すてぃーるふらっぐ ( No.18 )
日時: 2013/04/14 23:58
名前: レイコ メールを送信する

テーマB:旗




 ハードでスイートなおれさまを待たせるとはいい度胸。この借りはきちんと返させてもらうぜ。れんごく並にド派手な勝利ってやつでよ――
 とまあ三年前のおれなら、のろのろ進む時計の針に向かってこんな感じに虚勢を張ったかもしれねえ。全然周りが見えてないから、“なんだアイツ、あの自分に酔った痛いデルビルは”とドガースとズバットから後ろ指を差されていることにも気づかねえおめでたい野郎だ。思い出すだけで乾いた笑いが出っちまう。あの頃は善事も悪事も関係なく、マスターに自分は強くてすごいヤツだと証明したい一心の見栄っぱりなガキでしかなかった。身のほど知らずという言葉は昔のおれのためにあるようなもんだ。だからこそ、そんなおれを愛すべきバカとしていまだ相棒の座から下ろさないマスターの懐の深さには感謝している。ありがとうマスター。すまないマスター。おれはあんたに一生ついていく。あんたの名誉のためなら昔は泣きそうなほど嫌いで仕方なかった長い待ち時間も耐えられる。人畜無害な賢犬のふりくらいどうってことない。
 しかし、やっぱ暇だな。
 マスターは昔の仲間との通信にまだしばらく時間がかかるらしい。足下で敷物みてえに床に寝そべっていたおれに散歩でもしてこいと一人で出歩く許可をくれた。悪いなマスター。物わかりのいいあんたは最高だ。そのお言葉に甘えさせてもらうよ。
 さて、どこへ行こう。このドームの中をほっつくか。今日もいろんな参加者が来ている。そいつらを観察して情報を仕入れるのもよさそうだ。それよりもドームの外に出てひとっ走りしてくるか。運がよければボンドリンク屋のオヤジがサービスしてくれるかもしれねえ。ウォーミングアップにはちょっと早いが、他の参加者と一緒に練習するのはどうだろう。このあいだ未進化グループに混ざろうとしたときはデルビル兄ちゃんの顔がこわいとハネッコを泣かせちまったから、今日はそんなことにならねえようにおれより顔の恐いチームを選ぶことにしよう。グランブルとか、グランブルとか。
「あんたのニオイ、どこかでかいだ気がするわ」
 誰だいきなり。驚かしやがる。ドームの外に出た瞬間、おれを待ちぶせしていたかのように知らないヤツから声をかけられた。知らないといっても体の形や鼻のあたりは親近感を持てるそいつの種族はわきまえている。でもガーディとかいう名前の連中に何度か追いかけられたことのあるおれは、ぱっと見そいつにいい印象が湧かなかった。 
「オレは知らないな。あんたの気のせいだろう」
 そういえばこいつ、女か。なぜだかガーディの性別比は偏りがあるというウワサを思い出した。それは別にいいとして、おれに話しかけたのは一体どういうつもりだ。今まで出会ったガーディはろくでもなかったし、余計な関わり合いにならないうちに引き上げよう。
 そいつは警戒心をむき出したおれを見て笑った。臆病者と見下されようがこちとら真剣なんだ。場合によっちゃおれのマスターに迷惑がかかるんでね。
「あらそう、カン違いなら謝るわ。さっきあんたがポケスロンの常連だって聞いたの。それで話しかけてみたのよ」
 うさんくさいキッカケだ。おれは確かにポケスロンの常連だが、腕の立つ古参なら他にもいる。それにおれは絶賛求職中のマスターが生計を立てる一環として、売れば儲けになるアイテムと交換できるスロンポイントを貯める手伝いをしているだけだ。別に好成績を収めて輝かしい栄誉が欲しいわけでもなく、動機が不純だといわれて常連内でも評判がいい方ではない。てめえ、やっぱり他の理由があっておれに言い寄ってきたんじゃねえのか。
「今日はご主人と一緒に初めてポケスロンを観に来たのよ。いつか挑戦するつもり。あんたとはいいライバルになるかもしれないわね」
 なんて口のでかい女だ。完璧になめられている。顔が恐いと泣かれたほうがまだマシだ。今までの疑いが全部どうでもよくなるくらい、まともに相手するのが一気にバカバカしくなったぜ。
「そうそう。あたしのニックネームはアクセルよ」
 こっちはさっさと話しを切り上げてえのに、一方的に名乗るとかありえねえだろう。でもアクセルか。スピードの速さを願った人間がつけそうな名前だ。おれのマスターのセンスにゃ及ばねえが、悪い響きじゃないな。
「生憎、怪しいヤツには名乗らないようにしてるんだ」
 これでいい。こう言っておけば大抵のヤツは不機嫌になってもう話しかけてこなくなる。おれのカッコイイ名前を聞かせて張り合うのも捨てがたかったけどな。今回は最善を取らせてもらう。
「じゃあ勝手に呼び名を決めるわ。そうね、デルビルだからビルでいいわね」
 ウソだろ。コイツどこまでしたたかなんだ。したたかすぎる。しかもそこはデルじゃないのか。デルはどうでもいいのか。お前はガーディだからディでいいと言われて満足なのか。おれならガーのほうが若干納得できるぞ。
おっと、いけねえ。名前ぽっちに熱くなってねえで、いいかげん本気で会話を打ち切ろう。頭ごなしに怒鳴っても通じなさそうだからな、ここは適当に理由をつけてあっちから離れていかせるんだ。頭を使え、おれ。
「お前のご主人はどこだ。ご主人を探しに行ったほうがいいんじゃないか」
「いい質問ね。でもいいの。姫の居場所はわかっているから。それよりあたし、あなたともっと話しをしていたいわ。ねえ、ポケスロンのことを教えてよ」
「何言って――」
 ポケスロンドームの自動ゲートが開き、中からマスターが出てきた。それも見知らぬ人間の女と一緒に。や・が・るの三音が訳の分からないうちに喉から蒸発していた。おれのいない間に何があったんだ。マスターにカノジョができればいいと常々思っていたがさすがの急展開に目ん玉ひんむいて動揺しちまう。そしてガーディが謎の女に向けてある一声を放った瞬間、今日一日の出来事の中で堂々のワーストが決定した。
「あらご主人様」



