ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.2 ) |
- 日時: 2010/09/26 17:34
- 名前: 夜月光介
- 参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html
- 第3章 5話 『夜の憩い』
『バクハオウ・かえんじしポケモン・・・3段進化のほのお・やみポケモン。縄張り主張や求愛行動の際には 炎と化したたてがみを激しく燃やし自分をアピールする。常に燃え盛っている炎を維持する為通常の食料だけで 無く樹木も食べてしまう為、バクハオウが棲息している森は何年かすると荒地と化してしまう。』 ギンガは引き続き特殊能力の項目を開く。 『特殊能力・威嚇・・・登場したターン、相手の攻撃力を1段階下げる』 (不味いな、残り1匹に限定されたら確実に攻撃力が下がった状態での試合になっちまう。 向こうも本気って事か・・・真っ向勝負で行くしか無ぇな。) ギンガのパーティに不足しているのは圧倒的な攻撃力を持つほのおタイプのポケモンへの牽制となる水タイプの ポケモンであった。メジャーであるいわ・じめん・ほのおタイプのポケモンに対抗しうる力はやはり大きい。 「お姉ちゃんはギンガ君にもっともっと強くなってほしいと思ってるんだよ。でも、ある程度の力が 無ければ上には行けない。この1戦でギンガ君の真価が問われる事になりそうだね。」 (ギンガの、本当の実力・・・!大丈夫。どんな壁だってギンガならきっと乗り越えられるわ!) ナツミは思わず祈っていた。ギンガのトレーナーとしての腕はまだまだこんなものでは無いと信じたかったのだ。
数分熟考した後、ギンガはバトルフィールドにモンスターボールを投げ入れ、最終戦を戦い抜ける切り札を呼び出した。 『やっぱり俺ってワケか。まぁ任せな。すぐに潰してやっからよ。』 ホノオグマは体を覆う炎をさらに激しく燃え上がらせた。 (相性勝負で言えば若干有利・・・ほのおタイプはほのおタイプに対してダメージを与えられないし、やみタイプは あくタイプにはあまり効果が無い。でもあくタイプの技を使えば普通にダメージが通る!) だが依然として有利不利は図れない。ホノオグマの覚えているあくタイプの技及びノーマルタイプの技は攻撃技である。 それ故に特殊能力で1段階攻撃力を下げられてしまうのは大きな痛手だった。 『コレで両者互角よ・・・お前の実力を私に見せてみるがよい。』 『チッ、上から目線で言いやがって。絶対に後悔させてやるぜ!!』 ギンガに負けず劣らず好戦的であるホノオグマであるが、それが長所となるか短所となるかはトレーナーにかかっている。 両者はバトルフィールドで対峙しお互いに攻撃の間合いを確かめ機会を窺っていた。 「バクハオウ!相手のホノオグマに対して有効な技が無い以上、手数で攻めて!」 『承知しております・・・』 その瞬間バクハオウの口がカッと開き、漆黒の炎が吐き出される。慌ててホノオグマは避けようとしたが、予想以上に 炎の迫ってくるスピードは速く、攻撃をまともにくらってしまった。 『エビルフレイムは相手に攻撃が命中した際、2割の確率で命中率を1段階下げる技。幾らお前が私に対して 有効な技を保有していようとも、その技が当たらなければ私が勝つのだ!』 「あらゆる策を仕掛け、最大限勝てる努力をする。ギンガ君もそうしないと勝てないよー。」 「こっちも反撃に出るぞ!」 『おう!てめぇに地獄を見せてやらねぇとなぁ!!』 技が命中した事で緩みが出たのか、一気に距離を詰めてきたホノオグマに対してバクハオウは対応出来ない。 その隙を突き、バクハオウの腹にホノオグマが爪で強力な一撃を与える。 『グオッ!!』 『ノーマルタイプの技も侮れねぇだろ?』 きりさくは威力70と高い攻撃力を持つホノオグマにしては低い数値に見えるが、クリティカル発生率が高い為 実質威力140と思っても構わない。