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Four Dimensions Survival プレオープン
日時: 2011/04/02 02:32
名前: 乃響じゅん ID:nDltgKfM

いらっしゃいませこんにちは!
乃響じゅんです。
このお話は、ポケモン第四世代を私なりに解釈(+妄想)したものです。
結構俗説を使ったり、はたまたオリジナルの設定が多かったりと色々しますが、おおらかな心で見守って下さいませ。笑

今回はプレオープンという形にさせて頂きます。
移転までの暫くの間、とりあえず書き進められるだけ書き、移転後にもう一度書き直そうと思います。
投稿することで、モチベーションを上げていきたいのです。←
そんな感じで、宜しくお願いします(*´▽`)



Four Dimensions Survival



J:Be master of life
 1 >>1
 2 >>2

K:Young, alive, in love


メンテ

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Four Dimensions Survival ( No.1 )
日時: 2011/03/27 18:47
名前: 乃響じゅん ID:P7yLS.2Q

Four Dimensions Survival


 J:Be master of life


 1



 29番道路に雨が降る。それも、日が差し込みながらの雨だ。
 オタチのニコルは、空を眺めながら呟いた。
『こういうの、狐の嫁入り、って言うんだって』
 太い尻尾で立ち、より空に近づこうとした。きらきらとした雨粒を全身で味わおうとする。少しひんやりとして、気持ちいい。
『へぇ』
 隣にいたコラッタのエッタが相槌をうつ。返事の投げやりさ加減からして、さほど興味がないらしい。
『狐が結婚すること、雨が降ることにどんな因果関係があるのか教えて欲しいんだけど』
 とげのあるエッタの質問に、ニコルはむっとする。ロマンの分からない奴め、と、心の中で呟く。
『ちょっとした言い伝えの話。この国では狐だけど、国によっちゃあクマとか猿とか、ネズミとかが結婚するっていうらしいんだ。動物は違えど、結婚と結び付けて考えるのはどこでも一緒なんだよ。面白いと思わない?』
 エッタはぶるぶると身体を震わせ、雨粒を飛ばす。
『でも、それは人間の言い伝えでしょ? 私らはポケモンで、人間じゃない。ニコルは人間にかぶれ過ぎだよね。そんなに人間に近づきたければ、トレーナーとかがたくさん通る南側に行けばいいのに』
 ふん、と鼻を鳴らす。せっかくロマンチックな気分に浸っていたのに、台無しにされた気分だった。エッタに話しただけ無駄だった、とニコルは尻尾で立つのをやめる。別に人間と仲良くやりたいと思っている訳でもない。確かに、トレーナーに捕まれば、食事も快適な寝床も保障してくれる(らしい)し、自分をバトルに強いポケモンに鍛えてくれる(らしい)から、魅力的と言えばそうなのだ。それなので、わざわざ人間に捕まりに、他のポケモンのコミュニティがあるにも関わらず、道路まで出る者もいる。
 ニコルが行きたいと思わない理由は、捕獲されるまでのプロセスにある。人間は野生ポケモンと勝負し、ぎりぎりまで弱らせ、倒れそうな隙を突いてボールを投げる。つまりは、野生側は一度負けたも同然と言うわけだ。それを想像すると、ニコルは嫌な気分になった。純粋に、バトルで受けるダメージが痛くて嫌なのだ。それに、捕まらずに倒されるだけ、ということも大いにあり得る。きっと、大きな精神的トラウマを抱えることだろう。
『あぁ、そうだ』
 エッタは思い出した風に言う。
『強盗ライチュウの話、知ってる?』
 ニコルは首を振る。なんだか物騒な話だな、と思って、耳を傾ける。二匹の属するコミュニティに限らず、どのポケモンもうわさ話は好きなものだ。
『各地を旅するライチュウが、色んなところで勝負を仕掛けてるんだって。聞くところによると、あまりにも強大な力を持っているせいで、一度出会ってしまったら最後。誰もそいつには逆らえないみたいね』
『強大な力?』
 エッタは頷く。
『何をされたか分からないうちにやられちゃうらしいよ。でんきタイプだから、きっと電気攻撃のことなんだと思うんだけど、そういう噂は聞かない。本当のところは誰にも分からない』
 エッタは目をつむり、首を振る。
『負けた方は、どうなっちゃうの?』
 ニコルは聞く。エッタは顔をニコルに近づけ、つぶやくような声にまでトーンを落とす。
『そいつはお腹を空かせてやってくる。しかも、大食いだから……普通の食べ物だけじゃ駄目だって言って、小さなポケモンを食べちゃうこともあるらしい』
 ニコルのつばを飲み込む音が鳴る。少し心配になって、言ってみる。
『まさか、そんなこと』
 エッタは少し引きつった笑みを浮かべ、おどけた調子で喋りだす。
『でも、用心しようが無いし、それにだよ。世界はどれだけ広いと思う? その中でここに来る確率なんて万に一つでしょ』
『そりゃそうだ』
 ははは、と二匹は笑いだす。その時、後ろの草むらが乱暴に揺れた。誰かが草むらを掻き分けて来たらしい。二匹は声をひそめて、じっと音のする方を見る。歩き方を聞けば大体誰の足音かは分かるが、それは聞きなれない音をしていた。

