ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜
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- 日時: 2010/09/12 20:27
- 名前: 夜月光介
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- 第3章 3話 『リリィとホタル』
ザロクは話が上手く、思い出話を聞いている内に外はすっかり暗くなっていた。 「あ・・・もう7時か。御免ねこんな時間まで付き合わせちゃって・・・」 「いえ、とっても楽しかったです。」 ザロクは欠伸をしながら立ち上がると、部屋のカーテンを閉める。 「明日から数日間リリィさんに送ってもらって1年ぶりの同窓会だよ。僕達は全員 リーグ関係者だから気軽に会いに行けなくなっちゃったのが辛い所だね。」 「ズリとオボンって奴か。」 「そうだよ。昔は皆ナンブシティに住んでいたんだ。今はキンブシティって言う名前に 変わってるみたいだけどね。今の市長が自分の名前にしたかったんだとか・・・」 ナツミはギンガの表情が変わったのを見逃さなかった。 「どうしたのギンガ。」 「いや・・・兄貴の名前と同じだからちょっと面食らっただけだ。多分別人だろ。」 ギンガも立ち上がり、部屋から出ようとドアのノブに手をかける。ナツミも その後ろに付いていこうとしたがふと出てきた疑問をそのまま口にした。 「あ、そういえば・・・ザロクさんって能力者なんですか?」 「今は殆ど使ってないけどね。クレヤボヤンスだよ。」 その言葉を聞いた瞬間、ナツミの手は反射的に胸と股間を隠していた。 「ホ、本当に使ってないんですよね!?」 「前は面白がっていたけど、僕ももう24歳だからね。飽きちゃったよ・・・ 銭湯の番台に立っている人を想像してもらえば解るだろう?」 「それならいいんですけど・・・」 少々顔を赤くしながらナツミはジムを後にした。
カテナタウンの施設に戻ってくると、疲労感のせいかギンガはベッドに倒れこんでしまう。 「さっきのクレヤボヤンスってのは何だったんだ?ピンとこなかったんだけどよ。」 「ああ、透視能力よ。物体を透かして見る事が出来る能力ね。」 「なッ・・・!ナツミの裸を見られてたかもしれねぇって事か!?」 「ザロクさん目にマスクしてたから瞳が光ってるのかどうか確認出来なかったし、そんな飢えてる 人には見えなかったから微妙な所なんだけど・・・正直解らないわね。」 「チッ、もし見てたらジムリーダーと言えどもぶん殴ってる所だぜ。」 「でももし見ていたのなら、馬鹿正直に自分の能力を明かすかしら?適当にしらばっくれる事だって 出来たハズよ。私自身としてはそういう人じゃないと信じたいんだけど・・・」 ザロクの瞳が見えなかっただけに、見ていたのか見ていないのかはまるで解らなかった。 ならば何故マスクを付けているのかと暫く水掛け論が続いたが、答えは出ず2人はその論議を 諦め、素直に眠りに付く事にした。
翌朝・・・2人はそれぞれシャワーを浴び着替えを済ませ、朝食を取ると衣服を外に干し始めた。 「また随分と綺麗に晴れてるわね。雲1つ無い快晴だわ。」 旅は楽しい事だけでは無い。衣服の心配もそうだが食料品の買出し等しなければならない事は 山程ある。そういった面倒な仕事は進んでナツミがこなしていた。 「ふああ・・・しかし足止めが続くな。今日は適当に野試合でもこなすか?」 「そうね。干すのが終わったら私も行くわ。どちらにしても今日は外に出ないとね・・・」 親に貰った金とバトルで得た金だけでは些か心許なかったが、これから先新しい衣服や 食料、それとボールや技マシンの補充は絶対に必要になる。2人にはそれがよく解っていた。 「まだもうちょっとかかりそうだから先にセンターに行っておいて。」 「解った。お前のポケモンもついでに回復してくっから渡してくれ。」 ナツミを残しギンガはポケモンセンターに向かう。