 それからちょくちょくマスターの付き合いで、嫌でもおれはそのガーディと顔を合わせる羽目になっちまった。おれのマスターとガーディのご主人は気の合う友達といった関係だ、今のところ。ご主人はおれにも優しくしてくれる。楽しそうな二人を見るのが最近のちょっとした楽しみになりつつあるとはいっても、やっぱりあのガーディだけは解せない。長い待ち時間もそうだが一度苦手意識をもつとなかなか抜け出せねえタイプなんだ、おれは。
 今日もおれ達はポケスロンドームで待ち合わせ。気のせいかご主人はこの前よりもおめかしに気合いが入っている。お空の陽気が心の陽気か、はたまた別の心境の変化か。そういうおれのマスターも今日はいい靴履いてるんだけどな。マスターとご主人が談笑している間、おれとガーディはドームの外の練習場をぶらつくのが暗黙のルールと化している。本当は調子の狂うコイツのふたりきりになりたくねえが、ズバットは直射日光に弱いしドガースもモンスターボールに引きこもっているほうが好きで、ガーディはそもそも仲間がいない。だから結局いつもふたり固定だ。
 いや、やはり可哀想だからあの爆発野郎もカウントしてやるか。ポケスロンの練習場につくとグラウンドにはほぼ必ずアイツがいてやがるんだ。うるせえマグマラシがな。ニックネームがないのを実は気にしているらしく、短くマグと呼んでいいぞと種族名の長さにかこつけて周りに呼ばせている。火を噴き出していない時は地味なことも気にしているようで、くだらねえインネンをつけてきてはそのたびに発火する。あとはそうだ、ポケスロンドームの目と鼻の先にあるコガネシティの常設ジムジムリーダー、アカネのミルタンクにメロメロころがるコンボを破るのは楽勝だったと自慢していたが、新メンバーの女ワンリキーきんにくの一人勝ちで出番がなかったという説がポケスロン常連の間で常識となっている。ようするに非常に面倒くさいマグマラシだ。最近それに輪をかけて面倒くさくなったのも、全部ガーディがマグマラシを惚れさせたのが悪い。
「次はエンジュジムを攻略してやるぜ。オレの炎でマツバのゴーストも黒コゲだぜ。どうだアクセルちゃん、オレの爆炎の極意を知りたくないか。そうすりゃアクセルちゃんの炎ももっともっとすごくなるぜ」
「ありがとう。間に合ってるわ」
 ガーディに笑顔でナンパを一蹴されたマグマラシは、頭から炎を吹き上げたかと思うとおれに八つ当たりしてきやがった。
「何見てんだてめえ。いつかてめえの得意なスティールフラッグでぎゃふんと言わせてやるからな。見てろよ」
 暑苦しいな。見るなとか見ろとか注文の多いヤツだ。その前にまず他の種目で旅仲間のトゲチックやモココに助けられてばかりなのをなんとかしろ。話はそれからだ。
「ビルのスティールフラッグ、いいわよね」
 ガーディも夢見る乙女のような瞳で言うな、気持ちわりい。にしてもビルですっかり定着しちまったのが妙な気分だ。こんな事ならあの時きちんとニックネームを教えたほうがよかったかもしれねえ。
「騙されちゃダメだぜアクセルちゃん。こいつは悪タイプでどろぼうが得意なだけなんだ。ちょっとテクニックが高いだけの汚い旗泥棒だぜ」
 競技を根本から否定するようなことをよく平気で言えるな。でもこのバカっぽいところが昔のおれによく似ていて憎めねえ。
「どろぼう、ね……」
 あのガーディがしおらしく小声でつぶやくのを聞いて、おれはまさかと思うが念のために弁解しておいた。爆発野郎もたまにはちゃんと誤解のタネをまけるのか。なんだ、口八丁も意外と油断ならねえんだな。
「どろぼうが得意なのは認めるけどな、ポケスロンで不正をしたことは一度もないぞ」
「じゃあなんでオレは正々堂々と勝負してお前に勝てねえんだよ」
「知るか。実力差だろ」
 マグマラシがまたドッカンした。もらいびのおれに炎は効かないのに何度やっても学習しねえ。逆にすごいぜ。