 コラッタやオタチの倍ほどある、オレンジ色の姿が顔をのぞかせる。両方の頬にある、黄色い丸。黄色くて尖った耳。その姿を見た瞬間、ニコルの頭の中で、エッタの話が結びついた。このライチュウは、まさか。
 しばらく、ライチュウと二匹は目を合わせあっていた。主に目が合っていたのは、エッタの方だった。姿勢を低くして、一瞬の隙をうかがう。二足歩行ゆえに、ライチュウの目は二匹を見下ろしていた。大きな身体は壁のようで、逃げ場はないぞと言っているように見えた。
 エッタは足を一歩後ろに引いた。ライチュウが一瞬の油断を見せる瞬間を探していた。
『ねぇ』
 ライチュウが口を開く。びくっと二匹の体が震える。
『ここらへんで、一番強い人のとこまで連れてってほしいんだけど』

 草むらを歩く二匹の足取りはぎこちなかった。
 後ろからついてくるライチュウの方を向くこともせず、一定の速度で歩いていく。
 エッタは声をかけられた時点ですっかり縮み上がってしまった。逆らったら何をされるか分からない。そういう恐怖を感じたからだろう。
 ニコルは、ライチュウが二匹に声をかけた瞬間浮かべた、笑みを思い出していた。確かに彼女の目の周りはやつれ、少しうつろで恐ろしくもあった。しかしそれは純粋に疲れているか、あるいはお腹が減っているというだけのように思えた。
 ゆえに、ニコルはエッタほどライチュウを恐れてはいなかった。とにかく、連れて行ってみよう。そうすれば分かる。
 そんなことより、少しずつ密かに増えていく野次馬のことの方が気がかりだった。事を大きくしたくはなかったのだが。

『シャマさん。あなたに会いに来たと言う方がいますが』
 ニコルは樹のウロに向かって、出来るだけ丁寧に呼びかける。あぁ、うるさいなぁ、と大儀そうな声を漏らしながら、シャマというラッタは起き上がった。
 ふいに、ニコルの体が押しのけられる。ライチュウが無理やり木のウロを覗き込もうとしてきた。力負けして、ニコルは弾かれる。
『ども、こんにちは。私、ライと申します。貴方がシャマさんですか』
 声のトーンを上げて、ライチュウは喋る。ニコルにはライチュウが自分の名前を名乗ったことが意外だった。食料を奪うつもりなら、わざわざ名乗る必要もない。まてよ。よく考えれば、それなら強いポケモンと勝負する意味がないはずじゃないか。逆らおうとする者への見せしめだとしたら、わざわざ各地を転々とする理由も分からない。
『そうだよ。何?』
 シャマは寝起きの機嫌がすこぶる悪い。少しでも彼の癇に障ることをしてしまえば、たちまち怒りの矛先を向けられる。彼の怒りを恐れるあまり、いいように使われてしまった手下も少なくない。
『つまり、あなたがこの辺りで最強の男……ということですね』
 ライは身ぶり手ぶりを加えて大げさに言う。
『おいおい……当たり前のこと言ってんじゃねえよ。俺を誰だと思ってんだ?』
『もちろん、それは存じております。実は私、武者修行の旅をしているのですが、そんなあなたのウワサを聞きつけて、貴方の胸を借りにここまでやって来たのです。どうか、一つ手合わせお願いできませんか? 強さだけでなく優しさも持ち合わせているあなたにこそ、一度稽古を付けて欲しいのです』
 話の相手がライに変わって良かった、とニコルは内心ほっとする。
 よっこらせ、の声とともに、シャマはウロから出て来た。穴のふちに足をかけ、ライを見下ろす。ライは一歩下がって彼を見上げた。シャマの顔は、にたにたと品の無い笑みを浮かべている。
『お前、分かってんじゃねぇか。ちょっぴり相手してやる。来い』
『ありがとうございます! さすがシャマ様。宜しくお願いします』
 シャマは木から飛び降り、ずかずかと木々の間を分け入っていく。褒め言葉に弱いのを知ってか知らずか、ライは巧みに自分の頼みを通している。終始後ろに隠れていたエッタの方を見やると、上目づかいで目を合わせてきた。シャマについていくライの後ろを、ニコルはついていくことにした。

