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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜
日時: 2010/09/12 20:27
名前: 夜月光介
参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html

第3章 3話 『リリィとホタル』

 ザロクは話が上手く、思い出話を聞いている内に外はすっかり暗くなっていた。
「あ・・・もう7時か。御免ねこんな時間まで付き合わせちゃって・・・」
「いえ、とっても楽しかったです。」
ザロクは欠伸をしながら立ち上がると、部屋のカーテンを閉める。
「明日から数日間リリィさんに送ってもらって1年ぶりの同窓会だよ。僕達は全員
リーグ関係者だから気軽に会いに行けなくなっちゃったのが辛い所だね。」
「ズリとオボンって奴か。」
「そうだよ。昔は皆ナンブシティに住んでいたんだ。今はキンブシティって言う名前に
変わってるみたいだけどね。今の市長が自分の名前にしたかったんだとか・・・」
ナツミはギンガの表情が変わったのを見逃さなかった。
「どうしたのギンガ。」
「いや・・・兄貴の名前と同じだからちょっと面食らっただけだ。多分別人だろ。」
ギンガも立ち上がり、部屋から出ようとドアのノブに手をかける。ナツミも
その後ろに付いていこうとしたがふと出てきた疑問をそのまま口にした。
「あ、そういえば・・・ザロクさんって能力者なんですか?」
「今は殆ど使ってないけどね。クレヤボヤンスだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、ナツミの手は反射的に胸と股間を隠していた。
「ホ、本当に使ってないんですよね!?」
「前は面白がっていたけど、僕ももう24歳だからね。飽きちゃったよ・・・
銭湯の番台に立っている人を想像してもらえば解るだろう?」
「それならいいんですけど・・・」
少々顔を赤くしながらナツミはジムを後にした。

 カテナタウンの施設に戻ってくると、疲労感のせいかギンガはベッドに倒れこんでしまう。
「さっきのクレヤボヤンスってのは何だったんだ?ピンとこなかったんだけどよ。」
「ああ、透視能力よ。物体を透かして見る事が出来る能力ね。」
「なッ・・・!ナツミの裸を見られてたかもしれねぇって事か!?」
「ザロクさん目にマスクしてたから瞳が光ってるのかどうか確認出来なかったし、そんな飢えてる
人には見えなかったから微妙な所なんだけど・・・正直解らないわね。」
「チッ、もし見てたらジムリーダーと言えどもぶん殴ってる所だぜ。」
「でももし見ていたのなら、馬鹿正直に自分の能力を明かすかしら?適当にしらばっくれる事だって
出来たハズよ。私自身としてはそういう人じゃないと信じたいんだけど・・・」
ザロクの瞳が見えなかっただけに、見ていたのか見ていないのかはまるで解らなかった。
ならば何故マスクを付けているのかと暫く水掛け論が続いたが、答えは出ず2人はその論議を
諦め、素直に眠りに付く事にした。

 翌朝・・・2人はそれぞれシャワーを浴び着替えを済ませ、朝食を取ると衣服を外に干し始めた。
「また随分と綺麗に晴れてるわね。雲1つ無い快晴だわ。」
旅は楽しい事だけでは無い。衣服の心配もそうだが食料品の買出し等しなければならない事は
山程ある。そういった面倒な仕事は進んでナツミがこなしていた。
「ふああ・・・しかし足止めが続くな。今日は適当に野試合でもこなすか?」
「そうね。干すのが終わったら私も行くわ。どちらにしても今日は外に出ないとね・・・」
親に貰った金とバトルで得た金だけでは些か心許なかったが、これから先新しい衣服や
食料、それとボールや技マシンの補充は絶対に必要になる。2人にはそれがよく解っていた。
「まだもうちょっとかかりそうだから先にセンターに行っておいて。」
「解った。お前のポケモンもついでに回復してくっから渡してくれ。」
ナツミを残しギンガはポケモンセンターに向かう。

