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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜
日時: 2010/09/12 20:27
名前: 夜月光介
参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html

第3章 3話 『リリィとホタル』

 ザロクは話が上手く、思い出話を聞いている内に外はすっかり暗くなっていた。
「あ・・・もう7時か。御免ねこんな時間まで付き合わせちゃって・・・」
「いえ、とっても楽しかったです。」
ザロクは欠伸をしながら立ち上がると、部屋のカーテンを閉める。
「明日から数日間リリィさんに送ってもらって1年ぶりの同窓会だよ。僕達は全員
リーグ関係者だから気軽に会いに行けなくなっちゃったのが辛い所だね。」
「ズリとオボンって奴か。」
「そうだよ。昔は皆ナンブシティに住んでいたんだ。今はキンブシティって言う名前に
変わってるみたいだけどね。今の市長が自分の名前にしたかったんだとか・・・」
ナツミはギンガの表情が変わったのを見逃さなかった。
「どうしたのギンガ。」
「いや・・・兄貴の名前と同じだからちょっと面食らっただけだ。多分別人だろ。」
ギンガも立ち上がり、部屋から出ようとドアのノブに手をかける。ナツミも
その後ろに付いていこうとしたがふと出てきた疑問をそのまま口にした。
「あ、そういえば・・・ザロクさんって能力者なんですか?」
「今は殆ど使ってないけどね。クレヤボヤンスだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、ナツミの手は反射的に胸と股間を隠していた。
「ホ、本当に使ってないんですよね!?」
「前は面白がっていたけど、僕ももう24歳だからね。飽きちゃったよ・・・
銭湯の番台に立っている人を想像してもらえば解るだろう?」
「それならいいんですけど・・・」
少々顔を赤くしながらナツミはジムを後にした。

 カテナタウンの施設に戻ってくると、疲労感のせいかギンガはベッドに倒れこんでしまう。
「さっきのクレヤボヤンスってのは何だったんだ?ピンとこなかったんだけどよ。」
「ああ、透視能力よ。物体を透かして見る事が出来る能力ね。」
「なッ・・・!ナツミの裸を見られてたかもしれねぇって事か!?」
「ザロクさん目にマスクしてたから瞳が光ってるのかどうか確認出来なかったし、そんな飢えてる
人には見えなかったから微妙な所なんだけど・・・正直解らないわね。」
「チッ、もし見てたらジムリーダーと言えどもぶん殴ってる所だぜ。」
「でももし見ていたのなら、馬鹿正直に自分の能力を明かすかしら?適当にしらばっくれる事だって
出来たハズよ。私自身としてはそういう人じゃないと信じたいんだけど・・・」
ザロクの瞳が見えなかっただけに、見ていたのか見ていないのかはまるで解らなかった。
ならば何故マスクを付けているのかと暫く水掛け論が続いたが、答えは出ず2人はその論議を
諦め、素直に眠りに付く事にした。

 翌朝・・・2人はそれぞれシャワーを浴び着替えを済ませ、朝食を取ると衣服を外に干し始めた。
「また随分と綺麗に晴れてるわね。雲1つ無い快晴だわ。」
旅は楽しい事だけでは無い。衣服の心配もそうだが食料品の買出し等しなければならない事は
山程ある。そういった面倒な仕事は進んでナツミがこなしていた。
「ふああ・・・しかし足止めが続くな。今日は適当に野試合でもこなすか?」
「そうね。干すのが終わったら私も行くわ。どちらにしても今日は外に出ないとね・・・」
親に貰った金とバトルで得た金だけでは些か心許なかったが、これから先新しい衣服や
食料、それとボールや技マシンの補充は絶対に必要になる。2人にはそれがよく解っていた。
「まだもうちょっとかかりそうだから先にセンターに行っておいて。」
「解った。お前のポケモンもついでに回復してくっから渡してくれ。」
ナツミを残しギンガはポケモンセンターに向かう。

