ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.1 ) |
- 日時: 2010/09/19 16:42
- 名前: 夜月光介
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- ダークブラック 〜今までのあらすじ〜
エリア『日本』の1ブロックであるリューキュー。極寒のトーホク、穏やかな気候のカントーとは 違う常夏の楽園である。そのリューキューで生まれ育った主人公のトレーナー、ギンガは 自分の両親と姉を殺した悪の組織『ダーク』に対して憎しみを持ち、組織に対する復讐を考えていた。 パートナーであるナツミと共にジムを巡るチャンピオンへの道を辿り始めたギンガであったが、 ダークによる妨害やポケモン密売組織『POD』の企みにより旅は簡単なものにはならない。 物語の鍵を握る『3人の子供達』・『アイミュウ』・『邪神』が主人公をさらなる冒険へと誘う・・・
〜邪神復活〜 第3章 4話 『人ならざるモノ』
「じゃあ、初めよっか?」 試合の開始を宣言すると、リリィはバトルフィールドにモンスターボールを投げ入れる。 地面に転がったモンスターボールが開き、中から二足歩行の大きなポケモンが姿を現した。 『そんじゃひと暴れしましょうかねリリィの姉貴!』 「私はホタルと同じ炎タイプの使い手よ。炎タイプはやっぱり高火力が魅力よねー。 ギンガ君、アンタの実力・・・これから行なう3vs3で確かめさせてもらおうかな。」 リリィが最初に繰り出したポケモンは黒い鎧が腹を覆っている一風変わった姿のポケモンだ。 鋼鉄の拳には炎が宿り、気合充分と言った様子で両手の拳を何度もぶつけている。 (なかなか手強そうなポケモンだぜ・・・まずは侮らずに情報収集を行なう事が先決だな。) ギンガはポケギアの図鑑項目を開き、相手のポケモンの名前等を検索した。 『アカボカブ・かえんぶたポケモン・・・黒曜石を口にする事によって体の中で化学変化を起こし、リューキューの 資源の1つ黒曜鉄を作り出す事が出来る。精製された黒曜鉄は体を守る鎧となり、また手や腕と完全に同化した 黒曜鉄は強力な破壊力を生み出すのだ。ちなみに黒曜石から栄養分を吸収する事は出来ず、別に食料を必要とする。』 「あ、私もあのポケモンは知ってるわ。ほのお・はがねの珍しいポケモンでしょ。」 「お姉ちゃんの持ってるポケモンの中では相当強い方だよ。私も昔は負けてばっかりだったもん。」 ホタルはリリィとギンガのバトルを見れる事が本当に嬉しいと言った様子である。ナツミもまた、ポケモントレーナーとしては まだまだ底が見えないリリィの実力を確かめる為に真剣な表情を見せていた。 (極端なタイプのポケモンだぜ。特殊能力は・・・) 『特殊能力・黒鉄防御・・・ほのおタイプ・いわタイプの技を受けると防御力が1段階上昇する』 (当てなきゃいいだけの話だ。みずタイプのポケモンがいねぇ事が今の所のネックだな・・・ だがはがねタイプで考えれば有利になるポケモンはこっちにもあるんだぜ!) ギンガはモンスターボールを取り出すと、リリィと同じ様にバトルフィールドに向かって投げ入れる。 閃光と共に登場したポケモンはセシナとの壮絶な戦いを経験しさらなるパワーを手に入れていた。 『マスター、これからももっともっと頑張りますよ!相手に俺達の力を見せてやりましょう!』 オームから進化した『ボルタ』は背もずっと伸び、より凛々しい風貌に変わってきている。 (ポケモンがさらに強力な力を得る為の進化・・・一番重要な事だ。) 進化すれば当然能力は劇的な変化をするものだ。ギンガは再びポケギアでの検索を行なった。 『ボルタ・らいげきポケモン・・・優れた人間に近い肉体から放たれる拳と電撃は完全な技を 覚えると芸術にも近付く程。ストイックな性格でなかなか人間と交わろうとしないが、相手を 主人と認めれば絶対的な忠誠を誓い主人の為に戦い続ける。』 (特殊能力は・・・と。) 『特殊能力・帯電転移・・・自分に対して直接攻撃を仕掛けてきた相手を2割の確率で麻痺状態にする』 (麻痺か。相手はどう考えても直接攻撃オンリーっぽい奴だしな。こりゃ有難ぇ。) 「うん、随分強そうなポケモンを選んできたねー。でもアタシのアカボカブは3段進化済み。対する ギンガ君のポケモンは3段進化前。この壁は結構厚いよ。乗り越えられるかな?」 「なぁに心配すんなよ。勝つのは俺だ・・・!」 両者共に1歩も引かない。フィールドも緊張感に包まれる。 「正直、ギンガさんのポケモンもかなりポテンシャルは高いからお姉ちゃんも油断は出来ないかも・・・」 「ギンガの勝機があるとすれば相手のペースに持ち込ませない事よね。」 ナツミは冷静に相手を見て目論見を崩していくタイプであるが、ギンガは相手構わず無鉄砲に突っ込み がむしゃらに攻撃を仕掛ける一気呵成タイプだ。ただ相手が防御力に秀でているとその戦い方では なかなか勝利を掴むのは難しい。
バトルフィールドに立つ2匹のポケモンはそれぞれ身構え相手の隙を窺う。 ボルタは攻撃的な構えであったがそれとは対照的に敢えてアカボカブは迎撃の構えを取っていた。 『うおおおおおッ!!』 先に動いたのはボルタの方だ。素早さを生かした凄まじい接近で一気に決着を付けようと怒涛の攻撃を 仕掛ける。だが相手は全く怯まずに全ての攻撃を受ける余裕まで見せ、ボルタに疲れが見えた瞬間 えんてつパンチを見舞った。まともに攻撃を頬に受けてしまったボルタは仰け反るもすぐに 体勢を立て直し一旦距離を取る。2匹の攻防に外野の2人も呆気に取られるしか無かった。 「す・・・すっごーい!!お姉ちゃんのアカボカブにあれだけ突きを入れられるなんて!」 「でも一発のパンチでダメージは同じ位・・・しっかりと防御していたってのもあるけど、 流石にリリィさんのポケモンは一筋縄ではいかなそうだわ・・・」 『立てよ。コレで終わりじゃ無ぇだろう?』 相手を挑発しながらも自身は決して油断せず身構えている。近距離戦は不利だと悟った ボルタは距離を取ったままきあいだまを放った。防御力攻撃力共に優秀なアカボカブであったが、 こと回避となると素早さが低い為上手くはいかない。 『ぬおッ・・・!!』 衝撃に耐えながらもジリジリ後退していくアカボカブ。必死に防御姿勢のままあわよくば弾き飛ばそうと していたが、途中で球体は爆発し大きなダメージを負ってしまった。イエローゾーンにまでHPが減る。 『俺だってなかなかやるだろ?』 相手が近付いてこなければアカボカブもあまり得意でない遠距離攻撃を行なうしか無い。アカボカブが 腕を広げ超高速で回転すると炎が渦を巻きやがて巨大な炎の竜巻へと変化した。 『受けてみやがれ、マグマストーム!』 炎の竜巻からアカボカブは抜け出したが、竜巻は確実にボルタに向かって近付いてくる。 だが竜巻を操れる程の力は無い為、素早さで勝るボルタは横っ飛びでの回避に成功した。 『なんだ、確かに凄そうな攻撃だが避けちまえば大した事無ぇな!』 「危ねぇ、後ろだ!」 ギンガの言葉に反応したボルタは咄嗟に身を屈める。その瞬間相手のアッパーがボルタの頭を掠めた。 『チッ、今度こそ凄ぇのを喰らわせてやろうとしたのによ!』 「まだ射程距離よ。今度こそ当てちゃいなさい!」 リリィの言葉通りまだ距離は縮まったままだ。再びメタルアッパーを繰り出そうとしたが今度はボルタの 手痛いマッハパンチの反撃を顎に喰らい一瞬怯む。その隙を見逃さずに再びボルタはきあいだまを放った。 『グアアアアアアッ!!舐めんなッ!!!』 だが今度のはどうだんはある程度のダメージは与えたものの弾き飛ばされ決定打とはならない。 既にアカボカブのHPはレッドゾーンに突入していたが全く油断は出来なかった。 『やってくれるじゃねえか・・・リリィの姉貴に子供の頃から付き従ってもう10年・・・その間 これ程やる奴と会う事は無かったぜ。本気を見せなきゃ失礼ってモンだろ!』 口からも炎を出しながら、鬼気迫る瞳でボルタを睨み付けるアカボカブ。ボルタは一瞬怯んだが 今度はとどめを刺す為にはどうだんを繰り出した。だがそれを避け、跳躍しながらボルタの方へ向かい 拳を振るう。最早避けられないと判断したボルタは同じ様に拳を向けた。
両方の頬に拳が当たり、両者共に吹っ飛んでフィールド外で倒れ込む。ピクリとも動かない アカボカブであったがボルタの方は何とか立ち上がりガッツポーズを決めた。 『ハァ・・・ハァ・・・さっきのメタルアッパーを受けていたら負けていたな・・・』 「流石ギンガ君・・・なかなかやるじゃない。今の戦いはアタシから見ても素直にアンタの ポケモンの方が勝ってた。でも、今度はどうかなー?」 リリィは瀕死状態となったアカボカブをボールに戻すと、次のモンスターボールをバトルフィールドに 投げ入れた。閃光と共に今度は猿の様なポケモンが姿を現す。 『キキッ!俺ッチの相手はまた随分と疲れてるみたいですねェ。大丈夫スか?』 リリィの繰り出してきた2匹目のポケモンは褐色の毛並みに球体の体を持つ一風変わった姿の ポケモンだった。腕の太さは攻撃的なポケモンの様なイメージを与える。 「こりゃまた面白そうな奴だな。」 ポケギアの図鑑項目を開いたギンガは相手のポケモンを見て率直な感想を述べた。 『ヒヒダルマ・えんじょうポケモン・・・群れを作って生活しており、一番腕が太く力が強いヒヒダルマが 群れを率いるボスの座に着く。知恵が浅く非常に好戦的であるが、その力が通常のポケモンとは 一線を画している為捕獲に慣れたトレーナーであっても大変な苦労を要する。』 (面倒くせぇ相手だな。殴り合いになると今のボルタじゃキツそうだぜ・・・) 特殊能力の項目はさらにギンガを悩ませる。 『特殊能力・全力闘撃・・・技の追加効果は失われるが技の威力が増す』 「追加効果って言うのは『ひのこでダメージを受けて【さらに火傷状態になる】』事ね。だからヒヒダルマは 追加効果で相手を火傷状態にする事は絶対出来ないけどその代わり相手に与えるダメージは多くなるの。」 「まぁ追加効果は普通発生する確率が2割とかそんなモンだしな。賢い選択かもしれねぇよ。」 自分のプレイスタイルの上を行く『殴り特化』のポケモンの出現に対して、ギンガは少々戸惑っていた。 ポケモンによっては様々な作戦を練らなければならないが、リリィの使ってくるポケモンは最初から 作戦も何も存在せず、殴って勝つただそれだけである。それだからこそ勝つのは難しい。 「リリィさんが相手だと私が勝つのは難しいかもしれないわ・・・相手には戦略と言うものが存在しないから 状態異常になろうとも向かってくるハズ。ギンガならまだ相手を見て攻撃してくるでしょうけど・・・」 「それがお姉ちゃんの強さだよ。」 ホタルはリリィの実力を誰よりも承知していた。今でこそリリィを越え四天王の座に着いているホタルであったが、 リリィが自分と同じ炎邪神守民を目指していた頃は彼女と戦っても全く歯が立たなかったのである。
バトルフィールドに緊張が走る。限界に近いボルタも少しでも差を広げる為最後まで戦う姿勢を崩さない。 一方ヒヒダルマの方は窮鼠に向かっていくのは危険と判断しまずは遠距離攻撃で先手を取る事にした。 『これを避けられるスかね?』 いきなりヒヒダルマの瞳から発射されたレーザーに対応出来ず、ボルタはそのまま倒れ込んでしまう。 (チッ、やっぱり差を広げさせてはくれねぇか・・・イーブンに戻しやがった!) 『コロナビームは俺ッチの技の中でも特に威力の高い技ッスよ。』 「ギンガ君。意外に思うかもしれないけどヒヒガルマは攻撃力の高さだけでなく、素早さと機動力にも 秀でているのよねー。侮っちゃ駄目よ!」 「あれがリリィさんの真骨頂・・・!」 ナツミは自分と彼女が戦った時自分が敗北するであろう事を確信した。タイプの相性の悪さの時点で既に 不利であるが、あれ程の攻撃をくらった際今の自分のレベルで太刀打ち出来るとは思えない。 逆を言えば、この短期間で彼女と張り合うまでに成長したギンガのトレーナーとしての素質の高さには ただただ驚かされるばかりであった。成長のスピードが並では無いのだ。 (離されるのは悔しいけれど・・・もっと強くなってほしくもあるわね。) 勿論、彼女も強くなる事を諦めているワケでは無い。夢はギンガと一緒に見ようと決めている。 一方ギンガはヒヒダルマの強烈な力に圧倒されつつも次のポケモンを誰にするか迷っていた。 (2段進化のポケモンに対して2段進化を出したい気持ちはあるがまだ2匹目・・・最後の 大将に対しての切り札は取っておきたい所だぜ・・・)
悩んだあげく、ギンガがバトルフィールドに登場させたのはオキトであった。 まだ他のポケモンに比べると育てが甘いと言う不安があったものの、相性の良さでは 他の手持ちより秀でている。防御力の高さもありギンガはオキトに全てを託す事になった。 「頼むぜオキト。相手は進化してやがるがお前の実力なら踏ん張れるハズだ。」 『・・・・』 オキトは黙ってただ頷くと、戦闘態勢に移行する。 『堅そうな奴ッスねぇ。ココはちぃっと俺ッチの不得意分野ではありますが、試してみる価値は ありそうッスよ。』 ヒヒダルマは相手の自滅を狙い、戦闘を優位に進める為敢えて状態異常を起こす技を使用した。 元々笑っている様な風貌であるが、さらに歯を剥き出しにして笑う事でオキトに変化が起きる。 『・・・・!?』 突如オキトが混乱状態に陥ったのだ。流石にこれにはギンガも慌てた。 「なっ何だ?」 「コレは追加効果の技じゃ無いからね。最初から状態異常を狙う技だよー。あざわらうは相手の 特殊攻撃の値を2段階一気に上げてしまう代わりに、相手を確実に混乱状態にするの。」 『そんじゃあとはタコ殴りにするだけッスよ!』 素早い身のこなしで相手に近付きほのおのパンチを繰り出そうとするヒヒダルマ。腕の強靭な筋力を 使いバネの様に弧を描いてジャンプするその移動の特殊さも目に付く。 一方混乱状態になってしまったオキトであったが何とか構えの姿勢を取り特殊技サイコキネシスを 繰り出した。混乱状態は確実な戦闘不能では無い為ギャンブル要素があるのが特徴であろう。 『ゲッ!?』 進化もしていないポケモンだとたかをくくった事が災いしたのか、特殊攻撃力2段上昇の状態からの 特殊攻撃をまともに喰らってしまったヒヒダルマ。あっと言う間にHPがイエローゾーンに達する。 「やばッ、ちょっと油断してたかもねー・・・」 『こうなったら遠くからジワジワ攻め立てるしか無いスねマスター。』 ヒヒダルマは傷付いた体に鞭打ち何とか距離を取ると、再び遠距離攻撃のコロナビームを繰り出した。 元々の攻撃力と防御力は高いオキトであるがいかんせん回避力が無い。2発撃たれただけで ごっそりHPを持っていかれる。それでも2発撃たれてイエローゾーンで踏ん張ると言うのは立派な防御力だ。 『・・・!!』 今だ混乱状態が治らず攻撃を受けていたオキトであったが、イエローゾーンに突入した段階でようやっと 混乱状態が治り、反撃に出る。オキト自身の移動は低いが技の発動スピードはかなりのものだ。 『!』 岩石で構成された掌からさらに沢山の岩石が出現する。いわなだれだ。威力の低さの割に命中率が100% では無いと言うリスクの高い技だが、怯みの追加効果が付く場合がある。 『うう・・・』 運悪く怯みの追加効果を受けてしまったヒヒダルマに対してもう一度サイコキネシスを見舞うオキト。 レッドゾーンに突入したヒヒダルマは既に息も絶え絶えの状態だ。 「よし、ココで差を付けるぞ!一気にとどめを刺せ!!」 「フフッ・・・ギンガ君。ちょっと甘いよー?」 『俺ッチの最強技で一気にひっくり返してみせるッス!!』 かなり2匹のHPには差があったが、ヒヒダルマが口から吐き出した巨大な火球はオキトでは避けられない程 巨大なものだった。避けられない為軌道を変えようといわなだれを叩き込むが温度があまりにも高い為 溶けるだけで全く効果が無い。オキトはその火球に包まれそのまま瀕死状態となった。 一方ヒヒダルマは自分のHPの全てと引き換えに放った火球の為に倒れ同じく瀕死状態となっている。 (またイーブンかよ!今の攻撃それだけの威力があったって事か・・・) 「かきゅうばくははお姉ちゃんのヒヒダルマが持っているほのおタイプのじばく技だよ。威力は本当に高くて 並の不利な相手でも道連れにしちゃう位なんだ。勿論その代わり自分も負けちゃうけどね。」 「今のは凄かったわ・・・進化前のポケモンとは言え相性不利と防御力の高さがあったのに・・・」 ナツミはリリィの底が見えない強さに驚くと同時に憧れの様なものを感じた。 (ホタルちゃんはやっぱりこの上を行くのかしら・・・?) ナツミに見つめられている事に気付いたホタルはその意味を察する。 「うん。何時かはナツミさんとも戦う事になるだろうけど、絶対負けないよ!」 「その時は宜しくね・・・」
両者共にポケモンをボールに戻すと、バトルフィールドはまた一時の静けさに包まれる。 「それにしてもこんなに頑張るなんてアタシ本当に予想外だったよ。アッサリ勝っちゃうかなーなんて 思ってたんだけどね。」 「俺は最終的にはリーグを目指そうとしてんだ。ジムリーダーでも無い奴に負けられっかよ!」 「その思想はちょっと兄貴と似てるかな・・・兄貴も負けず嫌いだったからねー。アタシなんかまだまだ 楽しんでバトルしてる方だと思うよ。ある程度、こういう野試合の時は心に余裕を持たなきゃ。」 真剣勝負ともなれば周りが見えなくなってしまう事もある。リリィの言う通りバトルにおいては油断こそ 出来ないが心の余裕を持つ事は非常に重要だ。それが勝利を呼び込む可能性だってある。 「最後のポケモンは・・・コレにしようかな!」 リリィがバトルフィールドに投げ入れたボールから閃光と共に出現したのは、漆黒の体毛と燃え盛る青い炎の たてがみを持つ巨大な獅子であった。表情も非常に険しい。 『ほう・・・お前が俺のマスターと戦っているトレーナーか。マスターの若い頃を思い出すな・・・』 「バクハオウ、昔の話はしないで。今は試合中なのよ?余計な事を思い出したくないの。」 『!・・・失礼致しましたマスター。思慮が足らぬ発言でした・・・』 珍しくリリィがあからさまに不機嫌な顔をすると、バクハオウは黙って俯いてしまった。 (やっぱり、リリィの奴には重い過去があんのか・・・気にはなるが今はバトルだよな。) ギンガは相手の能力を確認する為またポケギアでの図鑑項目を開いた。
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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.2 ) |
- 日時: 2010/09/26 17:34
- 名前: 夜月光介
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- 第3章 5話 『夜の憩い』
『バクハオウ・かえんじしポケモン・・・3段進化のほのお・やみポケモン。縄張り主張や求愛行動の際には 炎と化したたてがみを激しく燃やし自分をアピールする。常に燃え盛っている炎を維持する為通常の食料だけで 無く樹木も食べてしまう為、バクハオウが棲息している森は何年かすると荒地と化してしまう。』 ギンガは引き続き特殊能力の項目を開く。 『特殊能力・威嚇・・・登場したターン、相手の攻撃力を1段階下げる』 (不味いな、残り1匹に限定されたら確実に攻撃力が下がった状態での試合になっちまう。 向こうも本気って事か・・・真っ向勝負で行くしか無ぇな。) ギンガのパーティに不足しているのは圧倒的な攻撃力を持つほのおタイプのポケモンへの牽制となる水タイプの ポケモンであった。メジャーであるいわ・じめん・ほのおタイプのポケモンに対抗しうる力はやはり大きい。 「お姉ちゃんはギンガ君にもっともっと強くなってほしいと思ってるんだよ。でも、ある程度の力が 無ければ上には行けない。この1戦でギンガ君の真価が問われる事になりそうだね。」 (ギンガの、本当の実力・・・!大丈夫。どんな壁だってギンガならきっと乗り越えられるわ!) ナツミは思わず祈っていた。ギンガのトレーナーとしての腕はまだまだこんなものでは無いと信じたかったのだ。
