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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜
日時: 2010/09/12 20:27
名前: 夜月光介
参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html

第3章 3話 『リリィとホタル』

 ザロクは話が上手く、思い出話を聞いている内に外はすっかり暗くなっていた。
「あ・・・もう7時か。御免ねこんな時間まで付き合わせちゃって・・・」
「いえ、とっても楽しかったです。」
ザロクは欠伸をしながら立ち上がると、部屋のカーテンを閉める。
「明日から数日間リリィさんに送ってもらって1年ぶりの同窓会だよ。僕達は全員
リーグ関係者だから気軽に会いに行けなくなっちゃったのが辛い所だね。」
「ズリとオボンって奴か。」
「そうだよ。昔は皆ナンブシティに住んでいたんだ。今はキンブシティって言う名前に
変わってるみたいだけどね。今の市長が自分の名前にしたかったんだとか・・・」
ナツミはギンガの表情が変わったのを見逃さなかった。
「どうしたのギンガ。」
「いや・・・兄貴の名前と同じだからちょっと面食らっただけだ。多分別人だろ。」
ギンガも立ち上がり、部屋から出ようとドアのノブに手をかける。ナツミも
その後ろに付いていこうとしたがふと出てきた疑問をそのまま口にした。
「あ、そういえば・・・ザロクさんって能力者なんですか?」
「今は殆ど使ってないけどね。クレヤボヤンスだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、ナツミの手は反射的に胸と股間を隠していた。
「ホ、本当に使ってないんですよね!?」
「前は面白がっていたけど、僕ももう24歳だからね。飽きちゃったよ・・・
銭湯の番台に立っている人を想像してもらえば解るだろう?」
「それならいいんですけど・・・」
少々顔を赤くしながらナツミはジムを後にした。

 カテナタウンの施設に戻ってくると、疲労感のせいかギンガはベッドに倒れこんでしまう。
「さっきのクレヤボヤンスってのは何だったんだ?ピンとこなかったんだけどよ。」
「ああ、透視能力よ。物体を透かして見る事が出来る能力ね。」
「なッ・・・!ナツミの裸を見られてたかもしれねぇって事か!?」
「ザロクさん目にマスクしてたから瞳が光ってるのかどうか確認出来なかったし、そんな飢えてる
人には見えなかったから微妙な所なんだけど・・・正直解らないわね。」
「チッ、もし見てたらジムリーダーと言えどもぶん殴ってる所だぜ。」
「でももし見ていたのなら、馬鹿正直に自分の能力を明かすかしら?適当にしらばっくれる事だって
出来たハズよ。私自身としてはそういう人じゃないと信じたいんだけど・・・」
ザロクの瞳が見えなかっただけに、見ていたのか見ていないのかはまるで解らなかった。
ならば何故マスクを付けているのかと暫く水掛け論が続いたが、答えは出ず2人はその論議を
諦め、素直に眠りに付く事にした。

 翌朝・・・2人はそれぞれシャワーを浴び着替えを済ませ、朝食を取ると衣服を外に干し始めた。
「また随分と綺麗に晴れてるわね。雲1つ無い快晴だわ。」
旅は楽しい事だけでは無い。衣服の心配もそうだが食料品の買出し等しなければならない事は
山程ある。そういった面倒な仕事は進んでナツミがこなしていた。
「ふああ・・・しかし足止めが続くな。今日は適当に野試合でもこなすか?」
「そうね。干すのが終わったら私も行くわ。どちらにしても今日は外に出ないとね・・・」
親に貰った金とバトルで得た金だけでは些か心許なかったが、これから先新しい衣服や
食料、それとボールや技マシンの補充は絶対に必要になる。2人にはそれがよく解っていた。
「まだもうちょっとかかりそうだから先にセンターに行っておいて。」
「解った。お前のポケモンもついでに回復してくっから渡してくれ。」
ナツミを残しギンガはポケモンセンターに向かう。