 リューキューの気温は高い。だがカントー等の湿度も高い夏と違ってカラッと晴れているだけ
まだ気持ちの良いものだ。部屋の中の涼しさを感じると余計にそれが解る。
「ウキミソーチー!ココはカテナタウンポケモンセンターでございます!」
自動ドアを抜けると入り口にいた女性職員が挨拶してくれる。他の男性職員も元気な
リューキューの民である事をアピールしているかの様だ。朝8時の時点でかなりのトレーナーが
集まってきていたが、その中に見覚えのある顔を見つけギンガは思わず声をかけた。
「リリィじゃねぇか。お前トレーナーじゃねぇだろ?」
「んー?私じゃないよん。妹が今回復してもらってる所だから。」
リリィの視線の先には赤色の服を着た少女がおり、カウンターでボールが返ってくるのを
待っている様だった。
「へぇ、妹がいたのか。結構歳が離れてるんじゃねぇか?」
「うん。アタシが18で妹が13だからねぇ。今からオメガショップに行く所なんだ。
暇だったら一緒に来ない?人数が多い方がショッピングも楽しいだろうし。」
「俺達も丁度買い物に行く所だったんだ。まぁトレーナーも多いだろうし、野試合も
ある程度はこなせるだろ。」
「おっけー!決まりだね。」
年上とは思えない天真爛漫な笑顔・・・キツネと同じ様に見えるが微かな違いが確かにあった。
(無理をしている・・・)
何かは解らないがリリィには恐らく深い傷があるのだろう。ギンガと同じ様に・・・

 ギンガもセンターで2人分のポケモンの回復を済ませ、リリィ達と合流した。
「アタシの妹、ホタルって言うんだ。仲良くしてあげてね。」
「初めまして、ホタルです!」
赤がかった黒髪と胸元のルビー、腕に付いているリングもクリムゾンレッドと、褐色金髪のリリィとは
随分違う印象の少女だった。透き通る様な色白の肌もリリィと違う所だ。
「とりあえず君の友達の所へ行ってからショップだよね。ホタルと回るのは久しぶりだから
ちょっと楽しみなんだ。良い商品が沢山あると良いね!」
「私も楽しみ!お姉ちゃんに直接会うのも1年ぶりだし、今日は沢山遊びたいな!」
「リーグ関係の仕事か。」
「私、こう見えてもクニガミリーグでは結構有名なんですよ。」
ホタルも明るい利発そうな少女だった。2人が揃うと賑やかさが増幅されていく気がする。
ギンガはあまり五月蝿いのは苦手だった為、とりあえずナツミと合流する為センターから
外に出た。リリィとホタルも後につき施設へと向かう。
施設の方では洗濯物を干し終わったナツミがギンガの到着を待っていた。
「あれ、ギンガ・・・その2人は誰?」
「あ、初めまして!この街で育て小屋やってるリリィです。宜しくねー。」
「!ナツミさん!?」
一見見ただけでは解らなかったのだが、ナツミは少女が自分の名前を知っている事に
反応し彼女を凝視した。服装や雰囲気が異なっているが顔は同じだ。
「ホタルちゃん・・・」
「あれホタル。顔見知りなの?」
「昨日、社で会ったから・・・」
表情を曇らせたホタルに対してナツミは彼女の思いを察した。
「あの場所では違う自分を演じてるのね。大丈夫、誰にも言わないから。」
「すいません・・・私、あそこでは普段の自分になれなくて。」
社で会った時はやたら躾をされている少女だと思ったが、それは単なる演技だったのだろう。
「あー、兄貴の奴五月蝿いからねぇ。アタシの事も嫌ってるしさぁ。」
「私も堅苦しいの嫌いだからそれを強制するお兄ちゃんも嫌い・・・」
ホタルは暫くの間俯いていたが、顔を上げた時には先程の笑顔を取り戻していた。
「じゃあ、行きましょうか!」
嬉しさを抑えきれないのか走り出したホタルをリリィが追いかけた。
「そんなに急がなくっても店は逃げやしないわよ!」
「全く、しょうがねぇなぁ・・・」
ギンガが見せた久しぶりの笑顔に、ナツミの心は癒される。
(この2人との出会いはギンガにとってプラスに働いたみたいね・・・本当に良かったわ。)

