会いたい君へ捧げたい ( No.6 ) |
- 日時: 2010/11/02 00:32
- 名前: 僕から君へ
- Bコース
『会いたい君へ捧げたい』
ジョウトリーグ準決勝。ジョウト地方最強を決める舞台に僕はいた。三年前まではバトルなんてした事もなかった僕が、今は決勝リーグの舞台にいる。あと二つ、乗り越える事が出来れば、きっと夢は叶う。そう信じて戦い続けてきた。諦めたくなかった。その想いだけで、僕はここにいる。
「噛み砕け!」 「食い止めるんだ! サンドパン!」
黒と灰の獣が地を蹴り、敵のポケモンに食らい付く。獣型のポケモン、グラエナの牙を、サンドパンは長く鋭い爪をバツの字に交差させ受け止める。そしてその爪を器用に使い、グラエナの頭を地面に抑え付けると、前転をするように背中からグラエナにのしかかった。サンドパンの背に生えた無数のトゲは、微弱ながら毒を持っている。直接的なダメージはあまり大きくはないが、毒の負担は勝敗を左右するほどに大きい。グラエナは大きく身体を揺すりサンドパンを振り落とすと、再び牙を剥く。だが、グラエナの牙がサンドパンを捉えるよりも早く、サンドパンは身体を丸め、針付きのボールのようにして身を守る。毒のトゲを向けられては、グラエナはその牙を突き立てることは出来ない。グラエナがわずかに怯んだ隙を見逃さず、サンドパンは素早く飛び上がると、鋭い爪で十字に切り裂いた。ジョウトの八つのジム、そして、このジョウトリーグを共に戦い抜いて来た相棒の身体が崩れるように地面に落ちる。
「立ってくれ、グラエナ!」
そんな願いの言葉も虚しく、ジャッジは立ち上がることの出来ないグラエナの戦闘不能を告げる。さぁ、これで残るは一体のみ、二対一の劣勢を跳ね返せるのでしょうか! アナウンサーの無責任なアナウンスが、僕をさらに追い詰める。もう後はない。最後のポケモンがやられたら、僕のジョウトリーグは終わる。
負けたくないんだ。諦めたくないんだ。
……準決勝開始前。 「あ、いました、椿選手です」 僕は誰かに呼ばれて振り向いた。見覚えのある女性。そしてその後ろには大きなカメラを担いだ男性がいる。 「私たちホウエンテレビです、椿選手、インタビューをお願いします」 「え、はい」 「ジョウトリーグ準決勝進出の椿選手は、ホウエン地方出身の選手です、それではお願いします」 「お願いします」 なんてことはない。見覚えがあったのは、昔、まだホウエンにいた頃にニュースかなにかで見かけたのだろう。いくつかの質問の後に、彼女はこう尋ねてきた。 「では最後に、初出場ながらベストフォーまで勝ち進んで来た秘訣はなんですか?」 「……そうですね、僕は、諦めが悪いんですよ」 少し迷いながら、そう応える、 「勝負を最後まで諦めない、と言うことですね」 「あ、いえ、そうじゃなくて……」 「と、言うと?」 僕の否定にインタビュアーのお姉さんは疑問符を浮かべる。ホウエンテレビ。向こうでも放送するのだろうか。 「……好きな人がいるんです」 「好きな人……ですか?」「はい、ホウエンにいた頃の友達で……」 突然始まった話に、彼女は困惑しながらも付き合ってくれる。 「出発の日に、ラジオを聞いたんですよ、ジョウトリーグのニュースでした、ジョウトリーグみたいな大きな大会だと、やっぱりホウエンでも放送するじゃないですか」 「そうですね、私達もインタビューに来てますし」 「……だから、ですかね、テレビに映りたいんです、テレビに映れば、きっとホウエンにいる、その好きな人……も、見てくれるかも知れない、元気でいる、まだ君を好きでいる……優勝すれば、また会えるような気がして、一言で行ってしまえば、諦められないんですよ、その人のことを」 「……素敵な話だと思います、それに、そんな諦めの悪さだったら、それはたぶん椿選手の良いところだと思います、だって、その想いを叶えるために、ベストフォーまで勝ち進んで来たんですから」 「……そうかもしれませんね、諦めの悪さが僕の長所です、それが、準決勝まで勝ち進めた秘訣だと思います」
負けられないんだ、諦められないんだ。君のことを。
「サーナイト、頼む!」 君がくれたポケモン、どうか、もう一度、僕を君に会わせてくれ。
ジョウトリーグシロガネ大会、第四位入賞。
深夜に鳴ったポケギアを取る。表示されていたのは、忘れるはずもない番号。
「……テレビ、見たよ」
聞きたかった声、会いたかった人。さぁ、なにを話そうか?
なにを、伝えようか……
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