 リューキューの気温は高い。だがカントー等の湿度も高い夏と違ってカラッと晴れているだけ
まだ気持ちの良いものだ。部屋の中の涼しさを感じると余計にそれが解る。
「ウキミソーチー!ココはカテナタウンポケモンセンターでございます!」
自動ドアを抜けると入り口にいた女性職員が挨拶してくれる。他の男性職員も元気な
リューキューの民である事をアピールしているかの様だ。朝8時の時点でかなりのトレーナーが
集まってきていたが、その中に見覚えのある顔を見つけギンガは思わず声をかけた。
「リリィじゃねぇか。お前トレーナーじゃねぇだろ?」
「んー?私じゃないよん。妹が今回復してもらってる所だから。」
リリィの視線の先には赤色の服を着た少女がおり、カウンターでボールが返ってくるのを
待っている様だった。
「へぇ、妹がいたのか。結構歳が離れてるんじゃねぇか?」
「うん。アタシが18で妹が13だからねぇ。今からオメガショップに行く所なんだ。
暇だったら一緒に来ない?人数が多い方がショッピングも楽しいだろうし。」
「俺達も丁度買い物に行く所だったんだ。まぁトレーナーも多いだろうし、野試合も
ある程度はこなせるだろ。」
「おっけー!決まりだね。」
年上とは思えない天真爛漫な笑顔・・・キツネと同じ様に見えるが微かな違いが確かにあった。
(無理をしている・・・)
何かは解らないがリリィには恐らく深い傷があるのだろう。ギンガと同じ様に・・・

 ギンガもセンターで2人分のポケモンの回復を済ませ、リリィ達と合流した。
「アタシの妹、ホタルって言うんだ。仲良くしてあげてね。」
「初めまして、ホタルです!」
赤がかった黒髪と胸元のルビー、腕に付いているリングもクリムゾンレッドと、褐色金髪のリリィとは
随分違う印象の少女だった。透き通る様な色白の肌もリリィと違う所だ。
「とりあえず君の友達の所へ行ってからショップだよね。ホタルと回るのは久しぶりだから
ちょっと楽しみなんだ。良い商品が沢山あると良いね!」
「私も楽しみ!お姉ちゃんに直接会うのも1年ぶりだし、今日は沢山遊びたいな!」
「リーグ関係の仕事か。」
「私、こう見えてもクニガミリーグでは結構有名なんですよ。」
ホタルも明るい利発そうな少女だった。2人が揃うと賑やかさが増幅されていく気がする。
ギンガはあまり五月蝿いのは苦手だった為、とりあえずナツミと合流する為センターから
外に出た。リリィとホタルも後につき施設へと向かう。
施設の方では洗濯物を干し終わったナツミがギンガの到着を待っていた。
「あれ、ギンガ・・・その2人は誰?」
「あ、初めまして!この街で育て小屋やってるリリィです。宜しくねー。」
「!ナツミさん!?」
一見見ただけでは解らなかったのだが、ナツミは少女が自分の名前を知っている事に
反応し彼女を凝視した。服装や雰囲気が異なっているが顔は同じだ。
「ホタルちゃん・・・」
「あれホタル。顔見知りなの?」
「昨日、社で会ったから・・・」
表情を曇らせたホタルに対してナツミは彼女の思いを察した。
「あの場所では違う自分を演じてるのね。大丈夫、誰にも言わないから。」
「すいません・・・私、あそこでは普段の自分になれなくて。」
社で会った時はやたら躾をされている少女だと思ったが、それは単なる演技だったのだろう。
「あー、兄貴の奴五月蝿いからねぇ。アタシの事も嫌ってるしさぁ。」
「私も堅苦しいの嫌いだからそれを強制するお兄ちゃんも嫌い・・・」
ホタルは暫くの間俯いていたが、顔を上げた時には先程の笑顔を取り戻していた。
「じゃあ、行きましょうか!」
嬉しさを抑えきれないのか走り出したホタルをリリィが追いかけた。
「そんなに急がなくっても店は逃げやしないわよ!」
「全く、しょうがねぇなぁ・・・」
ギンガが見せた久しぶりの笑顔に、ナツミの心は癒される。
(この2人との出会いはギンガにとってプラスに働いたみたいね・・・本当に良かったわ。)