数分熟考した後、ギンガはバトルフィールドにモンスターボールを投げ入れ、最終戦を戦い抜ける切り札を呼び出した。 『やっぱり俺ってワケか。まぁ任せな。すぐに潰してやっからよ。』 ホノオグマは体を覆う炎をさらに激しく燃え上がらせた。 (相性勝負で言えば若干有利・・・ほのおタイプはほのおタイプに対してダメージを与えられないし、やみタイプは あくタイプにはあまり効果が無い。でもあくタイプの技を使えば普通にダメージが通る!) だが依然として有利不利は図れない。ホノオグマの覚えているあくタイプの技及びノーマルタイプの技は攻撃技である。 それ故に特殊能力で1段階攻撃力を下げられてしまうのは大きな痛手だった。 『コレで両者互角よ・・・お前の実力を私に見せてみるがよい。』 『チッ、上から目線で言いやがって。絶対に後悔させてやるぜ!!』 ギンガに負けず劣らず好戦的であるホノオグマであるが、それが長所となるか短所となるかはトレーナーにかかっている。 両者はバトルフィールドで対峙しお互いに攻撃の間合いを確かめ機会を窺っていた。 「バクハオウ!相手のホノオグマに対して有効な技が無い以上、手数で攻めて!」 『承知しております・・・』 その瞬間バクハオウの口がカッと開き、漆黒の炎が吐き出される。慌ててホノオグマは避けようとしたが、予想以上に 炎の迫ってくるスピードは速く、攻撃をまともにくらってしまった。 『エビルフレイムは相手に攻撃が命中した際、2割の確率で命中率を1段階下げる技。幾らお前が私に対して 有効な技を保有していようとも、その技が当たらなければ私が勝つのだ!』 「あらゆる策を仕掛け、最大限勝てる努力をする。ギンガ君もそうしないと勝てないよー。」 「こっちも反撃に出るぞ!」 『おう!てめぇに地獄を見せてやらねぇとなぁ!!』 技が命中した事で緩みが出たのか、一気に距離を詰めてきたホノオグマに対してバクハオウは対応出来ない。 その隙を突き、バクハオウの腹にホノオグマが爪で強力な一撃を与える。 『グオッ!!』 『ノーマルタイプの技も侮れねぇだろ?』 きりさくは威力70と高い攻撃力を持つホノオグマにしては低い数値に見えるが、クリティカル発生率が高い為 実質威力140と思っても構わない。2倍ダメージを受けたバクハオウは一気に窮地へと追い込まれた。 『まさか、これほどとは・・・』 「諦めないで!最後の最後まで勝ちの目は残っているわよ!」 リリィに励まされたバクハオウは顔を歪ませながらも雄々しく立ち上がり相手をキッと睨み付ける。 その迫力に一瞬たじろいだホノオグマを相手は見逃さなかった。 『受けてみよ、我が生命を糧にした最強の一撃を!』 たてがみの青い炎が燃え広がり、全方位に散らばった為流石のホノオグマも全く回避する事が出来ない。 『バックドラフト!!』 周辺を覆い尽くした青い炎が爆発し、バトルフィールド全体がその衝撃で震える。ギンガ達も熱さを感じる程の 凄まじい攻撃だった。バトルフィールドの中に人間が立っていたら間違いなく真っ黒な焼死体になってしまっただろう。 『どうだ、神にも匹敵する力!コレが本当の力と言うものだ!!』 HPを削りレッドゾーンに達していたバクハオウであったが、それでも何とか堪え立っている。 煙が消えた後倒れ込んでいたホノオグマであったが、何とか立ち上がり構えを取った。 『ハハ・・・結構やるじゃねぇか。面白ぇ攻撃見せてもらったぜ。』 強がりを言うホノオグマであったが、彼のHPもレッドゾーン手前まで減っている。執念の一撃が不利を弾き返し ホノオグマを追い詰めたのだ。リリィのトレーナーとしての才能の高さに、ただただギンガは圧倒されるばかりだった。 (信じられねぇ・・・こんな優秀な奴が何で育て屋やってんだ。リーグで通用する強さだろコレは・・・) 「ギンガ君。今の攻撃に耐えたホノオグマも凄いわよ。普通のポケモンだったらこの一撃で瀕死になっていても 不思議じゃないものね・・・さぁ、このまま一気に決めちゃいなさい!」 『覚悟しろ!』 『こっちの台詞だ馬鹿野郎!』 かえんほうしゃを繰り出したバクハオウに対して距離を詰めきりさくを決めようとするホノオグマ。どちらも攻撃は 速く、バクハオウのかえんほうしゃが当たるのとホノオグマのきりさくが当たったのはほぼ同時だった。 『ここまで・・・やるとは・・・』 『俺もちっと不満が・・・残る・・・ぜ・・・』 両者共に崩れ落ちドローゲームかと思われたが、相性の不利が幸いしホノオグマのHPは微量ながら残っている。 リリィとギンガの野試合はギンガの勝利に終わった。
互いにポケモンをモンスターボールに戻すと、リリィはギンガの健闘を称え握手を求めた。 「初めてギンガ君と戦ってみて、強さがよーく解ったよ。アタシと戦ってくれてありがとね!」 「おう。また機会があればやろうぜ。」 お互い笑顔で握手を交わす2人の姿を見て、ナツミもホタルも心を動かされた様だ。 「お姉ちゃんが負けちゃったのは残念だけど、ナツミさんにとっては良かった事だしまぁいっか・・・」 「リリィさんも本当に強かったわよね。でも何時かは私も張り合える程に強くなりたいな!」 目標は高く、終わりは無い。トレーナーにとっての夢は決してチャンピオンの座だけでは無いが、 誰もが強さを求めているとは言えるだろう。毎日誰かが誰かの戦いを見て夢を持つのだ。 「じゃあ約束通り、タマゴをプレゼントしなきゃねー。」 リリィは自分のポケギアを暫くいじっていたが、やがてそれを止めるとニッコリ笑った。 「おっけー。今ギンガ君のPCにホタルから教えてもらったパスワードを入力してタマゴを 送っておいたから後で取り出しておいてね。常に外に出してないと孵化しないからさ。」 「どんなポケモンが生まれてくるのか楽しみだぜ。」 「ねぇ、ナツミお姉ちゃん。今度は私とやってみない?多少は手加減するから。」 「む、無理よ!手加減してもらったって今の私じゃとても・・・」 ホタルも普段の束縛された生活から解放され、常に笑顔を見せている。 楽しい時間はあっと言う間に過ぎていった・・・
その後ギンガとナツミはホタルとリリィが見ている前で他の一般トレーナーとの野試合をこなし、 日が暮れる頃にはかなりのレベルアップに成功する。その後ポケモンセンターでギンガは ポケモンのタマゴをPCから引き出し、合流した後リリィの家で楽しく食卓を囲む事になった。 「うちは冷暖房完備で風呂も立派なものだし、客間もあるからココで寝ちゃってってもいいからねー。」 「そりゃ願ってもねぇ話だぜ。なぁナツミ。」 「ええ。じゃあ、今晩はお言葉に甘えても宜しいでしょうか?」 「ウチじゃ堅苦しいのはナシだよー。食事も今出来るからもうちょっと待っててね。」 ギンガが初めてココを訪れた時にも感じた事を、ナツミもハッキリと感じていた。 (とにかく豪華・・・!普通の育て屋の家屋とは思えない程立派でまるでちょっとした別荘みたい。) 通常の育て屋ではまず無い2階建ての造りに部屋の多さ、そして庭はポケモン達の為の広い芝生や プールも完備されている。その気になれば人間だって泳ぐ事が出来るであろう程の広さだ。 かと言って成金趣味にありがちな剥製や豪華な絨毯等は見受けられない。暫く2人は辺りを 物珍しげに見回していたが、ホタルとリリィが人数分の冷やし中華を持ってきた途端それを止めた。 「そんな気を遣わずにもっとジロジロ見たってアタシは構わないんだけどなー。」 「いえ、やっぱり失礼ですから・・・でも、なんていうかリリィさんの家はその・・・」 「お金持ちっぽいけど成金趣味じゃ無いって事でしょ。アタシは役に立つものしか買いたくないからねー。 自分の能力使ってそこそこ金は集まったけど、ちょっと贅沢な暮らしがしたい程度で、豪華な食事を 毎日しようとかそういうのは思わないし。こういうので充分美味しいじゃない。」 金を持つ人間は驕り、金を自分が稼ぐ以上に使ってしまい転落していくものだが、リリィは自分の限界を わきまえて自由な暮らしを楽しんでいる様だった。そこからも彼女の人間性の高さが見える。 「本当に冷たくて美味しいですねこの冷やし中華。」 「でしょ?おかわりもあるから好きなだけ食べてよ。客は沢山来るけどお客さんはなかなか来ないから アタシも嬉しいんだ。屈託無く色々な事を話せるしねー。」 冷やし中華を食べ終わってからも楽しい会話が続き、3人はギンガを残して風呂に入る事となった。 居間に1人残されたギンガは部屋の中を何となく見て回っていたが、棚の上に置いてあった1枚の写真に目が留まる。
その写真に写っている2人の少女は厳格そうな少年と共に並んで立っていた。 「この小せぇのがホタルだろ。となるとこいつは・・・リリィか?」 歳の頃10歳近くと言った所だろうか。今とは全く違う色白の少女で、金髪と同じ位長い黒髪が美しい。 「そういやリリィは元々邪神守民出身だとか言ってたな。」 装束を着た少女はとても嬉しそうな表情をしていたが、ホタルの方は笑顔ではあっても何処か影のある笑顔だった。 「兄貴が嫌いだと言ってたが、コレがその兄貴か。成程・・・確かに融通の利かそうな顔してやがる。」 部屋を見渡すと、写真はコレだけしか無かった。本棚を見てみると写真の頃までのアルバムしか存在していない。 「空白の8年間か・・・」 その独り言はギンガ自身に強い興味を与えるものだった。その8年間に何があって、どうしてリリィは あんな姿になってしまったのか。邪神守民を抜けた理由は何だったのか・・・その謎は解けず、ギンガは 溜息をつく。暇潰しに見始めたアルバムのページは彼女の10歳の誕生日を目前にして突然終わっていた・・・
その頃ナツミ達は2階にある広い風呂を満喫していた。 「窓から今日もよく星が見えるでしょ。マジックミラーだから外からこっちは見れない様になってるんだ。」 「ホント、凄いですね・・・」 特に車が多いカントーやジョウトの都会では決して見る事は出来ないであろう満天の星空をナツミは 眺めていた。自然のプラネタリウムは擬似的に作られたものとは違う迫力と感動に満ち溢れている。 「リューキューって向こうの人達からはよく何にもない所って言われてるけど、何にもないから良い事だって いっぱいあると思うんだ。アタシはそういうリューキューが好きだから離れられないんだよねー。」 「その気持ち・・・よく解ります。」 ナツミは改めてリリィのスタイルの良さに驚いていた。まだ未成熟な自分の体とは違い、18歳にしてリリィには 既に大人の美しさ、妖艶さの様なものが備わっている。対してホタルは自分と対して年が違わないのに ナツミより随分幼く見えた。彼女の溌剌とした性格にはピッタリだと言えそうだ。 「私、何時かお姉ちゃんの分まで頑張って、邪神守民の地位向上を果たすの。それは私達2人の夢でもあるんだ。」 ナツミは何度も聞きたいと思った質問をギリギリで飲み込んだ。どうしても聞けなかったのだ。 聞いてしまったら何かとんでもないパンドラの箱でも開けてしまいそうで怖かった。 (リリィさんはどうして邪神守民から離れたんだろう・・・どうして・・・)
脱衣所から突然聞こえてきたポケギアの着信音に、リリィは慌てた様子で風呂から飛び出した。 「忘れてた!今日返しに行かなきゃいけないポケモンが1匹いたんだっけ!きっと催促の電話だわ!!」 そのまま一気に脱衣所に飛び込み体を拭くと、急いで着替え始めるリリィ。その素早さにナツミは 湯船の中で呆気に取られているしかなかった。彼女からは欠点と言えるものが見当たらない。 「ゴメン。すぐ戻るから適当に入ってて!」 脱衣所から彼女の影が消え失せ、ジャンプした事が解った。何時もの事と暢気にしているホタルと ナツミだけが風呂に残される。今なら聞けるかもしれないと彼女は思った。 「ホタルちゃん。どうして・・・リリィさんは邪神守民から離れる事になったの?」 その質問をした瞬間、ホタルの顔が曇り、俯いてしまったのを見てナツミは動揺する。 「・・・ゴメン。誰にも言えないんだ。本当にそれだけは誰にも・・・お兄ちゃんにだって 本当の事は教えてない。適当に誤魔化してる。だからこそお姉ちゃんは守民を辞めたんだけど・・・」 「そうなの・・・」 「誤解しないで。私ナツミお姉ちゃんの事嫌いじゃないんだよ。寧ろ優しくて良い人だって思ってる。 でも言えない・・・お姉ちゃんの心の傷は予想以上に深いし、私も辛い思いをしたから・・・」 そこまで言われてしまっては、彼女から『聞く』事は出来ないと思った。 「辛かったのね・・・」 後ろからゆっくりと、ホタルを抱き締めるナツミ。背後からの為ホタルにはナツミの瞳が確認出来ない。 ナツミは目を光らせ、ホタルの記憶の底へと潜っていった・・・
暗がりの中から泣き声が聞こえる・・・ホタルの声だ。おぼろげで会話の内容もハッキリとは聞き取れない。 ホタルが心を開いていない為に映像も靄がかかっていて何が映っているのかさえ解らなかった。 『どうして・・・お姉ちゃんが・・・』 『取ってきて・・・帰らなきゃ・・・』 涙交じりの掠れた声は恐らくリリィのものだろう。ぶつ切りの音声の為状況も把握する事が出来ない。 ただ、リリィの過去が凄惨なものであったのだろうと言う事だけはハッキリと伝わってきた。 『ごめん・・・ごめんねお姉ちゃん・・・』 『ホタル・・・どうして貴方が謝るの・・・』 (やっぱりホタルちゃんは私に心を許していない。ココが限界ね・・・) フッと意識を取り戻すとホタルがナツミの前で涙を見せていた。 「お姉ちゃん・・・お姉ちゃん・・・私、助ける事が出来たのに・・・救えたハズなのに・・・」 先程のナツミの質問から昔を思い出して泣いているのだろう。ナツミは自分の浅はかさを悔いた。 「ホタルちゃん。落ち着いて・・・」 「ナツミお姉ちゃん、私駄目な子なんだ。お兄ちゃんの事だって悪く言う資格なんか・・・」 逆に抱きついてきた彼女を、ナツミはただ黙って優しく抱き締めた。
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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.3 ) |
- 日時: 2010/10/10 20:02
- 名前: 夜月光介
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- 第3章 6話 『過去から来た青年』
翌日・・・リリィの育て小屋に泊めてもらった2人はホタルやリリィと共に朝食をとり、 その後ホタルは別れを惜しみつつ帰っていった。守民社では無くリーグの方に帰還するらしい。 「それにしてもやっぱ10日間ってのは長ぇな。それまでロクに挑戦も出来ねぇってのが・・・」 「規定は規定なんだからしょうがないじゃない。そのおかげでホタルちゃんにも会えたんだし。」 ボーっとしているワケにもいかないと、2人は育て小屋を出て再びΩショップ近辺に向かった。
リーグ休暇中と言う事もあり、昨日に負けない程沢山の買い物客が楽しそうに歩いている。 ギンガはバトルフィールドの方に向かい、ナツミもそれについていこうとした。 「おい、怪我してるぞ!」 「救急車を呼べ、救急車!」 だが突然聞こえてきた騒がしい声に足が止まる。見ると噴水広場の方に人だかりが出来ていた。 気になった2人はとりあえずその場所へと移動する。 「まだ救急車は来ないのか!」 人の輪の中心には怪我をした青年が横たわっていた。切り傷は浅かったが火傷が至る所に出来ており、 命が危険に晒されているのが解る。やがて救急車が到着すると彼はそのまま運ばれていった。 「一体誰だったのかしら。あんな所で・・・」 「P.O.D.かダークの連中にやられたのかもな。病院に行ってみようぜ。」 「入れてくれるかどうか解らないわよ。」 「話が聞ければ御の字か。とにかく少しでも情報を集めねぇと・・・」
カテナタウンの病院はΩショップから少し歩いた所にあった。シティの病院は立派なものだが タウンの病院はこじんまりとしており普段は重症患者等運ばれては来ない。 「全身に火傷の跡がありましたが命に別状はありません。切り傷も深くは無いですし、安静に させていればいずれ目が覚めるでしょう。貴方がたは彼のお知り合いですか?」 「ああそうだ。突然こんな事になっちまって・・・あいつから直に事情を聞きてぇんだ。」 平然と嘘をつくその態度に看護婦も疑問を抱かず、2人を病室まで連れて行ってくれる。 「お静かに願いますね。他の患者様の迷惑にならない様にしてください。」 白一色の病室に彼はいた。顔には火傷を負っておらず、話によれば火傷もそこまで深くは残らないだろうと 言う事である。意識を失っている彼を2人は暫く眺めていたが、数分後彼はゆっくりと目を開いた。 「大丈夫か?」 ギンガの問いに彼は答えず、ゆっくりと半身を起こし窓の外を見た。 「また失敗か・・・それにしても命が助かったのはラッキーだったかな。」 「またってどういう意味です?」 「え、知らないの?近所じゃ僕の嫌な噂ばっかりだと聞いていたけど。」 時折包帯が巻かれた手で目を擦りながら何かを探している。 「僕の眼鏡は?」 「倒れていた時に眼鏡は落ちてなかったぜ。」 「そうか・・・飛んでいったのかもしれないな。また新しいのを買わないと・・・」 青年は何気無く窓の外から視線を2人の方へ移し、今度は壁にかけられているカレンダーの方を見る。 その瞬間、青年の顔色が変わった。 「なんだこれ・・・74年だって?」 カレンダーにはポケモン暦も記されている。リーグ休暇日の10日間は赤く塗られていた。 「ねぇ君達。今は74年なのかい?」 「そうですけど・・・」 「なんてこった。14年間も寝たままだったなんて・・・鏡は無い?」 ギンガ達は青年の言葉に疑問を抱いたが、彼の言うままに鏡を渡した。 「私の手鏡ですけど・・・」 青年は自分の顔を鏡に映していたがやがて鏡をナツミに返す。 「馬鹿な・・・僕の顔は同じだ。つまり時は経過したが僕は歳を取っていない。つまり・・・ タイムスリップしたって事なのか!?」 狼狽する青年に対して2人はどう言おうか迷った。 「もう僕の研究室は残ってないのか・・・カントーで僕は行方不明扱いになっているのかもしれない。 いや、とっくに死亡した扱いになっているのかも・・・」 「カントー?カントーだって?ココはリューキューだぜ。」 「リューキュー・・・?場所も違うのか。どうすればいいんだ・・・」 頭を抱える青年に対して質問をすると、彼は自分の事を訥々と語り始める。
