ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.3 ) |
- 日時: 2010/10/10 20:02
- 名前: 夜月光介
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- 第3章 6話 『過去から来た青年』
翌日・・・リリィの育て小屋に泊めてもらった2人はホタルやリリィと共に朝食をとり、 その後ホタルは別れを惜しみつつ帰っていった。守民社では無くリーグの方に帰還するらしい。 「それにしてもやっぱ10日間ってのは長ぇな。それまでロクに挑戦も出来ねぇってのが・・・」 「規定は規定なんだからしょうがないじゃない。そのおかげでホタルちゃんにも会えたんだし。」 ボーっとしているワケにもいかないと、2人は育て小屋を出て再びΩショップ近辺に向かった。
リーグ休暇中と言う事もあり、昨日に負けない程沢山の買い物客が楽しそうに歩いている。 ギンガはバトルフィールドの方に向かい、ナツミもそれについていこうとした。 「おい、怪我してるぞ!」 「救急車を呼べ、救急車!」 だが突然聞こえてきた騒がしい声に足が止まる。見ると噴水広場の方に人だかりが出来ていた。 気になった2人はとりあえずその場所へと移動する。 「まだ救急車は来ないのか!」 人の輪の中心には怪我をした青年が横たわっていた。切り傷は浅かったが火傷が至る所に出来ており、 命が危険に晒されているのが解る。やがて救急車が到着すると彼はそのまま運ばれていった。 「一体誰だったのかしら。あんな所で・・・」 「P.O.D.かダークの連中にやられたのかもな。病院に行ってみようぜ。」 「入れてくれるかどうか解らないわよ。」 「話が聞ければ御の字か。とにかく少しでも情報を集めねぇと・・・」
カテナタウンの病院はΩショップから少し歩いた所にあった。シティの病院は立派なものだが タウンの病院はこじんまりとしており普段は重症患者等運ばれては来ない。 「全身に火傷の跡がありましたが命に別状はありません。切り傷も深くは無いですし、安静に させていればいずれ目が覚めるでしょう。貴方がたは彼のお知り合いですか?」 「ああそうだ。突然こんな事になっちまって・・・あいつから直に事情を聞きてぇんだ。」 平然と嘘をつくその態度に看護婦も疑問を抱かず、2人を病室まで連れて行ってくれる。 「お静かに願いますね。他の患者様の迷惑にならない様にしてください。」 白一色の病室に彼はいた。顔には火傷を負っておらず、話によれば火傷もそこまで深くは残らないだろうと 言う事である。意識を失っている彼を2人は暫く眺めていたが、数分後彼はゆっくりと目を開いた。 「大丈夫か?」 ギンガの問いに彼は答えず、ゆっくりと半身を起こし窓の外を見た。 「また失敗か・・・それにしても命が助かったのはラッキーだったかな。」 「またってどういう意味です?」 「え、知らないの?近所じゃ僕の嫌な噂ばっかりだと聞いていたけど。」 時折包帯が巻かれた手で目を擦りながら何かを探している。 「僕の眼鏡は?」 「倒れていた時に眼鏡は落ちてなかったぜ。」 「そうか・・・飛んでいったのかもしれないな。また新しいのを買わないと・・・」 青年は何気無く窓の外から視線を2人の方へ移し、今度は壁にかけられているカレンダーの方を見る。 その瞬間、青年の顔色が変わった。 「なんだこれ・・・74年だって?」 カレンダーにはポケモン暦も記されている。リーグ休暇日の10日間は赤く塗られていた。 「ねぇ君達。今は74年なのかい?」 「そうですけど・・・」 「なんてこった。14年間も寝たままだったなんて・・・鏡は無い?」 ギンガ達は青年の言葉に疑問を抱いたが、彼の言うままに鏡を渡した。 「私の手鏡ですけど・・・」 青年は自分の顔を鏡に映していたがやがて鏡をナツミに返す。 「馬鹿な・・・僕の顔は同じだ。つまり時は経過したが僕は歳を取っていない。つまり・・・ タイムスリップしたって事なのか!?」 狼狽する青年に対して2人はどう言おうか迷った。 「もう僕の研究室は残ってないのか・・・カントーで僕は行方不明扱いになっているのかもしれない。 いや、とっくに死亡した扱いになっているのかも・・・」 「カントー?カントーだって?ココはリューキューだぜ。」 「リューキュー・・・?場所も違うのか。どうすればいいんだ・・・」 頭を抱える青年に対して質問をすると、彼は自分の事を訥々と語り始める。