 カテナタウンはシティ程の規模では無かったもののなかなかの賑わいを見せている
大きなショップがあった。看板には『Ω』の文字が大きく描かれている。
「オメガショップはこの辺りじゃ一番大きなポケモンショップだねー。ギノザに比べると
品揃えはまだまだかもしれないけど。」
「3階建ての建物自体が珍しいかもしれねぇな。」
御誂え向きと言うべきか、ショップの横にはバトルフィールドが用意されており、トレーナー達が
バトルを楽しんでいる。リーグ休暇中でも普通のトレーナーはレベルを上げる事に熱心な様だ。
「ま、野試合は後でも出来るだろ。まずは買い物しようぜ。」
「ポケモン関係だけじゃなくて食品や化粧品関係まで網羅してる店なんですよ!」
「それはなかなか凄い店ねぇ・・・」
中はセンターと同じく冷房が完備されており、所狭しと商品が並んでいる。
「普通のボールだけじゃなくて、タイマーボールやダークボールなんかも充実してるわね。」
「あっちにあるのは傷薬か。結構広くて狭い通路になってるから迷いそうだな。」
「とりあえず4人で回るのもなんだから、分かれましょう。」

 ジャンケンで別れ方を適当に選んだ結果、ギンガはホタルと、ナツミはリリィと一緒に店を
見て回る事になった。ギンガは真っ先に栄養剤売り場へと向かう。
「もっと早く大量に買い込んでおければ良かったんだがな・・・流石に1本9800円となると
なかなか手が出ねぇぜ・・・」
「私が買ってる香水とかよりも遥かに高いですもんね。」
たった1本の栄養ドリンクさえも子供では手が届かない世界。ギンガは諦めて技マシン売り場の方へと
向かおうとした。それをホタルが呼び止める。
「あっあの・・・良ければ私がケースで買いますよ?」
「お前が!?」
「あんまりココで堂々と言えたものじゃないですけど、私四天王なので・・・」
リーグ四天王ともなれば年間で支給される額は数千万に達する。勿論チャンピオンならば
2年間で数億稼げる程だ。バトルが強ければ何でも手に入る世界でもある。
「あんまり大きな買い物しないので、余ってる位なんですよ・・・お姉ちゃんも
『助けてあげて』って言っていましたし・・・」
ホタルは腰に付けていたポシェットから財布を取り出すと、カードを抜き出し
店員に見せた。店員は暫く驚きのあまり目を見開いていたが、我に返ると
購入する商品の確認をする。
「どの商品をどれだけ購入されるのでしょうか・・・」
「ポケモンの栄養剤を1種類につき100本ずつ。全部ギンガさんのPCに入れて何時でも
使える様にしてあげてください。ギンガさん、自分名義のIDナンバーを覚えてますか?」
「あ、ああ・・・」
呆気に取られたままギンガはIDナンバーをホタルに伝え、店員がそれを確認すると
全ての商品はPCに転送された。カードを持ったままホタルは歩き出す。
「今度は何を買います?・・・大丈夫ですよ。ギンガさんがチャンピオンになったら
返してもらいますから。それまでは無期限の貸しって事で!」
ホタルの冗談もギンガの驚愕を打ち消す事は出来なかった。
(13歳で四天王とは・・・俺も負けてはいられねぇな・・・)

 一方ナツミとリリィの方は食料品コーナーを見て回っていた。
「旅の間ってあんまり良い食事出来ないでしょ。今日の夜は皆で美味しいものでも
食べない?勿論アタシが奢るからさ。」
「そ、そんな!会ったばかりなのにそんな御好意に甘えるワケには・・・」
「大丈夫大丈夫。ザロクさんからも今日の朝イチで旅費貰ってるし、本業の方も頗る
順調だから。結構こう見えてお金持ちなんだよ、アタシは。」
そう言いながら彼女はカートに生卵や胡瓜、チャーシュー肉、そして麺のパックを入れていく。
「料理だってコレ位なら・・・」
どうやらリリィは冷やし中華を御馳走しようとしているらしい。屈託無い笑顔を見ていると
ナツミも心が癒された。
(この人は私と違う・・・人の心を読むと言うか、掴む事が出来る人なのね。)
「あ、そうだ。後でホタルに新しい髪飾りでも買ってあげよっかな。前のやつも
かなり気に入ってくれたみたいだけど・・・」
「優しいんですね。」
ナツミの言葉に対して、リリィはばつが悪そうに頭を掻く。
「アタシも助けられてるからね。妹に。そりゃ血の繋がった妹だから可愛くないって言ったら
嘘になるよー。あと兄貴があんまりにもアレだからその反動もあるのかな。」
「そのお兄さんって・・・?」
「兄貴もホタルと同じ邪神守民・・・いや元々はアタシも一族の末裔なんだけどさ。
何て言うかプライドが高くてアタシやホタルに真面目な態度を強要するのよ。
守民ならば誰に見られても恥ずかしくない様にしろってね。」
「そうだったんですか・・・」
「アタシも色々あって守民の仕事を辞めちゃってね。紫炎拳古武道を習ったり
ジャンパーの能力を鍛えたりして・・・最終的には育て小屋に落ち着いたの。」
ナツミは自分とは違う、辛い人生を歩んできたであろう彼女の事を思った。
「ナツミちゃんも頑張ってね。ギンガ君から色々聞いたけど、あの子は闇に呑まれかかってる。
私も前に同じ経験をしてるからよく解るの。その侵食を食い止められるのは一番近くにいる
貴方しかいない・・・重いかもしれないけど、好きなら全部受け止めてあげないとね・・・」
「はい、覚悟は出来てます。私もギンガも気持ちは同じですから・・・」
前々からその兆候は出てきていた。ナツミ自身は気が付かなかったがナツミにもその兆候が
出始めている。ナツミはギンガを救いたいと思っていたが、本当は2人が支え合って
危うい状態を保っているのだ。ナツミもギンガもまだその事には気が付いていなかった。