彼の名はニシキ。ポケモン暦60年の時点では16歳。16歳にして物質空間転送装置の 構想を練り、カントーで実験を繰り返していたと言う。 「僕はあの時、ポケモンと人間を合体させる機械を発明していたマサキさんに資金提供をしてもらって 研究を続けていた。あの時はたまたま遊びに来ていたレッド君とマリンちゃんの前で ちょっとしたテストをするつもりだったんだけど・・・」 2人の前で完成直前と思っていた装置の最終チェックを行なっていた所、突然目の前が真っ白になって 気を失い、気がついた時には既にこの病室にいたのだと彼は話した。 「恐らく装置が誤作動を起こして爆発したんだろう。2人は離れさせていたから被害は受けなかった だろうけど、直接装置をいじっていた僕は当然逃げられなかった。何故こうなったのかは僕自身も 全然解らないよ。爆発の衝撃によってタイムスリップを起こす可能性があるとは聞いた事があるけど・・・」 「じゃあアンタにしてみれば、突然14年後の世界に放り出された事になるワケか。」 「うん・・・装置は元々時間移動の為のものじゃ無かったし、僕がいた14年前の世界に戻るのは 恐らく絶望的だろう。おまけにリューキューじゃ頼れる人も全くいないし・・・」 頭を抱えるニシキに対して、ギンガは暫く考えを巡らせていたが、やがてこう切り出す。 「俺達の知り合いの所に厄介になったらどうだ。客間もあるし、稼いでるからカントーへの旅費も 何とかなるかもしれねぇよ。ただ、14年も経過してるからアンタの知り合いがカントーに いるかどうか・・・」 「いや、きっといるよ。父さんや母さんはともかく、マサキさんは同じ所で研究を続けていると思う。 ・・・父さんと母さんにしてみればもう僕は死んだも同然だし、カントーにいるかどうか怪しいのが 辛いけど。その場所にいるのが耐えられなくて引っ越すってのは多いからね・・・」 平静を装いながらもやはりニシキは苦しんでいる様子であった。このままにしてはおけないと ギンガはすぐリリィにポケギアで連絡を取り、会いに来てもらう事にする。
病室に訪れたリリィは彼の顔を見ると驚いて立ち竦んでしまった。 「アタシ・・・小さい頃に貴方の写真を雑誌かなんかで見た事があるよ。確か研究所が木っ端微塵になって 遺体は見つからなかったけど生存は絶望的だって書いてあった気が・・・」 「そんなに酷かったのか・・・マサキさんの事もそうだけど、レッド君やマリンちゃんは今頃 どうしているんだろう。セキエイのチャンピオンを目指すって張り切っていたけど・・・」 「レッドさんっていったらもう並のトレーナーじゃ手が届かない程の伝説の存在ですよ。マリンさんも 三強の一角って言われる程の立派なトレーナーですし・・・」 「そりゃ凄い・・・あの2人がそんなに強くなっているなんて。」 「とりあえず傷が完全に癒えるまでアタシの所に来ればいいじゃない。治ったらアタシの力でカントーまで 連れてってあげれるしさ。ホタルに頼めば研究室も建て直せるかもよ?」 「すいません何から何まで本当に・・・」 涙を流しながら感謝するニシキを見てリリィは慌てて両手を左右に振った。 「困った時はお互い様でしょうよー。でも、傷が治ってカントーに戻れたら、この2人の事を サポートしてあげて。それがアタシからのお願いって事でどう?」 「解りました。預かりシステム等に関しては熟知してますし、基本はさほど変わっていないと思います。 14年も経てば勿論変わっている事も多いでしょうが・・・」 ニシキは涙を拭くと、改めて2人の方を見た。 「そういえばまだ君達の名前を聞いていなかったね。君達を見ているとあの2人を思い出すよ。」 「俺はギンガ。こっちはナツミ。今のアンタとは1歳差だな。俺達の方が年下だ。」 「・・・そう考えると、もうあの2人は24歳か。随分離されちゃったなぁ。」 昔を思い出しているのか、ニシキは静かに目を閉じて考え事をしている様だった。 ナツミは不自然にならない様そっと近付き、彼の手に触れ意識の中に潜っていく・・・
【ポケモン暦60年 カントー 1の島 ポケモンネットワークセンター】
1の島でポケモンネットワークセンターの管理人として過ごしていたニシキは、もっと効率的な ポケモンの瞬間転送の手段を考えていた。ポケモンはPCに預け入れる事でデジタルな存在となる事が 当時実証され、預かりシステムはほぼ完成していたが彼自身にはまだ不満が残っている。 (確かにPCからポケモンを預けるシステムは完璧だ。だけど、A地点から何処でも好きな所へポケモンを 飛ばす技術は完成されていない。ポケモンが一時的にデジタルな存在になればそれも実現可能なハズだ!) ポケモンの交換は当時完全なる手渡しでPC内から相手にポケモンを渡す事は出来なかった。相手の家に 瞬時にポケモンが入ったモンスターボールを飛ばせたら便利極まりないと考えたのだ。 「時空間移動とかも考えてるって話聞いたけど。」 「マサキさんは無理って言ってたけどね。いずれは挑戦してみるよ。人間はデジタルな存在になれないから 難しいけど、デジタルな存在になる生命体なんてポケモンだけだ。その利点を活かせば必ず過去や未来に ポケモンを送る事だって出来る。今は無理だけど、科学がもっと進歩すれば・・・」 ニシキの傍らには当時10歳であるレッドとその幼馴染マリンが立っていた。幼馴染とは言ってもそれは 8年後辺りでの話であり、当時はまだ出会ってから数ヶ月も経過していない。 「それが、物質空間転送装置ですか?」 「そうだよ。今は最終調整の真っ最中さ。将来的には人間が自由に移動出来るシステムが出来ると 良いななんて思ってるんだけど・・・夢は大きく持たなくちゃあ・・・」 機械を暫くいじっていたニシキだったが、不意に手を止めると2人に遠ざかっている様指示した。 「あんまり近くにいすぎると危ないんだ。転送装置に巻き込まれてしまったらひとたまりも無いからね。 僕もボタンを押したらすぐに離れるよ。」 研究所の外からでも窓の中の様子はよく見えた。暫く機械をいじっていたニシキであったが、 2人の目の前で突如窓の中が白く光り、次の瞬間爆発が起こって研究所が火に包まれる。 「な・・・おいマリン!すぐに警察と消防署に連絡しねぇと!!」 「解ってるわよ、アンタはココで待ってて。すぐにかけに行くから!」 ポケギアが開発される前だったのでマリンは即座に電話ボックスを探しに走っていった。 残されたレッドは呆然としながら荒れ狂う炎を見つめている。 「・・・ニシキさん・・・」 レッドはどうする事も出来ない自分が悔しかった。
目の前が真っ白になった所で彼の過去の記憶は途切れた。意識を失ってしまえば当然その先を見る事は 出来ない。ナツミは彼の手から自分の手を離した。 「カントー出身だとこっちの人間の事は解らねぇかもしれねぇが、リリィはジャンパーの能力を 持ってるからすぐに送ってもらえるだろうぜ。」 「ジャンパー?」 「アタシ、行った事のある所か写真を見せてもらえば何処にでも瞬間移動出来るんだ。そのアンタが 開発しようとしてた物質空間転送装置とか無くてもさ。」 「そりゃ凄い。貴方に監修してもらえば完璧だったかも・・・まぁ今更の話ですいません。僕 研究の事となるとつい熱くなっちゃうんで・・・」 彼の言葉通りニシキの瞳には探究心の炎が燃えている様だ。 「今は療養に専念して、その後今後どうするかを決めていくのが一番でしょうね。」
2人が病院からリーグ施設に戻ったのは結局夜7時を回った頃であった。 『伝説』の2人とあった事があるニシキに対して根掘り葉掘り聞いていたらあっと言う間に 時間が経過してしまったのだ。野試合を諦め、そのまま夕食をとりシャワーを浴びる。 シャワーから出て着替え終わると、ギンガは改めてリリィから譲り受けたポケモンの卵を バッグから取り出して眺めてみる事にした。 「しっかしこうして見るとホントに小せぇな。モンスターボール並じゃねぇか。」 ギンガの言う通り、貰った卵はチョコエッグ程の大きさしか無い。黄緑色の表面に時折 深緑色の斑点が付いている。殻は非常に固く、石にぶつけても割れそうに無い。 「どんなポケモンだか教えてもらってねぇんだよなぁ・・・」 リリィに聞く事を怠った為今更ワザワザ聞くのもはばかられる。溜息をつきながら暫し 卵を見つめていたが、不意に卵に亀裂が走った為ギンガは驚き卵を離してしまった。 「うわッ!?」 そのまま卵は割れ、中からポケモンが出現した。 『うわぁ、貴方が私のパパになるんだ。これから宜しくね!』 ポケモンは人間と違い赤ん坊の状態でも高い知能を持っている。赤ん坊と言っても姿形は ある程度成長したものと変わりは無い。ギンガはとりあえずモンスターボールを床に 落とし、ポケモンを捕獲した。捕獲した後改めてポケモンをモンスターボールから出す。 『マスター、お腹減ったー。』 「へいへい・・・」 洗脳装置はギンガを『父親』では無く『マスター』だと理解させる効果もある。洗脳自体は 強力なものだが性格や人格自体が大幅に変わってしまうワケでは無い。 ギンガはΩショップで購入していたポケモンフードを小皿に移した。 『マスター、コレ美味しいね!』 「そりゃ良かった。あんま食べ過ぎんなよ。」 突然父親になった様な感覚を味わい、ギンガは若干動揺していた。 (卵から生まれたポケモンは野生のポケモンより強くなるとか言われてるが実際はどうなんだろうな。) 目の前でフードを食べているポケモンは下半身が魚で無かったらその辺りにいる女の子と 勘違いしてしまいそうだ。リューキューで近年話題になっている『キメラ』に間違いなさそうだった。 (そういやキメラポケモンなんて初めてみたな・・・)
『キメラ』はニューアイランド島での実験を繰り返していたフジ博士が生み出したもので、人間の遺伝子と ポケモンの遺伝子を混ぜ合わせて生まれてきた生物である。元々キメラは素体となるポケモンが異常な戦闘力を 持っていなければそこまで圧倒的な強さを持って生まれてはこない。だがキメラが通常のポケモンよりも 高い戦闘力を持っているのは事実である。キメラは最初にフジ博士が大量に生み出したものから野に放たれ 交配し、卵から生まれたキメラ同士が交配を繰り替えす事で遺伝子的に安定し爆発的に増えていった。 今ではリューキューに棲息しているポケモンのうち4割強がキメラポケモンになっている程だ。 フジ博士以外にもポケモンの戦闘力を高める事だけに固執してキメラを生み出した科学者は多数存在している。 (さて、こいつの名前は何だ・・・?) ギンガはポケギアを用い卵から生まれてきたポケモンの名前を確認した。 『ミズチ・にんぎょポケモン・・・リューキューで新たに発見されたキメラの1匹。海に通じている洞窟内で 楽しそうに唄を歌っている事が多い。群れになると美しい合唱を披露する。』 (へぇ、みず・ゴーストタイプとは珍しいな。特殊能力は・・・) 『特殊能力・音波回復・・・音を使った技を受けるとその技でのダメージ・あるいは状態変化を無効化しさらにHPが回復する』 【例・うたうを受けた→眠らず回復 ハイパーボイスを受けた→ダメージを受けず回復】 「ま、その位か。技もまだまだ弱いのしか覚えてねぇが、育てりゃ強くなるだろ。」 『マスター、もっと食べたい!』 「腹八分位にしとけ。明日こそ野試合やっからお前も参加しろ。一緒にリーグ制覇の夢を見る為にもな。」 『あ、やっぱりマスターもリーグ制覇が夢なんだ。私ももっと強くなりたいからすっごく楽しみ!』 「俺も寝るから寝とけよ。疲れる前にな。」 ギンガはミズチをボールに戻すと疲労感もあってそのままベットに倒れ込み深い眠りへと落ちていった・・・
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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.4 ) |
- 日時: 2010/10/25 20:10
- 名前: 夜月光介
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- 第3章 7話 『イレカエ3姉妹・レシラ』
翌日、ギンガ達はリーグ休暇による足止め期間を無駄にすまいとΩショップに再び出向き、今度は 数多くのトレーナー達と野試合を行なう事が出来た。ギンガにとって一番気がかりなのはミズチの戦闘力が 他の面子より現時点では劣っている事である。そこで近くの草叢にも足を運んでレベルアップに勤しんだ。 「野試合でも出せる様にはなってきたな。ザロクとの試合でも上手く立ち回れりゃ良いんだが・・・」 ゴーストタイプの技はエスパータイプのポケモンに対して絶大な威力を発揮する。その為ミズチが実戦でも 活躍出来る程のレベルになれば大きな戦力になるハズだった。 『マスター、私にとっては初めてのジム戦になるけど・・・とにかく頑張るよ!』 「頼むぜ。相手がエスパータイプのポケモンを使ってくるから尚更だ。あくにも弱いらしいから ホノオグマも役に立ってくれるだろ。もう1匹は押して無理やり勝ちに持っていくしか無ぇかな・・・」 手強い相手だったリリィがザロクと戦い負けた事があると言う話はギンガの心に一抹の不安を与えていた。 そうなると俄然、ナツミとの練習にも気合が入る。 「はがねタイプのポケモンを持ってるパートナーを持ってると何かと便利でしょ?」 ナツミは冗談半分にそう言ったが、ギンガはその言葉に対してしっかりと頷いた。殆どのタイプに対して 有利な『最強のタイプ』とも言えるはがねタイプのポケモンと戦えるのは大きなプラスである。 「日も暮れてきたし、今日はポケモンセンターに立ち寄った後素直に宿舎に戻るか。」 「リーグ休暇日もそろそろ終わりね・・・きっとザロクさんも帰ってくるわ。」 リリィによると『久しぶりの同窓会』を彼は満喫していると言う。彼と知り合ってからリリィは 相談事に乗ったり戦ったりしている内に随分と仲が良くなったらしい。 (ザロクにも傷がありそうなんだよな・・・結局傷がある者同士何かを感じて惹かれ合うのかもしれねぇが。) お互いに慰めあって絶望を乗り越えていく。ギンガはナツミに励まされ、時には助けられてきた。 だからこそ、彼女を守ってやりたいと心から願う。彼女にも大きなトレーナーになってほしいと思うのだった。
夕方のポケモンセンターはギンガ達と同じく野試合を終えて帰ってきたトレーナー達で賑わっている。 「やっぱりすぐには回復出来ねぇか。待つか・・・」 「そうね。素直に待ちましょう。」 2人は番号札を貰い、椅子に座って順番が来るのを待った。 丁度ナツミの隣に座っていた白い髪の少女がナツミに向かって話しかけてくる。 「今日は随分混んでますね。」 「そうみたいですね・・・何時もこんな感じなんですか?」 「リーグ休暇日終了が近いですし皆どっと帰ってきたんでしょう。何時もはもう少し 夕方でも静かなんですけどね。」 肩まで伸ばした長い髪。前髪も長く顔がよく見えない相手だ。 「カテナタウンに住んでいるんですか?」 「ええ。カテナタウンで『幸福館』を開いています。とは言っても一軒家と同じなので すぐには見つからないでしょうね。」 「ココロの館?」 「コレ、私の名刺です。」 ナツミに手渡された名刺には『幸福館 イレカエ3姉妹レシラ 幸福交換に応じます』と 書き記されており、裏面には住所とポケギアの番号が詳しく記載されている。 「幸福交換・・・」 「詳しい事は私の館に来て頂ければお話しましょう。それでは・・・」 彼女は自分の番号札が呼ばれた為、その場から去っていった。 「なんか胡散臭い奴だぜ。止めとけよ。」 「うん、そうなんだけど・・・」 確かに妙な話である事は確かだが、ナツミはギンガの絶望を取り除いてあげたいと言う願いが 特に強かった。この話に興味を持つのは無理も無い話だ。 (ちょっと行ってみようかな・・・) ギンガが番号札を呼ばれセンターの職員の所へ向かう時、ナツミは心の中でそう呟いた。
幸福館はカテナタウンの中心付近に建っていた。リーグ運営と関わっている守民やジャンパーの 仕事で稼いでいるリリィと同じ様にかなり立派な一軒屋だ。金持ちが多いと言われている キンブシティよりも、カテナタウンの方が飛び抜けた金持ちの多い街かもしれない。 「とにかく宗教関係の話とか持ち出してきたらすぐ帰るからな。」 「うん、解ってる。」 夕飯の後こっそり外へ出ようとしたナツミだったが結局ギンガに見つかってしまい2人で幸福館に 出向く事となった。玄関のブザーを鳴らし応答を待つ。 『どちら様ですか?』 「あ、あの。ポケモンセンターで先程話を伺ったナツミと申します。」 『ああ、トレーナーの方でしたね。どうぞお入りください。』 入り口が開き、2人は奥の暗がりへと足を踏み入れていった。 部屋の中は水晶と机、レシラの座っている部分だけに上から光が当たっている。 「コレは神秘的な雰囲気を出す為のものです。お客様の中にはそういう形から入っている事を 望んでいる方もいらっしゃいますので・・・」 「あの、ココは具体的にどういう事を行なう場所なんですか?」 レシラはその言葉を聞くと微笑みながら話し始めた。 「私は人の幸福を他の人間の不幸と交換する能力を持っています。一時的なものですが、 それでもおかげさまでなかなか評判は良いんですよ。」 「幸福を・・・不幸と交換?」 「人は色々な過去の出来事や今置かれている自分の状況から、幸福か不幸かどちらかの感情を持つでしょう。 例えば自分が不幸だと思っている人に幸福の絶頂にいる人の『幸福感』を与えてしまえば、 状況自体は変わらずとも不幸だと思っている人間もポジティブに考える事が可能になるのです。」 「まぁ一理あるな。」 「勿論その交換によって生じる変化は一時的なものです。また不幸な出来事が連続して起これば 不幸だと思う事に変わりはありませんからね。でも、マイナスイメージを持っている人間から 打開策が生まれる事も無いでしょう?一時的にせよポジティブになりプラスイメージを持つ事で 思考が研ぎ澄まされ、自分の人生の転機を自ら起こす事も可能になるのです。」 「そういう事ですか・・・」 「私達イレカエ3姉妹はリューキューの各地に散らばりこうした活動を行なっています。商売なので 少々の値が張りますが、行なった方は皆満足していますよ。」 「でも、幸福を貰った人は良くても・・・」 「そう。ですからこの幸福館には2人で来て頂きもう1人の方には覚悟をしてもらわなければなりません。」 レシラは奥からボードを持ち出してくると、ペンで解り易く図を書いた。 「Aの人間の不幸感が全部Bに渡り、Bの人間の幸福感がAに全て渡る。幸福感しか持っていないAと不幸しか 持っていないBとなるワケですね。ココに来るお客様は・・・そう、例えばBがAに対して借金をしている 場合、全ての幸福感を渡す約束をしてやってくる場合があります。どんな人間にも必ず幸福感は ありますからね。Aの不幸感が綺麗さっぱり消えると言う意味でも有効でしょう。」 ナツミは暫くギンガと共に考えていたが、今はそれをする事は出来ないと話した。 「私達2人だと片方どちらかを不幸にする事なんて出来ません。」 「いえ、良いんですよ。私の能力を貴方達が利用するかしないかはあくまで自己判断ですから。ただ、もし そういうケースに巡り合う事があればどうぞお気軽にいらしてください。最近はリリィさんとホタルさんが 私の能力を使う為に訪ねてきてくださいました。」 「リリィさんが!?」 「ええ、リリィさんの不幸に思う気持ちを払拭したいと、ホタルさんは仰っていましたから・・・」
レシラの幸福館を出た頃には夜の8時を過ぎていた。リューキューにはゼクロとキュームと言う姉達がおり、 2人もレシラと同じ様な交換能力を持っていると言う。 「ホタルちゃん、リリィさんに対してやっぱり負い目があるのかな・・・」 「俺と同じで昔何かあったみてぇだしな。」 リリィの過去を詮索する事は野暮だとは思っていたが、2人共気になっている事は確かだ。 「俺達に出来る事であれば、リリィの奴を助けてやりてぇんだが・・・」 「そうよね。その為にも本当は一体何があったのか知りたいんだけど。」 2人にはレシラにもそれとなく聞いてみたのだがレシラは全くリリィの過去については知らないらしい。 『ただ、不幸を請け負ったホタルさんが相当苦しそうにしていた事を考えると、リリィさんの抱えている絶望は かなりのものなのでしょう。根本からの改善が必要なのかもしれません。』 先程聞いたレシラの言葉を思い出しながら、ナツミは物思いに耽っていた。 (私とギンガを助けてくれたリリィさんだからこそ、何時か・・・絶対に助けてあげなきゃ!)