2倍ダメージを受けたバクハオウは一気に窮地へと追い込まれた。 『まさか、これほどとは・・・』 「諦めないで!最後の最後まで勝ちの目は残っているわよ!」 リリィに励まされたバクハオウは顔を歪ませながらも雄々しく立ち上がり相手をキッと睨み付ける。 その迫力に一瞬たじろいだホノオグマを相手は見逃さなかった。 『受けてみよ、我が生命を糧にした最強の一撃を!』 たてがみの青い炎が燃え広がり、全方位に散らばった為流石のホノオグマも全く回避する事が出来ない。 『バックドラフト!!』 周辺を覆い尽くした青い炎が爆発し、バトルフィールド全体がその衝撃で震える。ギンガ達も熱さを感じる程の 凄まじい攻撃だった。バトルフィールドの中に人間が立っていたら間違いなく真っ黒な焼死体になってしまっただろう。 『どうだ、神にも匹敵する力!コレが本当の力と言うものだ!!』 HPを削りレッドゾーンに達していたバクハオウであったが、それでも何とか堪え立っている。 煙が消えた後倒れ込んでいたホノオグマであったが、何とか立ち上がり構えを取った。 『ハハ・・・結構やるじゃねぇか。面白ぇ攻撃見せてもらったぜ。』 強がりを言うホノオグマであったが、彼のHPもレッドゾーン手前まで減っている。執念の一撃が不利を弾き返し ホノオグマを追い詰めたのだ。リリィのトレーナーとしての才能の高さに、ただただギンガは圧倒されるばかりだった。 (信じられねぇ・・・こんな優秀な奴が何で育て屋やってんだ。リーグで通用する強さだろコレは・・・) 「ギンガ君。今の攻撃に耐えたホノオグマも凄いわよ。普通のポケモンだったらこの一撃で瀕死になっていても 不思議じゃないものね・・・さぁ、このまま一気に決めちゃいなさい!」 『覚悟しろ!』 『こっちの台詞だ馬鹿野郎!』 かえんほうしゃを繰り出したバクハオウに対して距離を詰めきりさくを決めようとするホノオグマ。どちらも攻撃は 速く、バクハオウのかえんほうしゃが当たるのとホノオグマのきりさくが当たったのはほぼ同時だった。 『ここまで・・・やるとは・・・』 『俺もちっと不満が・・・残る・・・ぜ・・・』 両者共に崩れ落ちドローゲームかと思われたが、相性の不利が幸いしホノオグマのHPは微量ながら残っている。 リリィとギンガの野試合はギンガの勝利に終わった。
互いにポケモンをモンスターボールに戻すと、リリィはギンガの健闘を称え握手を求めた。 「初めてギンガ君と戦ってみて、強さがよーく解ったよ。アタシと戦ってくれてありがとね!」 「おう。また機会があればやろうぜ。」 お互い笑顔で握手を交わす2人の姿を見て、ナツミもホタルも心を動かされた様だ。 「お姉ちゃんが負けちゃったのは残念だけど、ナツミさんにとっては良かった事だしまぁいっか・・・」 「リリィさんも本当に強かったわよね。でも何時かは私も張り合える程に強くなりたいな!」 目標は高く、終わりは無い。トレーナーにとっての夢は決してチャンピオンの座だけでは無いが、 誰もが強さを求めているとは言えるだろう。毎日誰かが誰かの戦いを見て夢を持つのだ。 「じゃあ約束通り、タマゴをプレゼントしなきゃねー。」 リリィは自分のポケギアを暫くいじっていたが、やがてそれを止めるとニッコリ笑った。 「おっけー。今ギンガ君のPCにホタルから教えてもらったパスワードを入力してタマゴを 送っておいたから後で取り出しておいてね。常に外に出してないと孵化しないからさ。」 「どんなポケモンが生まれてくるのか楽しみだぜ。」 「ねぇ、ナツミお姉ちゃん。今度は私とやってみない?多少は手加減するから。」 「む、無理よ!手加減してもらったって今の私じゃとても・・・」 ホタルも普段の束縛された生活から解放され、常に笑顔を見せている。 楽しい時間はあっと言う間に過ぎていった・・・