 その後それぞれが食料品・衣服・技マシン・ボール等を購入し、合流した時には既に時計は
12時を回っていた。ショップの屋上には何軒かの屋台があり、そこで適当に
食事を取った後4人はバトルフィールドへと向かう。
「まだ昼時だから他のトレーナーがいないねー。」
「まぁ文句は言えねぇよな。誰か来るまで気長に待つしか・・・」
ベンチに座ろうとしたギンガに対して、リリィは手招きをした。
「アタシとやろうよ。アタシもポケモンを育てていないワケじゃ無いんだよ?」
「面白ぇ、やってやろうじゃねぇか。」
ギンガはそのままバトルフィールドの片側に立ち、ナツミ達は側でその戦いを
見守る事になった。
「リリィさんのバトルの腕が全然解らないだけに怖いわね・・・」
「お姉ちゃんは私と同じ炎タイプの使い手なんです。元々は私じゃなくて
お姉ちゃんが『炎邪神守民』の座に着くハズでしたから・・・」
ナツミはホタルがリリィの心の傷を知っているのだと見抜いた。しかしその
傷の正体を聞くワケにもいかず、ギンガの応援に回る。
「頑張ってねギンガー!」
「お姉ちゃん、負けちゃ駄目だよー!!」
「観客が2人だけってのはこういう場所にしちゃ少ねぇよな・・・」
「まぁ良いじゃないそれでも。ところで君に相談があるんだけど。」
「何だよ今相談って。」
「ただ勝負するだけじゃつまらないからさ。アタシ、ポケモンの卵を持ってるのよ。
客からの預かり物じゃ無いし、炎ポケモンでもない奴ね。君が勝ったら
それをあげる。負けたらあげない。別に君が何を賭けるワケでも無し。
どう、悪くない話でしょ?」
「願ってもねぇ話だな。そりゃ当然承諾させてもらおうか。」
リリィは綺麗な歯を見せながら笑うと、ジーンズのポケットからモンスターボールを取り出した。
メンテ

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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.8 )
日時: 2010/12/16 21:27
名前: 夜月光介 ID:vTC7iqDM
参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html

第3章 10話 『青龍の警告』

 翌朝・・・2人はシャワーを浴び服を着替え宿舎での朝食を済ませると、一路ヤカシティに向かって
出発する事にする。それを知っていたザロクとリリィが道路へ向かう道で待っていてくれた。
「コレアタシのポケギアの電話番号ねー。困った時にはかけて頂戴。すぐに駆けつけるから!」
「色々と世話になったな・・・ん?マスクもう付けねぇのかアンタは。」
「アイが帰ってきたんだ。僕の顔が解らなければアイも戻ってきてはくれないよ。それに・・・
決めたんだ。もう隠さないで生きるって。コレは証なんだ。僕達の絆の証明になる。」
微笑みながらザロクはそう言って手を振る。最初は少々気持ちが悪かった蛇の目も、
2人にはもう気にはならない。彼がどれだけ優しい人間であるか既に嫌と言う程承知していた。
「じゃあ・・・私達はもう行きます。2人共、また会いましょう!」
自転車を漕ぎ出し、2人はカテナタウンを後にした。この先には60番道路が待っている。