さらに数日が経過し、ホタルはリーグの方へと戻り、ザロクは同窓会から帰ってきた。 ギンガの方はポケモンを育て上げ万全の態勢を整えている。ザロクの方も準備を完了させたと連絡が 入った為、昼頃2人はザロクの待つカテナタウンジムへと向かった。 「随分対戦を待たせてしまって悪かったね。1年ぶりに色々皆と話してきた。楽しかったよ。」 「なぁに俺も猶予があったおかげで育てる事が出来たんだ。逆に助かったぜ。」 「それは何よりだね。・・・さてと、そろそろ始めようか。」 バトルフィールドの傍らではナツミとリリィが2人の戦いを見届けようとしている。 「アタシを倒した相手だからね。油断しない方が良いよー。」 「その話を聞いた時は驚いたよ。僕も辛勝だったからね・・・となれば、素晴らしい戦いが 出来るって事だ。ワクワクするじゃないか!」 周囲に立てられた燭台の蝋燭は紫色の妖しい炎を燃やしている。中心のバトルフィールド・・・ そこに立つザロクは目に装着されたマスクの為に一層不気味に映った。 「ルールを確認していこう。後々諍いを起こさない様にね。ポケモンは3匹ずつ出し合い 戦う。簡単に言えば3vs3だ。2匹以上ポケモンを眠らせる、凍らせる行為は禁止。 持ち物の所持は自由。1匹残ったポケモンで自爆技を使うのは禁止。大丈夫かい?」 「ああ、その通常のルールに不満は無ぇよ。ただ、アンタのマスクが気になるな。」 「・・・過去の傷さ。見ても面白いものじゃ無いよ。」 ザロクは俯きそう言ったが、ギンガは食い下がった。 「俺が勝ったら・・・マスクを取って素顔を見せてくれるか?」 「・・・良いだろう。僕も負けるつもりは全く無いからね。」 ザロクの言葉にリリィは息を呑む。その態度にナツミも反応した。 (ザロクさんの素顔、見た事が無いんですか?) (小さい頃のは写真で見た事があるけど・・・数年前にこっちに来てジムリーダーになった時からの 顔はずっとマスク付けっぱなしだったからアタシも見た事が無いんだ。) 確かに気になっている事ではあった。ザロクは何故頑なに素顔を隠すのかと言う事が。 「僕は小さい頃から『4人』でずっと励まし合って生きてきた。辛い時も哀しい時も皆が側に いてくれたんだ。勿論ポケモンバトルも研鑽を重ねた・・・」 ザロクは懐からモンスターボールを取り出し、構えを取る。ギンガも反応し、身構えた。 「君の実力が通用するかどうか、今から僕が見極めてあげよう!」 モンスターボールが宙を舞い、床に落ちると閃光と共にポケモンが出現する。 現れたポケモンは大きな鈴の様な姿のポケモンだった。 「まずは小手調べ。美しい音色を奏でるリーシャンと戦ってもらおう!」 『ボクの音色で、世界中の人達を幸せにするよ♪』 ポケモンの体内に入っているボールが転がり、その度に鈴の音が聞こえてくる。 (エスパータイプのポケモンとは言え、2つのタイプを持っているかどうか 調べる必要があるな。慎重に行くに越した事は無ぇ・・・) ギンガはポケギアの図鑑項目を開き、リーシャンの項目を探した。 『リーシャン・すずポケモン・・・リーシャンの鳴らす美しい音色には人々の殺伐とした心を 癒す働きがある事が解った。学者達の間では犯罪抑制や再犯防止の為にリーシャンを利用する 事が出来ないかと言う議論が盛んに行なわれている。』 (エスパータイプのみのポケモンか。特殊能力は・・・) 『特殊能力・治癒風鈴・・・攻撃技を受けた時受けたダメージの8分の1を回復する(特殊技では回復しない)』 (特殊技を使えって事か。この戦いはコイツに任せよう。) ギンガはモンスターボールをバトルフィールドに向かって投げ入れ、ミズチを出現させた。 『マスター、私の始めての大舞台だよ!頑張って勝つからね!!』 ミズチは自分が選ばれた事に喜びを感じ、気合充分と言った様子だ。一方ザロクはゴーストタイプの ポケモンを出されたのにも関わらず動揺を見せてはいない。 「不利なポケモンを出されるのは承知のうえさ。問題はその不利をどう払拭するかだ!」 リーシャンも相手が自分と似たタイプのポケモンの為、対抗意識を剥き出しにしている。 (ザロクさんとの戦い・・・進化していないポケモン同士の戦いだけれど、気を抜くのは厳禁よギンガ。 特にリューキューでは有名なエスパー使いだけに、どんな策を使ってくるか解らないわ。) 「よし、まずは挨拶代わりの先制攻撃だ!あやしいかぜを使え!」 『おっけー。緊張しちゃうなぁ・・・』 能天気な台詞を放つものの、目は真剣そのものだ。人魚でありながらまるで爬虫類の様な瞳に変化すると、 ミズチの周囲を黒い大気が包み込み、両手を前に突き出した瞬間に大気が風となってリーシャンに襲い掛かる。 『おわっ!』 突然の突風にリーシャンは成す術も無く飲み込まれ、黒い風の中でダメージを受けた。 「タイプ一致の特殊技だからな。ミズチにとっちゃとくこうが高い為に好都合だし、おまけに リーシャンに対しては回復を防げる。この技だけでも充分だぜ。」 リーシャンはダメージを受け、イエローゾーンまで体力を減らした。だがまだHPは半分以上残っている。 『フフフ・・・なかなかやるね。でもコレはどうかな♪』 リーシャンは反撃に打って出た。リーシャンの眼前でエメラルドに輝く光の球が生まれ、それが大きくなった 瞬間恐るべきスピードでミズチに向かって迫ってくる。 「や、やべぇッ!」 ギンガはミズチが回避するのを願ったがあまりのスピードにミズチもついていけずダメージを受けてしまう。 「エナジーボール。リーシャンが覚える事が出来るくさタイプの技だ。君のポケモンにはみずタイプも ついているから効果は抜群だろう。一見有利に見えても油断を怠ってはいけないんだよ。」 『痛ッ・・・でも、私は絶対負けないからね!』 まともにエナジーボールを受けたミズチであったが受けたダメージはリーシャンとそれほど変わらない。 タイプ一致のダメージ1.5倍がどれほど影響するかを証明しているとも言えるだろう。 (そうだ。奴はくさタイプじゃねぇ。あくまでエスパータイプだ。こっちの有利は揺るがねぇだろ!) 今の所どちらも全く劣らず、両者の睨み合いが続いている。どちらとも相手の攻撃のスピードに 反応する為、動くタイミングを伺う事となりお互いに動けなくなってしまった。
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Re: ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.5 ) |
- 日時: 2010/11/13 20:41
- 名前: レイコ
- こんばんは。
こちらでは初めての感想となります。
今までの話はまとめられたのですね。読み直せないのかと思うと残念です。何分自分は忘れっぽい性質なので…
姉妹の登場で物語も随分明るくなっていますね。バトルも殺伐としたものではなく、 交流試合のような楽しさと真剣さが絶妙で安心して読むことができました。 調子の良さそうなヒヒダルマのキャラがいい味出していると思いました。あとバクハオウが格好良いです。
姉妹の過去やキメラポケモン、ニシキの事故、そしてザロクとの勝負など今後も見所が盛りだくさんですね。 更新頑張ってください。では。
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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.6 ) |
- 日時: 2010/11/14 14:00
- 名前: 夜月光介
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- 第3章 8話 『誓い合った約束』
睨み合いの攻防の最中、動きを見せたのはリーシャンの方だった。 「精神を集中し、肉体と頭脳を研ぎ澄ませ!」 相手が動かず能力値上昇を狙っている事を悟ったミズチは再びあやしいかぜを放ち、動きを 止めようとするがリーシャンは攻撃にも動じず1発の命中のみでその場を凌いだ。 『ココからがボクの本領発揮の時さ・・・』 ダメージは受けたもののリーシャンの瞳は妖しく光り、ミズチが身構えているのにも関わらず エナジーボールを発射した。ミズチはそれを避けるがリーシャンの念動力によりエナジーボールは Uターンしてミズチに命中してしまう。 「なッ!?」 「リーシャンのめいそう・・・めいそうは己の特攻と特防を1段階上昇させる技さ。頭脳・・・ 戦いにおける戦術も比例していく。君のミズチが使う技も殆どが特殊攻撃のハズだったね。」 『少しのダメージの差で喜んでるのはまだまだ初心者だよ。トレーナーに求められるのは 大局を見る力さ。がむしゃらに攻撃すれば勝てるなんて思ってちゃ・・・』 負けじと放ったミズチのあやしいかぜが当たるものの、先程より与えたダメージが少なくなってきている。 『がむしゃらでも何でも構わない!私はマスターの為に何が何でも勝つの!!』 『勝つ為には戦術が必要って事だよ。攻撃一辺倒じゃ勝てる試合も勝てないのさ♪』 リーシャンは2つのエナジーボールを生み出し、ミズチを誘導して確実に1発分のダメージを与える為 囮のエナジーボールを投げた。だがミズチは怯まずに甘んじてその1発を受けると、命中時に生まれた 煙を使い姿を隠し一気にリーシャンに近付いてかげうちを見舞う。 『馬鹿なッ!?』 攻撃力こそ低いもののかげうちは攻撃タイプの技の為現時点ではあやしいかぜより攻撃力が高い。 先制攻撃が必ず決まり命中率も高い為この攻撃は避けきれずリーシャンは手痛いダメージを喰らってしまった。 「落ち着け!相手の接近を許さぬ為にもココは一旦距離を取るんだ!」 ザロクはリーシャンに命令を出したが時既に遅く、リーシャンは深い眠りに落ちてしまっている。 『コレが貴方の言う大局的な戦術って奴かもね!』 両者共にHPは何時の間にかレッドゾーン近くまで減っている。ミズチの『うたう』が成功した為 リーシャンは『ねむり』状態となり、ほぼこの試合の勝敗が決まった形となった。 「凄い・・・相手の攻撃を自分の攻撃のチャンスの為に敢えて利用するなんて・・・!」 ザロクはミズチに対して敵でありながら拍手を送った。公平さを遵守する真面目な彼だからこそ 相手を心から賞賛する事が出来るのだろう。ギンガもトレーナーとの初戦闘でありながら 目覚しい成長を遂げたミズチの事を高く評価している。 「よし、とどめを刺してやれ!」 ミズチは頷くと眠りこけているリーシャンに対してかげうちを連続で叩き込み、リーシャンを瀕死状態へ 追い込んだ。リーシャンはバトルフィールドの床に倒れ込み、ピクリとも動かない。だが 傷だらけの顔はさっきまで見ていた勝利の夢の為なのか、微笑んでいる様にも見えた。
初戦こそギンガの勝利に終わったものの、相手を撹乱するザロクのポケモンの強さに ナツミとリリィは舌を巻いている。 「流石ザロクさんのポケモン・・・!エスパータイプの利点を活かしきっているわ!」 「ギンガのポケモンがうたうを覚えていなかったら、そして命中率の低いうたうが外れていたらどうなっていたか 解らないねー。勝負は何時も実力だけじゃ無いって事はアタシもよく知ってる事だけど、それだけに 面白い戦いを見せてもらった感じがするよ。」 ギンガとしてはミズチを場に残して少しでもアドバンテージを取っておきたい所だが、ザロクは それを許すワケにはいかない。なるべく傷を少なくして勝つ事を目標にしなければならなかった。 「相性で優位に立っておく事は非常に重要だ。だけど、有利不利は何も相性だけで決まるワケじゃない。 ポケモンの種類によっては、思いもよらない戦法を得意とする事だってある。」 ザロクは次のポケモンが入っているモンスターボールを取り出し、バトルフィールドに向かって投げ入れる。 閃光と共に姿を現したのは、青い体を持つ奇妙な姿のポケモンだった。 『ドモー。我慢が信条ソーナンスでッス!!』 (ソーナンス・・・だと?聞いた事があるポケモンだな・・・) ギンガはポケギアを使い相手のポケモンの事を調べる為図鑑項目を開いた。 『ソーナンス・がまんポケモン・・・自分からは決して攻撃をしないが並外れた体力と防御力を誇り 怒っている時は屈強な人間でもその場から動かす事は絶対に出来ない。パンチを放てばその衝撃を 2倍にして相手に返す等、トリッキーな技を使いこなす為上級者向けのポケモンとも呼ばれている。』 (やっぱりか。自分では攻撃出来ねぇが厄介な技を持ってやがるハズだぜ・・・) 続いて特殊能力の項目を開き相手の特殊能力を確認する。 『特殊能力・質実剛健・・・一撃で瀕死になるダメージを受けても、HPを1残して耐える』 (1発は確実にもつって事か・・・いや待てよ。相手の使ってくる返し技ってのはカウンターと ミラーコートだよな・・・とすると・・・) ザロクもまた、ギンガが考え込んでいるのを見て悔しそうな顔をしていた。 (ああそうさ、君の思っている通りだよギンガ君・・・おかげでこっちも別の手段で君のポケモンを 倒さなければならなくなってしまった。これは厳しい展開になったな・・・) ココでミズチが倒れていれば、まだ結果は違っていたのかもしれない。しかしザロクも諦めてはいなかった。 最後の1匹の圧倒的なパワーに全てを託すつもりである。
バトルフィールドに立つミズチとソーナンス。HPの高さからすればミズチの攻撃力でそう簡単に 倒せる相手では無い。だがミズチのタイプとソーナンスの反撃技のパターンを考えれば自ずと答えが見えてきた。 「ミズチ、かげうちを連発しろ!それだけで勝てる!!」 「ソーナンス、すまないがみちづれを使ってくれ!」 3ターン猶予の自爆技とも言えるみちづれを使えば当然ミズチと共にソーナンスが倒れる事になる。だが ミズチがかげうちを連発すればかくとうタイプのカウンターは全く効果を発揮出来ない。 (あ、そうか!かげうちは確かに攻撃タイプの技だけど、攻撃技を反射するカウンターがかくとうタイプだから、 みず・ゴーストタイプのミズチには効くワケが無い!でもどうしてザロクさんは・・・) ナツミはザロクがポケモンを交換しない事に疑問を抱いている様子であった。だがザロクも勝負を捨てた ワケでは無い。ミズチを確実に葬り去った後、3匹目のポケモンで一気に巻き返しを図ろうとしているのだ。 (相手のかげうちでソーナンスが倒れるのは最低5発を喰らった時だ。だがギンガ君もミズチを出来れば 温存しておきたい。みちづれが発動する前に倒したいと思うのが人情だろう。ならば・・・) (もっと攻撃力の高いあやしいかぜを挟み込むのもアリだ。ザロクは恐らくそれを狙ってくる・・・ みちづれが無ければうたうでも良かったんだが、うたうでターンを犠牲には出来なくなったしな。) ミズチもそれは感じていた。勿論ギンガからの命令があればザロクもそれに呼応する可能性がある為 ミズチが自分で技を選ばなくてはならない。 (マスターの為にも何としても生き残って・・・いや、私がすべき事はそれじゃない!) 確実にソーナンスを倒す事が自分の使命だと考えたミズチは無駄に足掻く事を選ばず、ソーナンスの 生み出した黒い影に包まれてダメージを負い瀕死状態となった。そしてソーナンスもまた倒れてしまう。 「ソーナンスを倒す事を優先したか・・・確かにあやしいかぜを1発打ち込んだだけでダメージが ガラリと変わるワケじゃ無ぇしな。ともかくコレで最後の1匹になったぜ!」 「いやいや、まだまだ・・・僕の真骨頂はココからだよ。見せてあげよう。驚異的な防御力と体力、 そして攻撃力を併せ持つ最強の切り札を!」 バトルフィールドで倒れているソーナンスを回収した後、ザロクは最後のモンスターボールを取り出し、 バトルフィールドに投げ入れた。閃光と共に、巨大な体躯を持つ岩石が姿を現す。
バトルフィールドに佇む巨大な岩石は人面岩と言う言い方が最も合っていた。時折エメラルドの 輝きを見せ光を放つその姿は威圧感と共に神秘的な雰囲気を持っている。 (しかし、デケェな・・・今までの連中が可愛く見えちまう程だ。) ギンガはミズチをモンスターボールの中に戻すと、まずポケギアの図鑑項目を開いた。 『ガーロムン・せいれいポケモン・・・リューキューでは死んだ者達の魂の集合体とも言われ、 僧侶等が飼っている事が多い。野生のガーロムンは結構やんちゃな面があり、夜中市街地に 出ては道行く人を驚かせるのが好き。感情を表情で豊かに表現する事が出来る。』 (で、特殊能力は・・・と。) ポケギアの図鑑項目からさらに特殊能力の項目を選びボタンを押す。 『特殊能力・重厚防御・・・相手の体力が多ければ多い程防御力が増す』 (ある程度こっちもダメージを喰らうのは仕方が無ぇ事・・・まずは様子見だな。 相手に対して効果的な技を持つ奴に活躍してもらう事にするか。) ギンガはモンスターボールを取り出すと、バトルフィールドにオキトを出現させた。 (同じエスパータイプ同士での勝負に持ち込むのね・・・) ナツミとリリィは固唾を飲んで勝負の行方を見守っている。切り札であるガーロムンの 圧倒的な防御力から考えて、あっさり終わるとは考えられない。 「まずはこちらからやらせてもらうよ。ガーロムン、まずはエクトプラズマだ!」 試合開始と同時にガーロムンは口から煙を吐き出し、自分そっくりの分身体を作り出した。 『グワラグワラ・・・俺ノ力ヲ存分ニ発揮スルゾ!』 「なんだありゃ。2体に増えたワケじゃ無ぇんだろうが・・・」 「エクトプラズマは壁となる分身を体力を少し削る事で生み出す技さ。分身は1回攻撃しただけで 倒れてしまうが、その代わり手痛いマイナス効果が付く事になるよ。」 「チッ、面倒くせぇな・・・オキト、まずはてっぺきで防御力を、そして特殊能力の追加効果で攻撃力を 上げるんだ!」 『・・・・』 オキトは精神を集中させ、能力値上昇の為構えを取った。隙だらけの状態を相手が放置しておく ハズも無く、ザロクは間髪入れずに攻撃の命令を下す。 「がんせきほうでダメージを与えるんだ!」 ガーロムンの口から大砲の弾の様な球体の岩石が打ち出され、凄まじいスピードでオキトの体に命中する。 動きを止めていたオキトは成す術も無く攻撃を受けてしまい、大きなダメージを受けてしまった。 (クソッ、相性の良さが無ぇと進化前ポケモンじゃ難しいか・・・相手のタイプに有利なタイプだったのなら 良かったのかもしれねぇが・・・) 「凄い・・・1発で相手のHPを半分以上ゴッソリ奪っていったねー。」 リリィの言う通り、オキトのHPは防御力を上げたのにも関わらずイエローゾーンに達していた。 「とにかく奴の壁を破壊しろ。いわなだれでもじしんでも構わねぇ!」 相手はHPこそ少しは減らしていたものの、今だHPをグリーンのままにしている。 ガーロムンが反動で動けない1ターンの間に、オキトは新しい覚えた技じしんを使い相手の 壁を破壊した。全てのダメージを分身体が受け持ち、破壊される。 「分身体は呪いをかけ、相手を麻痺状態へと追い込む。すばやさが下がり攻撃も満足に 出せなくなった状態だ。もう一度がんせきほうを打ち出せ!」 壁を破壊した事でオキトはまひ状態となり、ガーロムンは再びがんせきほうを放った。今度は 構えこそ取っていないものの回避する為の動きが低下している。オキトは再びまともに がんせきほうを喰らってしまい、瀕死状態となってしまった。