その後ギンガとナツミはホタルとリリィが見ている前で他の一般トレーナーとの野試合をこなし、 日が暮れる頃にはかなりのレベルアップに成功する。その後ポケモンセンターでギンガは ポケモンのタマゴをPCから引き出し、合流した後リリィの家で楽しく食卓を囲む事になった。 「うちは冷暖房完備で風呂も立派なものだし、客間もあるからココで寝ちゃってってもいいからねー。」 「そりゃ願ってもねぇ話だぜ。なぁナツミ。」 「ええ。じゃあ、今晩はお言葉に甘えても宜しいでしょうか?」 「ウチじゃ堅苦しいのはナシだよー。食事も今出来るからもうちょっと待っててね。」 ギンガが初めてココを訪れた時にも感じた事を、ナツミもハッキリと感じていた。 (とにかく豪華・・・!普通の育て屋の家屋とは思えない程立派でまるでちょっとした別荘みたい。) 通常の育て屋ではまず無い2階建ての造りに部屋の多さ、そして庭はポケモン達の為の広い芝生や プールも完備されている。その気になれば人間だって泳ぐ事が出来るであろう程の広さだ。 かと言って成金趣味にありがちな剥製や豪華な絨毯等は見受けられない。暫く2人は辺りを 物珍しげに見回していたが、ホタルとリリィが人数分の冷やし中華を持ってきた途端それを止めた。 「そんな気を遣わずにもっとジロジロ見たってアタシは構わないんだけどなー。」 「いえ、やっぱり失礼ですから・・・でも、なんていうかリリィさんの家はその・・・」 「お金持ちっぽいけど成金趣味じゃ無いって事でしょ。アタシは役に立つものしか買いたくないからねー。 自分の能力使ってそこそこ金は集まったけど、ちょっと贅沢な暮らしがしたい程度で、豪華な食事を 毎日しようとかそういうのは思わないし。こういうので充分美味しいじゃない。」 金を持つ人間は驕り、金を自分が稼ぐ以上に使ってしまい転落していくものだが、リリィは自分の限界を わきまえて自由な暮らしを楽しんでいる様だった。そこからも彼女の人間性の高さが見える。 「本当に冷たくて美味しいですねこの冷やし中華。」 「でしょ?おかわりもあるから好きなだけ食べてよ。客は沢山来るけどお客さんはなかなか来ないから アタシも嬉しいんだ。屈託無く色々な事を話せるしねー。」 冷やし中華を食べ終わってからも楽しい会話が続き、3人はギンガを残して風呂に入る事となった。 居間に1人残されたギンガは部屋の中を何となく見て回っていたが、棚の上に置いてあった1枚の写真に目が留まる。
その写真に写っている2人の少女は厳格そうな少年と共に並んで立っていた。 「この小せぇのがホタルだろ。となるとこいつは・・・リリィか?」 歳の頃10歳近くと言った所だろうか。今とは全く違う色白の少女で、金髪と同じ位長い黒髪が美しい。 「そういやリリィは元々邪神守民出身だとか言ってたな。」 装束を着た少女はとても嬉しそうな表情をしていたが、ホタルの方は笑顔ではあっても何処か影のある笑顔だった。 「兄貴が嫌いだと言ってたが、コレがその兄貴か。成程・・・確かに融通の利かそうな顔してやがる。」 部屋を見渡すと、写真はコレだけしか無かった。本棚を見てみると写真の頃までのアルバムしか存在していない。 「空白の8年間か・・・」 その独り言はギンガ自身に強い興味を与えるものだった。その8年間に何があって、どうしてリリィは あんな姿になってしまったのか。邪神守民を抜けた理由は何だったのか・・・その謎は解けず、ギンガは 溜息をつく。暇潰しに見始めたアルバムのページは彼女の10歳の誕生日を目前にして突然終わっていた・・・