『この辺でいいだろ』
 木が乱立する場所で、シャマは立ち止まる。ニコル達は野次馬にならって、木の陰に隠れた。
『それじゃ、バトルだ。まいったって言った方が負け。それ以外にルールは無し。それでいいな』
 完全に自分が有利になるように仕組んでいる。そうと分かったのは、ニコルだけではないだろう。彼がバトルをする時は、いつもここなのだ。木に身を隠し、相手の死角から攻撃する。彼の気まぐれで、まいったと言えないようにずっとなぶり続ける試合もある。物陰から見ていたことがあったが、あまりにも痛々し過ぎて見ていられなかった。止めたらとばっちりを食らいそうで、誰も進み出る者はいなかった。思い出すだけで、嫌な気分になる。
『構いませんよ。そうだ。賭けをしませんか? もし私が勝ったら、たらふく美味しいものを食べさせてもらってもいいですか?』
 自信満々にライが言う。シャマは鼻で笑った。
『いいぜ。その代わり、俺が勝ったら俺の言うことをなんでも聞いてもらうぞ。なんでもな』
 稽古をつけるという話は何処へいったのだろう。と内心ニコルは突っ込んだ。しかし、シャマにとってはどうでもいいに違いない。バトルと称して、他者をいたぶるのは奴の趣味だ。どうやってなぶろうか、それしか頭に無いに決まっている。いくら彼女が強いと噂されていても、大丈夫だろうか。ニコルは不安な気持ちを抱えていた。それをふと自覚したとき、いつの間にかライの方を応援している自分がいることに気付いた。
『じゃあ、遠慮なく行かせてもらうぜ』
 シャマはライの方に駆けていく。速い。目で追うのが精いっぱいだ。
 前足の爪を、ライの顔面に伸ばす。ライは全身をかがめ、回避する。シャマは勢いで、木にしがみつき、一気に登る。ライが振り返る瞬間には、既に木の葉に紛れて見えなくなっている。
 ライはあちこちを振りかえって、シャマの姿を探す。周囲には木の揺れる音一つしない。そうやって移動するのが、奴の得意技なのだ。思いもよらない場所から、彼は襲いかかってくる。
 シャマは、ライの真上に落ちて来た。そのまま、長く伸びた歯を見せ、ライの頭に強く噛みつく。ライは苦痛の表情を見せる。手を上げて振り払おうともせずに、その場に倒れた。シャマは何度も噛みつく。いかりのまえば、という技だ。相手の体力の半分を削るように、力を加減しながら歯で攻撃する。奴の嫌らしさは、それを高速で何度も当て、ギリギリ倒れるか倒れないかのところまで何度もいたぶることだ。
『オラオラ、どうした、もう終わりか? ん?』
 荒っぽさをむき出しにして、シャマは攻撃を繰り返す。
 シャマの真後ろから、ポケモンの影が現れる。ライチュウの姿。ライだった。姿勢を低くし、右手に拳を作って力を溜めていた。
『はぁっ』
 ライがシャマを力強く殴る。鈍い音と何かが弾ける音が同時に響いた。
 シャマは横に吹き飛ばされて、草の上を滑った。驚きのあまり、声を漏らす野次馬もいた。
 そのまま、彼は起き上がらない。
『電気の力を込めたきあいパンチですよ。溜めるのに時間がかかるので、身代わりを使わせて頂きました』
 彼の方に近づきながら、自分の行った行動の種明かしをする。
『身代わりはダメージを受けたらすぐ潰れちゃいますが、いかりのまえばは決して相手を倒すに至らない。おかげで助かりましたよ。どうですか、まだ続けますか』
 倒れたシャマの足元に立ち、起き上がるのを待つ。ぴくりとも反応しない辺り、どうやら気を失っているらしい。
 気がついたシャマは、ライを見るなり、ひっ、と声を漏らし、後ずさりした。ぱり、ぱりと音を立てて、ライの体毛が逆立っていく。身体の電気を溜めているのだ、とニコルは直感した。電気のせいか、彼女のオーラか、空気がピリピリと痛くなっていく。
『降参……しますか?』
『わ、分かった、まいった、まいったから、もう、やめ』
 うわぁぁ、と叫びながら、一目散に何処かへ逃げていくシャマ。ライはため息をついた。毛も元に戻っていく。
 彼女は辺りを見渡した。
『ねぇ、あいつがいなくなっちゃったから、誰か私に食べ物をもってきてくんない?』
 どうやら、野次馬の覗き見はばれているらしい。