 思うに、おれのマスターはコーチの才能があるんじゃないだろうか。ガーディもそのご主人もめきめきと力をつけている。特にスピードはアクセルの名にふさわしく、うちで一番俊敏なズバットが感心するほどだった。基礎についてはもうあのガーディをポケスロンの素人とは呼べない。
ポケスロンの参加条件を満たすには最低でも仲間があと二匹いる。ある夜おれがその話をすると、アクセルはいかにもすました態度で答えた。
「ご主人様次第ね。あたしは従うだけ」
「競技に参加したいんだろ」
「したいわ。すっごく」
 アクセルの顔が一瞬感情的になったのを、おれは見逃さない。
 近くにいたニドラン♂とニドラン♀の間で突然笑いが起きた。夜の練習場は一転して浮かれたカップルのたまり場になっちまい、真面目な話しをするにはつくづく適さない。
「人間に言葉は通じねえが、お前が頑張りを見せればご主人も……」
「ダメなの」
 存外はっきり言われて、ちょっと面喰らう。
「ポケスロンに出るために特訓してるんだろ」
「あたしはご主人様の道具も同然だから、余計な期待をしちゃだめなの」
 なんだって。
 なんだよ、それ。
 おれの敏感な鼻の奥が、少し遅れてつうんと痛む。
「今なんつった」
「あたしはご主人様の便利グッズ」
「意味わかんねえよ」
「分かってもらえるとは思わないわ」
 分かるわけねえだろ。いつも仲良さそうなのに。お前はご主人をそんな風に見てたのかよ。おれの前で自分の気持ちにウソついてたのかよ。うわごと言ってんじゃねえと吼えたい気持ちが膨れあがる。今ならまだ許せる。冗談だと言ってくれ。
「ごめん、道具は言い過ぎたわ」
 おれの顔を見てこれはまずいと判断したのか、急に謝られた。
「でも感情を抑え込まなきゃいけないのは本当だもの。好き嫌いで選り好みしちゃダメなの。あたした、あたしは……ううん。あのご主人様はね、たくさん手持ちを持てるほど器用じゃないから」
 釈然としない微笑みを浮かべて、アクセルは前足でグラウンドの土を蹴った。