不利な状況を簡単に覆されてしまい、ギンガは暫く呆気に取られていたがようやく我にかえると オキトをボールに戻し最後のポケモンを吟味し始めた。 (ダメージを全く与えられねぇって何だよアイツは・・・さっきの戦いは全部奴の掌の上だった。 打開しねぇ限りもう勝ちは無くなる。何とかしねぇと・・・) 「アレがザロクの真骨頂だよー。計算された試合・・・相手の動きすらも自分のポケモンに対して 有利になる。がんせきほうのマイナスポイントがプラスになっちゃったしね。」 「あんな戦い方があったなんて・・・」 ザロクは焦るギンガを見ながら、かつての自分とギンガを重ね合わせていた。 (そう、僕も昔は皆の掌の上だった・・・今でも3人の中じゃ実力的には格下。でもそれを 払拭しようと懸命に頑張ってきたんだ。連勝を続ければきっと僕だって認められる・・・!) 子供の頃は要領が悪く臆病だったザロクはからかわれる事が多かった。トレーナーズスクールでは 顔の事でいじめを受けた事もある。弱い自分・・・2人は彼を庇い、そして仲間として 扱ってくれたが世間での評価はまだまだ低い。世間を見返したい。ジムリーダーになって、 勝ち続ける事で自分の殻を破りたかったのだ。 (ズリもオボンも頑張ってるんだ。同窓会でも僕に勇気を与えてくれた・・・勝ちたい! この試合に勝って弱い自分を捨てるんだ!) 彼の決意は固かった。勿論チャンピオンを目指すギンガとしても負けられない試合であったが。
暫し考え込んだ後、ギンガは最後のポケモンをバトルフィールドに出現させた。 『視界良好。攻撃対象物発見。直チニ戦闘状態ヘ以降・・・』 (いわならボルタが使えたが相手はエスパー・・・話にならねぇ。ホノオグマもひかりに大しては 分が悪ぃし、テトラもオキトと同じたねポケモン・・・ニッケルしかいねぇんだ!) 「はがね・ひこうか。なかなか面白いポケモンだね。だけど僕のガーロムンが持つがんせきほうの 威力をそのタイプでは抑える事は出来ない。勝たせてもらうよ!」 最終戦。HPでの有利不利はあまり無いうえに相手は最終進化・・・普通に考えれば最早ギンガの負けは 濃厚である。しかしがんせきほうの反動ターンは続行される為、最初に攻撃を与える事は可能だ。 「ニッケル、まずはエアカッターでダメージを与えろ!」 『了解。攻撃開始・・・』 ガーロムンはいわタイプでは無い為、ひこうタイプの技のダメージを軽減する事は出来ない。相手のタイプ一致に 加え、元々急所に当たる確率が高い技。急所に当たりかなりのダメージとなった。 『ウムウ。面白イ輩デハナイカ。』 イエローゾーンまで体力を減らしてしまったガーロムンだがまだ余裕はある。再びエクトプラズマを繰り出し 相手への牽制を図った。しかしこれによる体力の低下も馬鹿には出来ない。 (この体力差がどう影響してくるか・・・) 「相手に攻撃出来なきゃ意味が無ぇ・・・ココは麻痺覚悟で攻撃しろ!」 ニッケルはエアカッターで分身体を破壊したが、先程と同じく麻痺状態となる。 「よし、ガーロムン!相手はまひ状態になり素早さが低下した。もう一度がんせきほうを当ててやれ!」 恐怖のがんせきほうが打ち出され、まひ状態となったニッケルに命中する。進化している分だけ 防御力も高いニッケルは半分程体力を減らし踏み止まった。 (ココで普通の技を繰り出しても相手は恐らく赤で耐えて終わる・・・どうせ一撃にチャンスを見出すなら、 とことんやるしかねぇ!) 「ニッケル、メタルバードで相手の息の根を止めてやれ!」 『了解。硬質化ヘト移行。突撃ノ準備ヲ開始・・・』 準備ターンニッケルは防御力が上昇する。その上昇に全てをかけた大博打だ。相手のがんせきほうが命中して 倒れれば負け、2ターン目の突撃がまひによって不発に終われば負けと言う厳しい状況である。 「君のニッケルの防御力の高さもなかなかのものだ。だが僕のガーロムンの攻撃力をなめちゃいけない。 きゅうしょが出れば僕の勝ちさ・・・ガーロムン、がんせきほうで決着を付けよう!」 「これは八方塞がりねー・・・勝ちの目は殆ど潰されたし。」 「でも勝てる可能性があるなら、ギンガは絶対に諦める様なトレーナーじゃありません!」 ナツミは祈った。ギンガはココで負けてはいけない。もっと広い場所で何時か大勢の観客の前で戦える、 そんな実力を持ったトレーナーになってほしいと強く願ってきたのだから・・・ ザロクの命令通り、ガーロムンは最後のがんせきほうを打ち出した。
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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.7 ) |
- 日時: 2010/11/15 19:48
- 名前: 夜月光介 ID:dV7cMGmo
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- 第3章 9話 『再会』
ガーロムンによって発射されたがんせきほうは攻撃前の硬質化状態にあるニッケルに 向かって一直線に飛んでいく。しかしがんせきほうはギリギリの所で外れ、そのまま 部屋の壁の方へと飛んでいってしまった。 (は、外れた!?) 狙いが僅かにずれたのかがんせきほうは不発に終わる。しかしこの場合反動ペナルティは無い為 次の攻撃がまひによって不発に終わればもう一度がんせきほうを繰り出せる。 (勝つのがちょっと遅くなっただけだ。不発で勝ち。当たったとしても耐えれば勝ち。 大丈夫、こちらの負けは無いハズだ。負けは・・・) 心の中ではそう思っていても、1つのミスから生まれる動揺と言うものは大きい。ギンガには 狼狽しているザロクの姿がハッキリ映っていた。 「追い詰めている方が、実は最も追い詰められているモンなんだぜ。負けられねぇってプライドや プレッシャーを強く感じちまうからな!」 ニッケルのメタルバードもまひを乗り越え無事成功した。鋼の翼を広げ、ガーロムンに向かって 突撃し渾身の力で体当たりをくらわせる。そのスピードはナツミやリリィの肉眼では捉えられない 程のスピードだった。そのまま壁に叩きつけられるガーロムン。もしHPが残っていれば もう一度がんせきほうを撃つ事が出来る。残っていなければ・・・
「どうして、僕は勝てないんだろう・・・」 ザロクの頭の中で昔の自分の声が聞こえた様な気がした。目の前の視界が消え、昔の光景が蘇る。 「お前はポケモンに対して優し過ぎるんだよ。もっと精神的にも強くならねぇとな。」 「でもさ、私達相当強くなったと思うよ。将来の夢・・・3人皆ジムリーダーって夢を 絶対果たそうね。アイの為にも!」 ザロク達は死んでしまったアイの為に、アイの分まで生きようと誓っていた。そしてアイが持っていた もう1つの夢・・・ジムリーダーになりたいと言う夢を3人全員で叶えると言う目標もある。 (私ね、何時かもっと強くなって・・・ジムリーダーになるの。ズリやザロク、オボンに負けない位の 強くてかっこいい素敵なジムリーダーに!そしたら・・・そこで戦ってほしいな。) 幼い頃の夢は違っていたが、今の夢は3人皆アイの為に叶えようとしていた夢だった。 ひたすらに強くあろうとした。離れ離れになってまで、それぞれの街から動けないジムリーダーの職を 掴んででも、夢を叶えたかった。勝ち続けて、アイの夢を確固たるものにしてあげたかった・・・
「・・・僕は、どうして・・・」 ガーロムンが最早動けないと言う事を理解したザロクはその場に崩れ落ち涙を流す。 あらゆる点で運がギンガに味方した戦いだったとも言えるだろう。しかし追い詰められた側である ギンガも勝ち誇る余裕は全く無かった。 「ジムリーダーだな・・・やっぱり。何度も危ねぇと思わされた。正直生きた心地がしなかったぜ。」 ナツミも駆け寄ってギンガを祝福してやりたかったが、試合の結果に驚き呆然としている。 (凄い試合・・・私もこんな勇気を持てるのかな。勝とうと思う勇気を・・・) 「負ける可能性を考えていたらああいう博打には出れないだろうねー。ホントにおめでとう。 結果を聞いたらきっとホタルも喜ぶと思うよ!」 リリィは2人の健闘に対して心からの拍手を送った。それぞれのポケモンをボールに回収した後、 ギンガはザロクに近付き、マスクを取った素顔を見せろと迫る。 「俺が勝ったんだ。約束通りマスクを取ってもらおうか。」 「ああ、約束は約束だ・・・でも、勝った相手に見せる約束だろう?別室で技マシンとバッチを 渡す時に見せる事にするよ。ついてきてくれ。」 ギンガはバトルフィールドの奥にある扉の方へザロクと共に向かった。
ジムの施設には規定があり、バトルフィールドと大量の技マシン・及びバッチを保管している 部屋があればジムとして通用する事になっている。昔無人の島の中にある洞窟でジムリーダーを やっていた者がいたが、広ささえあればその2つを満たす事は比較的容易だ。 「まずは僕から技マシンをプレゼントしよう。『スピードトリック』は素早さと攻撃力を交換する 技だ。素早いが攻撃力の低いポケモンでも、数ターンだけ攻撃力が非常に高いが鈍重なポケモンへと 姿を変えてしまう。使い方は色々あるだろうが君自身で色々試行錯誤してみてほしい。」 背中に背負うリュックサックの様な技マシンも昔と変わらない。最近ではディスクを入れる事により 技マシンの中身を変更する事が出来るタイプもある。サイキックバッチも受け取ったギンガは 改めてマスクを取れとザロクに対し迫った。 「解っているさ。ただし・・・後悔しないでくれよ?あんまり見れたものじゃ無いんだ。」 額から鼻の上を覆っているマスクをザロクは外そうとする。その時・・・
外の方から凄まじい爆発音が聞こえ、建物全体がビリビリと震える程の衝撃が2人を襲った。 「何だ今のは!」 ザロクは急いで外へと飛び出していく。その後をギンガが追いかけた。 リリィとナツミも入り口から外へ飛び出し、広場の中心に立っている黒い影を視界に捉える。 それは青い長髪を風になびかせながら佇む、角の様な物が生えた生命体だった。 紫色のオーラを噴出させながら、地面から浮いた状態でこちらに近付いてくる。 『力を感じるぞ・・・ドス黒い力をな。お前達2人だ・・・』 能面の様な表情で口角だけ吊り上げ、ギンガとリリィの方へ向かってきた。 『私は証明するのだ。人間よりもポケモンよりも、私こそが最も優れた生物であると言う事を 証明する・・・その為にお前達には犠牲になってもらおう。』 「突然何を言い出すかと思えば・・・大体テメェは何者なんだ!」 つっかかるギンガをその女性は指だけで弾き飛ばし、近くの植え込みに突っ込ませた。 「サイコパワー・・・凄まじい力じゃない。それなら、コレはどう・・・」 リリィが蹴りを入れようとした瞬間、女性は睨んだだけで動きを止め、シャツを掴むとそのまま 地面に叩きつける。リリィはあまりの激痛に呻き、地面に転がったまま動けなくなった。 『やはりな。人間はあまりにも弱くて脆い生き物だ。こんな連中が世界を支配していると言うのも 馬鹿馬鹿しい話・・・全て壊してしまえば良い。そうすれば何もかも無くなる・・・』 ナツミは傷を負ったリリィに近寄り安否を心配しながらも彼女に向かって尋ねる。 「貴方は一体・・・」 『私の名前はアイ−005。人間によって作られた最強の合成獣だ。最高の知能・ポケモンとしての 圧倒的なパワー・・・ミュウやミュウツーを凌駕する戦闘力を私は手に入れた。』 「アイ・・・ミュウ?」 『誰が私をどう呼ぼうと構わない。いずれ愚かな人間は滅び、ポケモンは解き放たれるのだ。 人間の鎖からな。だがその前に・・・』 睨み付ける視線の先を感じて、ナツミは慌てて植え込みの方へと走った。アイミュウは邪悪な笑みを 浮かべながら巨大なエネルギーの塊を作り、植え込みから出されるギンガに狙いを定める。 『私に対抗する力を持つ可能性のある人間は全力で排除してやろう!』 「止めてーッ!!」 涙を流しながらギンガを担ぎ走るナツミに、アイミュウはエネルギーボールを投げつけようと・・・
「アイ・・・アイなんだろう?」 突然聞こえた涙交じりの声に、アイミュウの動きが止まった。 「僕は君の事を誰よりも知っている。ずっと会いたいと思ってた。探してた・・・」 アイミュウの視線の先に立つザロクは、そのままマスクを地面に捨てると彼女の方を見る。 「思い出してくれ!あの時とは大分違うかもしれないけど・・・僕だ、ザロクだ。 皆にからかわれたこの蛇みたいな瞳・・・覚えているだろう?」 地面に叩き付けられた為に激しく咳き込むリリィも、担がれたギンガも、ザロクの顔を見て息を呑んだ。 ザロクの瞳は確かに蛇の様な細い黒目になっており、顔の右半分、鼻の上辺りまでの部分が酷い 火傷の跡に覆われている。今は大分良くなっている様だが、大変な痛みであったであろう事は容易に 想像が付いた。彼は成長したアイに対して言葉を続ける。 「君がいなくなってしまった後・・・僅かな可能性を信じてカントーまで行ったりしたんだ。君の 故郷でもある場所だよ。もう1度出会えたらって・・・僕だけじゃ無い。ズリだってオボンだって そう思ってるハズさ。見える傷だけじゃない。見えない傷も沢山負った・・・」 ザロクを見た瞬間、アイミュウの手が止まった。エネルギーボールも手から消え、その瞳には 涙が溢れている。ギンガ達は呆然としたままその光景を眺めていた。 『ザロク・・・』 光が失われていた瞳に光が戻り、アイミュウはザロクの方へ近付こうとする。 『ガァァァァァァッ!!』 ザロクが彼女に駆け寄ろうとした瞬間、アイミュウは頭を押さえて蹲り、突如空へと舞い上がった。 『クソッ!私の体に・・・心に介入してくるな!この体は私のものだ!!』 『もう誰も殺させない。誰の命も奪わせはしないわ!』 アイミュウの口から先程までの声と澄んだ声が漏れる。その言葉を最後にアイミュウは凄まじいスピードで 飛び去り、後には抉られた地面や破壊された噴水だけが残された。 「アイ・・・」 地面に膝をつき泣き崩れるザロクを2人は暫く眺めていたが、やがてハッと我に返るとすぐさま救急車を呼び リリィに駆け寄る。今だ痛みを感じ動けずにいたリリィであったが、意識は保っている様だ。 「アイツ何者なんだろうね・・・ザロクに詳しく話を聞かないと解らないかもしれないけど。」 「アイ・・・って言ってましたよね。確かアイって交通事故で死んだザロクさんの親友だとか・・・」 サイレンの音が近付くにつれ、先程の出来事がまるで夢では無かったのかとさえ思う程、 アイミュウの力は常軌を逸している。ポケモンでも人間でも無い、キメラの力を見せ付けられた形となった。
リリィはニシキが入院している病院で数日間休む事となった。激しく地面に叩き付けられていたが、幸い 全身に軽い擦り傷を負った程度で、大事に至るものでは無いらしい。 「紫炎拳古武道は受身でも一流・・・だからねー。それにしてもそっちに怪我が無くて良かったよ。」 「ザロクさんがいなかったらどうなっていた事か・・・助けて頂いて本当に感謝しています。」 だが当のザロクは心ここにあらずといった感じで、マスクも付けず窓の外を凝視していた。 また戻ってきてくれはしないかと待っている・・・そういう風にも受け取れる。 「ザロクさん、貴方達はカントーに来た事があると聞きましたが・・・」 ニシキに呼ばれ、ようやく我に返ったザロクは振り向き素顔を晒したまま話し始めた。 「僕達はアイが死んだ後、グレンタウンにあるポケモン研究所に向かったんだ。そこはかつてアイの 父さん、フジ博士が働いていた場所・・・廃墟となっていたけれど、そこにアイを取り戻す 何かの鍵があるんじゃないかと思ったんだよ。」 結局書類の類は既に何者かによって奪われた後で、研究所内を捜索している間にその何者かが建物に 放火。レッドとマリンの助けにより難を逃れたが、逃げ遅れたザロクだけが酷い火傷を負ってしまったと言う。 「アイの父さんは遺伝子結合によるポケモンの強化を研究していた。そしてグレンタウン在住のカツラさんは ミュウの研究を・・・今なら解る。彼女は・・・恐らくアイとミュウの合成獣(キメラ)なんだ。」 「キメラ・・・?」 「ミュウは全てのポケモンの頂点に立つ生命の存在そのもの。唯一永遠の命を持つポケモンだ。人間のクローンは 実用段階には達していない。培養液の中で1年か2年耐えれば良い方だからね。フジ博士・・・アイの父さんは こう思ったハズだ。その欠点を補う為にはミュウのDNAが必要だと。」 「馬鹿な・・・ミュウのDNAだなんてそう簡単に手に入れられるワケが無ぇだろう!」 「だが僕はレッドさんから聞いた。『ミュウツー』がロケット団の手駒として存在していた事を。ミュウのクローンが いたならばミュウのDNAがあったと言う事になる。辻褄はコレで全部合うハズだ。」 「うーん・・・」 にわかには信じられない話に、ギンガは溜息をつきながら椅子に座り込んでしまった。 ミュウツーの事を知っているのはレッドと彼等に繋がる者達だけだ。ナツミやギンガはロケット団壊滅のニュースは 聞いた事があるものの、ミュウツーの存在までは知ってはいない。 「ミュウツーの事は僕もレッド君から聞いた事があるよ。本人からならもっと詳しい話を聞けるだろうが・・・ それよりも大切なのは彼女を野放しにしておくのは非常に危険、と言う事実だ。」 ニシキがハッキリと危険と言う言葉を口にした瞬間、ザロクの表情が硬くなった。 「ちょっと待ってくれ。僕は感じたんだ。アイは・・・彼女の中にいる。助けなきゃいけない。 そもそも処分する事が出来ない事は君だって知ってるだろう?」 「確かに永遠の命を持つ彼女を殺す事は出来ないさ。しかし彼女は人類抹殺を狙っている。そんな人物を 放置しておいたらどうなるかなんて子供でも解る事だろう。何とかしなきゃならない。」 アイに対しての思い入れが強いザロクとニシキの意見のぶつかり合いは続き、治まりそうに無かった。 そんな2人を尻目に、ギンガとナツミは一旦施設の方へと戻る事にする。