 リューキューの気温は高い。だがカントー等の湿度も高い夏と違ってカラッと晴れているだけ
まだ気持ちの良いものだ。部屋の中の涼しさを感じると余計にそれが解る。
「ウキミソーチー!ココはカテナタウンポケモンセンターでございます!」
自動ドアを抜けると入り口にいた女性職員が挨拶してくれる。他の男性職員も元気な
リューキューの民である事をアピールしているかの様だ。朝8時の時点でかなりのトレーナーが
集まってきていたが、その中に見覚えのある顔を見つけギンガは思わず声をかけた。
「リリィじゃねぇか。お前トレーナーじゃねぇだろ?」
「んー?私じゃないよん。妹が今回復してもらってる所だから。」
リリィの視線の先には赤色の服を着た少女がおり、カウンターでボールが返ってくるのを
待っている様だった。
「へぇ、妹がいたのか。結構歳が離れてるんじゃねぇか?」
「うん。アタシが18で妹が13だからねぇ。今からオメガショップに行く所なんだ。
暇だったら一緒に来ない?人数が多い方がショッピングも楽しいだろうし。」
「俺達も丁度買い物に行く所だったんだ。まぁトレーナーも多いだろうし、野試合も
ある程度はこなせるだろ。」
「おっけー!決まりだね。」
年上とは思えない天真爛漫な笑顔・・・キツネと同じ様に見えるが微かな違いが確かにあった。
(無理をしている・・・)
何かは解らないがリリィには恐らく深い傷があるのだろう。ギンガと同じ様に・・・

 ギンガもセンターで2人分のポケモンの回復を済ませ、リリィ達と合流した。
「アタシの妹、ホタルって言うんだ。仲良くしてあげてね。」
「初めまして、ホタルです!」
赤がかった黒髪と胸元のルビー、腕に付いているリングもクリムゾンレッドと、褐色金髪のリリィとは
随分違う印象の少女だった。透き通る様な色白の肌もリリィと違う所だ。
「とりあえず君の友達の所へ行ってからショップだよね。ホタルと回るのは久しぶりだから
ちょっと楽しみなんだ。良い商品が沢山あると良いね!」
「私も楽しみ!お姉ちゃんに直接会うのも1年ぶりだし、今日は沢山遊びたいな!」
「リーグ関係の仕事か。」
「私、こう見えてもクニガミリーグでは結構有名なんですよ。」
ホタルも明るい利発そうな少女だった。2人が揃うと賑やかさが増幅されていく気がする。
ギンガはあまり五月蝿いのは苦手だった為、とりあえずナツミと合流する為センターから
外に出た。リリィとホタルも後につき施設へと向かう。
施設の方では洗濯物を干し終わったナツミがギンガの到着を待っていた。
「あれ、ギンガ・・・その2人は誰?」
「あ、初めまして!この街で育て小屋やってるリリィです。宜しくねー。」
「!ナツミさん!?」
一見見ただけでは解らなかったのだが、ナツミは少女が自分の名前を知っている事に
反応し彼女を凝視した。服装や雰囲気が異なっているが顔は同じだ。
「ホタルちゃん・・・」
「あれホタル。顔見知りなの?」
「昨日、社で会ったから・・・」
表情を曇らせたホタルに対してナツミは彼女の思いを察した。
「あの場所では違う自分を演じてるのね。大丈夫、誰にも言わないから。」
「すいません・・・私、あそこでは普段の自分になれなくて。」
社で会った時はやたら躾をされている少女だと思ったが、それは単なる演技だったのだろう。
「あー、兄貴の奴五月蝿いからねぇ。アタシの事も嫌ってるしさぁ。」
「私も堅苦しいの嫌いだからそれを強制するお兄ちゃんも嫌い・・・」
ホタルは暫くの間俯いていたが、顔を上げた時には先程の笑顔を取り戻していた。
「じゃあ、行きましょうか!」
嬉しさを抑えきれないのか走り出したホタルをリリィが追いかけた。
「そんなに急がなくっても店は逃げやしないわよ!」
「全く、しょうがねぇなぁ・・・」
ギンガが見せた久しぶりの笑顔に、ナツミの心は癒される。
(この2人との出会いはギンガにとってプラスに働いたみたいね・・・本当に良かったわ。)

 カテナタウンはシティ程の規模では無かったもののなかなかの賑わいを見せている
大きなショップがあった。看板には『Ω』の文字が大きく描かれている。
「オメガショップはこの辺りじゃ一番大きなポケモンショップだねー。ギノザに比べると
品揃えはまだまだかもしれないけど。」
「3階建ての建物自体が珍しいかもしれねぇな。」
御誂え向きと言うべきか、ショップの横にはバトルフィールドが用意されており、トレーナー達が
バトルを楽しんでいる。リーグ休暇中でも普通のトレーナーはレベルを上げる事に熱心な様だ。
「ま、野試合は後でも出来るだろ。まずは買い物しようぜ。」
「ポケモン関係だけじゃなくて食品や化粧品関係まで網羅してる店なんですよ!」
「それはなかなか凄い店ねぇ・・・」
中はセンターと同じく冷房が完備されており、所狭しと商品が並んでいる。
「普通のボールだけじゃなくて、タイマーボールやダークボールなんかも充実してるわね。」
「あっちにあるのは傷薬か。結構広くて狭い通路になってるから迷いそうだな。」
「とりあえず4人で回るのもなんだから、分かれましょう。」