 カテナタウンはシティ程の規模では無かったもののなかなかの賑わいを見せている
大きなショップがあった。看板には『Ω』の文字が大きく描かれている。
「オメガショップはこの辺りじゃ一番大きなポケモンショップだねー。ギノザに比べると
品揃えはまだまだかもしれないけど。」
「3階建ての建物自体が珍しいかもしれねぇな。」
御誂え向きと言うべきか、ショップの横にはバトルフィールドが用意されており、トレーナー達が
バトルを楽しんでいる。リーグ休暇中でも普通のトレーナーはレベルを上げる事に熱心な様だ。
「ま、野試合は後でも出来るだろ。まずは買い物しようぜ。」
「ポケモン関係だけじゃなくて食品や化粧品関係まで網羅してる店なんですよ!」
「それはなかなか凄い店ねぇ・・・」
中はセンターと同じく冷房が完備されており、所狭しと商品が並んでいる。
「普通のボールだけじゃなくて、タイマーボールやダークボールなんかも充実してるわね。」
「あっちにあるのは傷薬か。結構広くて狭い通路になってるから迷いそうだな。」
「とりあえず4人で回るのもなんだから、分かれましょう。」

 ジャンケンで別れ方を適当に選んだ結果、ギンガはホタルと、ナツミはリリィと一緒に店を
見て回る事になった。ギンガは真っ先に栄養剤売り場へと向かう。
「もっと早く大量に買い込んでおければ良かったんだがな・・・流石に1本9800円となると
なかなか手が出ねぇぜ・・・」
「私が買ってる香水とかよりも遥かに高いですもんね。」
たった1本の栄養ドリンクさえも子供では手が届かない世界。ギンガは諦めて技マシン売り場の方へと
向かおうとした。それをホタルが呼び止める。
「あっあの・・・良ければ私がケースで買いますよ?」
「お前が!?」
「あんまりココで堂々と言えたものじゃないですけど、私四天王なので・・・」
リーグ四天王ともなれば年間で支給される額は数千万に達する。勿論チャンピオンならば
2年間で数億稼げる程だ。バトルが強ければ何でも手に入る世界でもある。
「あんまり大きな買い物しないので、余ってる位なんですよ・・・お姉ちゃんも
『助けてあげて』って言っていましたし・・・」
ホタルは腰に付けていたポシェットから財布を取り出すと、カードを抜き出し
店員に見せた。店員は暫く驚きのあまり目を見開いていたが、我に返ると
購入する商品の確認をする。
「どの商品をどれだけ購入されるのでしょうか・・・」
「ポケモンの栄養剤を1種類につき100本ずつ。全部ギンガさんのPCに入れて何時でも
使える様にしてあげてください。ギンガさん、自分名義のIDナンバーを覚えてますか?」
「あ、ああ・・・」
呆気に取られたままギンガはIDナンバーをホタルに伝え、店員がそれを確認すると
全ての商品はPCに転送された。カードを持ったままホタルは歩き出す。
「今度は何を買います?・・・大丈夫ですよ。ギンガさんがチャンピオンになったら
返してもらいますから。それまでは無期限の貸しって事で!」
ホタルの冗談もギンガの驚愕を打ち消す事は出来なかった。
(13歳で四天王とは・・・俺も負けてはいられねぇな・・・)

