月蝕 > 月蝕 > 91 長い夜の果て を読んだ感想 | ||
投稿者:レイコ 2017/11/07(火) 23:09 | ||
[表示] ※9章のネタバレを大幅に含みます。未読の方はご注意を。 10章完結、お疲れ様でした。 と、その前に。9章後半の感想を綴らせて頂きます。「トウヤとミソラ」の関係性が一気に変化してしまいましたね。さまざまな伏線があるので、なるべくしてなった展開と受け入れておりますが、修復不可能なレベルのこの亀裂を一体どうしろと……10章で何かしら折り合いがつくのだろうか……と、息を殺して草葉の陰から見守る心地でした。 お師匠様についていけると無邪気に喜ぶミソラと、「騙された」と180°変貌するミソラの落差は、私としては9章の大きな見所でした。ミソラが次々トウヤの知り合いを挙げて、師匠殺しを正当化するための外堀を埋めていくところが異様に冷静で、ぞっとするほど生々しかったです。ぼくがハギの息子になれば傷を癒せる、と、ヨシ君からトウヤに受け渡されたポストに、なんの躊躇いもなく収まってしまえという、自己中心の極みのごとしミソラの精神状態。気が滅入りました。ものすごい不謹慎ですけど、ミソラの精神状態にこちらが感化されたのか、トウヤの知り合いの数が割合少なくて、ある意味良かったね……と、直後に思ったり思わなかったり…… ポケモンフーズを貪ってみたり、トウヤの情緒不安定とおぼしき行動や心理は時折見られますが、ミソラはトウヤとはまた別のベクトルに振り切れていますよね。心理描写といえば、9章末尾を締めくくるハリの一人称視点。劇中のキャラがおぼえる無力感というものに弱いので、ギャーッとなりました。従者組のあのエースが。主のために何も出来ない。トウヤがどう思おうと、そこにはハリの心の檻が出来上がるじゃないですか。この状況だけでもう落ち着かなくて、足がそわそわして逃げ出したくなる気分です。生みの苦しみはとらさんのみぞ知るところですが、作者のフルパワーあっての圧倒的な心理描写ということは随所からガンガン伝わってきます。恐ろしいお人ですよ、どれだけ読者の心を鷲掴みにして乱高下させれば気が済むのでしょうか。 9章既読の皆が通る道、現時点で触れるのはタブーと思いつつ、あえて切り込ませてください。9-4でミヅキ(あくまでミソラの記憶なので、ミヅキという確固たる証拠はなし)は弟(名指しではないですが、トウヤ?)が両親を殺したと言っていました。でも9-5によると、トウヤはアヤノさんの「実の子に殺された」という口述で、おねえちゃん(ミヅキ)が父親を殺した、と今まで思っていたことになりますよね。 (話が脱線しますが、大好きな親を殺したと知らされつつ、犯人である姉を想い続けたトウヤの心境、純愛であれ執着であれドラマチックで読み応え抜群ですが、現実的に考えれたら常軌を逸していますよね。どちらの印象を取るか…)。彼らの記憶、明らかに噛み合わないですよね……しかも一方はワカミヤ夫妻、一方はワカミヤ夫のみで、死亡時期が微妙にずれている気がしないでもない。ミソラは登場初期から記憶喪失、トウヤも10章で記憶がないと指摘されている。誰の記憶が正しくて、誤りなのか。記憶改竄は己の意思か、他人の細工か……伏線回収とともに、今後明かされていくのでしょうね。謎が尽きませんし、楽しみも尽きないです。ネタバレに抵触してご不便かけるようでしたら、どうぞスルーなさって下さいね。 10章の感想は準備が整い次第、投稿させて頂きます! [28]
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投稿者:とらと 2017/11/11(土) 19:49 | ||