 辺りはすっかり暗くなっていた。
 コミュニティのポケモン達が、ありったけの木の実を持ってきた。それこそ、山のような量だった。しかし、あっと言う間にそれは無くなっていき、とうとう底をついてしまった。出し渋りをすると睨んで来るので、みんな自分の蓄えを全て奪われてしまった。
『もうないの?』
『は、はい、周辺に住んでいる者たちに呼びかけて蓄えを分けてもらいましたが、もうこれが限界とのことです』
 年長のオオタチが、顔色を窺いつつ弁明する。ライの返事は、ふーん、とそっけないものだった。
 正直、誰もが彼女をどう扱っていいか分からなかった。乱暴者のシャマに一泡吹かせてやったのは皆感謝しているが、彼女の胃袋のせいで明日の生活に困ることになってしまった。もしかしたら、新たな支配を生んでしまったのかもしれないと嘆く者もいた。
『まぁいいや、楽しかったし。ごちそうさま。皆さん、ごはんありがとう』
 ライは立ち上がって、ぺこりと頭を下げた。
『それでは、そろそろおいとまします。お世話になりました』
 そしてそう高らかに告げて、ゆったりとした歩調で夜の闇に消えようとしていた。
 辺りがどよめく。別に彼女は、ここでずっと食べ物を献上されることを望んではいないらしい。
 結局、彼女の目的は何だったのか。武者修行などと言っていたが、あれはシャマの気を引くための方便だったのかもしれない。本当のところは謎のままだ。
 それに、これはチャンスなのかもしれない。
 人間に捕まらずに、強く、豊かになれるチャンス。彼女の存在は、そういうことではないだろうか。
『エッタ、私、行ってくる』
 ぽろっと、ニコルの口から言葉がこぼれた。
『行くって?』
 エッタは聞き返す。ニコルは返事をせずに、ライの向かう方向へ駆けだしていた。
メンテ
Four Dimensions Survival ( No.2 )
日時: 2011/04/02 02:32
名前: 乃響じゅん ID:nDltgKfM