彼の名はニシキ。ポケモン暦60年の時点では16歳。16歳にして物質空間転送装置の 構想を練り、カントーで実験を繰り返していたと言う。 「僕はあの時、ポケモンと人間を合体させる機械を発明していたマサキさんに資金提供をしてもらって 研究を続けていた。あの時はたまたま遊びに来ていたレッド君とマリンちゃんの前で ちょっとしたテストをするつもりだったんだけど・・・」 2人の前で完成直前と思っていた装置の最終チェックを行なっていた所、突然目の前が真っ白になって 気を失い、気がついた時には既にこの病室にいたのだと彼は話した。 「恐らく装置が誤作動を起こして爆発したんだろう。2人は離れさせていたから被害は受けなかった だろうけど、直接装置をいじっていた僕は当然逃げられなかった。何故こうなったのかは僕自身も 全然解らないよ。爆発の衝撃によってタイムスリップを起こす可能性があるとは聞いた事があるけど・・・」 「じゃあアンタにしてみれば、突然14年後の世界に放り出された事になるワケか。」 「うん・・・装置は元々時間移動の為のものじゃ無かったし、僕がいた14年前の世界に戻るのは 恐らく絶望的だろう。おまけにリューキューじゃ頼れる人も全くいないし・・・」 頭を抱えるニシキに対して、ギンガは暫く考えを巡らせていたが、やがてこう切り出す。 「俺達の知り合いの所に厄介になったらどうだ。客間もあるし、稼いでるからカントーへの旅費も 何とかなるかもしれねぇよ。ただ、14年も経過してるからアンタの知り合いがカントーに いるかどうか・・・」 「いや、きっといるよ。父さんや母さんはともかく、マサキさんは同じ所で研究を続けていると思う。 ・・・父さんと母さんにしてみればもう僕は死んだも同然だし、カントーにいるかどうか怪しいのが 辛いけど。その場所にいるのが耐えられなくて引っ越すってのは多いからね・・・」 平静を装いながらもやはりニシキは苦しんでいる様子であった。このままにしてはおけないと ギンガはすぐリリィにポケギアで連絡を取り、会いに来てもらう事にする。
病室に訪れたリリィは彼の顔を見ると驚いて立ち竦んでしまった。 「アタシ・・・小さい頃に貴方の写真を雑誌かなんかで見た事があるよ。確か研究所が木っ端微塵になって 遺体は見つからなかったけど生存は絶望的だって書いてあった気が・・・」 「そんなに酷かったのか・・・マサキさんの事もそうだけど、レッド君やマリンちゃんは今頃 どうしているんだろう。セキエイのチャンピオンを目指すって張り切っていたけど・・・」 「レッドさんっていったらもう並のトレーナーじゃ手が届かない程の伝説の存在ですよ。マリンさんも 三強の一角って言われる程の立派なトレーナーですし・・・」 「そりゃ凄い・・・あの2人がそんなに強くなっているなんて。」 「とりあえず傷が完全に癒えるまでアタシの所に来ればいいじゃない。治ったらアタシの力でカントーまで 連れてってあげれるしさ。ホタルに頼めば研究室も建て直せるかもよ?」 「すいません何から何まで本当に・・・」 涙を流しながら感謝するニシキを見てリリィは慌てて両手を左右に振った。 「困った時はお互い様でしょうよー。でも、傷が治ってカントーに戻れたら、この2人の事を サポートしてあげて。それがアタシからのお願いって事でどう?」 「解りました。預かりシステム等に関しては熟知してますし、基本はさほど変わっていないと思います。 14年も経てば勿論変わっている事も多いでしょうが・・・」 ニシキは涙を拭くと、改めて2人の方を見た。 「そういえばまだ君達の名前を聞いていなかったね。君達を見ているとあの2人を思い出すよ。」 「俺はギンガ。こっちはナツミ。今のアンタとは1歳差だな。俺達の方が年下だ。」 「・・・そう考えると、もうあの2人は24歳か。随分離されちゃったなぁ。」 昔を思い出しているのか、ニシキは静かに目を閉じて考え事をしている様だった。 ナツミは不自然にならない様そっと近付き、彼の手に触れ意識の中に潜っていく・・・