カテナタウンで夜空を見るのは今日で最後だ。明日から第4の街ヤカシティに向かう事になる。 「この夜空の下で、アイミュウも悔しがってるんじゃねぇかな。」 「3人の友達の事を想っているのかもしれないけどね。」 数年前、その3人の少年少女達はこの満天の星空を見る事は出来なかっただろう。車が走り高層ビルが 立ち並ぶ都会もあるカントーでは、ココまで綺麗な星空を見る事は出来ない。 「ヤカシティのゴスさんと戦えばジムバッチは4つになるわ。チャンピオンの夢だって もうすぐ叶うわよ。きっと・・・」 ナツミの胸にはサイキックバッチが輝いていた。アイミュウとの邂逅後、リリィを病院に連れて行く ギンガを見送った後彼女は即座にザロクとのバトルを行なう。平静を失っているザロクはあっさりと 負け、ナツミにジムバッチを手渡す事になった。 「ああ。それとダークの件もな。それにしても奴等あの後何も仕掛けてこねぇ。逆に気味が悪ぃぜ・・・」 キツネ・ガドウ・ツバサ・・・まだダークの幹部は彼等以外に2人いる。その2人がいずれ 接近してくるであろうと言う予感はしていた。 「とりあえず・・・もう眠りましょうか。」 問題は山積していたものの、ギンガとナツミは自分達の事で正直手一杯である。大人しく眠り、 明日からの旅の再開に備え眠る事にした。
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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.8 ) |
- 日時: 2010/12/16 21:27
- 名前: 夜月光介 ID:vTC7iqDM
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- 第3章 10話 『青龍の警告』
翌朝・・・2人はシャワーを浴び服を着替え宿舎での朝食を済ませると、一路ヤカシティに向かって 出発する事にする。それを知っていたザロクとリリィが道路へ向かう道で待っていてくれた。 「コレアタシのポケギアの電話番号ねー。困った時にはかけて頂戴。すぐに駆けつけるから!」 「色々と世話になったな・・・ん?マスクもう付けねぇのかアンタは。」 「アイが帰ってきたんだ。僕の顔が解らなければアイも戻ってきてはくれないよ。それに・・・ 決めたんだ。もう隠さないで生きるって。コレは証なんだ。僕達の絆の証明になる。」 微笑みながらザロクはそう言って手を振る。最初は少々気持ちが悪かった蛇の目も、 2人にはもう気にはならない。彼がどれだけ優しい人間であるか既に嫌と言う程承知していた。 「じゃあ・・・私達はもう行きます。2人共、また会いましょう!」 自転車を漕ぎ出し、2人はカテナタウンを後にした。この先には60番道路が待っている。
朝からの出発で、ヤカシティに到着するのは午後2時頃になるだろうとナツミは予想していた。 朝の9時。暑いが心地良い潮風も吹いてきている。遠くに広がる海を見ながら自転車を 走らせるのはとても気持ちの良いものだった。 「ヤカシティは港がある大きな街よ。カントーやジョウトのトレーナーも腕試しや観光で 集まってくるらしいわ。腕に自信のあるトレーナー揃いだって言うから楽しみね!」 「ああ。ミズチの戦力に不安がある今、レベルを上げておくのは大事だからな・・・ それに余裕があればテレビ局とかもあるらしいし、見ておくのも悪くねぇ。」 海沿いの道を暫く走りながらとりとめも無く会話を続けていると、遠くに人影が見え 2人は自転車を止めた。黒いフードを被った黒づくめの人物がこちらに向かって歩いてくる。 「チッ・・・ダークの連中か。あの時の2人の内の1人か?」 「ポケモンを出す準備をしておきましょう。無防備に構えているのは危険だわ。」 バッグからモンスターボールを出し臨戦態勢に入る2人を見てその人物は笑った。 「ふうむ・・・油断せぬ所は流石と言った所じゃのう。じゃが・・・」 黒づくめの人物はそう言った瞬間両手を前に突き出し指から水を噴射した。突然の行動に 対応出来ず、2人のモンスターボールはその水によって弾かれボタンを押されずに 道端に転がってしまった。反射的にボールを取りに向かったギンガは、そのまま水のベールに 首の下まで包まれ身動きが取れなくなってしまう。 「危害を加えるつもりは全く無い。時が来るまでワシ等のもとへ大人しくついて来てもらいたいのじゃ。」 「貴方は一体・・・」 ギンガの事を案じながらも迂闊には動けないと考え、ナツミは彼に話し掛ける。 「ワシの名はシオジ。ダーク五殺生の一員で青龍の名も持っておるよ。」 そう言いながら男はフードを取った。長い白髪と顔を覆う髭がかなりの老齢である事を感じさせる。 (こんな高齢の人までダークの幹部だなんて・・・!) ともかくこの状況を打開する為には自分達以外の助けが必要になる。そう思ったナツミは 時間稼ぎをしつつついさっき別れたばかりのリリィにポケギアを使って助けを呼ぼうと考えた。 「何故、ギンガを連れて行くんですか?」 「うむ。その事はワシも御主達に話そうと思っておった。ツバサやガドウはその話を聞いて ついてきてくれるとは思えないと言っておったがな。コモレビに言った方が良いと言われたんじゃ。」 (コレで幹部の名前は4人出たけど・・・あと1人は誰なのかしら。) 勿論ナツミはキツネが幹部であると言う事を知らない。鋭い瞳のまま一挙一動も見逃さぬと 宣言しているかの様に構えているシオジは、ナツミの方を見ながら話を続けた。 「P.O.D.が御主達の事を狙っておると言うのは知っているじゃろう。クロガネ様は その魔の手から御主達を守りたいと言っておる。組織に向けての表向きの話としては 『類稀なる能力を持つギンガを生きたまま捕縛する』と言う名目じゃがな。」 「そんな話信じられるか!!」 ギンガは身動きの取れない状態のままで吼えた。目には怒りの炎が燃えている。 「もうすぐ、邪神復活の儀式も始まるじゃろう。その復活に必要な駒も揃った。邪神が 復活した時にはクロガネ様も御主も苦しみから解放される事になる。その時まで ワシ等幹部が全力で匿おうとしておるのじゃ。下手をすれば奴等は御主達の命も 奪おうとしてくるかもしれん。冒険を止めろとは言わん。ただ待ってほしいのじゃ。 今だけは危険じゃからな。今だけは・・・」 「苦しみからの解放?」 「今はそれだけしか言えん。何処で誰が聞いているか解らんからな。本当は正直な所 御主達を連れて行く理由を話すだけで危ないのじゃ。大人しく、ワシを信じて ついてきてもらえんかのう。絶対に後悔はさせんと誓うぞ。」 真剣な眼差しで訴えるシオジの言葉から嘘は感じなかった。しかしはいそうですかと ついていくには相手があまりにも危険過ぎる。ナツミはシオジに気付かれぬ様に 後ろに手を回したままポケギアの番号を押そうとした。 「・・・クロガネ様もあの方も、今は籠の鳥じゃ。ワシ等だけがクロガネ様を・・・ そしてあの方を籠から解き放つ事が出来る。いや、もう少し言えば御主達こそが その役目を担っているとも言えるじゃろう。」 (話が見えない・・・でも、何かを隠している事は確かだわ。) 「あの方に会えばナツミ殿、御主の考えも変わると思うんじゃがのう・・・」 少々俯きながら考え事をしているのか、髭をいじくりながらシオジはナツミから 少し目を逸らした。その時、小刀が彼に向かって飛んできた為、シオジは 掌から水を放ち小刀を弾き落とす。 「邪魔が入りおったか・・・ワシの言う事に嘘偽りは無い!社の者達には迷惑こそ かけておるが、もう少しでそちらにもワシ等の成そうとしている事が解るハズじゃ!」 「そもそも成してはならんのだ。邪神を復活させる事自体がな。それに彼等にも 彼等の生きる道がある。彼等を助ける役目はこの私に任せてもらおう。」 反対側の小高い丘の様になっている場所から小刀を投げてきたのはナユタだった。 動きを封じる為シオジは再び手から巨大な水の塊を生み出し放ったが、ナユタは それを避け凄まじい速度で近付き小刀をシオジの喉元に突きつける。 「守民の力を見くびらぬ事だ。」 「成程、噂には聞いておったが御主が社の忍か。なかなかの力を持っておる様じゃのう。 じゃが、ワシも引き下がるワケにはいかぬのじゃ!」 シオジはナユタを突き飛ばすと、水を浴びせ彼女の動きを鈍らせようとした。 その間にナツミはギンガに駆け寄り水のベールに触れ元の水に戻し、ずぶ濡れになった ギンガと共に再び自転車に乗り込むとその場から逃げ出そうとしていた。ボールは既に バッグの中に戻っている。シオジはそれに気付いたが彼女を相手にしている為 彼等の動きを見逃す他無い。 「御主が邪神復活を阻止したい気持ちも解るが、こちらにはこちらの理由があって それを果たそうとしておるのじゃ!今回は要らぬ争い故に引くが、今度は捕縛してでも 御主を止めるぞ。あの者達を守る為にもな!」 「P.O.D.とお前達ダークの処理は私とアソウギに一任されている。我々2人で、 リョウ様から託された任務を必ず遂行するだけだ・・・」 シオジはそのまま水の竜巻と共に姿を消し、後にはナユタだけが残された。 (お前達がどんな甘言を用いようと、私だけは騙されぬ。危険があの2人に忍び寄りつつ ある事は私が一番知っている事だ。必ず守らなければな・・・)
ギンガとナツミはその場から立ち去りたい一心で自転車を漕ぎ続けた為、予定よりも若干早く ヤカシティに到着した。疲れ切ったナツミがポケギアで時刻を確認すると時計は午後1時半を指している。 「毎回コレじゃあ身が持たないわね・・・ギンガの服も濡れてるし着替えないと。」 「まずは宿舎だな。幾ら暑いとは言えこの格好のままじゃ風邪を引いちまう。」 ヤカシティは港がある為チネンタウンやオウリタウン、カテナタウンとは比べ物にならぬ程発展している 街だ。ビル街の中で一際目立つ高い建物はリューキューの観光名所でもあるテレビタワーである。 服が水浸しの為人々に奇異の目で見られたものの、それを無視してジムの裏手にある宿舎に辿り着いた。 濡れた服を取り付けられている洗濯機に入れ着替えを済ませると、椅子に座って暫し相談をする。 「P.O.D.もダークも俺をよっぽど必要としてるみてぇだな。」 「恐らくアンタの力・・・ダークエフォートを利用しようとしてるんだと思うの。これからはより一層の 警戒が必要になりそうね。私達が旅を続ける為にも。」 「そうだな・・・ともかくこの街は人の目も多いから奴等も下手に手出しする事は無ぇだろう。多分・・・ 注意するに越した事は無ぇが動かねぇワケにはいかねぇさ。センターに寄った後野試合を済ませようぜ。」 「そうね。アンタのポケモンも大分レベルに差が付き始めてるでしょうし、この辺りで平らにしておく 必要があるわ。まずは情報を集めましょう。強い人達が集まってる場所を探さないと・・・」
ギンガとナツミはポケモンセンターに立ち寄った後、野試合に適した場所を見つけ次第合流すると言う 意見で一致した。ポケモンを回復し、ナツミはジム戦の手続きに、ギンガの方は真っ直ぐテレビタワー 付近の方へと向かう。大通りの方を歩くと様々な店が軒を連ねていた。 「大分賑わってんな。イベントでもやってんのか?」 テレビタワーは観光名所となっている為、一部の階を除くフロアや展望台が一般公開されている。 付近での撮影も頻繁に行なわれているので、人が集まってくる場所と言う条件は満たしていた。 「フィールドのスペースとかは無ぇのかな?」 開けた広場の様な場所が無いので右往左往していると、人混みにぶつかり人にぶつかってしまう。 「わ、悪ぃ!・・・ん?アンタハルミさんじゃねぇか。」 「アラ?久しぶりですネェ!ワタシもギンガ君の事を探してたんですヨォ♪」 漆黒の長髪を手で払いのけながら眼鏡をかけた女性はキンキン声を出し周囲をざわつかせた。 「もうちっとトーン落としてくれよ。皆こっち見てっから。」 「あ、ゴメンナサイ・・・2人の図鑑完成度を確かめてくれと博士に頼まれマシテ・・・」 (そういや図鑑全然埋まってねぇな。ポケモンの捕獲に集中してねぇから当たり前なんだが。) 屈託の無い笑みを浮かべるハルミに対して、後ろめたさを感じつつもギンガはチャンピオンを目指す為に 図鑑完成を二の次にしている事を告げた。 「そうでしタカ・・・ワタシも、それだけの為にココに来たワケじゃ無いんですけどネ。博士からコレを渡してくれと 頼まれまシテ・・・それも今渡しておきマス。」 ハルミ助手はショルダーバッグの中からリモコンの様な機械と純金で出来たボールを手渡した。 「この機械はダウジングマシンと言うものでシテ・・・道端に落ちている様な貴金属を手軽に探す事が 出来マス。付属の説明書はココにありますので後で読んでおいてくだサイ。このボールはギフト用とも なっているものデショップで売れば5万円にはなると思いマスヨォ♪」 (しかしどっから出てんだこの凄まじい高音は。まるでガラスを引っ掻いてる音みてぇだ・・・) 昔から彼女の声を聞いていると気が滅入ってくる。ギンガは物を受け取ると即座に彼女から 離れる事にした。折角来たのだから2、3日観光すると言っていたので、どちらにせよまた 会わなければならない予感はしたのだが。
ナツミの方はジムの中にいた女性と話をしていた。 「アタシも昔は色々な所を回って自分の肉体を鍛えたよ。その時ダンナと出会ってね。意気投合 しちゃったってワケ。今はジムリーダーの代理を務められる程強くなれたし・・・」 金髪のショートカット、褐色の肌・・・リリィにどことなく似ていたが腹回りや腕に付いている 筋肉は遥かに多い。夏物で露出の多いスポーツウェアを着込んでいる。 「ジムリーダーのゴスさんは貴方に代理を任せて別の仕事をしたりもするんですか?」 「アタシと一緒にね。だからバトルは午後以降の受付にさせてもらってるんだ。トレーナーには 悪いとは思ってるんだけど。月曜〜土曜日の午前中はテレビに出てるからね。」 「あ、『マッスル会』関係ですね。」 「へぇ、意外とアタシ達の活動も知られてきてるんだね。日本全国の人達を元気にするプロジェクトの 一環として朝の子供向け番組に出てるんだよ。最近は会員も増えてきてね・・・ちなみに アタシがそのマッスル会のナンバー2なんだけど。」 ゴスの妻だと名乗った女性、カナタはそれを誇りに思っている様だった。 「オウリタウンでナンバー3の方に会ったので・・・ギンガとポケモンバトルをしたんですが 何とか勝ちましたよ。勧誘が結構しつこかったですけどね。」 「あー、ヒライはマッスル会の会員集めに奔走してるからノルマ達成に必死になってるんだよね。 アタシもあんまりしつこくするなって言ってるんだけど治りそうも無い・・・困ったモンだよ。」 カナタは自分がした様なものだとナツミに謝り、申し訳なさそうにしている。 ナツミは彼女とジム戦の日程の調整等を話し合い、その後彼女と別れギンガに合流する事にした。
ギンガはテレビタワーの中に入りバトルフィールドを探す事にした。 トレーナーが集まる場所には大抵バトルする為の場所が確保されているハズだったが、 タワーの中にはそれらしいものは何処にも無く、全くの無駄足となってしまう。 「クソッ、収穫ゼロかよ・・・」 午前中の疲れもあり、廊下の端にあったベンチに座り自販機で購入したサイコソーダを飲み 一息ついた。このまま1日を無駄にしてしまう事だけは何としても避けなければならない。 「おっとそこのトレーナー、随分疲れてるみたいじゃねぇか。」 声をかけられ顔を上げると、そこには背の高い筋肉質の男性が立っていた。色白だが 逆三角形の肉体は異性で無くとも少しは憧れるものがある。 「おおかたバトルする相手でも探してたんだろ?ココじゃあバトルフィールドは 見つからねぇからな。立ち入り禁止区域の中に1個あるんだが。」 「何!?そんな所にあるのか・・・テレビ局の施設の中じゃあ手が出ねぇな。」 「まぁ任せとけよ。育成で困ったトレーナーに力を貸す。それも俺達の仕事だからな。」 そう言うと男性は先程から首にかかっていたステッカーをギンガに見せた。 ステッカーの中には『マッスルお兄さん・ヤカシティジムリーダー ゴス』と書かれた 名刺が入っている。彼は胸を張りながらギンガの肩に手を回した。 「マッスル会ナンバー1。現リーダーのゴスだ。仲良くやろうぜ!」 高笑いしながらそのままギンガを立たせて奥の方へと連れていく。 (コイツが4番目のジムリーダーか・・・) 通路の奥にあるエレベーターに向かいながらギンガはずっと彼を見ていた。
展望台のフロアから立ち入り禁止区域のフロアへ足を踏み入れると、すぐさま 社員が彼等の姿を見てこちらに向かってきた。だがゴスがステッカーを見せ 事情を説明すると、頷いて2人をバトルフィールドがある方へと案内する。 「ココは俺とカナタが毎日朝8時から10時まで生放送を行っている番組 『マッスルお兄さん・お姉さんといっしょ』のスタジオだ。番組放映中以外は そこのバトルフィールドで空いた時間を利用してスタッフがバトルを楽しんでいる。」 天井と背景は青空のセットで、森を意識した様な切り株、キノコ等の小道具が置かれていた。 「ココで待ってれば誰かが休憩がてらバトルを楽しむ為にやってくるさ。」 リーグ規定により野試合を行なう事が出来ないゴスは近くの椅子に座ると大欠伸をしながら ポケギアを見ていた。ギンガが後ろからそれとなく覗き見ると施設の中が映っている。 「誰が何時来ても良い様にチェックしてるのさ。カナタもどっかに行ってるみてぇだしな。」 ジムリーダーとしての責務は怠らない。その姿勢にギンガが感心していると部屋のドアが開き 眼鏡をかけた髭面の男性が入ってきた。カップラーメンと箸をそれぞれ手に持っている。 「あれ、スダさんもう休憩だったんスか。」 「ゴス君こそジムに帰っていなかったのかい。・・・あれ、その子は?」 「野試合したいって言ってたんで連れてきたんスよ。今使ってないこのスタジオだけなら 居させてやっても構わないスかね?」 「クダさんに聞いておいた方が良いと思うよ。あの人結構そういうのに五月蝿いからね・・・ まぁ良いや。まだ時間があるからバトルを楽しむとしよう。君の名前は?」 スダと呼ばれていた男性はギンガの方を向いて名前を尋ねた。 「ギンガだ。宜しく頼む。」 「随分良い目をしてるじゃないか。私の名前はスダ。音響監督の職に就いているよ。 それじゃ、時間もあまり無いしそろそろ始めるとしよう。」 ゴスはクダと言う人物に許可を求めに行くのか一旦その場から席を外し、スダはスタジオの隅に 置いてあった椅子を持ってきて座る。ラーメンを食べながらモンスターボールを投げた。 「このバトルフィールドはウチのスタッフの憩いの場なんだよ。のんびりと勝ち負けを気にせずに バトルを楽しむ。ココのモットーさ。」 フィールドに出現した下半身が馬の少女は、背中の翼をはためかせながらはにかんでみせる。 『私、アリアって言います。宜しくお願いしますね!』 耳が尖っていたりはするが上半身は普通の人間の様に見えた。肌の色が人間とは違うミズチと 比べれば遥かに人間よりの姿をしている。ギンガは様子見も兼ねてミズチを出す事にした。
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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 第4章 1話 『テレビ局の兵達』 ( No.9 ) |
- 日時: 2011/01/02 20:04
- 名前: 夜月光介 ID:YLe3my4.