リューキューの気温は高い。だがカントー等の湿度も高い夏と違ってカラッと晴れているだけ まだ気持ちの良いものだ。部屋の中の涼しさを感じると余計にそれが解る。 「ウキミソーチー!ココはカテナタウンポケモンセンターでございます!」 自動ドアを抜けると入り口にいた女性職員が挨拶してくれる。他の男性職員も元気な リューキューの民である事をアピールしているかの様だ。朝8時の時点でかなりのトレーナーが 集まってきていたが、その中に見覚えのある顔を見つけギンガは思わず声をかけた。 「リリィじゃねぇか。お前トレーナーじゃねぇだろ?」 「んー?私じゃないよん。妹が今回復してもらってる所だから。」 リリィの視線の先には赤色の服を着た少女がおり、カウンターでボールが返ってくるのを 待っている様だった。 「へぇ、妹がいたのか。結構歳が離れてるんじゃねぇか?」 「うん。アタシが18で妹が13だからねぇ。今からオメガショップに行く所なんだ。 暇だったら一緒に来ない?人数が多い方がショッピングも楽しいだろうし。」 「俺達も丁度買い物に行く所だったんだ。まぁトレーナーも多いだろうし、野試合も ある程度はこなせるだろ。」 「おっけー!決まりだね。」 年上とは思えない天真爛漫な笑顔・・・キツネと同じ様に見えるが微かな違いが確かにあった。 (無理をしている・・・) 何かは解らないがリリィには恐らく深い傷があるのだろう。ギンガと同じ様に・・・
ギンガもセンターで2人分のポケモンの回復を済ませ、リリィ達と合流した。 「アタシの妹、ホタルって言うんだ。仲良くしてあげてね。」 「初めまして、ホタルです!」 赤がかった黒髪と胸元のルビー、腕に付いているリングもクリムゾンレッドと、褐色金髪のリリィとは 随分違う印象の少女だった。透き通る様な色白の肌もリリィと違う所だ。 「とりあえず君の友達の所へ行ってからショップだよね。ホタルと回るのは久しぶりだから ちょっと楽しみなんだ。良い商品が沢山あると良いね!」 「私も楽しみ!お姉ちゃんに直接会うのも1年ぶりだし、今日は沢山遊びたいな!」 「リーグ関係の仕事か。」 「私、こう見えてもクニガミリーグでは結構有名なんですよ。」 ホタルも明るい利発そうな少女だった。2人が揃うと賑やかさが増幅されていく気がする。 ギンガはあまり五月蝿いのは苦手だった為、とりあえずナツミと合流する為センターから 外に出た。リリィとホタルも後につき施設へと向かう。 施設の方では洗濯物を干し終わったナツミがギンガの到着を待っていた。 「あれ、ギンガ・・・その2人は誰?」 「あ、初めまして!この街で育て小屋やってるリリィです。宜しくねー。」 「!ナツミさん!?」 一見見ただけでは解らなかったのだが、ナツミは少女が自分の名前を知っている事に 反応し彼女を凝視した。服装や雰囲気が異なっているが顔は同じだ。 「ホタルちゃん・・・」 「あれホタル。顔見知りなの?」 「昨日、社で会ったから・・・」 表情を曇らせたホタルに対してナツミは彼女の思いを察した。 「あの場所では違う自分を演じてるのね。大丈夫、誰にも言わないから。」 「すいません・・・私、あそこでは普段の自分になれなくて。」 社で会った時はやたら躾をされている少女だと思ったが、それは単なる演技だったのだろう。 「あー、兄貴の奴五月蝿いからねぇ。アタシの事も嫌ってるしさぁ。」 「私も堅苦しいの嫌いだからそれを強制するお兄ちゃんも嫌い・・・」 ホタルは暫くの間俯いていたが、顔を上げた時には先程の笑顔を取り戻していた。 「じゃあ、行きましょうか!」 嬉しさを抑えきれないのか走り出したホタルをリリィが追いかけた。 「そんなに急がなくっても店は逃げやしないわよ!」 「全く、しょうがねぇなぁ・・・」 ギンガが見せた久しぶりの笑顔に、ナツミの心は癒される。 (この2人との出会いはギンガにとってプラスに働いたみたいね・・・本当に良かったわ。)