 ジャンケンで別れ方を適当に選んだ結果、ギンガはホタルと、ナツミはリリィと一緒に店を
見て回る事になった。ギンガは真っ先に栄養剤売り場へと向かう。
「もっと早く大量に買い込んでおければ良かったんだがな・・・流石に1本9800円となると
なかなか手が出ねぇぜ・・・」
「私が買ってる香水とかよりも遥かに高いですもんね。」
たった1本の栄養ドリンクさえも子供では手が届かない世界。ギンガは諦めて技マシン売り場の方へと
向かおうとした。それをホタルが呼び止める。
「あっあの・・・良ければ私がケースで買いますよ?」
「お前が!?」
「あんまりココで堂々と言えたものじゃないですけど、私四天王なので・・・」
リーグ四天王ともなれば年間で支給される額は数千万に達する。勿論チャンピオンならば
2年間で数億稼げる程だ。バトルが強ければ何でも手に入る世界でもある。
「あんまり大きな買い物しないので、余ってる位なんですよ・・・お姉ちゃんも
『助けてあげて』って言っていましたし・・・」
ホタルは腰に付けていたポシェットから財布を取り出すと、カードを抜き出し
店員に見せた。店員は暫く驚きのあまり目を見開いていたが、我に返ると
購入する商品の確認をする。
「どの商品をどれだけ購入されるのでしょうか・・・」
「ポケモンの栄養剤を1種類につき100本ずつ。全部ギンガさんのPCに入れて何時でも
使える様にしてあげてください。ギンガさん、自分名義のIDナンバーを覚えてますか?」
「あ、ああ・・・」
呆気に取られたままギンガはIDナンバーをホタルに伝え、店員がそれを確認すると
全ての商品はPCに転送された。カードを持ったままホタルは歩き出す。
「今度は何を買います?・・・大丈夫ですよ。ギンガさんがチャンピオンになったら
返してもらいますから。それまでは無期限の貸しって事で!」
ホタルの冗談もギンガの驚愕を打ち消す事は出来なかった。
(13歳で四天王とは・・・俺も負けてはいられねぇな・・・)

 一方ナツミとリリィの方は食料品コーナーを見て回っていた。
「旅の間ってあんまり良い食事出来ないでしょ。今日の夜は皆で美味しいものでも
食べない?勿論アタシが奢るからさ。」
「そ、そんな!会ったばかりなのにそんな御好意に甘えるワケには・・・」
「大丈夫大丈夫。ザロクさんからも今日の朝イチで旅費貰ってるし、本業の方も頗る
順調だから。結構こう見えてお金持ちなんだよ、アタシは。」
そう言いながら彼女はカートに生卵や胡瓜、チャーシュー肉、そして麺のパックを入れていく。
「料理だってコレ位なら・・・」
どうやらリリィは冷やし中華を御馳走しようとしているらしい。屈託無い笑顔を見ていると
ナツミも心が癒された。
(この人は私と違う・・・人の心を読むと言うか、掴む事が出来る人なのね。)
「あ、そうだ。後でホタルに新しい髪飾りでも買ってあげよっかな。前のやつも
かなり気に入ってくれたみたいだけど・・・」
「優しいんですね。」
ナツミの言葉に対して、リリィはばつが悪そうに頭を掻く。
「アタシも助けられてるからね。妹に。そりゃ血の繋がった妹だから可愛くないって言ったら
嘘になるよー。あと兄貴があんまりにもアレだからその反動もあるのかな。」
「そのお兄さんって・・・?」
「兄貴もホタルと同じ邪神守民・・・いや元々はアタシも一族の末裔なんだけどさ。
何て言うかプライドが高くてアタシやホタルに真面目な態度を強要するのよ。
守民ならば誰に見られても恥ずかしくない様にしろってね。」
「そうだったんですか・・・」
「アタシも色々あって守民の仕事を辞めちゃってね。紫炎拳古武道を習ったり
ジャンパーの能力を鍛えたりして・・・最終的には育て小屋に落ち着いたの。」
ナツミは自分とは違う、辛い人生を歩んできたであろう彼女の事を思った。
「ナツミちゃんも頑張ってね。ギンガ君から色々聞いたけど、あの子は闇に呑まれかかってる。
私も前に同じ経験をしてるからよく解るの。その侵食を食い止められるのは一番近くにいる
貴方しかいない・・・重いかもしれないけど、好きなら全部受け止めてあげないとね・・・」
「はい、覚悟は出来てます。私もギンガも気持ちは同じですから・・・」
前々からその兆候は出てきていた。ナツミ自身は気が付かなかったがナツミにもその兆候が
出始めている。ナツミはギンガを救いたいと思っていたが、本当は2人が支え合って
危うい状態を保っているのだ。ナツミもギンガもまだその事には気が付いていなかった。