 一方ナツミとリリィの方は食料品コーナーを見て回っていた。
「旅の間ってあんまり良い食事出来ないでしょ。今日の夜は皆で美味しいものでも
食べない?勿論アタシが奢るからさ。」
「そ、そんな!会ったばかりなのにそんな御好意に甘えるワケには・・・」
「大丈夫大丈夫。ザロクさんからも今日の朝イチで旅費貰ってるし、本業の方も頗る
順調だから。結構こう見えてお金持ちなんだよ、アタシは。」
そう言いながら彼女はカートに生卵や胡瓜、チャーシュー肉、そして麺のパックを入れていく。
「料理だってコレ位なら・・・」
どうやらリリィは冷やし中華を御馳走しようとしているらしい。屈託無い笑顔を見ていると
ナツミも心が癒された。
(この人は私と違う・・・人の心を読むと言うか、掴む事が出来る人なのね。)
「あ、そうだ。後でホタルに新しい髪飾りでも買ってあげよっかな。前のやつも
かなり気に入ってくれたみたいだけど・・・」
「優しいんですね。」
ナツミの言葉に対して、リリィはばつが悪そうに頭を掻く。
「アタシも助けられてるからね。妹に。そりゃ血の繋がった妹だから可愛くないって言ったら
嘘になるよー。あと兄貴があんまりにもアレだからその反動もあるのかな。」
「そのお兄さんって・・・?」
「兄貴もホタルと同じ邪神守民・・・いや元々はアタシも一族の末裔なんだけどさ。
何て言うかプライドが高くてアタシやホタルに真面目な態度を強要するのよ。
守民ならば誰に見られても恥ずかしくない様にしろってね。」
「そうだったんですか・・・」
「アタシも色々あって守民の仕事を辞めちゃってね。紫炎拳古武道を習ったり
ジャンパーの能力を鍛えたりして・・・最終的には育て小屋に落ち着いたの。」
ナツミは自分とは違う、辛い人生を歩んできたであろう彼女の事を思った。
「ナツミちゃんも頑張ってね。ギンガ君から色々聞いたけど、あの子は闇に呑まれかかってる。
私も前に同じ経験をしてるからよく解るの。その侵食を食い止められるのは一番近くにいる
貴方しかいない・・・重いかもしれないけど、好きなら全部受け止めてあげないとね・・・」
「はい、覚悟は出来てます。私もギンガも気持ちは同じですから・・・」
前々からその兆候は出てきていた。ナツミ自身は気が付かなかったがナツミにもその兆候が
出始めている。ナツミはギンガを救いたいと思っていたが、本当は2人が支え合って
危うい状態を保っているのだ。ナツミもギンガもまだその事には気が付いていなかった。

 その後それぞれが食料品・衣服・技マシン・ボール等を購入し、合流した時には既に時計は
12時を回っていた。ショップの屋上には何軒かの屋台があり、そこで適当に
食事を取った後4人はバトルフィールドへと向かう。
「まだ昼時だから他のトレーナーがいないねー。」
「まぁ文句は言えねぇよな。誰か来るまで気長に待つしか・・・」
ベンチに座ろうとしたギンガに対して、リリィは手招きをした。
「アタシとやろうよ。アタシもポケモンを育てていないワケじゃ無いんだよ?」
「面白ぇ、やってやろうじゃねぇか。」
ギンガはそのままバトルフィールドの片側に立ち、ナツミ達は側でその戦いを
見守る事になった。
「リリィさんのバトルの腕が全然解らないだけに怖いわね・・・」
「お姉ちゃんは私と同じ炎タイプの使い手なんです。元々は私じゃなくて
お姉ちゃんが『炎邪神守民』の座に着くハズでしたから・・・」
ナツミはホタルがリリィの心の傷を知っているのだと見抜いた。しかしその
傷の正体を聞くワケにもいかず、ギンガの応援に回る。
「頑張ってねギンガー!」
「お姉ちゃん、負けちゃ駄目だよー!!」
「観客が2人だけってのはこういう場所にしちゃ少ねぇよな・・・」
「まぁ良いじゃないそれでも。ところで君に相談があるんだけど。」
「何だよ今相談って。」
「ただ勝負するだけじゃつまらないからさ。アタシ、ポケモンの卵を持ってるのよ。
客からの預かり物じゃ無いし、炎ポケモンでもない奴ね。君が勝ったら
それをあげる。負けたらあげない。別に君が何を賭けるワケでも無し。
どう、悪くない話でしょ?」
「願ってもねぇ話だな。そりゃ当然承諾させてもらおうか。」
リリィは綺麗な歯を見せながら笑うと、ジーンズのポケットからモンスターボールを取り出した。
メンテ

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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.2 )
日時: 2010/09/26 17:34
名前: 夜月光介
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第3章 5話 『夜の憩い』

