ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 第4章 1話 『テレビ局の兵達』 ( No.9 ) |
- 日時: 2011/01/02 20:04
- 名前: 夜月光介 ID:YLe3my4.
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- バトルフィールドに投げ入れたボールから出現したミズチは、非常に落ち着かない様子だった。
『マスター、あの人強そうだね・・・』 「ザロクとのバトルで見せたお前の力なら倒せるハズだ。自分の力を信じて戦え。」 『お手柔らかにお願いしますね♪』 握手を求めてきたアリアに対して、ミズチはビクビクしながらもそれに応える。 『大丈夫ですよ、リラックスしてくださいリラックス。ココは楽しくバトルする所。 真剣勝負であっても何かを失う場所じゃ無いんです。お互いにベストを尽くしましょう。』 『は、はい・・・』 優しく微笑むアリアに対して何時の間にか敬語を使っているミズチ。バトルの腕はまだ 未知数だが相手の心をほぐす心得は充分にある様だ。 「アリアはリューキューで新たに見つかったひかりタイプのキメラなんだよ。科学者が 作り出したと言われているんだが、その科学者も誰かは解らないらしいね。」 ギンガはスダの言葉を聞きながら、ポケギアの図鑑項目を開いていた。 『アリア・せいかポケモン・・・リューキューで発見された半人間のポケモンであり、習わなくても 素晴らしい歌唱力を生まれつき持っている。その美しい歌声はどんなに怒り狂っている人間でも 心を鎮め、絶望に苦しんでいる人間でも希望を与えてくれるケンタウロスだ。』 (特殊能力は・・・) ギンガは図鑑項目からアリアの特殊能力が書かれている項目を選んだ。 『特殊能力・聖歌音域・・・ねむらない。(ねむってしまう技を受けても絶対にねむり状態にならない)』 (眠らせてから叩くって戦法は無理って事か。正攻法でいくしかねぇな・・・) 元々みず・ゴーストタイプのミズチでは相性の悪い相手。ザロクとのバトルや一定の戦いを経て レベルアップは果たしているものの、みずタイプ一致だけで戦わなければならないのは辛い戦いである。 「新しい技も覚えてるし、お前の今の実力を示すには良い機会だろ。とにかく攻めろ!」 『うん、私頑張るからねマスター!』 ミズチは笑顔でギンガの期待に応えようと身構えた。アリアの方も戦闘態勢に入り真剣な表情へと変わる。 「それじゃあ始めようか。アリア、頼んだよ。」 『解りましたマスター!』
先に仕掛けてきたのはアリアの方だった。光の鞭を作り出し素早くミズチに迫ると、そのまま鞭での 攻撃に入る。床に向けて素早いスピードで向かってくる鞭の先端をミズチはバックステップで回避した。 『私のきらめくウィップを避けるとはなかなかどうして・・・良い反射神経してるじゃないですか。』 『はッ!!』 避けた直後に放ったみずのはどうが、アリアの顔面に直撃する。よろめいた所で追撃を与えようかどうか ミズチは迷ったが、アリアがあっと言う間に持ち直したので再び探り合いに戻る事にした。 『驚いちゃいましたよ。今のはお見事でした。私もちょっと本気を出さないといけませんね・・・』 そう言って不敵な笑みを浮かべるアリアからはもう慈愛は感じられない。鞭を手にとって笑うその姿は まるでその方面の女王の様だった。ミズチも再び回避してからの反撃に専念する。 『届かないとでも思っているんですか?』 アリアが笑ったその瞬間鞭が振り上げられ、ミズチのいるかなり離れた場所へ先端が飛んできた。 あまりにも速いその一撃が避け切れず、咄嗟に頭を動かしたものの肩に命中してしまう。 『まさか、今の一撃で致命を免れるだなんて!』 余裕を見せていたアリアであったが彼女の速さには素直に感服した様子だった。一方ミズチは 肩に苦手なタイプでのダメージを受けてしまい、傷口を押さえながらも相手を睨み付ける。 『私は負けない!』 再び繰り出したみずのはどうは、馬の体では避けにくい後足を狙ったものだった。馬は先に前足を 動かしても後足は同じ位置にある場合が多い。彼女も例外では無く、ダメージを受けてしまう。 