭に置いて構成しています。盛り上がるポイントを物語内の随所に配置する、みたいなイメージを膨らませたりと。 私はある程度、読者の方の反応を予想して書きます。例えばアニメファンにとって馴染み深い台詞を使うと、それを知っている人は思わずニヤリとするだろう、と仮定する。勿論、それを知らない人も楽しめるようにするためにはどうすればいいか……というような感じです。原作ネタを主軸にする私の作品には、結構スタイルがカチッとはまってくれます。このネタを、第●話で出そうかな、と考えるのはやっぱり楽しいものです。 シンジは本当に評判が良くて、登場させた作者自身が驚いています。正直そんなに似せようと意識したわけではなく、アニメ後のシンジを自然体で描いたらこんな感じかな? ぐらいのノリです。ポケモン全体として見ても、私の中でシンジはトップクラスに好きなキャラクターなので、物語でもかなり贔屓目になってしまいましたね( 登場させるならばこの物語の中でしか有り得ないと思い決行に踏み切りましたが、功を奏してくれたようです。 それにしても「生き生きとしている」、そう言われると本当にどう返せばいいのかわからないぐらい嬉しいですね。 人間を人間らしく、自然体で、ちょっとばかり自分勝手に、みたいなことを目標に掲げています。物分りの良すぎる人間や完璧超人を書いても面白くないので、意識していることが伝わると、書いていて良かったなと思えますね。 セイエイトーナメントが序章ですか、なるほど。 旅って、終わりなきものだなと思うんですよ。出会いと別れを繰り返し、飽くなき探求を続ける。後でも触れますが、アユムとユウリの関係性が成就しなかったのは、そういうところもありました。 公言しますが、『名前も声も知らない』の続編を書くつもりは毛頭ありません。これ以上を書いても蛇足にしかならないからです。 ですが、私は物語の一登場人物であるテルマに対して、彼の過去を仄めかしてきました。物語のテーマから明らかに外れるため、掘り下げる余地はありませんでしたが……。彼の辿って来た道筋には触れる機会が、もしかすると、あるかもしれません。いつか。遥か未来に。余力が残っていれば。 文字数の問題について、多くの方から意見をいただきました。 『もしプラ』から反省して〜みたいなことを言った記憶がありますが、結局今作の方が遥かに前作よりパワーを要する羽目になってしまったのではないでしょうか。試しに文字数を数えたところ、第15話以外は全て10000字超過。それも12000〜3000という領域だったので、連載という前提で続けざまに読む際、負担への考慮が余りにも及ばなかったと自省しています。最終話投稿後、自分でも読み返しましたが、これはかなり疲れますね。特に第1話は長すぎました。 今までは話数を増やしたくないがためにノルマを設け、その厳守を心掛けていました。しかし、今作ですら本来11話に終わるはずだったのが16話まで延長する結果を振り返ったとき、もはや読みやすさを最優先するべきだろうなと。とりあえず、バランスとの兼ね合いもあるので、9000〜10000字周辺を目途に調整を始めてみようかと思います。構成に柔軟性を持たせるのは、今後の課題ですね。 体言止めの効果を上手く使えていない、仰る通りです。最終話周辺が息切れし始めたのは、それもひとつの要因として挙げられるでしょう。 私はバトルを書くとき、何より臨場感とスピードを意識していました。ですから、それを容易に表現出来る体言止めを無意識にパターン化して、文章に当てはめてしまったのだと思います。戦闘の構成が若干ワンパターン化していたのかもしれません。当たり前のように使っては、魅せたい場面での効果も薄れますよね。 この指摘には眼から鱗が落ちる思いでした。是非次回作の参考とさせてください。 >文学だけではなく、マンガや映画(特に実写)、劇作やドラマも観る事をお勧めします。 普段からの個人的な付き合いあってこその指摘だと思うのですが、これには驚かされましたね。本当によく見ていらっしゃる。視野の広いオンドゥルさんだからこそ、説得力があるなと思いました。 私はまだまだ視野が狭いです。これ、と決めたことに対して傾倒しすぎてしまう。文学に取り組んでいるのは個人的事情が絡むわけですが、映画など芸術方面に触れなければという想いを強く持った一年でもありました。私は割と影響を受けやすい人種なので、それを利用して貪欲に表現や価値観を自分の糧に変えて行きたいという欲望があります。バランス良く、取り入れていきたいですね。 さて、個人的な……と仰いましたが、アユムとユウリの関係性について着目していただけて、作者冥利に尽きます。滅茶苦茶嬉しいです。ニヤニヤします。 恋愛要素は確かに主軸ではありません。ですが、私は幾度も二人を接近させるような描写をしてきました。思わせぶりに書いておいて、最終的には離れてしまったのですから、オンドゥルさんの期待を裏切る結果になってしまいましたね。勿論、書く以上私が恋愛要素を意識していなかったわけでありません。 これにはいくつか理由がありまして。『もしプラ』とも兼ねながら、未熟な恋愛観で少し述べて行きましょうか。 まず、一番の原因はどちらも物語自体に終止符が打たれても、彼らには次の冒険が待っているからです。そのとき、Nにもアユムにも、腰を落ち着ける場所がありませんでした。付かず離れず……というか私自身「一見軽薄に見える様で、その実強い繋がりを保っている」という関係性が好きなのもあるんですね。勿論、キャラクターの置かれる立場によって考え方もまた変わってくるわけですが。 次に、彼らを結び合わせるものは友情に近い概念でした。『もしプラ』はちょっと違うかもしれませんが、少なくともアユムやユウリは未成熟の十歳児でまだまだトレーナーとしての闘争心が勝ってしまう。 最後に、どちらも旅であることが大きく影響しています。先程申し上げたように、旅を仮に定義したとき、恋愛成就は終止符を打ってしまうような気がして。それなら旅の着地点こそが締まるかなと思いました。 とまあ、いかにも奥手野郎って感じの言い訳です。なんだかあまり上手いこと言えませんでした。 思うに、私は「主人公とヒロイン」という構図に対して鈍感でした。次回から主人公とは、ヒロインとは何か、ということに関してもっともっと突き詰めて行こうと思います。考える機会を与えてくださったことに感謝です。 アニメキャラへのアレンジが足りない。私が「崩す」ことを恐れたが故に一歩踏み出せなかった点だと分析しています。原作にリスペクトを払い、そのまま移行させたかのように書くことが正しいと思い込んでいましたが、実を言うと怖かったのです。自分色に染まってしまったシンジやシューティーに自分で違和感を持ってしまう……思い入れが強すぎることの欠点ですね。 むしろ、その点は『もしプラ』の方が臆病にならず書いていたかもしれません。次回作も何らかの形で原作キャラを取り入れるつもりでいますので、原作ベースを守りつつ、その中にもう少し外しを入れてみる余地はあるなと思いました。 どこまででもうまくなれる、ですか。重ね重ね月並みですが、嬉しさのあまり言葉が出ません。私自身もっとレベルアップしたいです。用意している連載計画に対して、私の能力や視野がまだ追いついていないんじゃないか、という思いも否めません。最大限にポテンシャルを発揮出来るよう、準備していかなければなりませんね。というわけで、次回作の連載は当分先になりそうです。 それでは、返信としては書き切れたように思うので、この辺りで締めますかね。 オンドゥルさんの熱い感想、意見、大変参考になりました! 全てこの身で受け止めました。ありがとうございます。 [16]
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