 『バクハオウ・かえんじしポケモン・・・3段進化のほのお・やみポケモン。縄張り主張や求愛行動の際には
炎と化したたてがみを激しく燃やし自分をアピールする。常に燃え盛っている炎を維持する為通常の食料だけで
無く樹木も食べてしまう為、バクハオウが棲息している森は何年かすると荒地と化してしまう。』
ギンガは引き続き特殊能力の項目を開く。
『特殊能力・威嚇・・・登場したターン、相手の攻撃力を1段階下げる』
(不味いな、残り1匹に限定されたら確実に攻撃力が下がった状態での試合になっちまう。
向こうも本気って事か・・・真っ向勝負で行くしか無ぇな。)
ギンガのパーティに不足しているのは圧倒的な攻撃力を持つほのおタイプのポケモンへの牽制となる水タイプの
ポケモンであった。メジャーであるいわ・じめん・ほのおタイプのポケモンに対抗しうる力はやはり大きい。
「お姉ちゃんはギンガ君にもっともっと強くなってほしいと思ってるんだよ。でも、ある程度の力が
無ければ上には行けない。この1戦でギンガ君の真価が問われる事になりそうだね。」
(ギンガの、本当の実力・・・!大丈夫。どんな壁だってギンガならきっと乗り越えられるわ!)
ナツミは思わず祈っていた。ギンガのトレーナーとしての腕はまだまだこんなものでは無いと信じたかったのだ。

 数分熟考した後、ギンガはバトルフィールドにモンスターボールを投げ入れ、最終戦を戦い抜ける切り札を呼び出した。
『やっぱり俺ってワケか。まぁ任せな。すぐに潰してやっからよ。』
ホノオグマは体を覆う炎をさらに激しく燃え上がらせた。
(相性勝負で言えば若干有利・・・ほのおタイプはほのおタイプに対してダメージを与えられないし、やみタイプは
あくタイプにはあまり効果が無い。でもあくタイプの技を使えば普通にダメージが通る!)
だが依然として有利不利は図れない。ホノオグマの覚えているあくタイプの技及びノーマルタイプの技は攻撃技である。
それ故に特殊能力で1段階攻撃力を下げられてしまうのは大きな痛手だった。
『コレで両者互角よ・・・お前の実力を私に見せてみるがよい。』
『チッ、上から目線で言いやがって。絶対に後悔させてやるぜ!!』
ギンガに負けず劣らず好戦的であるホノオグマであるが、それが長所となるか短所となるかはトレーナーにかかっている。
両者はバトルフィールドで対峙しお互いに攻撃の間合いを確かめ機会を窺っていた。
「バクハオウ!相手のホノオグマに対して有効な技が無い以上、手数で攻めて!」
『承知しております・・・』
その瞬間バクハオウの口がカッと開き、漆黒の炎が吐き出される。慌ててホノオグマは避けようとしたが、予想以上に
炎の迫ってくるスピードは速く、攻撃をまともにくらってしまった。
『エビルフレイムは相手に攻撃が命中した際、2割の確率で命中率を1段階下げる技。幾らお前が私に対して
有効な技を保有していようとも、その技が当たらなければ私が勝つのだ!』
「あらゆる策を仕掛け、最大限勝てる努力をする。ギンガ君もそうしないと勝てないよー。」
「こっちも反撃に出るぞ!」
『おう!てめぇに地獄を見せてやらねぇとなぁ!!』
技が命中した事で緩みが出たのか、一気に距離を詰めてきたホノオグマに対してバクハオウは対応出来ない。
その隙を突き、バクハオウの腹にホノオグマが爪で強力な一撃を与える。
『グオッ!!』
『ノーマルタイプの技も侮れねぇだろ?』
きりさくは威力70と高い攻撃力を持つホノオグマにしては低い数値に見えるが、クリティカル発生率が高い為
実質威力140と思っても構わない。2倍ダメージを受けたバクハオウは一気に窮地へと追い込まれた。
『まさか、これほどとは・・・』
「諦めないで!最後の最後まで勝ちの目は残っているわよ!」
リリィに励まされたバクハオウは顔を歪ませながらも雄々しく立ち上がり相手をキッと睨み付ける。
その迫力に一瞬たじろいだホノオグマを相手は見逃さなかった。
『受けてみよ、我が生命を糧にした最強の一撃を!』
たてがみの青い炎が燃え広がり、全方位に散らばった為流石のホノオグマも全く回避する事が出来ない。
『バックドラフト!!』
周辺を覆い尽くした青い炎が爆発し、バトルフィールド全体がその衝撃で震える。ギンガ達も熱さを感じる程の
凄まじい攻撃だった。バトルフィールドの中に人間が立っていたら間違いなく真っ黒な焼死体になってしまっただろう。
『どうだ、神にも匹敵する力!コレが本当の力と言うものだ!!』
HPを削りレッドゾーンに達していたバクハオウであったが、それでも何とか堪え立っている。
煙が消えた後倒れ込んでいたホノオグマであったが、何とか立ち上がり構えを取った。
『ハハ・・・結構やるじゃねぇか。面白ぇ攻撃見せてもらったぜ。』
強がりを言うホノオグマであったが、彼のHPもレッドゾーン手前まで減っている。執念の一撃が不利を弾き返し
ホノオグマを追い詰めたのだ。リリィのトレーナーとしての才能の高さに、ただただギンガは圧倒されるばかりだった。
(信じられねぇ・・・こんな優秀な奴が何で育て屋やってんだ。リーグで通用する強さだろコレは・・・)
「ギンガ君。今の攻撃に耐えたホノオグマも凄いわよ。普通のポケモンだったらこの一撃で瀕死になっていても
不思議じゃないものね・・・さぁ、このまま一気に決めちゃいなさい!」
『覚悟しろ!』
『こっちの台詞だ馬鹿野郎!』
かえんほうしゃを繰り出したバクハオウに対して距離を詰めきりさくを決めようとするホノオグマ。どちらも攻撃は
速く、バクハオウのかえんほうしゃが当たるのとホノオグマのきりさくが当たったのはほぼ同時だった。
『ここまで・・・やるとは・・・』
『俺もちっと不満が・・・残る・・・ぜ・・・』
両者共に崩れ落ちドローゲームかと思われたが、相性の不利が幸いしホノオグマのHPは微量ながら残っている。
リリィとギンガの野試合はギンガの勝利に終わった。