 朝からの出発で、ヤカシティに到着するのは午後2時頃になるだろうとナツミは予想していた。
朝の9時。暑いが心地良い潮風も吹いてきている。遠くに広がる海を見ながら自転車を
走らせるのはとても気持ちの良いものだった。
「ヤカシティは港がある大きな街よ。カントーやジョウトのトレーナーも腕試しや観光で
集まってくるらしいわ。腕に自信のあるトレーナー揃いだって言うから楽しみね!」
「ああ。ミズチの戦力に不安がある今、レベルを上げておくのは大事だからな・・・
それに余裕があればテレビ局とかもあるらしいし、見ておくのも悪くねぇ。」
海沿いの道を暫く走りながらとりとめも無く会話を続けていると、遠くに人影が見え
2人は自転車を止めた。黒いフードを被った黒づくめの人物がこちらに向かって歩いてくる。
「チッ・・・ダークの連中か。あの時の2人の内の1人か?」
「ポケモンを出す準備をしておきましょう。無防備に構えているのは危険だわ。」
バッグからモンスターボールを出し臨戦態勢に入る2人を見てその人物は笑った。
「ふうむ・・・油断せぬ所は流石と言った所じゃのう。じゃが・・・」
黒づくめの人物はそう言った瞬間両手を前に突き出し指から水を噴射した。突然の行動に
対応出来ず、2人のモンスターボールはその水によって弾かれボタンを押されずに
道端に転がってしまった。反射的にボールを取りに向かったギンガは、そのまま水のベールに
首の下まで包まれ身動きが取れなくなってしまう。
「危害を加えるつもりは全く無い。時が来るまでワシ等のもとへ大人しくついて来てもらいたいのじゃ。」
「貴方は一体・・・」
ギンガの事を案じながらも迂闊には動けないと考え、ナツミは彼に話し掛ける。
「ワシの名はシオジ。ダーク五殺生の一員で青龍の名も持っておるよ。」
そう言いながら男はフードを取った。長い白髪と顔を覆う髭がかなりの老齢である事を感じさせる。
(こんな高齢の人までダークの幹部だなんて・・・!)
ともかくこの状況を打開する為には自分達以外の助けが必要になる。そう思ったナツミは
時間稼ぎをしつつついさっき別れたばかりのリリィにポケギアを使って助けを呼ぼうと考えた。
「何故、ギンガを連れて行くんですか?」
「うむ。その事はワシも御主達に話そうと思っておった。ツバサやガドウはその話を聞いて
ついてきてくれるとは思えないと言っておったがな。コモレビに言った方が良いと言われたんじゃ。」
(コレで幹部の名前は4人出たけど・・・あと1人は誰なのかしら。)
勿論ナツミはキツネが幹部であると言う事を知らない。鋭い瞳のまま一挙一動も見逃さぬと
宣言しているかの様に構えているシオジは、ナツミの方を見ながら話を続けた。
「P.O.D.が御主達の事を狙っておると言うのは知っているじゃろう。クロガネ様は
その魔の手から御主達を守りたいと言っておる。組織に向けての表向きの話としては
『類稀なる能力を持つギンガを生きたまま捕縛する』と言う名目じゃがな。」
「そんな話信じられるか!!」
ギンガは身動きの取れない状態のままで吼えた。目には怒りの炎が燃えている。
「もうすぐ、邪神復活の儀式も始まるじゃろう。その復活に必要な駒も揃った。邪神が
復活した時にはクロガネ様も御主も苦しみから解放される事になる。その時まで
ワシ等幹部が全力で匿おうとしておるのじゃ。下手をすれば奴等は御主達の命も
奪おうとしてくるかもしれん。冒険を止めろとは言わん。ただ待ってほしいのじゃ。
今だけは危険じゃからな。今だけは・・・」
「苦しみからの解放?」
「今はそれだけしか言えん。何処で誰が聞いているか解らんからな。本当は正直な所
御主達を連れて行く理由を話すだけで危ないのじゃ。大人しく、ワシを信じて
ついてきてもらえんかのう。絶対に後悔はさせんと誓うぞ。」
真剣な眼差しで訴えるシオジの言葉から嘘は感じなかった。しかしはいそうですかと
ついていくには相手があまりにも危険過ぎる。ナツミはシオジに気付かれぬ様に
後ろに手を回したままポケギアの番号を押そうとした。
「・・・クロガネ様もあの方も、今は籠の鳥じゃ。ワシ等だけがクロガネ様を・・・
そしてあの方を籠から解き放つ事が出来る。いや、もう少し言えば御主達こそが
その役目を担っているとも言えるじゃろう。」
(話が見えない・・・でも、何かを隠している事は確かだわ。)
「あの方に会えばナツミ殿、御主の考えも変わると思うんじゃがのう・・・」
少々俯きながら考え事をしているのか、髭をいじくりながらシオジはナツミから
少し目を逸らした。その時、小刀が彼に向かって飛んできた為、シオジは
掌から水を放ち小刀を弾き落とす。
「邪魔が入りおったか・・・ワシの言う事に嘘偽りは無い!社の者達には迷惑こそ
かけておるが、もう少しでそちらにもワシ等の成そうとしている事が解るハズじゃ!」
「そもそも成してはならんのだ。邪神を復活させる事自体がな。それに彼等にも
彼等の生きる道がある。彼等を助ける役目はこの私に任せてもらおう。」
反対側の小高い丘の様になっている場所から小刀を投げてきたのはナユタだった。
動きを封じる為シオジは再び手から巨大な水の塊を生み出し放ったが、ナユタは
それを避け凄まじい速度で近付き小刀をシオジの喉元に突きつける。
「守民の力を見くびらぬ事だ。」
「成程、噂には聞いておったが御主が社の忍か。なかなかの力を持っておる様じゃのう。
じゃが、ワシも引き下がるワケにはいかぬのじゃ!」
シオジはナユタを突き飛ばすと、水を浴びせ彼女の動きを鈍らせようとした。
その間にナツミはギンガに駆け寄り水のベールに触れ元の水に戻し、ずぶ濡れになった
ギンガと共に再び自転車に乗り込むとその場から逃げ出そうとしていた。ボールは既に
バッグの中に戻っている。シオジはそれに気付いたが彼女を相手にしている為
彼等の動きを見逃す他無い。
「御主が邪神復活を阻止したい気持ちも解るが、こちらにはこちらの理由があって
それを果たそうとしておるのじゃ!今回は要らぬ争い故に引くが、今度は捕縛してでも
御主を止めるぞ。あの者達を守る為にもな!」
「P.O.D.とお前達ダークの処理は私とアソウギに一任されている。我々2人で、
リョウ様から託された任務を必ず遂行するだけだ・・・」
シオジはそのまま水の竜巻と共に姿を消し、後にはナユタだけが残された。
(お前達がどんな甘言を用いようと、私だけは騙されぬ。危険があの2人に忍び寄りつつ
ある事は私が一番知っている事だ。必ず守らなければな・・・)