【ポケモン暦60年 カントー 1の島 ポケモンネットワークセンター】
1の島でポケモンネットワークセンターの管理人として過ごしていたニシキは、もっと効率的な ポケモンの瞬間転送の手段を考えていた。ポケモンはPCに預け入れる事でデジタルな存在となる事が 当時実証され、預かりシステムはほぼ完成していたが彼自身にはまだ不満が残っている。 (確かにPCからポケモンを預けるシステムは完璧だ。だけど、A地点から何処でも好きな所へポケモンを 飛ばす技術は完成されていない。ポケモンが一時的にデジタルな存在になればそれも実現可能なハズだ!) ポケモンの交換は当時完全なる手渡しでPC内から相手にポケモンを渡す事は出来なかった。相手の家に 瞬時にポケモンが入ったモンスターボールを飛ばせたら便利極まりないと考えたのだ。 「時空間移動とかも考えてるって話聞いたけど。」 「マサキさんは無理って言ってたけどね。いずれは挑戦してみるよ。人間はデジタルな存在になれないから 難しいけど、デジタルな存在になる生命体なんてポケモンだけだ。その利点を活かせば必ず過去や未来に ポケモンを送る事だって出来る。今は無理だけど、科学がもっと進歩すれば・・・」 ニシキの傍らには当時10歳であるレッドとその幼馴染マリンが立っていた。幼馴染とは言ってもそれは 8年後辺りでの話であり、当時はまだ出会ってから数ヶ月も経過していない。 「それが、物質空間転送装置ですか?」 「そうだよ。今は最終調整の真っ最中さ。将来的には人間が自由に移動出来るシステムが出来ると 良いななんて思ってるんだけど・・・夢は大きく持たなくちゃあ・・・」 機械を暫くいじっていたニシキだったが、不意に手を止めると2人に遠ざかっている様指示した。 「あんまり近くにいすぎると危ないんだ。転送装置に巻き込まれてしまったらひとたまりも無いからね。 僕もボタンを押したらすぐに離れるよ。」 研究所の外からでも窓の中の様子はよく見えた。暫く機械をいじっていたニシキであったが、 2人の目の前で突如窓の中が白く光り、次の瞬間爆発が起こって研究所が火に包まれる。 「な・・・おいマリン!すぐに警察と消防署に連絡しねぇと!!」 「解ってるわよ、アンタはココで待ってて。すぐにかけに行くから!」 ポケギアが開発される前だったのでマリンは即座に電話ボックスを探しに走っていった。 残されたレッドは呆然としながら荒れ狂う炎を見つめている。 「・・・ニシキさん・・・」 レッドはどうする事も出来ない自分が悔しかった。
目の前が真っ白になった所で彼の過去の記憶は途切れた。意識を失ってしまえば当然その先を見る事は 出来ない。ナツミは彼の手から自分の手を離した。 「カントー出身だとこっちの人間の事は解らねぇかもしれねぇが、リリィはジャンパーの能力を 持ってるからすぐに送ってもらえるだろうぜ。」 「ジャンパー?」 「アタシ、行った事のある所か写真を見せてもらえば何処にでも瞬間移動出来るんだ。そのアンタが 開発しようとしてた物質空間転送装置とか無くてもさ。」 「そりゃ凄い。貴方に監修してもらえば完璧だったかも・・・まぁ今更の話ですいません。僕 研究の事となるとつい熱くなっちゃうんで・・・」 彼の言葉通りニシキの瞳には探究心の炎が燃えている様だ。 「今は療養に専念して、その後今後どうするかを決めていくのが一番でしょうね。」