 マスターとご主人が解散した後、おれはマスターに無断で夜闇にまぎれてこっそりご主人を尾行した。アクセルらしくない空虚な言動がどうしても頭から離れなかった。もしコガネシティと自然公園に繋がるゲートをくぐるまでに何も起きなかったら、ドームに戻ろうと決めていた。前方にライトのついたゲートが見えてきて諦めかけたその時、ご主人が立ち止まって手で目の辺りを拭った。何度も何度も。優しい塩のニオイが風に乗って流れてきた。おれは足音を立てずにその場から姿を消した。


 別の日、おれとアクセルはマグマラシの自慢話に付き合っていた。これが慣れるとちょうどいい暇つぶしになる。他にはいつかのニドランカップル、うちのドガース、常連のヨルノズクなんかが一緒にいた。
「アカリちゃんの命が救えたのはオレの活躍があったからだぜ。アクセルちゃんにもオレの勇姿を見せたかったな。まあ海を渡れたのはラプラスのおかげだけどさ。あればっかりはオレじゃどうにもできなかった」
 自分の弱みを認めやがった。旅を通して少しずつ、コイツも精神的に成長してるんだな。ジムを巡る早さから考えてコイツのご主人は紛れもない天才だろうが、それについていけるマグマラシも相当ポテンシャルが高い。
 その明くる日、マグマラシは大興奮していた。
「勝った勝った。勝ったんだ。ミカンのハガネールをひとりで倒したんだ。そしたらバトルの後で、ハガネールがオレにいいバトルだったって言ったんだぜ。なんか恰好いいよな。勝っても負けてもあんな顔できるようになりてえよ」
 そうでもねえぜ。お前も随分いいツラするようになったじゃねえか、マグ。


 空が冴えねえ。スモッグみてえな色だ。もうすぐ待ち合わせの時間が来るのに、マスターはまだ支度に手間取っている。電話のベルがひっきりなしに鳴るせいだ。元同僚にモーニングコールを喰らい、それが終わると元部下、そして元上司。マスターの口調で話相手が誰か一目瞭然だ。今日はチョウジタウンに行けませんと急な誘いを平に謝って断ろうとしているが、先方の追及は厳しいらしい。約束をすっぽかしたと思わせたくねえのか、憔悴した目配せが先に行けとおれに言っている。あいよマスター。あんたの命令に従うぜ。
 マスターを置いてドームに向かったおれが、ドームのゲート前でご主人を欠いたアクセルを見つけたとき、胸の奥になんとも言えねえ冷たい予感が下りてきた。
「ちょっとご主人様の用事が立て込んでて。遅れそうだから」
 いつしかおれは、マイペースに偽装したアクセルの気持ちを敏感にとらえられるようになって。いつのまにかアクセルは、おれの自覚を超えた域までおれのことを理解するようになって。
「奇遇だな。おれのマスターも雑用に追われていてな」
 お互いが黙認して頭の中を覗き見し合っているような、少しシュールで哀しい時間が流れた。ねえビル、とおれが訂正を諦めたこの世でもう一つの名前が呼ばれる。
「前に、あたしはご主人様の道具だって言ったわよね」
 あの時以来、亡き者にされていた話題が今となって甦るのは緊張で鼻先がむずむずした。
「ああ、そうだ」
「あたしだって、あんたに負けないくらい自分のご主人が好きよ。もちろんぐらつく時もあったけど、ご主人様のことを今までよりもっと大切にしたいと思うようになったの。あんたとあんたのマスターに会えたおかげで、わたしは強くなれたのよ」
 晴れ晴れとして潤んだ瞳に、おれは吸い込まれそうになる。コイツ、こんなにいじらしいヤツだったっけ。アクセルは不意にゲートの段差を飛び降りて、笑顔でおれに振り向いた。
「ねっ、遊ぼう。穴掘りでもかけっこでも。あたし絶対負けないからね」
 きらきら輝く陽のように、練習場に向かって走り出した背中が眩しかった。

