君と出会った日 ( No.2 ) |
- 日時: 2011/03/30 02:57
- 名前: 一葉 ID:RSpexdbA
- 生まれはカントー地方だった。四歳の時にイッシュ地方に渡り、七歳でオーレ地方へ。十歳の時には今のシンオウ地方に引っ越した。父親の仕事の都合で転校と引越を繰り返していた僕は、中学に上がる今年、また引越す事になっていた。
「卒業式が終わったらそのまま出発って急過ぎやしないか?」 「ホウエン地方って物凄く遠いからね、お父さんの都合もあるし、僕も入学式までに色々準備をしないといけないから」 雪国であるシンオウ地方からだとホウエン地方は遠い。どのくらい遠いかと言うと、温暖な気候のホウエン地方は南国と言ってしまっても差し支えなく、気候が違うほど遠いのだ。 本当は卒業式を終えてすぐに出発でも遅いくらいで、お父さんは卒業式を待たずにもう向こうへ向かってしまった。お母さんも一度ホウエンの新居に行ってから、今日の卒業式の為にとんぼ返りなのだ。だから、本当なら僕も、卒業式は欠席し、一緒にホウエンに行った方が良かったんだろうけど、お母さんから卒業式は出たほうが良いと諭され、残る事にしたのだ。 「そうだな、おまえ念入りに下調べするタイプだもんな」 そんなでもないと思うが、まったくの嘘でもないので笑ってごまかしておく。 「向こう行っても元気でやれよ」 「そっちもね」 「それから、いい加減手持ち持てよ」 「……がんばる」 「またいつかな」 「うん」 最後に固く握手を交わし、僕達は別れた。次はいつ会えるのかわからない。もう一度会えるのかもわからない。そんな友との別れもこれが三度目、よく覚えていないカントーの事も合わせるなら四度目だ。少しだけ慣れてしまった気持ちの整理は、とうに終わっていた。 「お待たせ、お母さん」 僕はお母さんが待つ車に乗り込む。そうしたら「もう良いの?」なんてお母さんが聞いてきたから、僕は黙って頷いた。僕は今日、シンオウの地に別れを告げる。そんな時に、たとえほんの少しでも振り向いてしまえば、後ろ髪を引かれてしまうのだ。まだ十二年しか生きていない、本当に子供だけど、それだけは覚えた。イッシュの時も、オーレの時も、少しだけと振り向いてしまったから、たくさんの思い出に囚われて、離れたくない、行きたくないと思ってしまった。だから、僕は振り向かずにシンオウ地方に別れを告げる。サヨナラ、シンオウ地方、サヨナラ、コトブキシティ。 この日、僕は二年間住んだコトブキシティを離れ、ホウエンへと向かった。。
ホウエン地方の最西端にあるホウエン最大の都市が僕達が向かう街、カナズミシティだ。コトブキシティも大きな街であったが、カナズミシティも決して劣ってはいない。 「カナズミシティには大きな学校があるんですって」 お母さんに言われて適当に相槌を返す。大きくても小さくても学校には変わりないんだから、どうでもいいと思う。それよりも長旅の疲れが大きい。丸一日以上船に揺られたのが意外と堪えていた。イッシュ地方の時も、オーレ地方の時も、僕は飛行機に乗ったから、船旅と言うものが初めてだったのだ。だから少しだけ眠る事にした。お母さんに「着いたら起こして」と頼み目を閉じる。余程疲れていたのだろう、数分も経たないうちに僕は眠りに落ちていた。
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