『信じられませんね・・・ゴーストタイプのポケモンでありながら私をココまで翻弄するなんて。』 アリアは追い詰められた事が今まで無かったのか、歯軋りしながら悔しがった。そういう細かい所は やはり馬の様に見える。ミズチの方も追加効果が発動しない事が非常に悔しい。 (眠らなくても混乱状態にはなるハズ。なんとかして相手を混乱状態にしたい・・・!) 「君のミズチは凄いね。タイプ不利を跳ね返してリードしているじゃないか。」 スダの言う通り、経験の浅い進化前のポケモン同士の戦いである事もその一因ではあるが 確かにミズチのバトルセンスは素晴らしいものだった。2度の攻撃命中によって若干ながらも リードを奪っている。2人のHPは共にイエローゾーンに突入していた。
「ミズチ、相手は動揺してるぜ。隙を突いて一気に勝負を決めてやれ!」 『うん、大丈夫だよマスター!』 肩の傷を庇ってはいられないとミズチは呼吸を整え、再び構えを取る。 「相手も傷を負っている事には変わりないさ。ココでアドバンテージを取らせて頂く事に しようかアリア。準備は出来ているね?」 『ハイ、大丈夫ですマスター!』 アリアは呼吸を整えると、胸の前で手を組み美しい歌声を披露し始めた。スダにとっては 相手を眠らせて一方的に攻撃し、コレ以上のダメージを減らしておくつもりであったのだが、 ミズチに対しては逆効果であると言う事を彼は理解していない。 「おっと、こいつはラッキーだな。もう一度ダメージを与えてやれ!」 ミズチはその歌声を無視して再びみずのはどうを放ち、歌う事に集中しているアリアの腹に 命中させた。衝撃で大きくバランスを崩したアリアはそのまま倒れ込んでしまう。 「回復している!?・・・まさか!」 慌ててスダはポケギアの図鑑項目を見ようとしたが既に手遅れである事は彼自身承知していた。 ある程度の予想はついていたのだがそのページを見た瞬間に片手で頭を掻き溜息をついてしまう。 「参ったね・・・」 ミズチの特殊能力は『音波系の攻撃を受けるとその攻撃を無効にして回復する』と言うもの。 音を使わないさいみんじゅつであれば置かれている状況は好転したかもしれないが、体力を完全に 回復したミズチと、今の攻撃で混乱状態に陥ってしまったアリアとでは最早殆ど勝負は決していた。 「アンタのミスだな。有利なタイプである事に驕って相手の力を見誤ったのが悪ぃんだ。」 『マ、マスター・・・頭がフラフラします・・・』 混乱状態に加え先程の攻撃のダメージにより体力は既にレッドゾーンに達している。 同じ攻撃を何度も行なう事はミズチにとっても本意では無いがダメージを与えられる技が他に無いのだから 仕方が無い。掌から発射された水の衝撃波は一直線にアリアに向かって飛んでいく。 『ふわぁ・・・』 ふらつくアリアは無意識に体が横に動いてしまい、結果的にみずのはどうを回避した後きらめくウィップを 振るってミズチにダメージを与えた。鞭が思ったよりも遠くへ飛ぶ事を理解したミズチは一旦距離を取る為に 後退する。アリアは再度手を胸の前で組むと今度は呪文を唱え始めた。 『死なばもろとも・・・ですよぉ・・・』 混乱状態から回復していないアリアであったが運が良く技が次々に決まっている。青白い光に包まれたアリアの 姿を見てギンガはアリアが『みちづれ』を発動した事を悟った。 「クッ、3ターンの間逃げ切って引き分けを狙うつもりか!」 『そうはさせない!』 ミズチは再びみずのはどうを放ちアリアにとどめを刺そうとするが、アリアは俊敏な動きを見せさらに きらめくウィップを使いミズチを全く寄せ付けない。1ターン経過により青白い光がさらに強くなっていく。 『ウフフ、勝ちを狙いたかったんですが・・・引き分けで妥協する事にしましょう♪』 『嫌だ!私はマスターの為に・・・引き分けよりも勝ちを取る!』 先程の肩に受けた傷のせいか狙いが完全には定まっていないが、腹に狙いを定めて放った一撃が彼女の胸付近に 命中し、吹き飛ばされた彼女は倒れてそのまま動かなくなってしまう。テレビ局での戦い、ギンガはまず1勝を得た。