[表示] うおおまさか遡って9章からご感想頂けるとは……ご丁寧に痛み入ります、ありがとうございます、ありがとうございます……こんなにありがたいことがあるだろうか……何と言うか、9章は10章(10−1までというか)出さなければ語れない部分の多い章だと思っていて、今改めて振り返ると個人的にも色々と思う所があります。 9章、9−4、ミソラが殺したがっていた人の正体に気付くシーンが、この小説で最も大きなイベントであると考えています。恐らく読んでくださってる多くの方には「多分トウヤなんじゃないかな」と予想してもらえていたと思う(そうだったらいいのにな)ので、読者を驚かせる一発逆転とかではなく、キャラクタの関係性を描いていく物語上の転換点として、核になるべき回でした。180度、と仰っていただいていますが、まさに「ミソラの世界が180度豹変する」話として書いていたので、見所と言っていただけて正直ホッとしましたという感じです。ミソラが一人ずつ名前を挙げながら殺しを正当化していくシーンはずっと楽しみにしてたシーンでした!!思い出した瞬間、これまでの積み重ねの全てを逆手にとって日常をぶっ壊しにいくミソラの豹変ぶりに、「えっ葛藤とかしないんだ、すぐ殺そうとするんだ」と思っていただきたかった。ぞっとすると仰っていただけて嬉しいです〜 ミソラは良い子の皮を被ったやべーやつなんですよ〜 9章末のハリの話、9章執筆中に本編に組み込むことにしたので、正直予定にはなかったものです。喋れないポケモンの一人称を本編で描写するのは(ポケモンとの言語での意思疎通が難しい本作では)禁じ手なんじゃねえかとずっと考えていました、でもこの回は私も本当にお気に入りなので、思い切ってよかったなあと顧みて尚感じます。 >トウヤがどう思おうと、そこにはハリの心の檻が出来上がるじゃないですか。 そうなんですよね、トウヤとハリは付き合いの長さという点で、お互いにお互いのことを分かっているような気になっているんですけれど、実際には伝えてないから分かってない・汲み違えている部分っていうのはかなりあります。ただ、この辺は10章終盤でメグミを介したり介さなかったりして互いに行動を起こしたことで、ハリも多少は楽になっているんじゃないかなと思います。ただやっぱり勘違いしている部分はまだ多々あります。ポケモン視点を排除して進めるとこの辺の描写がなかなか難しい…… わ〜、タブーだなんてとんでもない、そういうところをお伺いしてみたかった! 死亡時期含め色々と矛盾していることにちゃんと気付いていただいていて嬉しいです。記憶改竄の可能性を示している時点で、誰の証言が正しいとも現時点では言い切れません。一応、この件に関しては全員、それぞれの記憶に基づいて、本当のことを喋っています。推理と言うほど大それたものではないのですが、色々予想してもらえたら私が楽しいですね(*´∇`*) >(話が脱線しますが、大好きな親を殺したと知らされつつ、犯人である姉を想い続けたトウヤの心境、純愛であれ執着であれドラマチックで読み応え抜群ですが、現実的に考えれたら常軌を逸していますよね。どちらの印象を取るか…) ここに関しては〜9−5書きながら、我ながらここまでの描写が浅すぎたなと反省している次第でして……。本編を読んで受け取っていただけたのが全てだと考えていますが、蛇足として私の意図を解説させていただくと、トウヤが大好きなのは「親」というよりは「家族」であり、その家族の中には(何らかの確執があるといえ)姉であるミヅキも含まれています。その姉が親を殺したという話は、トウヤにとっては寝耳に水であり(自分がいなくなったところで家族三人仲睦まじく暮らしていると考えていたはず)、俄かには信じ難いものです。よってトウヤは「どうしてそうなった」と思いはすれど、ミヅキを「犯人である」と断定して恨むまでには至りませんでした。……という無意識を、9−5中盤の流れで自覚した、という感じです。それとは別に、実姉に対する恋愛じみた感情、そして会っていないのにも関わらず十二年間毎日欠かさず顔を思い描いてきたと言える執着に関しては、異常だと言っていいんじゃないかと思います。この人……気持ち悪い!! うおーん、10章まで……本当にありがたいことです。どうぞお時間のあるときに。頂いたお言葉をパワー変換して次章の構想を進めつつ、お待ちしております(*´∇`*)ありがとうございました……! [30]
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