 互いにポケモンをモンスターボールに戻すと、リリィはギンガの健闘を称え握手を求めた。
「初めてギンガ君と戦ってみて、強さがよーく解ったよ。アタシと戦ってくれてありがとね!」
「おう。また機会があればやろうぜ。」
お互い笑顔で握手を交わす2人の姿を見て、ナツミもホタルも心を動かされた様だ。
「お姉ちゃんが負けちゃったのは残念だけど、ナツミさんにとっては良かった事だしまぁいっか・・・」
「リリィさんも本当に強かったわよね。でも何時かは私も張り合える程に強くなりたいな!」
目標は高く、終わりは無い。トレーナーにとっての夢は決してチャンピオンの座だけでは無いが、
誰もが強さを求めているとは言えるだろう。毎日誰かが誰かの戦いを見て夢を持つのだ。
「じゃあ約束通り、タマゴをプレゼントしなきゃねー。」
リリィは自分のポケギアを暫くいじっていたが、やがてそれを止めるとニッコリ笑った。
「おっけー。今ギンガ君のPCにホタルから教えてもらったパスワードを入力してタマゴを
送っておいたから後で取り出しておいてね。常に外に出してないと孵化しないからさ。」
「どんなポケモンが生まれてくるのか楽しみだぜ。」
「ねぇ、ナツミお姉ちゃん。今度は私とやってみない?多少は手加減するから。」
「む、無理よ!手加減してもらったって今の私じゃとても・・・」
ホタルも普段の束縛された生活から解放され、常に笑顔を見せている。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎていった・・・