『マスター、勝ったよ!私勝っちゃった!!』 「偉いぜミズチ。この調子でもっと強くなってくれよ。」 『うん、もっともっと頑張るからね!』 満面の笑みを浮かべて抱きついてきたミズチの頭を撫でながら、ギンガは少しだけ 複雑な心境だった。娘に対する父親の気持ちが少しだけ理解出来た様な気がしたからだ。 (姉貴に対する親父の気持ちも・・・こんな感じだったんだろうな。) 哀しい記憶が脳裏を掠めたがギンガはそれを振り払い、ミズチをボールに戻すとスダに呼びかける。 「もっとやるか?」 「いや、残念だが休憩時間はそろそろ終わりだ。しかし、君のミズチはなかなかに素早かったよ。 これからの伸びによってはとんでもないポケモンになるかもしれないね。」 スダは倒れているアリアをボールに戻すと、手を振りながらバトルフィールドを後にした。 (確かにミズチはあの下半身にも関わらず素早さに秀でているな。キメラが全てそうなのかは解らねぇが 相手の方もかなり攻撃を回避していた・・・どちらにせよキメラ相手には充分注意する必要がありそうだな。) 暫く座って対戦相手を待っていたギンガであったが、10分程経過した頃人相の悪い男が部屋に入ってきた。 「お?なんだテメェは。完全な部外者じゃねぇかよ。」 「ゴスに言われてついてきたんだ。俺の実力を試す良いチャンスになると思ってるんだが。」 「あー、ゴスの野郎か。って事はかなり『出来る』トレーナーって事だな。面白ぇ・・・」 リーゼントにサングラス、片目に傷。テレビ局の人間とはとても思えぬ風貌の男はへらへら笑いながら 懐からボールを取り出すと、自己紹介をする。 「俺の名はアベ。元々はトーホクでちっとは名の知れた暴走族『ポイズンロッド』の幹部だったんだが、 リーダーのトサカさんが解散表明しちまったもんでココに来てカメラマンの仕事をしてるってワケよ。」 背中に背負っている撮影の為の機材が目に入り、ギンガはやっと彼が局の人間である事を認識した。 (そりゃ元暴走族ならおかしくねぇか・・・にしても裏方しか出来ねぇよなあんな顔じゃ・・・) 「トサカさんは俺よりずっと凄ぇ人だぜ。そんな人についてトレーナーとしての実力を上げる事が出来たのは 俺の誇りよ。テメェがどれだけやれる奴なのか、しっかりと試してやるぜ!」 トサカと言う名前はギンガにも聞き覚えがあった。トーホクのウオマサリーグで四天王をしている・・・ その辺りの知識しか無かったが四天王であると言うだけでその強さは解ろうと言うものだ。 「よし、出てきやがれ俺の相棒!」 アベはバトルフィールドにボールを投げ入れ、虫眼鏡の様な目が特徴的なポケモンを出現させた。 「俺のギョガンカはそんじょそこらの雑魚とはワケが違ぇぜ!」 『おホッ!久しぶりに良いバトルが出来そうですなッ!!』 ギョガンカは巨大な目を瞬きさせながら嬉しそうに笑う。 (魚・・・って事はみずタイプか。もう少し情報が無ぇとな・・・) ギンガはポケギアの図鑑項目を開き、ギョガンカの情報を確認した。 『ギョガンカ・サーチポケモン・・・巨大な2つの瞳はライトとして機能し、棲処の深海にて 獲物を探したり、また外敵をいち早く発見し逃げる為に使われる。発光器官は目だけでは無く 体にも備わっており、繁殖期に入ると体を光らせて雌を魅了する。』 (みず・ひかりか。まぁひかりタイプだからと言って飛び抜けた強さってワケでも無ぇし・・・) 引き続き彼は相手の特殊能力の確認に移る。 『特殊能力・発光魚眼・・・『ひざしがつよい』状態では技の命中率が半分になってしまうが、『あめ』や『あられ』の状態では攻撃が必ず命中する。』 (チッ。天候を操る技を覚えているポケモンがこっちのパーティにいない以上・・・相手の方は 有利な展開に持ち込む為絶対に天気を変えてくるハズ。厄介な相手だぜ。) 相手も休憩時間を利用してココに来ている。あまり考えている時間は無い。 (まぁ、コイツしかいねぇか・・・) ギンガは自分の側のバトルフィールドにモンスターボールを投げ入れ、ボルタを出現させた。 『うし!さぁ、サッサとやろうぜ!!』 『随分元気が良いではないですかッ!これは期待出来ますなッ!』 単純な相性ではボルタが勝ってはいるが、天候操作によるダメージの増加は避けられない。 ギンガは素早いボルタを使い相手が有利な状態になる前に仕留めようと考えていた。