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- バトルフィールドに投げ入れたボールから出現したミズチは、非常に落ち着かない様子だった。
『マスター、あの人強そうだね・・・』 「ザロクとのバトルで見せたお前の力なら倒せるハズだ。自分の力を信じて戦え。」 『お手柔らかにお願いしますね♪』 握手を求めてきたアリアに対して、ミズチはビクビクしながらもそれに応える。 『大丈夫ですよ、リラックスしてくださいリラックス。ココは楽しくバトルする所。 真剣勝負であっても何かを失う場所じゃ無いんです。お互いにベストを尽くしましょう。』 『は、はい・・・』 優しく微笑むアリアに対して何時の間にか敬語を使っているミズチ。バトルの腕はまだ 未知数だが相手の心をほぐす心得は充分にある様だ。 「アリアはリューキューで新たに見つかったひかりタイプのキメラなんだよ。科学者が 作り出したと言われているんだが、その科学者も誰かは解らないらしいね。」 ギンガはスダの言葉を聞きながら、ポケギアの図鑑項目を開いていた。 『アリア・せいかポケモン・・・リューキューで発見された半人間のポケモンであり、習わなくても 素晴らしい歌唱力を生まれつき持っている。その美しい歌声はどんなに怒り狂っている人間でも 心を鎮め、絶望に苦しんでいる人間でも希望を与えてくれるケンタウロスだ。』 (特殊能力は・・・) ギンガは図鑑項目からアリアの特殊能力が書かれている項目を選んだ。 『特殊能力・聖歌音域・・・ねむらない。(ねむってしまう技を受けても絶対にねむり状態にならない)』 (眠らせてから叩くって戦法は無理って事か。正攻法でいくしかねぇな・・・) 元々みず・ゴーストタイプのミズチでは相性の悪い相手。ザロクとのバトルや一定の戦いを経て レベルアップは果たしているものの、みずタイプ一致だけで戦わなければならないのは辛い戦いである。 「新しい技も覚えてるし、お前の今の実力を示すには良い機会だろ。とにかく攻めろ!」 『うん、私頑張るからねマスター!』 ミズチは笑顔でギンガの期待に応えようと身構えた。アリアの方も戦闘態勢に入り真剣な表情へと変わる。 「それじゃあ始めようか。アリア、頼んだよ。」 『解りましたマスター!』
先に仕掛けてきたのはアリアの方だった。光の鞭を作り出し素早くミズチに迫ると、そのまま鞭での 攻撃に入る。床に向けて素早いスピードで向かってくる鞭の先端をミズチはバックステップで回避した。 『私のきらめくウィップを避けるとはなかなかどうして・・・良い反射神経してるじゃないですか。』 『はッ!!』 避けた直後に放ったみずのはどうが、アリアの顔面に直撃する。よろめいた所で追撃を与えようかどうか ミズチは迷ったが、アリアがあっと言う間に持ち直したので再び探り合いに戻る事にした。 『驚いちゃいましたよ。今のはお見事でした。私もちょっと本気を出さないといけませんね・・・』 そう言って不敵な笑みを浮かべるアリアからはもう慈愛は感じられない。鞭を手にとって笑うその姿は まるでその方面の女王の様だった。ミズチも再び回避してからの反撃に専念する。 『届かないとでも思っているんですか?』 アリアが笑ったその瞬間鞭が振り上げられ、ミズチのいるかなり離れた場所へ先端が飛んできた。 あまりにも速いその一撃が避け切れず、咄嗟に頭を動かしたものの肩に命中してしまう。 『まさか、今の一撃で致命を免れるだなんて!』 余裕を見せていたアリアであったが彼女の速さには素直に感服した様子だった。一方ミズチは 肩に苦手なタイプでのダメージを受けてしまい、傷口を押さえながらも相手を睨み付ける。 『私は負けない!』 再び繰り出したみずのはどうは、馬の体では避けにくい後足を狙ったものだった。馬は先に前足を 動かしても後足は同じ位置にある場合が多い。彼女も例外では無く、ダメージを受けてしまう。 『信じられませんね・・・ゴーストタイプのポケモンでありながら私をココまで翻弄するなんて。』 アリアは追い詰められた事が今まで無かったのか、歯軋りしながら悔しがった。そういう細かい所は やはり馬の様に見える。ミズチの方も追加効果が発動しない事が非常に悔しい。 (眠らなくても混乱状態にはなるハズ。なんとかして相手を混乱状態にしたい・・・!) 「君のミズチは凄いね。タイプ不利を跳ね返してリードしているじゃないか。」 スダの言う通り、経験の浅い進化前のポケモン同士の戦いである事もその一因ではあるが 確かにミズチのバトルセンスは素晴らしいものだった。2度の攻撃命中によって若干ながらも リードを奪っている。2人のHPは共にイエローゾーンに突入していた。
「ミズチ、相手は動揺してるぜ。隙を突いて一気に勝負を決めてやれ!」 『うん、大丈夫だよマスター!』 肩の傷を庇ってはいられないとミズチは呼吸を整え、再び構えを取る。 「相手も傷を負っている事には変わりないさ。ココでアドバンテージを取らせて頂く事に しようかアリア。準備は出来ているね?」 『ハイ、大丈夫ですマスター!』 アリアは呼吸を整えると、胸の前で手を組み美しい歌声を披露し始めた。スダにとっては 相手を眠らせて一方的に攻撃し、コレ以上のダメージを減らしておくつもりであったのだが、 ミズチに対しては逆効果であると言う事を彼は理解していない。 「おっと、こいつはラッキーだな。もう一度ダメージを与えてやれ!」 ミズチはその歌声を無視して再びみずのはどうを放ち、歌う事に集中しているアリアの腹に 命中させた。衝撃で大きくバランスを崩したアリアはそのまま倒れ込んでしまう。 「回復している!?・・・まさか!」 慌ててスダはポケギアの図鑑項目を見ようとしたが既に手遅れである事は彼自身承知していた。 ある程度の予想はついていたのだがそのページを見た瞬間に片手で頭を掻き溜息をついてしまう。 「参ったね・・・」 ミズチの特殊能力は『音波系の攻撃を受けるとその攻撃を無効にして回復する』と言うもの。 音を使わないさいみんじゅつであれば置かれている状況は好転したかもしれないが、体力を完全に 回復したミズチと、今の攻撃で混乱状態に陥ってしまったアリアとでは最早殆ど勝負は決していた。 「アンタのミスだな。有利なタイプである事に驕って相手の力を見誤ったのが悪ぃんだ。」 『マ、マスター・・・頭がフラフラします・・・』 混乱状態に加え先程の攻撃のダメージにより体力は既にレッドゾーンに達している。 同じ攻撃を何度も行なう事はミズチにとっても本意では無いがダメージを与えられる技が他に無いのだから 仕方が無い。掌から発射された水の衝撃波は一直線にアリアに向かって飛んでいく。 『ふわぁ・・・』 ふらつくアリアは無意識に体が横に動いてしまい、結果的にみずのはどうを回避した後きらめくウィップを 振るってミズチにダメージを与えた。鞭が思ったよりも遠くへ飛ぶ事を理解したミズチは一旦距離を取る為に 後退する。アリアは再度手を胸の前で組むと今度は呪文を唱え始めた。 『死なばもろとも・・・ですよぉ・・・』 混乱状態から回復していないアリアであったが運が良く技が次々に決まっている。青白い光に包まれたアリアの 姿を見てギンガはアリアが『みちづれ』を発動した事を悟った。 「クッ、3ターンの間逃げ切って引き分けを狙うつもりか!」 『そうはさせない!』 ミズチは再びみずのはどうを放ちアリアにとどめを刺そうとするが、アリアは俊敏な動きを見せさらに きらめくウィップを使いミズチを全く寄せ付けない。1ターン経過により青白い光がさらに強くなっていく。 『ウフフ、勝ちを狙いたかったんですが・・・引き分けで妥協する事にしましょう♪』 『嫌だ!私はマスターの為に・・・引き分けよりも勝ちを取る!』 先程の肩に受けた傷のせいか狙いが完全には定まっていないが、腹に狙いを定めて放った一撃が彼女の胸付近に 命中し、吹き飛ばされた彼女は倒れてそのまま動かなくなってしまう。テレビ局での戦い、ギンガはまず1勝を得た。
『マスター、勝ったよ!私勝っちゃった!!』 「偉いぜミズチ。この調子でもっと強くなってくれよ。」 『うん、もっともっと頑張るからね!』 満面の笑みを浮かべて抱きついてきたミズチの頭を撫でながら、ギンガは少しだけ 複雑な心境だった。娘に対する父親の気持ちが少しだけ理解出来た様な気がしたからだ。 (姉貴に対する親父の気持ちも・・・こんな感じだったんだろうな。) 哀しい記憶が脳裏を掠めたがギンガはそれを振り払い、ミズチをボールに戻すとスダに呼びかける。 「もっとやるか?」 「いや、残念だが休憩時間はそろそろ終わりだ。しかし、君のミズチはなかなかに素早かったよ。 これからの伸びによってはとんでもないポケモンになるかもしれないね。」 スダは倒れているアリアをボールに戻すと、手を振りながらバトルフィールドを後にした。 (確かにミズチはあの下半身にも関わらず素早さに秀でているな。キメラが全てそうなのかは解らねぇが 相手の方もかなり攻撃を回避していた・・・どちらにせよキメラ相手には充分注意する必要がありそうだな。) 暫く座って対戦相手を待っていたギンガであったが、10分程経過した頃人相の悪い男が部屋に入ってきた。 「お?なんだテメェは。完全な部外者じゃねぇかよ。」 「ゴスに言われてついてきたんだ。俺の実力を試す良いチャンスになると思ってるんだが。」 「あー、ゴスの野郎か。って事はかなり『出来る』トレーナーって事だな。面白ぇ・・・」 リーゼントにサングラス、片目に傷。テレビ局の人間とはとても思えぬ風貌の男はへらへら笑いながら 懐からボールを取り出すと、自己紹介をする。 「俺の名はアベ。元々はトーホクでちっとは名の知れた暴走族『ポイズンロッド』の幹部だったんだが、 リーダーのトサカさんが解散表明しちまったもんでココに来てカメラマンの仕事をしてるってワケよ。」 背中に背負っている撮影の為の機材が目に入り、ギンガはやっと彼が局の人間である事を認識した。 (そりゃ元暴走族ならおかしくねぇか・・・にしても裏方しか出来ねぇよなあんな顔じゃ・・・) 「トサカさんは俺よりずっと凄ぇ人だぜ。そんな人についてトレーナーとしての実力を上げる事が出来たのは 俺の誇りよ。テメェがどれだけやれる奴なのか、しっかりと試してやるぜ!」 トサカと言う名前はギンガにも聞き覚えがあった。トーホクのウオマサリーグで四天王をしている・・・ その辺りの知識しか無かったが四天王であると言うだけでその強さは解ろうと言うものだ。 「よし、出てきやがれ俺の相棒!」 アベはバトルフィールドにボールを投げ入れ、虫眼鏡の様な目が特徴的なポケモンを出現させた。 「俺のギョガンカはそんじょそこらの雑魚とはワケが違ぇぜ!」 『おホッ!久しぶりに良いバトルが出来そうですなッ!!』 ギョガンカは巨大な目を瞬きさせながら嬉しそうに笑う。 (魚・・・って事はみずタイプか。もう少し情報が無ぇとな・・・) ギンガはポケギアの図鑑項目を開き、ギョガンカの情報を確認した。 『ギョガンカ・サーチポケモン・・・巨大な2つの瞳はライトとして機能し、棲処の深海にて 獲物を探したり、また外敵をいち早く発見し逃げる為に使われる。発光器官は目だけでは無く 体にも備わっており、繁殖期に入ると体を光らせて雌を魅了する。』 (みず・ひかりか。まぁひかりタイプだからと言って飛び抜けた強さってワケでも無ぇし・・・) 引き続き彼は相手の特殊能力の確認に移る。 『特殊能力・発光魚眼・・・『ひざしがつよい』状態では技の命中率が半分になってしまうが、『あめ』や『あられ』の状態では攻撃が必ず命中する。』 (チッ。天候を操る技を覚えているポケモンがこっちのパーティにいない以上・・・相手の方は 有利な展開に持ち込む為絶対に天気を変えてくるハズ。厄介な相手だぜ。) 相手も休憩時間を利用してココに来ている。あまり考えている時間は無い。 (まぁ、コイツしかいねぇか・・・) ギンガは自分の側のバトルフィールドにモンスターボールを投げ入れ、ボルタを出現させた。 『うし!さぁ、サッサとやろうぜ!!』 『随分元気が良いではないですかッ!これは期待出来ますなッ!』 単純な相性ではボルタが勝ってはいるが、天候操作によるダメージの増加は避けられない。 ギンガは素早いボルタを使い相手が有利な状態になる前に仕留めようと考えていた。
試合開始と同時に動いたのはボルタの方だった。フットワークの軽さも手伝ってあっと言う間に 近距離攻撃の間合いに迫る。ギョガンカもまず相手の攻撃を回避するのが先決と考え跳ね回ったが、 動体視力も優れているボルタの方が一枚上手であった。 『おらよッ!』 電撃を纏った拳が見事ギョガンカに命中し、喰らったギョガンカは吹き飛ばされ床に転がる。 「成程。パワーとスピードの兼ね備えってヤツか。だが俺のギョガンカはタフネスが売りだ!」 まともに攻撃を喰らったものの、ギョガンカの体力はイエローゾーンに入った程度だ。 『ウムウ。なかなかやるではないですかッ!しかし、私の領域に入ってもそれが貫けますかなッ!』 ギョガンカが立ち上がり小声でボソボソと呟くと、バトルフィールドがある部屋の天井に雨雲が 出現し、雨を降らせフィールドの中だけに水辺を作り上げる。『あまごい』による天候変化だろう。 「ボルタ!相手は威力の上がった水タイプ技で攻めるつもりだ。こっちも電気一本でのしてやれ!」 『敵さんも甘くは無いですね。ココは一気に畳みかけますよ!』 右、左と相手に攻撃のチャンスを与えぬ様に距離を縮めていく。だが先程までと違い、膝が水に 浸かった状態でのステップは非常に足が重い。どうしても動きが鈍くなるのだ。 『貴方が私に近付こうとする以上ッ!私を惑わせようとしても無駄ですぞッ!!』 近距離格闘のボルタと遠距離攻撃のギョガンカではボルタの方が分が悪い。どんなに相手が遠くにいようと 攻撃を当てるチャンスがあるギョガンカに対して、ボルタは絶対に近付かなければ攻撃が当たらないからだ。 「よし、一発決めてやれ!」 アベの言葉に応じ、ギョガンカは口から大量の鉄砲水を吐き出した。光線にも匹敵するかの様なその速さに ボルタは成す術も無く飲み込まれダメージを負う。ボルタの特殊能力もこの攻撃では役に立たない。 『タイプ一致+あめのハイドロポンプか・・・クソッ!』 単なる水を被った程度のダメージでは済まない。体に命中した鉄砲水は体全体に打撃を加えられた様な ダメージを与える。ボルタはたった一撃でHPを半分以上持っていかれてしまった。 (天候操作は洒落にならねぇな・・・今同じ様に出ていっても格好の的になるだけだ。なら、相手が 変わるまで戦法を変更しねぇと勝てねぇ!) ギンガと同じ様にボルタもそれを感じていた。遠距離攻撃を何度も行なってくる相手には多少与える ダメージが少なかろうと遠距離攻撃に切り替えるしか無い。ギョガンカもその手で来るだろうと 考え、遠距離攻撃が飛んできたら回避、すかさずカウンターを決めようと考えていた。 『だが・・・退かねぇーーーッ!!』 ハイドロポンプを喰らい大きく距離を離されたボルタであったが、驚異的なスピードで距離を縮めると マッハパンチを命中させた。口の下、顎に受けたギョガンカのハイドロポンプは咄嗟に出した攻撃の為 虚しく見当違いの方向へと飛んでいく。アベはボルタの素早さの高さに驚いていた。 「あんな遠くから立て直せるモンか!?信じられねぇ・・・!」 『クッ!しかし所詮は無駄な足掻き。そんな攻撃ではようやっとイーブンになったに・・・』 『勘違いしてるだろ・・・俺はまだアンタの目の前にいるんだぜ?』 マッハパンチはあくまで距離を縮める為だけに使ったジャブに過ぎない。本格的な攻撃は相手が攻撃を 外した後に安全に行なう。ボルタはすかさずもう一度かみなりパンチを喰らわせ、相手の体力を レッドゾーンにまで追い詰めた。ギョガンカもただやられているワケにはいかない。 『ならばッ!』 ギョガンカはオーロラビームを繰り出し、ボルタをとにかく遠くへ追いやろうとした。咄嗟にボルタが 防御姿勢を取った為深いダメージを与える事は出来なかったが、両者のHPの差は殆ど無くなる。 『コレで勝ちですッ!』 相手を攻撃不能な位置へと追いやったと思い込んでいるギョガンカは、ハイドロポンプを再び放ち 試合を終わらせようとした。だが命中率の高くないハイドロポンプは何度も当たる代物では無い。 遠くにいるからこそ寧ろボルタはその攻撃を回避し、自身の遠距離攻撃を繰り出す。 『アンタと同じ・・・タイプ一致のきあいだまだ!』 放たれた橙色に輝く光球はギョガンカを飲み込むと膨れ上がって爆発し、ギョガンカのHPをゼロにした。 相手の攻め方を見誤ったギョガンカの敗北に、アベはただ黙って項垂れるしか無い。