 その後ギンガとナツミはホタルとリリィが見ている前で他の一般トレーナーとの野試合をこなし、
日が暮れる頃にはかなりのレベルアップに成功する。その後ポケモンセンターでギンガは
ポケモンのタマゴをPCから引き出し、合流した後リリィの家で楽しく食卓を囲む事になった。
「うちは冷暖房完備で風呂も立派なものだし、客間もあるからココで寝ちゃってってもいいからねー。」
「そりゃ願ってもねぇ話だぜ。なぁナツミ。」
「ええ。じゃあ、今晩はお言葉に甘えても宜しいでしょうか?」
「ウチじゃ堅苦しいのはナシだよー。食事も今出来るからもうちょっと待っててね。」
ギンガが初めてココを訪れた時にも感じた事を、ナツミもハッキリと感じていた。
(とにかく豪華・・・!普通の育て屋の家屋とは思えない程立派でまるでちょっとした別荘みたい。)
通常の育て屋ではまず無い2階建ての造りに部屋の多さ、そして庭はポケモン達の為の広い芝生や
プールも完備されている。その気になれば人間だって泳ぐ事が出来るであろう程の広さだ。
かと言って成金趣味にありがちな剥製や豪華な絨毯等は見受けられない。暫く2人は辺りを
物珍しげに見回していたが、ホタルとリリィが人数分の冷やし中華を持ってきた途端それを止めた。
「そんな気を遣わずにもっとジロジロ見たってアタシは構わないんだけどなー。」
「いえ、やっぱり失礼ですから・・・でも、なんていうかリリィさんの家はその・・・」
「お金持ちっぽいけど成金趣味じゃ無いって事でしょ。アタシは役に立つものしか買いたくないからねー。
自分の能力使ってそこそこ金は集まったけど、ちょっと贅沢な暮らしがしたい程度で、豪華な食事を
毎日しようとかそういうのは思わないし。こういうので充分美味しいじゃない。」
金を持つ人間は驕り、金を自分が稼ぐ以上に使ってしまい転落していくものだが、リリィは自分の限界を
わきまえて自由な暮らしを楽しんでいる様だった。そこからも彼女の人間性の高さが見える。
「本当に冷たくて美味しいですねこの冷やし中華。」
「でしょ?おかわりもあるから好きなだけ食べてよ。客は沢山来るけどお客さんはなかなか来ないから
アタシも嬉しいんだ。屈託無く色々な事を話せるしねー。」
冷やし中華を食べ終わってからも楽しい会話が続き、3人はギンガを残して風呂に入る事となった。
居間に1人残されたギンガは部屋の中を何となく見て回っていたが、棚の上に置いてあった1枚の写真に目が留まる。

 その写真に写っている2人の少女は厳格そうな少年と共に並んで立っていた。
「この小せぇのがホタルだろ。となるとこいつは・・・リリィか?」
歳の頃10歳近くと言った所だろうか。今とは全く違う色白の少女で、金髪と同じ位長い黒髪が美しい。
「そういやリリィは元々邪神守民出身だとか言ってたな。」
装束を着た少女はとても嬉しそうな表情をしていたが、ホタルの方は笑顔ではあっても何処か影のある笑顔だった。
「兄貴が嫌いだと言ってたが、コレがその兄貴か。成程・・・確かに融通の利かそうな顔してやがる。」
部屋を見渡すと、写真はコレだけしか無かった。本棚を見てみると写真の頃までのアルバムしか存在していない。
「空白の8年間か・・・」
その独り言はギンガ自身に強い興味を与えるものだった。その8年間に何があって、どうしてリリィは
あんな姿になってしまったのか。邪神守民を抜けた理由は何だったのか・・・その謎は解けず、ギンガは
溜息をつく。暇潰しに見始めたアルバムのページは彼女の10歳の誕生日を目前にして突然終わっていた・・・