 ギンガとナツミはその場から立ち去りたい一心で自転車を漕ぎ続けた為、予定よりも若干早く
ヤカシティに到着した。疲れ切ったナツミがポケギアで時刻を確認すると時計は午後1時半を指している。
「毎回コレじゃあ身が持たないわね・・・ギンガの服も濡れてるし着替えないと。」
「まずは宿舎だな。幾ら暑いとは言えこの格好のままじゃ風邪を引いちまう。」
ヤカシティは港がある為チネンタウンやオウリタウン、カテナタウンとは比べ物にならぬ程発展している
街だ。ビル街の中で一際目立つ高い建物はリューキューの観光名所でもあるテレビタワーである。
服が水浸しの為人々に奇異の目で見られたものの、それを無視してジムの裏手にある宿舎に辿り着いた。
濡れた服を取り付けられている洗濯機に入れ着替えを済ませると、椅子に座って暫し相談をする。
「P.O.D.もダークも俺をよっぽど必要としてるみてぇだな。」
「恐らくアンタの力・・・ダークエフォートを利用しようとしてるんだと思うの。これからはより一層の
警戒が必要になりそうね。私達が旅を続ける為にも。」
「そうだな・・・ともかくこの街は人の目も多いから奴等も下手に手出しする事は無ぇだろう。多分・・・
注意するに越した事は無ぇが動かねぇワケにはいかねぇさ。センターに寄った後野試合を済ませようぜ。」
「そうね。アンタのポケモンも大分レベルに差が付き始めてるでしょうし、この辺りで平らにしておく
必要があるわ。まずは情報を集めましょう。強い人達が集まってる場所を探さないと・・・」