カテナタウンはシティ程の規模では無かったもののなかなかの賑わいを見せている 大きなショップがあった。看板には『Ω』の文字が大きく描かれている。 「オメガショップはこの辺りじゃ一番大きなポケモンショップだねー。ギノザに比べると 品揃えはまだまだかもしれないけど。」 「3階建ての建物自体が珍しいかもしれねぇな。」 御誂え向きと言うべきか、ショップの横にはバトルフィールドが用意されており、トレーナー達が バトルを楽しんでいる。リーグ休暇中でも普通のトレーナーはレベルを上げる事に熱心な様だ。 「ま、野試合は後でも出来るだろ。まずは買い物しようぜ。」 「ポケモン関係だけじゃなくて食品や化粧品関係まで網羅してる店なんですよ!」 「それはなかなか凄い店ねぇ・・・」 中はセンターと同じく冷房が完備されており、所狭しと商品が並んでいる。 「普通のボールだけじゃなくて、タイマーボールやダークボールなんかも充実してるわね。」 「あっちにあるのは傷薬か。結構広くて狭い通路になってるから迷いそうだな。」 「とりあえず4人で回るのもなんだから、分かれましょう。」
ジャンケンで別れ方を適当に選んだ結果、ギンガはホタルと、ナツミはリリィと一緒に店を 見て回る事になった。ギンガは真っ先に栄養剤売り場へと向かう。 「もっと早く大量に買い込んでおければ良かったんだがな・・・流石に1本9800円となると なかなか手が出ねぇぜ・・・」 「私が買ってる香水とかよりも遥かに高いですもんね。」 たった1本の栄養ドリンクさえも子供では手が届かない世界。ギンガは諦めて技マシン売り場の方へと 向かおうとした。それをホタルが呼び止める。 「あっあの・・・良ければ私がケースで買いますよ?」 「お前が!?」 「あんまりココで堂々と言えたものじゃないですけど、私四天王なので・・・」 リーグ四天王ともなれば年間で支給される額は数千万に達する。勿論チャンピオンならば 2年間で数億稼げる程だ。バトルが強ければ何でも手に入る世界でもある。 「あんまり大きな買い物しないので、余ってる位なんですよ・・・お姉ちゃんも 『助けてあげて』って言っていましたし・・・」 ホタルは腰に付けていたポシェットから財布を取り出すと、カードを抜き出し 店員に見せた。店員は暫く驚きのあまり目を見開いていたが、我に返ると 購入する商品の確認をする。 「どの商品をどれだけ購入されるのでしょうか・・・」 「ポケモンの栄養剤を1種類につき100本ずつ。全部ギンガさんのPCに入れて何時でも 使える様にしてあげてください。ギンガさん、自分名義のIDナンバーを覚えてますか?」 「あ、ああ・・・」 呆気に取られたままギンガはIDナンバーをホタルに伝え、店員がそれを確認すると 全ての商品はPCに転送された。カードを持ったままホタルは歩き出す。 「今度は何を買います?・・・大丈夫ですよ。ギンガさんがチャンピオンになったら 返してもらいますから。それまでは無期限の貸しって事で!」 ホタルの冗談もギンガの驚愕を打ち消す事は出来なかった。 (13歳で四天王とは・・・俺も負けてはいられねぇな・・・)