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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.10 ) |
- 日時: 2011/01/19 06:16
- 名前: 夜月光介 ID:KvxF2dyI
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- 第4章 2話 『言霊』
「参ったぜ・・・完敗だ。トサカさんにも拮抗していそうな力・・・俺もまだまだ 修行が足りねェな。だが今度戦った時はそうはいかねェ。覚えとけ!」 「あぁ、また機会があったらな。」 テレビ局の者達は短い休憩時間をバトルに費やす程対人戦に飢えているらしい。アベは去り、それとは 入れ違いに黒縁眼鏡をかけた長い黒髪の女性がバトルフィールドのある部屋に入ってきた。 「予定通り2:20分に入室・・・と。貴方がギンガ君ね。クダさんに聞いたわ。もう3つも ジムバッチを持っているそうじゃない。期待出来そうだわ・・・」 彼女は懐中時計で時刻を確認しながら、ギンガの方を向きモンスターボールを手に取った。 「私はエツコ。このリューキューテレビ局ではタイムキーパーを担当しているわ。時間の大切さは バトルも普段の仕事も同じ。計算に基いた戦い方というものを教えてあげる。」 「セシナと同じ理屈でモノを言うヤローか。バトルは計算だけではどうにもならねぇって事を 逆に俺が教えてやるぜ。かかってこいよ!」 エツコはバトルフィールドにモンスターボールを投げ入れ、ポケモンを出現させる。 姿を現したのは巨大な目覚まし時計の様なポケモンだった。 『戦闘ヲ行ナウ時間デス。』 両端に付いている黄金の鐘と時計盤の顔面を持つ巨大な体躯が目に付く。ロボットの為はがねタイプを 持つであろう事は容易に想像出来た。ギンガはポケギアで詳しい情報を検索する。 『メビウス・とききざみポケモン・・・イタン山にある古代遺跡で発見されたポケモン。古代人の作り上げた 人工ポケモンだと言う説もあるが真実かどうかは不明。1時間毎に鐘を鳴らし古代人達に時を告げていた。』 (はがね・ひかりタイプか。まぁ見た目からして機械だもんな・・・) 続いて彼は特殊能力の項目を参照した。 『特殊能力・快速時鐘・・・HPが3分の1以下になるとすばやさが2倍になる』 (元々素早さが高そうなやつじゃねぇな・・・2倍になっても元々素早い相手には梃子摺ると見た。それに タイプの相性から考えてもコイツを使うのが一番だぜ。) ギンガはモンスターボールを選ぶとバトルフィールドに投げ入れ、ホノオグマを出現させる。 『このポンコツが。すぐにぶっ壊してやるぜ・・・』 『私ノ力ヲ思イ知レ!』 「ひかりタイプの攻撃は等倍になるホノオグマね。メビウス、プランBよ。深追いはせず、 最終的な勝ちを目指しなさい。」 『了解!』 2匹が身構えた所で、エツコはポケギアのストップウォッチ機能を選択し、ボタンを押してタイムを 計り始めた。ギンガの方は彼女が敵を疲弊させる延長戦を行なうと見て、短期決着を想定していた。 「ホノオグマ、とにかく火力で攻め続けろ!相手に動く隙を与えんな!」 『ヘッ、燃やし尽くしてやるぜー!!』 戦闘開始と同時に動いたのはホノオグマの方だった。口から漆黒の炎を吹き出し、メビウスに容赦無く ダメージを与えていく。威力はそれほどでも無いが技の追加効果により相手を火傷状態にする事が出来た。 『1時ニナリマシタ。冷凍光線ヲ当テル時間デス。』 その炎に包まれていたメビウスの口から突如発射されたれいとうビームをホノオグマは回避する事が 出来なかった。ダメージこそ少なかったとは言えそのスピードには恐怖さえ感じる。 『速ェ・・・だが一気に決めてやるぜ!』 メビウスは床に立ったままの状態の為動く術を持たない。移動する事が出来るホノオグマの方が通常有利なハズだった。 背後に回りほのおのキバで噛み付いてさらにダメージを与えていく。火傷のダメージもあってメビウスのHPは 半分を少し下回る所まで下がった。 『流石に堅ェな。だがココまでいけば俺の勝ちは決まったも同然・・・』 『3時ニナリマシタ。自己再生スル時間デス。』 『うっ!?』 メビウスの針が回転し3時の部分で止まると、メビウスは自己再生により体力を半分回復した。先程与えたダメージが 火傷でのダメージを除けば全て無駄になってしまう。ホノオグマは歯軋りして悔しがった。 『畜生、奴には回復手段が・・・』 「メビウスの特徴は並外れたスタミナと防御力、回復にこそあるわ。これといって強くも無い相手なら充分プランA、 総攻撃で倒す事も出来るけど・・・貴方のポケモンは優秀ね。だからこそプランBで叩き潰してあげる。」 (クッ・・・火傷が消えねぇのが唯一の救いか。確かに効果抜群でこのダメージしか喰らわねぇってのは・・・ だが、ほのおのキバでの連続攻撃を決めれば勝てるかもしれねぇ!) ギンガは若干の不利を悟りながらも勝負を投げ出そうとはしなかった。チャンピオンを目指すと宣言した自分が こんな野試合で逃げ出すワケにはいかない。勝機がある限り、攻撃の手を緩めるワケにもいかなかった。 「受けたダメージは大してデカくねぇ。相手に回復させる隙を与えず一気に倒すんだ!」 『ああ、必ず殺ってやるぜ!マスター、アンタの勝利の為に!』 ホノオグマもまた動かない相手を攻撃するのは楽と考え、ほのおのキバでの連続攻撃一辺倒に集中する事にする。 相手ははがねタイプの為他の技では効果的なダメージを与える事が出来ない為だ。 (・・・とは言ったものの、相手に効果的なダメージを与える事が出来ていないのは確かね。等倍でのダメージ及び 1ターン消費は危険が伴うわ。ココは何とか保険を取っておきたい所なんだけど・・・) エツコは思った程ホノオグマのHPが減っていない事に対して焦りを感じ始めていた。打倒目標タイムの5分まで もう2分を切っている。彼女も勝ちに行きたいのは同じだろう。 「メビウス、攻撃を行ない回復した後、充填を開始しなさい!」 『7時ニナリマシタ。炎ヲ噴射スル時間デス。』 時計の針が目まぐるしく回転し、止まった瞬間に口から火炎が噴き出しホノオグマを襲う。だがホノオグマ自体が ほのおタイプを持っている為れいとうビームと同じく大きなダメージは見込めない。 『だが、攻撃のスピードが速ェ・・・!何だってこんなに速ェんだ。相手は動いてねぇのに避け切れねぇとは・・・!』 『3時ニナリマシタ。自己再生スル時間デス。』 『させるか!』 メビウスの針が3時で止まり回復が始まった時にホノオグマの攻撃が当たり、メビウスのHPは半分の所で止まった。 あと2回攻撃がまともに命中すれば勝てると言う所まで追い詰めている。おまけに火傷の追加ダメージもこの局面では大きい。 『11時ニナリマシタ。シャインブレイカノ充填ヲスル時間デス。』 突如メビウスの体が白く光り輝き始めた。周囲の光を吸い取っている様に見える。ホノオグマは危険を感じて再び ほのおのキバでの攻撃を行なうが、相手のHPをゼロにするにはまだダメージが足りない。 「消えなさい!」 『12時ニナリマシタ。シャインブレイカヲ放ツ時間デス。』 メビウスの口から凄まじいエネルギーを持った白い光線が発射され、あまりの眩しさにギンガは目を瞑るしか無かった。 何が起き、どうなったのかよく解らない。光線が止んだであろうと思って目を開けた時には、ボロボロの姿で かろうじて立っているホノオグマと、微動だにせず立っているメビウスの姿があった。 『ウオオオオオオオ!!』 最後の力を振り絞って口から放った遠距離攻撃であるじごくのごうかがメビウスのHPを削り取る。メビウスはとどめを刺す為に 再度じこさいせいを行なおうとしたが、ターン経過による火傷の追加ダメージにより瀕死状態となった。 「・・・5分ね。貴方の全力を見せてもらえて、本当に楽しいバトルだったわ。」 エツコは溜息をつきながらも、気丈に振る舞いギンガの前で笑顔を見せた。負ける事がトレーナーにとってどれ程悔しい事か ギンガにはよく解っている。彼もチネンタウンでの野試合で何度か負けを経験していた。 (火傷が無かったらこっちがアウトだったな。戦いなんざ最後は運だ。勝利の女神に愛された奴だけが栄冠を手にする 事が出来る・・・俺は果たしてニケに愛されるだけの実力を持っているんだろうか?) ポケモントレーナーが彼女からの寵愛を受けたいと願う空想上の女神ニケ。勝利を与えると言われるその姿は 凛々しく、そして神々しい。大事な局面で勝つ為には、運にも恵まれなければならないのだ。
「良かったら今度は収録現場にいらっしゃい。静かにしててくれないといけないけど。」 分刻みの仕事を任されているエツコはスタジオを後にした。ギンガはホノオグマをボールに戻した後、 暫くの間先程の戦いでしくじった点が無いかどうか思案していたが、また見知らぬ人物が部屋に 入ってきた為そちらの方を見た。 「あれ、君がクダさんが言ってた凄腕のトレーナーかい?随分若いんだね。」 そう言ってにこやかに笑う男も大分若い。実年齢は見ただけでは解らないが、少なくとも20代前半に見える。 「丁度休憩時間になって良かったよ。強いトレーナーと戦うのは大好きだからね。・・・おっと、 まだ自己紹介が済んでいなかった。僕の名前はキベ。宜しく・・・」 白のワイシャツに青のネクタイ、手には台本が握られている。 「俺はギンガだ。サシキタウンからココまで来た。」 「へぇ、随分遠い所から来たんだね。君は・・・何て言うか、まだ若いのに精悍な顔つきをしているよ。 脚本を書いている僕としては、君みたいな人間から刺激を受けたくなってくるなぁ。」 彼はポケットからモンスターボールを取り出すと、バトルフィールドに投げ入れポケモンを出現させた。 「見せてもらうよ、君の強さを!」 『ロロロロロロ・・・』 まるで鈴が鳴っているかの様な声を出すエメラルドグリーンの体色を持つポケモンは、コロコロ表情を 変えながら笑っている。見ているだけで心が落ち着く様な不思議な雰囲気を持っているポケモンだ。 (コダマよりデケェな。進化後か?) 夜、ベランダで林の方を見ている時にコダマを見た事があるギンガはそう思いながら図鑑項目のページを開いた。 『コトダマ・せいれいポケモン・・・森の中で迷った人の道案内をしてあげる事もある心優しいポケモン。 自分の言葉を持たず喋ってきた相手の言葉を鸚鵡返しに話す習性を持つ。』 (やっぱり進化した後だな。コイツの能力は何だ・・・?) 『特殊能力・木霊輪唱・・・1ターン中に相手と同じ技を出した場合、全てのステータスが1段階上昇する』 (まぁそんな事は稀だろ・・・エスパー同士の戦いじゃあるまいし。さてどうしたモンか・・・) 回復ポッドはスタジオ内に設置されていたが出来れば手持ちのレベルは均等に上げておきたい。まだ使用していない ポケモンはテトラ・ニッケル・カッパーであったが、ギンガはテトラにある技を覚えさせていたのを思い出した。 (エスパー対策として覚えさせておいたあの技がありゃ何とかなるかもな。よし!) ギンガはバトルフィールドにモンスターボールを投げ入れテトラを出現させる。まだ進化こそしていないものの 野試合を通して強敵と渡り合った事で瞳には自信の色がハッキリと見えていた。 『この俺と戦おうとはな!上等だ。すぐに後悔させてやるぜ・・・』 『コノ俺ト戦オウトハナ!上等ダ。スグニ後悔サセテヤルゼ・・・』 コトダマは自分の言葉を持たない。それ故に相手の心を読む事は難しかった。 「エスパータイプに対してどくタイプか。なかなか蛮勇だね。ドラゴンタイプは確かにステータスは高いけど、 相性の悪さも認めなくちゃいけないよ・・・それじゃ、始めようか。」 キベが指示を出すと、コトダマは挨拶代わりとばかりにサイコキネシスを放ってきた。 『ウオッ!!いきなりかよ。危ねェな・・・』 『ウオッ!!イキナリカヨ、危ネェナ・・・』 ある程度距離を取っていた為敏捷な動きが出来るテトラはそれを回避したが、長距離にいるとあの技を出す事が 出来ない。近付けばサイコキネシスが命中する確率も大幅に高まる。ポイントは何時距離を縮めるかだった。 (奴も小せェから鈍重とは言えねェ。何とか隙を見せてくれれば良いんだが・・・) 「凄腕と言われるだけの事はあるじゃないか。楽しくなってきたよ・・・」 キベは心からバトルを満喫している様であったが、ギンガにとっては苦しい戦いである事に変わりは無い。 『マスター、どうする?無理を承知で当てに行くしか無ェか?』 「いや、ココは一旦様子見だな。長距離攻撃を使って相手のHPを少しでも多く減らすんだ。」 『よし、そうと決まれば・・・くらいやがれ!』 『ヨシ、ソウト決マレバ・・・クライヤガレ!』 猛毒の霧を口から発射するポイズンミストがコトダマに命中したが、同時にテトラの周囲にドーナツの様な 光の輪が発生し、一気に小さくなってテトラの胸を締め付け始めた。 『グッ!!』 「ひかりのわ。毎ターン威力20のダメージを与え続けるひかりタイプの技だよ。まきつくと同じ様に効果は 数ターンに渡って続く。こういう攻撃の方が確実性があって僕は好きなんだよね。」 『ロロロロロ・・・』 手を叩いて攻撃成功を喜んでいるコトダマであったが、ポイズンミストがまともに命中した為、HPとしては 今だ差はそれ程開いていない。ギンガとしては一刻も早く自分が勝利する為の展開に持ち込みたかった。
ひかりのわのダメージは深刻だった。1回辺りのダメージは少量とは言え、何度も受ければ大きなダメージとなる。 しかも1度攻撃を受けてしまったら2回〜5回のダメージが確定してしまうのだ。そんなダメージを受けている 最中にサイコキネシスをまともに受ければ瀕死は免れない。最早猶予は残されていなかった。 (不味いな・・・もう避ける事を考えていたら負ける。相討ち覚悟で前に出ねェと・・・) 体を締め付けるひかりのわに苦しみながらも、いちかばちかの突撃を試みるテトラ。 「最後の足掻き、って所かな?動きも封じられている君のポケモンじゃコトダマに近付く事は出来ないよ。 僕が引導を渡してあげよう。サイコキネシスでとどめを刺せ!」 『ロロロロロ・・・』 満面の笑みを浮かべながらコトダマはサイコキネシスを放った。その場から走り出す事も出来ないテトラにとっては 絶望的な状況である。だが拘束されているにも関わらずテトラは渾身の力を振るい跳躍した。 「何ッ!?」 跳躍からの組み付き・・・コトダマの背後に着地したテトラはかみくだくを行い、相手のHPを大きく減らしていく。 『どうだ、痛ェか?散々俺を虚仮にしやがって!』 『ドウダ。痛ェカ?散々俺ヲ虚仮ニシヤガッテ!』 テトラの言葉を返しながら必死にコトダマは振りほどこうとするが、ガッチリ組み付いたテトラはおいそれと 相手を逃がしはしない。もう一度噛み付き、コトダマのHPはレッドゾーンに突入した。 「なんて事だ・・・君のポケモンは本当に凄い!」 予想だにしていなかった展開を見てキベは逆に興奮している。圧倒的不利を引っくり返すその諦めない力・・・ 6年前に目撃したあの戦いから今までずっと見る事が無かったものだ。
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