 その頃ナツミ達は2階にある広い風呂を満喫していた。
「窓から今日もよく星が見えるでしょ。マジックミラーだから外からこっちは見れない様になってるんだ。」
「ホント、凄いですね・・・」
特に車が多いカントーやジョウトの都会では決して見る事は出来ないであろう満天の星空をナツミは
眺めていた。自然のプラネタリウムは擬似的に作られたものとは違う迫力と感動に満ち溢れている。
「リューキューって向こうの人達からはよく何にもない所って言われてるけど、何にもないから良い事だって
いっぱいあると思うんだ。アタシはそういうリューキューが好きだから離れられないんだよねー。」
「その気持ち・・・よく解ります。」
ナツミは改めてリリィのスタイルの良さに驚いていた。まだ未成熟な自分の体とは違い、18歳にしてリリィには
既に大人の美しさ、妖艶さの様なものが備わっている。対してホタルは自分と対して年が違わないのに
ナツミより随分幼く見えた。彼女の溌剌とした性格にはピッタリだと言えそうだ。
「私、何時かお姉ちゃんの分まで頑張って、邪神守民の地位向上を果たすの。それは私達2人の夢でもあるんだ。」
ナツミは何度も聞きたいと思った質問をギリギリで飲み込んだ。どうしても聞けなかったのだ。
聞いてしまったら何かとんでもないパンドラの箱でも開けてしまいそうで怖かった。
(リリィさんはどうして邪神守民から離れたんだろう・・・どうして・・・)

 脱衣所から突然聞こえてきたポケギアの着信音に、リリィは慌てた様子で風呂から飛び出した。
「忘れてた!今日返しに行かなきゃいけないポケモンが1匹いたんだっけ!きっと催促の電話だわ!!」
そのまま一気に脱衣所に飛び込み体を拭くと、急いで着替え始めるリリィ。その素早さにナツミは
湯船の中で呆気に取られているしかなかった。彼女からは欠点と言えるものが見当たらない。
「ゴメン。すぐ戻るから適当に入ってて!」
脱衣所から彼女の影が消え失せ、ジャンプした事が解った。何時もの事と暢気にしているホタルと
ナツミだけが風呂に残される。今なら聞けるかもしれないと彼女は思った。
「ホタルちゃん。どうして・・・リリィさんは邪神守民から離れる事になったの?」
その質問をした瞬間、ホタルの顔が曇り、俯いてしまったのを見てナツミは動揺する。
「・・・ゴメン。誰にも言えないんだ。本当にそれだけは誰にも・・・お兄ちゃんにだって
本当の事は教えてない。適当に誤魔化してる。だからこそお姉ちゃんは守民を辞めたんだけど・・・」
「そうなの・・・」
「誤解しないで。私ナツミお姉ちゃんの事嫌いじゃないんだよ。寧ろ優しくて良い人だって思ってる。
でも言えない・・・お姉ちゃんの心の傷は予想以上に深いし、私も辛い思いをしたから・・・」
そこまで言われてしまっては、彼女から『聞く』事は出来ないと思った。
「辛かったのね・・・」
後ろからゆっくりと、ホタルを抱き締めるナツミ。背後からの為ホタルにはナツミの瞳が確認出来ない。
ナツミは目を光らせ、ホタルの記憶の底へと潜っていった・・・

 暗がりの中から泣き声が聞こえる・・・ホタルの声だ。おぼろげで会話の内容もハッキリとは聞き取れない。
ホタルが心を開いていない為に映像も靄がかかっていて何が映っているのかさえ解らなかった。
『どうして・・・お姉ちゃんが・・・』
『取ってきて・・・帰らなきゃ・・・』
涙交じりの掠れた声は恐らくリリィのものだろう。ぶつ切りの音声の為状況も把握する事が出来ない。
ただ、リリィの過去が凄惨なものであったのだろうと言う事だけはハッキリと伝わってきた。
『ごめん・・・ごめんねお姉ちゃん・・・』
『ホタル・・・どうして貴方が謝るの・・・』
(やっぱりホタルちゃんは私に心を許していない。ココが限界ね・・・)
フッと意識を取り戻すとホタルがナツミの前で涙を見せていた。
「お姉ちゃん・・・お姉ちゃん・・・私、助ける事が出来たのに・・・救えたハズなのに・・・」
先程のナツミの質問から昔を思い出して泣いているのだろう。ナツミは自分の浅はかさを悔いた。
「ホタルちゃん。落ち着いて・・・」
「ナツミお姉ちゃん、私駄目な子なんだ。お兄ちゃんの事だって悪く言う資格なんか・・・」
逆に抱きついてきた彼女を、ナツミはただ黙って優しく抱き締めた。
メンテ

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