 ギンガとナツミはポケモンセンターに立ち寄った後、野試合に適した場所を見つけ次第合流すると言う
意見で一致した。ポケモンを回復し、ナツミはジム戦の手続きに、ギンガの方は真っ直ぐテレビタワー
付近の方へと向かう。大通りの方を歩くと様々な店が軒を連ねていた。
「大分賑わってんな。イベントでもやってんのか?」
テレビタワーは観光名所となっている為、一部の階を除くフロアや展望台が一般公開されている。
付近での撮影も頻繁に行なわれているので、人が集まってくる場所と言う条件は満たしていた。
「フィールドのスペースとかは無ぇのかな?」
開けた広場の様な場所が無いので右往左往していると、人混みにぶつかり人にぶつかってしまう。
「わ、悪ぃ!・・・ん?アンタハルミさんじゃねぇか。」
「アラ?久しぶりですネェ!ワタシもギンガ君の事を探してたんですヨォ♪」
漆黒の長髪を手で払いのけながら眼鏡をかけた女性はキンキン声を出し周囲をざわつかせた。
「もうちっとトーン落としてくれよ。皆こっち見てっから。」
「あ、ゴメンナサイ・・・2人の図鑑完成度を確かめてくれと博士に頼まれマシテ・・・」
(そういや図鑑全然埋まってねぇな。ポケモンの捕獲に集中してねぇから当たり前なんだが。)
屈託の無い笑みを浮かべるハルミに対して、後ろめたさを感じつつもギンガはチャンピオンを目指す為に
図鑑完成を二の次にしている事を告げた。
「そうでしタカ・・・ワタシも、それだけの為にココに来たワケじゃ無いんですけどネ。博士からコレを渡してくれと
頼まれまシテ・・・それも今渡しておきマス。」
ハルミ助手はショルダーバッグの中からリモコンの様な機械と純金で出来たボールを手渡した。
「この機械はダウジングマシンと言うものでシテ・・・道端に落ちている様な貴金属を手軽に探す事が
出来マス。付属の説明書はココにありますので後で読んでおいてくだサイ。このボールはギフト用とも
なっているものデショップで売れば5万円にはなると思いマスヨォ♪」
(しかしどっから出てんだこの凄まじい高音は。まるでガラスを引っ掻いてる音みてぇだ・・・)
昔から彼女の声を聞いていると気が滅入ってくる。ギンガは物を受け取ると即座に彼女から
離れる事にした。折角来たのだから2、3日観光すると言っていたので、どちらにせよまた
会わなければならない予感はしたのだが。

 ナツミの方はジムの中にいた女性と話をしていた。
「アタシも昔は色々な所を回って自分の肉体を鍛えたよ。その時ダンナと出会ってね。意気投合
しちゃったってワケ。今はジムリーダーの代理を務められる程強くなれたし・・・」
金髪のショートカット、褐色の肌・・・リリィにどことなく似ていたが腹回りや腕に付いている
筋肉は遥かに多い。夏物で露出の多いスポーツウェアを着込んでいる。
「ジムリーダーのゴスさんは貴方に代理を任せて別の仕事をしたりもするんですか?」
「アタシと一緒にね。だからバトルは午後以降の受付にさせてもらってるんだ。トレーナーには
悪いとは思ってるんだけど。月曜〜土曜日の午前中はテレビに出てるからね。」
「あ、『マッスル会』関係ですね。」
「へぇ、意外とアタシ達の活動も知られてきてるんだね。日本全国の人達を元気にするプロジェクトの
一環として朝の子供向け番組に出てるんだよ。最近は会員も増えてきてね・・・ちなみに
アタシがそのマッスル会のナンバー2なんだけど。」
ゴスの妻だと名乗った女性、カナタはそれを誇りに思っている様だった。
「オウリタウンでナンバー3の方に会ったので・・・ギンガとポケモンバトルをしたんですが
何とか勝ちましたよ。勧誘が結構しつこかったですけどね。」
「あー、ヒライはマッスル会の会員集めに奔走してるからノルマ達成に必死になってるんだよね。
アタシもあんまりしつこくするなって言ってるんだけど治りそうも無い・・・困ったモンだよ。」
カナタは自分がした様なものだとナツミに謝り、申し訳なさそうにしている。
ナツミは彼女とジム戦の日程の調整等を話し合い、その後彼女と別れギンガに合流する事にした。