 2


 夢の中で、グリーンは別の男になっていた。
 観客席に溢れんばかりの人。試合開始のアナウンスに歓声が湧きあがり、スタジアム内の熱と緊張は高まっていく。
 対峙している赤い髪の男が、先にモンスターボールを投げる。何かこちらに向かって叫んでいるようだったが、あまりの歓声にかき消される。しかし、何となく言っていることは分かる気がする。ここは屈強なポケモントレーナー達の集う、ポケモンリーグなのだから。試合は準決勝まで進み、チャンピオンまであと2歩というところまで来ていた。相手も、グリーンにすり替えられた男も、今大会の優勝候補として注目を集めているトレーナーだ。
 巨大なベージュ色のドラゴン、カイリューがボールから飛び出る。やる気を見せんばかりに、一吠えしてみせる。
 ごくり、とつばを飲み込む。カイリューから溢れるプレッシャーは他を圧倒する。だが、この男がこれしきで判断力を失うような奴ではないことは、グリーン自身がよく知っていた。
 左手を伸ばし、ボールを選び取る。相手がドラゴンタイプ、しかもひこう付きとなれば、答えは一つしかない。
 投げたボールから出て来たのは、サイズだけなら負けずとも劣らないのりものポケモン、ラプラス。フィールドが岩場であるせいで動けはしないが、ちょっとやそっとの攻撃ではびくともしない。
 両者のポケモンが出そろったところで、観客の声が静かになる。ポケモンに指示を飛ばす声が聞こえなくなるような事態を配慮してのことだ。グリーンならそんな配慮など無くとも何とかする方法を持っているが、今グリーンはグリーンではない。
 試合開始の手が上がる。それと同時に、二人はポケモンに指示を飛ばす。
「れいとうビーム」
 ラプラスが口を開き、口の前にエネルギーの塊を作って大きくしていく。すばやさが遅いせいで、チャージに時間がかかってしまうのが難点だが、相手の弱点を突けば一撃で倒せるはずだ。
「ばかぢから!」
 腕に力を溜め、カイリューが襲いかかってくる。氷タイプを眼前にしてポケモンを交替しないのは、攻撃力と防御力、どちらに自信があってのことなのか。
 カイリューは力を溜めた腕を引き、姿勢を低くして横からラプラスの胴を狙う。巨体同士のぶつかりあい。鈍い衝撃がフィールドの空気を伝っていく。
 横向きに加えられた力が大きすぎて、ラプラスの体がぐらりと傾く。口に溜めた冷気を抱えきれず、青白い光線があさっての方向に飛んでいく。
 ラプラスの体は横に倒れた。自力で起き上がるのは不可能だろう。審判も、その様子を見て戦闘不能と判断したようだった。カイリュー側に色旗が上げられる。巨大モニターに映った、こちら側のモンスターボールマークが一つ消滅する。スタジアムの声がまたフィールドを埋め尽くす。
 ラプラスをモンスターボールに戻す。次の手は既に決まっていた。迷うことなく、次のボールを投げ飛ばす。
 出て来たのは、橙色の翼竜、リザードンだった。ほのおタイプはドラゴンタイプにいまひとつの相性だが、素早さでは勝っている。カイリューはばかぢからを使っているせいで、物理技の威力が落ちている。もしかしたら、強力なカイリューの攻撃をいくつか耐えてくれるかもしれないという淡い期待もあった。
「エアスラッシュ」
 リザードンに指示する技を叫ぶ。
「ストーンエッジ」
 相手が一歩遅れて、カイリューに指示を飛ばす。それより早く、リザードンは空気の刃を放ち、カイリューを切り刻んでいく。強烈な突風も合わさって、思わずカイリューは顔を両手で覆う。怯んだ。とは言え、巨体の動きが鈍っていないところを見ると、ダメージはそれほど大きくなさそうだ。
「もう一発」
 リザードンは続けてエアスラッシュを放つ。ごり押しだが、現在の手の中ではかなり有効なはずだ。
 カイリューは攻撃を耐えきり、反撃に転じる。もう一度、ストーンエッジを放ってくるかと覚悟したが、実際には違っていた。
「おいかぜだ!」
 相手トレーナーの指示。カイリューは翼を大きくはばたかせ、あの小さな羽からは想像もつかないほどの強い風を起こした。エアスラッシュで後ろから吹き抜けていた風が、逆転する。
 もう一度、リザードンにエアスラッシュを指示したが、追い風の強さに負けて、相手のカイリューまでは届かない。
 さっきまで辛そうだったカイリューの顔に、少し余裕が戻る。
「ストーンエッジ」
 いくつもの尖った岩が、リザードンを襲う。避ける方向を指示したが、数の多さと、追い風での動きにくさがあいまって、途中から全弾食らってしまう。最初は何とか膝をつかずに持ちこたえていたが、全身の切り傷や打ち身が増えていくにつれ、バランスは崩れていく。最後には、その場に倒れこんでしまった。
 審判がリザードンの戦闘不能を告げる。場内は更に熱気に包まれる。カイリューに追い詰められたトレーナーの最後の一匹に、スタジアム中の誰もが注目していた。