試合開始と同時に動いたのはボルタの方だった。フットワークの軽さも手伝ってあっと言う間に 近距離攻撃の間合いに迫る。ギョガンカもまず相手の攻撃を回避するのが先決と考え跳ね回ったが、 動体視力も優れているボルタの方が一枚上手であった。 『おらよッ!』 電撃を纏った拳が見事ギョガンカに命中し、喰らったギョガンカは吹き飛ばされ床に転がる。 「成程。パワーとスピードの兼ね備えってヤツか。だが俺のギョガンカはタフネスが売りだ!」 まともに攻撃を喰らったものの、ギョガンカの体力はイエローゾーンに入った程度だ。 『ウムウ。なかなかやるではないですかッ!しかし、私の領域に入ってもそれが貫けますかなッ!』 ギョガンカが立ち上がり小声でボソボソと呟くと、バトルフィールドがある部屋の天井に雨雲が 出現し、雨を降らせフィールドの中だけに水辺を作り上げる。『あまごい』による天候変化だろう。 「ボルタ!相手は威力の上がった水タイプ技で攻めるつもりだ。こっちも電気一本でのしてやれ!」 『敵さんも甘くは無いですね。ココは一気に畳みかけますよ!』 右、左と相手に攻撃のチャンスを与えぬ様に距離を縮めていく。だが先程までと違い、膝が水に 浸かった状態でのステップは非常に足が重い。どうしても動きが鈍くなるのだ。 『貴方が私に近付こうとする以上ッ!私を惑わせようとしても無駄ですぞッ!!』 近距離格闘のボルタと遠距離攻撃のギョガンカではボルタの方が分が悪い。どんなに相手が遠くにいようと 攻撃を当てるチャンスがあるギョガンカに対して、ボルタは絶対に近付かなければ攻撃が当たらないからだ。 「よし、一発決めてやれ!」 アベの言葉に応じ、ギョガンカは口から大量の鉄砲水を吐き出した。光線にも匹敵するかの様なその速さに ボルタは成す術も無く飲み込まれダメージを負う。ボルタの特殊能力もこの攻撃では役に立たない。 『タイプ一致+あめのハイドロポンプか・・・クソッ!』 単なる水を被った程度のダメージでは済まない。体に命中した鉄砲水は体全体に打撃を加えられた様な ダメージを与える。ボルタはたった一撃でHPを半分以上持っていかれてしまった。 (天候操作は洒落にならねぇな・・・今同じ様に出ていっても格好の的になるだけだ。なら、相手が 変わるまで戦法を変更しねぇと勝てねぇ!) ギンガと同じ様にボルタもそれを感じていた。遠距離攻撃を何度も行なってくる相手には多少与える ダメージが少なかろうと遠距離攻撃に切り替えるしか無い。ギョガンカもその手で来るだろうと 考え、遠距離攻撃が飛んできたら回避、すかさずカウンターを決めようと考えていた。 『だが・・・退かねぇーーーッ!!』 ハイドロポンプを喰らい大きく距離を離されたボルタであったが、驚異的なスピードで距離を縮めると マッハパンチを命中させた。口の下、顎に受けたギョガンカのハイドロポンプは咄嗟に出した攻撃の為 虚しく見当違いの方向へと飛んでいく。アベはボルタの素早さの高さに驚いていた。 「あんな遠くから立て直せるモンか!?信じられねぇ・・・!」 『クッ!しかし所詮は無駄な足掻き。そんな攻撃ではようやっとイーブンになったに・・・』 『勘違いしてるだろ・・・俺はまだアンタの目の前にいるんだぜ?』 マッハパンチはあくまで距離を縮める為だけに使ったジャブに過ぎない。本格的な攻撃は相手が攻撃を 外した後に安全に行なう。ボルタはすかさずもう一度かみなりパンチを喰らわせ、相手の体力を レッドゾーンにまで追い詰めた。ギョガンカもただやられているワケにはいかない。 『ならばッ!』 ギョガンカはオーロラビームを繰り出し、ボルタをとにかく遠くへ追いやろうとした。咄嗟にボルタが 防御姿勢を取った為深いダメージを与える事は出来なかったが、両者のHPの差は殆ど無くなる。 『コレで勝ちですッ!』 相手を攻撃不能な位置へと追いやったと思い込んでいるギョガンカは、ハイドロポンプを再び放ち 試合を終わらせようとした。だが命中率の高くないハイドロポンプは何度も当たる代物では無い。 遠くにいるからこそ寧ろボルタはその攻撃を回避し、自身の遠距離攻撃を繰り出す。 『アンタと同じ・・・タイプ一致のきあいだまだ!』 放たれた橙色に輝く光球はギョガンカを飲み込むと膨れ上がって爆発し、ギョガンカのHPをゼロにした。 相手の攻め方を見誤ったギョガンカの敗北に、アベはただ黙って項垂れるしか無い。
 |
|