一方ナツミとリリィの方は食料品コーナーを見て回っていた。 「旅の間ってあんまり良い食事出来ないでしょ。今日の夜は皆で美味しいものでも 食べない?勿論アタシが奢るからさ。」 「そ、そんな!会ったばかりなのにそんな御好意に甘えるワケには・・・」 「大丈夫大丈夫。ザロクさんからも今日の朝イチで旅費貰ってるし、本業の方も頗る 順調だから。結構こう見えてお金持ちなんだよ、アタシは。」 そう言いながら彼女はカートに生卵や胡瓜、チャーシュー肉、そして麺のパックを入れていく。 「料理だってコレ位なら・・・」 どうやらリリィは冷やし中華を御馳走しようとしているらしい。屈託無い笑顔を見ていると ナツミも心が癒された。 (この人は私と違う・・・人の心を読むと言うか、掴む事が出来る人なのね。) 「あ、そうだ。後でホタルに新しい髪飾りでも買ってあげよっかな。前のやつも かなり気に入ってくれたみたいだけど・・・」 「優しいんですね。」 ナツミの言葉に対して、リリィはばつが悪そうに頭を掻く。 「アタシも助けられてるからね。妹に。そりゃ血の繋がった妹だから可愛くないって言ったら 嘘になるよー。あと兄貴があんまりにもアレだからその反動もあるのかな。」 「そのお兄さんって・・・?」 「兄貴もホタルと同じ邪神守民・・・いや元々はアタシも一族の末裔なんだけどさ。 何て言うかプライドが高くてアタシやホタルに真面目な態度を強要するのよ。 守民ならば誰に見られても恥ずかしくない様にしろってね。」 「そうだったんですか・・・」 「アタシも色々あって守民の仕事を辞めちゃってね。紫炎拳古武道を習ったり ジャンパーの能力を鍛えたりして・・・最終的には育て小屋に落ち着いたの。」 ナツミは自分とは違う、辛い人生を歩んできたであろう彼女の事を思った。 「ナツミちゃんも頑張ってね。ギンガ君から色々聞いたけど、あの子は闇に呑まれかかってる。 私も前に同じ経験をしてるからよく解るの。その侵食を食い止められるのは一番近くにいる 貴方しかいない・・・重いかもしれないけど、好きなら全部受け止めてあげないとね・・・」 「はい、覚悟は出来てます。私もギンガも気持ちは同じですから・・・」 前々からその兆候は出てきていた。ナツミ自身は気が付かなかったがナツミにもその兆候が 出始めている。ナツミはギンガを救いたいと思っていたが、本当は2人が支え合って 危うい状態を保っているのだ。ナツミもギンガもまだその事には気が付いていなかった。
その後それぞれが食料品・衣服・技マシン・ボール等を購入し、合流した時には既に時計は 12時を回っていた。ショップの屋上には何軒かの屋台があり、そこで適当に 食事を取った後4人はバトルフィールドへと向かう。 「まだ昼時だから他のトレーナーがいないねー。」 「まぁ文句は言えねぇよな。誰か来るまで気長に待つしか・・・」 ベンチに座ろうとしたギンガに対して、リリィは手招きをした。 「アタシとやろうよ。アタシもポケモンを育てていないワケじゃ無いんだよ?」 「面白ぇ、やってやろうじゃねぇか。」 ギンガはそのままバトルフィールドの片側に立ち、ナツミ達は側でその戦いを 見守る事になった。 「リリィさんのバトルの腕が全然解らないだけに怖いわね・・・」 「お姉ちゃんは私と同じ炎タイプの使い手なんです。元々は私じゃなくて お姉ちゃんが『炎邪神守民』の座に着くハズでしたから・・・」 ナツミはホタルがリリィの心の傷を知っているのだと見抜いた。しかしその 傷の正体を聞くワケにもいかず、ギンガの応援に回る。 「頑張ってねギンガー!」 「お姉ちゃん、負けちゃ駄目だよー!!」 「観客が2人だけってのはこういう場所にしちゃ少ねぇよな・・・」 「まぁ良いじゃないそれでも。ところで君に相談があるんだけど。」 「何だよ今相談って。」 「ただ勝負するだけじゃつまらないからさ。アタシ、ポケモンの卵を持ってるのよ。 客からの預かり物じゃ無いし、炎ポケモンでもない奴ね。君が勝ったら それをあげる。負けたらあげない。別に君が何を賭けるワケでも無し。 どう、悪くない話でしょ?」 「願ってもねぇ話だな。そりゃ当然承諾させてもらおうか。」 リリィは綺麗な歯を見せながら笑うと、ジーンズのポケットからモンスターボールを取り出した。

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