その頃ナツミ達は2階にある広い風呂を満喫していた。 「窓から今日もよく星が見えるでしょ。マジックミラーだから外からこっちは見れない様になってるんだ。」 「ホント、凄いですね・・・」 特に車が多いカントーやジョウトの都会では決して見る事は出来ないであろう満天の星空をナツミは 眺めていた。自然のプラネタリウムは擬似的に作られたものとは違う迫力と感動に満ち溢れている。 「リューキューって向こうの人達からはよく何にもない所って言われてるけど、何にもないから良い事だって いっぱいあると思うんだ。アタシはそういうリューキューが好きだから離れられないんだよねー。」 「その気持ち・・・よく解ります。」 ナツミは改めてリリィのスタイルの良さに驚いていた。まだ未成熟な自分の体とは違い、18歳にしてリリィには 既に大人の美しさ、妖艶さの様なものが備わっている。対してホタルは自分と対して年が違わないのに ナツミより随分幼く見えた。彼女の溌剌とした性格にはピッタリだと言えそうだ。 「私、何時かお姉ちゃんの分まで頑張って、邪神守民の地位向上を果たすの。それは私達2人の夢でもあるんだ。」 ナツミは何度も聞きたいと思った質問をギリギリで飲み込んだ。どうしても聞けなかったのだ。 聞いてしまったら何かとんでもないパンドラの箱でも開けてしまいそうで怖かった。 (リリィさんはどうして邪神守民から離れたんだろう・・・どうして・・・)
脱衣所から突然聞こえてきたポケギアの着信音に、リリィは慌てた様子で風呂から飛び出した。 「忘れてた!今日返しに行かなきゃいけないポケモンが1匹いたんだっけ!きっと催促の電話だわ!!」 そのまま一気に脱衣所に飛び込み体を拭くと、急いで着替え始めるリリィ。その素早さにナツミは 湯船の中で呆気に取られているしかなかった。彼女からは欠点と言えるものが見当たらない。 「ゴメン。すぐ戻るから適当に入ってて!」 脱衣所から彼女の影が消え失せ、ジャンプした事が解った。何時もの事と暢気にしているホタルと ナツミだけが風呂に残される。今なら聞けるかもしれないと彼女は思った。 「ホタルちゃん。どうして・・・リリィさんは邪神守民から離れる事になったの?」 その質問をした瞬間、ホタルの顔が曇り、俯いてしまったのを見てナツミは動揺する。 「・・・ゴメン。誰にも言えないんだ。本当にそれだけは誰にも・・・お兄ちゃんにだって 本当の事は教えてない。適当に誤魔化してる。だからこそお姉ちゃんは守民を辞めたんだけど・・・」 「そうなの・・・」 「誤解しないで。私ナツミお姉ちゃんの事嫌いじゃないんだよ。寧ろ優しくて良い人だって思ってる。 でも言えない・・・お姉ちゃんの心の傷は予想以上に深いし、私も辛い思いをしたから・・・」 そこまで言われてしまっては、彼女から『聞く』事は出来ないと思った。 「辛かったのね・・・」 後ろからゆっくりと、ホタルを抱き締めるナツミ。背後からの為ホタルにはナツミの瞳が確認出来ない。 ナツミは目を光らせ、ホタルの記憶の底へと潜っていった・・・
暗がりの中から泣き声が聞こえる・・・ホタルの声だ。おぼろげで会話の内容もハッキリとは聞き取れない。 ホタルが心を開いていない為に映像も靄がかかっていて何が映っているのかさえ解らなかった。 『どうして・・・お姉ちゃんが・・・』 『取ってきて・・・帰らなきゃ・・・』 涙交じりの掠れた声は恐らくリリィのものだろう。ぶつ切りの音声の為状況も把握する事が出来ない。 ただ、リリィの過去が凄惨なものであったのだろうと言う事だけはハッキリと伝わってきた。 『ごめん・・・ごめんねお姉ちゃん・・・』 『ホタル・・・どうして貴方が謝るの・・・』 (やっぱりホタルちゃんは私に心を許していない。ココが限界ね・・・) フッと意識を取り戻すとホタルがナツミの前で涙を見せていた。 「お姉ちゃん・・・お姉ちゃん・・・私、助ける事が出来たのに・・・救えたハズなのに・・・」 先程のナツミの質問から昔を思い出して泣いているのだろう。ナツミは自分の浅はかさを悔いた。 「ホタルちゃん。落ち着いて・・・」 「ナツミお姉ちゃん、私駄目な子なんだ。お兄ちゃんの事だって悪く言う資格なんか・・・」 逆に抱きついてきた彼女を、ナツミはただ黙って優しく抱き締めた。
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