B1 時流の乱れ
[Side Unknown]
「・・・さん、前は違ったはずだけど、大丈夫なんですか? 」
「…ごめん、こういう事は初めてだから、僕も分からないですよ」
「…だよね。わたしも二回目だけど、・・・に誘ってもらった時は、こんなに荒れてなかったはずだよ」
「俺の時もそう…」
「…っ! ・・・! 」
「・・・君! ・・・さ…」
「・・・! ・・ト! 」
「くぅっ…! 一体、何が…? 七千年代で…」
――――
――
―
[Side Unknown]
「…君、・・ル君! 大丈夫ですか? 」
「…うぅっ…。うん…、何とか…」
「良かった…、無事で…」
ぅん…、頭がクラクラするけど、それ以外は…。“時渡り”の最中に突然のアクシデントに見舞われた俺達は、その途中で一緒にいた仲間と離ればなれになってしまう。俺自身は二回目だから詳しくは知らないけど、何回も来た事がある彼女、それから発動者の彼が言うには、今回のアクシデントは初めての事だったらしい。途中までは何事も無かったけど、目的地の“時代”が近づいたところで、急に突風に襲われた。その風に吹かれて、一緒にいたはずのふたりとはぐれてしまった。…だけどいつの間にか気を失ってしまっていたらしく、俺は発動者の呼びかけでふと目を覚ます。軽く揺すられてたけど、俺はボーっとする頭でこう呟く。ゆっくり目を開けると、セレビィの彼が心配そうに、けど安心したようにこう呟いていた。
「…だけどシードさん、本当に大丈夫なんですか? それに、ふたりの姿も見えないし…」
「うーん、分からないですけど、少なくとも七千年代には“渡れ”ているはずです」
「それなら、探せば会える…、のかな? 全然見当がつかないけど」
そもそも、ここはどこなんだろう? 見た感じトレジャータウンじゃなさそうだけど…。きょろきょろと辺りを見渡しながら、俺はシードさんに訊ねてみる。見覚えのない景色だし、一緒に“渡っ”てるはずのふたりも近くにいない…。シードさんも予想外の事だったみたいだから、彼も予想ですけど…、っていう感じで言葉を濁す。俺自身も全然想像できないけど、彼が言うなら大丈夫なのかもしれない、心なしかそう思えた気がした。
「それに…、ここはどですか? 」
「トレジャータウンから逸れてしまったけど、“時の回廊”ですね。そういえば、ティル君は来た事がなかったですね? 」
「うん」
「ですけど、トレジャータウンからはあまり離れてないですよ」
そっか…、近いなら、良かったのかな? 見覚えのない場所だったけど、あまり離れてないなら何とかなるのかもしれない。そう思った俺、マフォクシーのティルはホッと肩を撫で下ろした。意識もはっきりしてきたから、ひとまず俺は頷きながら徐に立ち上がった。
「…ただ、ダンジョンを二つ越えないといけないですけど、ティル君なら大丈夫ですよね? 」
「はい。俺は三年ぶりだけど、そのくらいなら問題ないですよ」
今は休みをもらってるけど、つい最近まで戦いっ放しだったからね。状況が違うけど、きっと大丈夫だね。どのくらい離れてるのかは分からないけど、シードさんの様子を見た感じだと、案外早くトレジャータウンに着くのかもしれない。例のダンジョンの事が気がかりだけど、何回も来ているシードさんが言うなら、間違いないと思う。
「ですね。…じゃあティル君、行きましょうか」
「うん。ライトの事が心配だけど…、そこなら合流できるかもしれないですからね」
ライト達のリハビリのために来てるけど、まさかこんなことになるとは思わなかったからなぁ…。俺が立ちあがったのを見て、シードさんもふわりと体を浮かせる。後ろ向きで飛びながら俺の方を向き、すぐにこう呼びかける。俺自身はパートナーの彼女の事が気がかりでそれどころじゃないけど、今心配しても何も始まらないから、ひとまずは気持ちを目の前の事に切り替える。独り言のように呟いてから、俺はシードさんに続いて歩き始める。彼女達なら大丈夫なはず、そう、自分に何度も言い聴かせながら…。
続く