05
「それじゃあ、私達もう行くね」
大事な用がいつくるか分からないのに、ルカは入り口までななせ達を見送りに来てくれた。
ルカは腕を組み、えっへんと偉そうに答えた。
「戦いに向かう者を見送らないなんて隊長の名折れ!
武運を祈る。レン、ムク、ゴウキ、そして…ななせ」
ルカは1人1人に視線を送り、優しく微笑んだ。
レン以外の3人はルカに手を振り別れを告げ、ルカも4人に向かって大きく手を振り見えなくなるまで見送った。
ルカがフロントに戻り、自分がさっきまで座っていた場所に腰掛けた。
大きく深呼吸して脱力し、天井を見上げて目を閉じる。
徹夜したせいで眠気がややきていた。
でも不思議と緊張感が消えなくてまだまだ起きてられそうな気がする。
というか今ここで寝たら確実に阿呆で間抜けだ。
せっかく隊長まで上りつめたのに、たいして成果を上げてない。
ななせ達の前ではあんなに偉そうにしていたが、実際ルカは軍では落ちこぼれの下っ端で、自分よりはるかに強い先輩達にびくびくしているしそのせいでよくパシリをされる。隊員達ともあまり上手くいっていない。
任務もほぼ1人で請け負う事が多い。それは全然平気だった。
だってミスしたら確実に自分のせいだし、連帯責任で隊員に迷惑をかけなくて済む。
でもこれが4人にバレたら…と思うと穴があったら入りたいしそのまま出たくない。
「お疲れのようだな、ルカ隊長」
アレックスの声が聞こえてルカは飛び起き、腰を抜かす。
椅子の背もたれに手を置き、ルカを見下ろしていた。
相変わらずの完全防具でとても迫力がある。
アレックスは室内でも頭の鎧は外さず、3人掛けのソファーにどっしりと座った。
座った振動でフロント全体が小刻みに揺れる。
「い、いらしてたんですね」
ルカは態勢を整え慌ててソファーにちゃんと座り直した。
眠気も一気に吹き飛んで、心臓がバクバクとしている。
「今着いたばかりだ。声をかけようと迷ったぞ」
「す、すみません…さっきまで気を緩めていました…」
「休息は大事だ。
訓練兵時代は常に気を緩めるなと言っていたが、隊長にもなれば隊員のためにも体調管理はしっかりとするべきだ」
「精進します…」
言葉の重みがルカにのしかかってくる。
顔が徐々に俯いてくる。
冷や汗が垂れてきた。
極秘任務というのにとてつもないプレッシャーを感じる。
一体どんな…
自分に出来るのだろうか…
アレックスがバサッと書類をテーブルに置き、ルカの心臓がキュッとする。
書類に目を通すと『報告書』と書かれていた。
「ルカ隊長、君には…ある危険人物の監視をしてもらう。
彼らの中に混じり、報告書を誰にもバレないように書き、提出しろ」
アレックスはそう言うと1枚の写真をルカに手渡す。
ルカは写真の人物を見てハッと息を飲んだ。
写真に写っている人物はななせとレンだった。