 その後それぞれが食料品・衣服・技マシン・ボール等を購入し、合流した時には既に時計は
12時を回っていた。ショップの屋上には何軒かの屋台があり、そこで適当に
食事を取った後4人はバトルフィールドへと向かう。
「まだ昼時だから他のトレーナーがいないねー。」
「まぁ文句は言えねぇよな。誰か来るまで気長に待つしか・・・」
ベンチに座ろうとしたギンガに対して、リリィは手招きをした。
「アタシとやろうよ。アタシもポケモンを育てていないワケじゃ無いんだよ?」
「面白ぇ、やってやろうじゃねぇか。」
ギンガはそのままバトルフィールドの片側に立ち、ナツミ達は側でその戦いを
見守る事になった。
「リリィさんのバトルの腕が全然解らないだけに怖いわね・・・」
「お姉ちゃんは私と同じ炎タイプの使い手なんです。元々は私じゃなくて
お姉ちゃんが『炎邪神守民』の座に着くハズでしたから・・・」
ナツミはホタルがリリィの心の傷を知っているのだと見抜いた。しかしその
傷の正体を聞くワケにもいかず、ギンガの応援に回る。
「頑張ってねギンガー!」
「お姉ちゃん、負けちゃ駄目だよー!!」
「観客が2人だけってのはこういう場所にしちゃ少ねぇよな・・・」
「まぁ良いじゃないそれでも。ところで君に相談があるんだけど。」
「何だよ今相談って。」
「ただ勝負するだけじゃつまらないからさ。アタシ、ポケモンの卵を持ってるのよ。
客からの預かり物じゃ無いし、炎ポケモンでもない奴ね。君が勝ったら
それをあげる。負けたらあげない。別に君が何を賭けるワケでも無し。
どう、悪くない話でしょ?」
「願ってもねぇ話だな。そりゃ当然承諾させてもらおうか。」
リリィは綺麗な歯を見せながら笑うと、ジーンズのポケットからモンスターボールを取り出した。
メンテ

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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.10 )
日時: 2011/01/19 06:16
名前: 夜月光介 ID:KvxF2dyI
参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html