 マスター達はいくら待ってもドームに現れなかった。
 夕陽が沈み、夜気が迫ってきても、おれとアクセルは家に帰らなかった。おれは元々長い待ち時間が苦手だ。三年前のガキなおれならとっくに発狂しているかもしれねえ。でも今は、一緒に待てる相手がいる。
 ここでおれ達が待つことを諦めたら、きっとおれ達よりマスターとご主人が後悔するだろう。個人の感情より仕事を優先した今日という日が何を意味するのか。あの二人も分かっているはずだ。ここらで真っ向勝負しねえと、きっと一生逃げ続ける。自分の作りだした影に怯えて、大事な人の前で本当の笑顔を失っちまうんだ。だから、おれ達はここで待つ。このポケスロンのドームで。たとえ、マスターに捨てられることになっても。
 しかし、暇だな。
 似たように暇を持て余したアクセルが、あくびを一つして言った。
「ウソがホンキを食べちゃって、ホンキもウソを食べちゃうの。どう思う?」
 そういう謎かけは嫌いなんだ。
「感じたままに聞かせて欲しいの」
 そういうことなら。
「最後はどっちかが勝つんだろう」
「意外と手堅いじゃない。それじゃあもう一つ」
 アクセルがくすりと笑みをこぼしたかと思うと、おれの耳に口を寄せて囁いた。
「ウソとホンキ、どっちに勝ってほしいかしら」
 がさりと植え込みが揺れた。
「ようビル、アクセルちゃん」
 バクフーンか。ニオイが近くまで来ていたからわかったぞ。
「チョウジジムの帰りか。どうだった」
「ちぇっ、進化して驚くかと思ったのに。結果なんて聞くまでもないだろ」
 今や見上げるような背の高さになったバクフーンは、自信満ちた表情でぽんと胸を打った。
「凱旋ついでに一つ報告があるんだ。どうしてもお前らに知らせたくて、実はみんなの所から抜け出してきたんだぜ。一回しか言わねえからよく聞いてくれ」
 事が重大なほど落ち着いて対処できるようになったんだな、お前。
 おれとアクセルは頷いて、耳を欹てる。 
「オレ、ポケスロンは今度の参加が最後になると思う」
 バクフーンの声には、誇りと覚悟が表れていた。
「これからは狙いをポケモンリーグ一本に絞る。チャンピオンになれる日まで他はおあずけだ。だからビル、最後にもう一度オレとポケスロンで勝負してくれ。参加の予定が合うように出来る限りのことはするから、お前にも協力して欲しいんだ。頼む」
 なあ、バクよ。いつからお前はそんなでかい台詞が似合うようになったんだ。図体とともに志もうんと高くなっちまったのか。その背伸びと言わせねえ気迫はどっから湧いて出てきてる。気にいらねえな。燃えてくるじゃねえか。
「おバカなあんたが頭を下げる日が来るとはね。ここで断ったらあたしはビルを軽蔑するわ」
「へへ。オレはオレの名誉のために、こいつにぎゃふんと言わせてやりてえだけだぜ」
 どいつもこいつも、好き勝手言いやがる。それならこっちも、痺れるくれえはっきり言ってやろうじゃねえか。
「いいぜ。望むところだ」

 ああ、そうだな。
 バク、今のお前ならお前のご主人と一緒に正義の味方になれそうだ。
 かつておれのマスターが所属した組織を壊滅させた少年とその仲間のように。バトルで手合わせした時は遠慮無くぶっ飛ばしてやるからな。
 アクセル、刑事のご主人と頑張れよ。
 義理堅いおれのマスターは昔世話になった元団員のよしみで招集に応じるつもりだからな。アクセルのご主人と同じくらい、マスターにも罪悪感があったんだぜ。許してやってくれ。
 この間にも、ラジオ塔占拠計画は着実に進行している。
 やってやるぜ、ポケスロン!
 おれ達が最後かもしれねえ友情を飾るのに、これ以上最高の舞台はねえだろう!