 ギンガはテレビタワーの中に入りバトルフィールドを探す事にした。
トレーナーが集まる場所には大抵バトルする為の場所が確保されているハズだったが、
タワーの中にはそれらしいものは何処にも無く、全くの無駄足となってしまう。
「クソッ、収穫ゼロかよ・・・」
午前中の疲れもあり、廊下の端にあったベンチに座り自販機で購入したサイコソーダを飲み
一息ついた。このまま1日を無駄にしてしまう事だけは何としても避けなければならない。
「おっとそこのトレーナー、随分疲れてるみたいじゃねぇか。」
声をかけられ顔を上げると、そこには背の高い筋肉質の男性が立っていた。色白だが
逆三角形の肉体は異性で無くとも少しは憧れるものがある。
「おおかたバトルする相手でも探してたんだろ?ココじゃあバトルフィールドは
見つからねぇからな。立ち入り禁止区域の中に1個あるんだが。」
「何!?そんな所にあるのか・・・テレビ局の施設の中じゃあ手が出ねぇな。」
「まぁ任せとけよ。育成で困ったトレーナーに力を貸す。それも俺達の仕事だからな。」
そう言うと男性は先程から首にかかっていたステッカーをギンガに見せた。
ステッカーの中には『マッスルお兄さん・ヤカシティジムリーダー ゴス』と書かれた
名刺が入っている。彼は胸を張りながらギンガの肩に手を回した。
「マッスル会ナンバー1。現リーダーのゴスだ。仲良くやろうぜ!」
高笑いしながらそのままギンガを立たせて奥の方へと連れていく。
(コイツが4番目のジムリーダーか・・・)
通路の奥にあるエレベーターに向かいながらギンガはずっと彼を見ていた。

 展望台のフロアから立ち入り禁止区域のフロアへ足を踏み入れると、すぐさま
社員が彼等の姿を見てこちらに向かってきた。だがゴスがステッカーを見せ
事情を説明すると、頷いて2人をバトルフィールドがある方へと案内する。
「ココは俺とカナタが毎日朝8時から10時まで生放送を行っている番組
『マッスルお兄さん・お姉さんといっしょ』のスタジオだ。番組放映中以外は
そこのバトルフィールドで空いた時間を利用してスタッフがバトルを楽しんでいる。」
天井と背景は青空のセットで、森を意識した様な切り株、キノコ等の小道具が置かれていた。
「ココで待ってれば誰かが休憩がてらバトルを楽しむ為にやってくるさ。」
リーグ規定により野試合を行なう事が出来ないゴスは近くの椅子に座ると大欠伸をしながら
ポケギアを見ていた。ギンガが後ろからそれとなく覗き見ると施設の中が映っている。
「誰が何時来ても良い様にチェックしてるのさ。カナタもどっかに行ってるみてぇだしな。」
ジムリーダーとしての責務は怠らない。その姿勢にギンガが感心していると部屋のドアが開き
眼鏡をかけた髭面の男性が入ってきた。カップラーメンと箸をそれぞれ手に持っている。
「あれ、スダさんもう休憩だったんスか。」
「ゴス君こそジムに帰っていなかったのかい。・・・あれ、その子は?」
「野試合したいって言ってたんで連れてきたんスよ。今使ってないこのスタジオだけなら
居させてやっても構わないスかね?」
「クダさんに聞いておいた方が良いと思うよ。あの人結構そういうのに五月蝿いからね・・・
まぁ良いや。まだ時間があるからバトルを楽しむとしよう。君の名前は?」
スダと呼ばれていた男性はギンガの方を向いて名前を尋ねた。
「ギンガだ。宜しく頼む。」
「随分良い目をしてるじゃないか。私の名前はスダ。音響監督の職に就いているよ。
それじゃ、時間もあまり無いしそろそろ始めるとしよう。」
ゴスはクダと言う人物に許可を求めに行くのか一旦その場から席を外し、スダはスタジオの隅に
置いてあった椅子を持ってきて座る。ラーメンを食べながらモンスターボールを投げた。
「このバトルフィールドはウチのスタッフの憩いの場なんだよ。のんびりと勝ち負けを気にせずに
バトルを楽しむ。ココのモットーさ。」
フィールドに出現した下半身が馬の少女は、背中の翼をはためかせながらはにかんでみせる。
『私、アリアって言います。宜しくお願いしますね!』
耳が尖っていたりはするが上半身は普通の人間の様に見えた。肌の色が人間とは違うミズチと
比べれば遥かに人間よりの姿をしている。ギンガは様子見も兼ねてミズチを出す事にした。
メンテ

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