第4章 2話 『言霊』

「参ったぜ・・・完敗だ。トサカさんにも拮抗していそうな力・・・俺もまだまだ
修行が足りねェな。だが今度戦った時はそうはいかねェ。覚えとけ!」
「あぁ、また機会があったらな。」
テレビ局の者達は短い休憩時間をバトルに費やす程対人戦に飢えているらしい。アベは去り、それとは
入れ違いに黒縁眼鏡をかけた長い黒髪の女性がバトルフィールドのある部屋に入ってきた。
「予定通り2:20分に入室・・・と。貴方がギンガ君ね。クダさんに聞いたわ。もう3つも
ジムバッチを持っているそうじゃない。期待出来そうだわ・・・」
彼女は懐中時計で時刻を確認しながら、ギンガの方を向きモンスターボールを手に取った。
「私はエツコ。このリューキューテレビ局ではタイムキーパーを担当しているわ。時間の大切さは
バトルも普段の仕事も同じ。計算に基いた戦い方というものを教えてあげる。」
「セシナと同じ理屈でモノを言うヤローか。バトルは計算だけではどうにもならねぇって事を
逆に俺が教えてやるぜ。かかってこいよ!」
エツコはバトルフィールドにモンスターボールを投げ入れ、ポケモンを出現させる。
姿を現したのは巨大な目覚まし時計の様なポケモンだった。
『戦闘ヲ行ナウ時間デス。』
両端に付いている黄金の鐘と時計盤の顔面を持つ巨大な体躯が目に付く。ロボットの為はがねタイプを
持つであろう事は容易に想像出来た。ギンガはポケギアで詳しい情報を検索する。
『メビウス・とききざみポケモン・・・イタン山にある古代遺跡で発見されたポケモン。古代人の作り上げた
人工ポケモンだと言う説もあるが真実かどうかは不明。1時間毎に鐘を鳴らし古代人達に時を告げていた。』
(はがね・ひかりタイプか。まぁ見た目からして機械だもんな・・・)
続いて彼は特殊能力の項目を参照した。
『特殊能力・快速時鐘・・・HPが3分の1以下になるとすばやさが2倍になる』
(元々素早さが高そうなやつじゃねぇな・・・2倍になっても元々素早い相手には梃子摺ると見た。それに
タイプの相性から考えてもコイツを使うのが一番だぜ。)
ギンガはモンスターボールを選ぶとバトルフィールドに投げ入れ、ホノオグマを出現させる。
『このポンコツが。すぐにぶっ壊してやるぜ・・・』
『私ノ力ヲ思イ知レ!』
「ひかりタイプの攻撃は等倍になるホノオグマね。メビウス、プランBよ。深追いはせず、
最終的な勝ちを目指しなさい。」
『了解!』
2匹が身構えた所で、エツコはポケギアのストップウォッチ機能を選択し、ボタンを押してタイムを
計り始めた。ギンガの方は彼女が敵を疲弊させる延長戦を行なうと見て、短期決着を想定していた。
「ホノオグマ、とにかく火力で攻め続けろ!相手に動く隙を与えんな!」
『ヘッ、燃やし尽くしてやるぜー!!』
戦闘開始と同時に動いたのはホノオグマの方だった。口から漆黒の炎を吹き出し、メビウスに容赦無く
ダメージを与えていく。威力はそれほどでも無いが技の追加効果により相手を火傷状態にする事が出来た。
『1時ニナリマシタ。冷凍光線ヲ当テル時間デス。』
その炎に包まれていたメビウスの口から突如発射されたれいとうビームをホノオグマは回避する事が
出来なかった。ダメージこそ少なかったとは言えそのスピードには恐怖さえ感じる。
『速ェ・・・だが一気に決めてやるぜ!』
メビウスは床に立ったままの状態の為動く術を持たない。移動する事が出来るホノオグマの方が通常有利なハズだった。
背後に回りほのおのキバで噛み付いてさらにダメージを与えていく。火傷のダメージもあってメビウスのHPは
半分を少し下回る所まで下がった。
『流石に堅ェな。だがココまでいけば俺の勝ちは決まったも同然・・・』
『3時ニナリマシタ。自己再生スル時間デス。』
『うっ!?』
メビウスの針が回転し3時の部分で止まると、メビウスは自己再生により体力を半分回復した。先程与えたダメージが
火傷でのダメージを除けば全て無駄になってしまう。ホノオグマは歯軋りして悔しがった。
『畜生、奴には回復手段が・・・』
「メビウスの特徴は並外れたスタミナと防御力、回復にこそあるわ。これといって強くも無い相手なら充分プランA、
総攻撃で倒す事も出来るけど・・・貴方のポケモンは優秀ね。だからこそプランBで叩き潰してあげる。」
(クッ・・・火傷が消えねぇのが唯一の救いか。確かに効果抜群でこのダメージしか喰らわねぇってのは・・・
だが、ほのおのキバでの連続攻撃を決めれば勝てるかもしれねぇ!)
ギンガは若干の不利を悟りながらも勝負を投げ出そうとはしなかった。チャンピオンを目指すと宣言した自分が