2人が病院からリーグ施設に戻ったのは結局夜7時を回った頃であった。 『伝説』の2人とあった事があるニシキに対して根掘り葉掘り聞いていたらあっと言う間に 時間が経過してしまったのだ。野試合を諦め、そのまま夕食をとりシャワーを浴びる。 シャワーから出て着替え終わると、ギンガは改めてリリィから譲り受けたポケモンの卵を バッグから取り出して眺めてみる事にした。 「しっかしこうして見るとホントに小せぇな。モンスターボール並じゃねぇか。」 ギンガの言う通り、貰った卵はチョコエッグ程の大きさしか無い。黄緑色の表面に時折 深緑色の斑点が付いている。殻は非常に固く、石にぶつけても割れそうに無い。 「どんなポケモンだか教えてもらってねぇんだよなぁ・・・」 リリィに聞く事を怠った為今更ワザワザ聞くのもはばかられる。溜息をつきながら暫し 卵を見つめていたが、不意に卵に亀裂が走った為ギンガは驚き卵を離してしまった。 「うわッ!?」 そのまま卵は割れ、中からポケモンが出現した。 『うわぁ、貴方が私のパパになるんだ。これから宜しくね!』 ポケモンは人間と違い赤ん坊の状態でも高い知能を持っている。赤ん坊と言っても姿形は ある程度成長したものと変わりは無い。ギンガはとりあえずモンスターボールを床に 落とし、ポケモンを捕獲した。捕獲した後改めてポケモンをモンスターボールから出す。 『マスター、お腹減ったー。』 「へいへい・・・」 洗脳装置はギンガを『父親』では無く『マスター』だと理解させる効果もある。洗脳自体は 強力なものだが性格や人格自体が大幅に変わってしまうワケでは無い。 ギンガはΩショップで購入していたポケモンフードを小皿に移した。 『マスター、コレ美味しいね!』 「そりゃ良かった。あんま食べ過ぎんなよ。」 突然父親になった様な感覚を味わい、ギンガは若干動揺していた。 (卵から生まれたポケモンは野生のポケモンより強くなるとか言われてるが実際はどうなんだろうな。) 目の前でフードを食べているポケモンは下半身が魚で無かったらその辺りにいる女の子と 勘違いしてしまいそうだ。リューキューで近年話題になっている『キメラ』に間違いなさそうだった。 (そういやキメラポケモンなんて初めてみたな・・・)
『キメラ』はニューアイランド島での実験を繰り返していたフジ博士が生み出したもので、人間の遺伝子と ポケモンの遺伝子を混ぜ合わせて生まれてきた生物である。元々キメラは素体となるポケモンが異常な戦闘力を 持っていなければそこまで圧倒的な強さを持って生まれてはこない。だがキメラが通常のポケモンよりも 高い戦闘力を持っているのは事実である。キメラは最初にフジ博士が大量に生み出したものから野に放たれ 交配し、卵から生まれたキメラ同士が交配を繰り替えす事で遺伝子的に安定し爆発的に増えていった。 今ではリューキューに棲息しているポケモンのうち4割強がキメラポケモンになっている程だ。 フジ博士以外にもポケモンの戦闘力を高める事だけに固執してキメラを生み出した科学者は多数存在している。 (さて、こいつの名前は何だ・・・?) ギンガはポケギアを用い卵から生まれてきたポケモンの名前を確認した。 『ミズチ・にんぎょポケモン・・・リューキューで新たに発見されたキメラの1匹。海に通じている洞窟内で 楽しそうに唄を歌っている事が多い。群れになると美しい合唱を披露する。』 (へぇ、みず・ゴーストタイプとは珍しいな。特殊能力は・・・) 『特殊能力・音波回復・・・音を使った技を受けるとその技でのダメージ・あるいは状態変化を無効化しさらにHPが回復する』 【例・うたうを受けた→眠らず回復 ハイパーボイスを受けた→ダメージを受けず回復】 「ま、その位か。技もまだまだ弱いのしか覚えてねぇが、育てりゃ強くなるだろ。」 『マスター、もっと食べたい!』 「腹八分位にしとけ。明日こそ野試合やっからお前も参加しろ。一緒にリーグ制覇の夢を見る為にもな。」 『あ、やっぱりマスターもリーグ制覇が夢なんだ。私ももっと強くなりたいからすっごく楽しみ!』 「俺も寝るから寝とけよ。疲れる前にな。」 ギンガはミズチをボールに戻すと疲労感もあってそのままベットに倒れ込み深い眠りへと落ちていった・・・
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