 ここで、急に自分と男の意識が分かれた。
 フィールドを写す視点は、昔グリーンが見た、モニター上のアングルに切り替わる。さっきまでなかった、熱を込めて語る実況者の声がはっきりと聞こえるようになった。
「さぁ、ワタル選手のカイリューがラプラス、リザードンと続けて二体撃破! レッド選手後がありません! 辛くなってきましたが、最後に出すのはどのポケモンでしょうか」
 さっきまで自分の視点だった男、レッド。かつて同じ街から同じ時期にトレーナーの旅に出て、幾度となく手合わせしてきた。結果は全て、グリーンの負けに終わった。だから、決勝戦でリベンジをするつもりで、自分も準決勝まで勝ちあがってきたのだ。
 彼の手をほぼ知り尽くしているつもりだっただけに、この勝負の行方はある程度予想できた。レッドには、切り札となるポケモンがいる。何度も戦って、どれだけ攻め込んでも、最後にはそのポケモンが出てきて、完璧なコンビネーションに打ちのめされる。次に出すポケモンは、きっとそいつだと思った。というか、他に出すポケモンがいるのだろうか。他のどれでも、グリーンには勝てる気がしなかった。
 テレビの実況者も最後のポケモンの予想はグリーンと同意見のようで、こいつは分かっているな、とひそかに感心していた。
 長考の末、レッドはボールを投げる。
 この時の衝撃を、グリーンは今でも忘れない。出て来たポケモンの姿に、自分の目を何度も疑った。
 切り札のポケモンではなかったのだ。
 重量級のいねむりポケモン、カビゴン。欠伸をしながら、のそのそと起き上がる。
 確かにカイリューは倒せるかもしれないが、残り二体はどうするつもりなのか。グリーンは混乱した。
 その後の展開は、酷いものだった。カイリューのばかぢからで体力の殆どを削られ、カビゴンの攻撃で仕留めたものの、次に繰り出されたギャラドスに一撃で倒されてしまったのだ。
 何故レッドは、あそこで切り札を使わなかったのか。使えない理由でもあったのか。彼の敗北した姿をモニターで見たのが最後、一度も会ったことがない。
「くそっ」
 自分が負けた以上に、悔しい気持ちを味わった。
 胸の中に不快感が溜まっていくような感じがして、夢はそこで途切れた。

 電話が鳴って、目が覚めた。手探りで枕元の携帯電話を探し出し、電話の主を確認する。
「もしもし、オダマキ先生?」
「朝早く起こして悪かったね、それより大変なんだよ、研究室の子とトキワの森にフィールドワークに出かけたんだけど、一人帰って来ない子がいるんだ。君に探すのをお願いしたいんだけど、いいかな? 君の実力を見込んでのことだ、頼むよ」
 慌てた口調で、オダマキは話す。グリーンは話を聞きながら、メモ用紙とペンを調達する。
「分かりました。今みなさんのいる場所を教えて下さい。すぐに向かいます」
 オダマキは集合場所を告げ、フィールドワークの目的は朝のホーホーやヨルノズクの習性を調べることだと明かした。
「うちからだと結構近いんで、三十分もあれば着くはずです」
「うん、宜しく頼むよ」
 オダマキの声は少し泣きそうになっていて、電話が切れる直前では言葉がかすれかかっていた。元々子供っぽい人だとは思っていたが、大丈夫か、とさすがに心配になる。冷蔵庫から腹を満たせるものを幾つか選び、強引に胃に流し込む。
 朝の支度を手早く済ませ、一人暮らしの部屋を飛び出した。
メンテ

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