こんな野試合で逃げ出すワケにはいかない。勝機がある限り、攻撃の手を緩めるワケにもいかなかった。
「受けたダメージは大してデカくねぇ。相手に回復させる隙を与えず一気に倒すんだ!」
『ああ、必ず殺ってやるぜ!マスター、アンタの勝利の為に!』
ホノオグマもまた動かない相手を攻撃するのは楽と考え、ほのおのキバでの連続攻撃一辺倒に集中する事にする。
相手ははがねタイプの為他の技では効果的なダメージを与える事が出来ない為だ。
(・・・とは言ったものの、相手に効果的なダメージを与える事が出来ていないのは確かね。等倍でのダメージ及び
1ターン消費は危険が伴うわ。ココは何とか保険を取っておきたい所なんだけど・・・)
エツコは思った程ホノオグマのHPが減っていない事に対して焦りを感じ始めていた。打倒目標タイムの5分まで
もう2分を切っている。彼女も勝ちに行きたいのは同じだろう。
「メビウス、攻撃を行ない回復した後、充填を開始しなさい!」
『7時ニナリマシタ。炎ヲ噴射スル時間デス。』
時計の針が目まぐるしく回転し、止まった瞬間に口から火炎が噴き出しホノオグマを襲う。だがホノオグマ自体が
ほのおタイプを持っている為れいとうビームと同じく大きなダメージは見込めない。
『だが、攻撃のスピードが速ェ・・・!何だってこんなに速ェんだ。相手は動いてねぇのに避け切れねぇとは・・・!』
『3時ニナリマシタ。自己再生スル時間デス。』
『させるか!』
メビウスの針が3時で止まり回復が始まった時にホノオグマの攻撃が当たり、メビウスのHPは半分の所で止まった。
あと2回攻撃がまともに命中すれば勝てると言う所まで追い詰めている。おまけに火傷の追加ダメージもこの局面では大きい。
『11時ニナリマシタ。シャインブレイカノ充填ヲスル時間デス。』
突如メビウスの体が白く光り輝き始めた。周囲の光を吸い取っている様に見える。ホノオグマは危険を感じて再び
ほのおのキバでの攻撃を行なうが、相手のHPをゼロにするにはまだダメージが足りない。
「消えなさい!」
『12時ニナリマシタ。シャインブレイカヲ放ツ時間デス。』
メビウスの口から凄まじいエネルギーを持った白い光線が発射され、あまりの眩しさにギンガは目を瞑るしか無かった。
何が起き、どうなったのかよく解らない。光線が止んだであろうと思って目を開けた時には、ボロボロの姿で
かろうじて立っているホノオグマと、微動だにせず立っているメビウスの姿があった。
『ウオオオオオオオ!!』
最後の力を振り絞って口から放った遠距離攻撃であるじごくのごうかがメビウスのHPを削り取る。メビウスはとどめを刺す為に
再度じこさいせいを行なおうとしたが、ターン経過による火傷の追加ダメージにより瀕死状態となった。
「・・・5分ね。貴方の全力を見せてもらえて、本当に楽しいバトルだったわ。」
エツコは溜息をつきながらも、気丈に振る舞いギンガの前で笑顔を見せた。負ける事がトレーナーにとってどれ程悔しい事か
ギンガにはよく解っている。彼もチネンタウンでの野試合で何度か負けを経験していた。
(火傷が無かったらこっちがアウトだったな。戦いなんざ最後は運だ。勝利の女神に愛された奴だけが栄冠を手にする
事が出来る・・・俺は果たしてニケに愛されるだけの実力を持っているんだろうか?)
ポケモントレーナーが彼女からの寵愛を受けたいと願う空想上の女神ニケ。勝利を与えると言われるその姿は
凛々しく、そして神々しい。大事な局面で勝つ為には、運にも恵まれなければならないのだ。

 「良かったら今度は収録現場にいらっしゃい。静かにしててくれないといけないけど。」
分刻みの仕事を任されているエツコはスタジオを後にした。ギンガはホノオグマをボールに戻した後、
暫くの間先程の戦いでしくじった点が無いかどうか思案していたが、また見知らぬ人物が部屋に
入ってきた為そちらの方を見た。
「あれ、君がクダさんが言ってた凄腕のトレーナーかい?随分若いんだね。」
そう言ってにこやかに笑う男も大分若い。実年齢は見ただけでは解らないが、少なくとも20代前半に見える。
「丁度休憩時間になって良かったよ。強いトレーナーと戦うのは大好きだからね。・・・おっと、
まだ自己紹介が済んでいなかった。僕の名前はキベ。宜しく・・・」
白のワイシャツに青のネクタイ、手には台本が握られている。
「俺はギンガだ。サシキタウンからココまで来た。」
「へぇ、随分遠い所から来たんだね。君は・・・何て言うか、まだ若いのに精悍な顔つきをしているよ。
脚本を書いている僕としては、君みたいな人間から刺激を受けたくなってくるなぁ。」
彼はポケットからモンスターボールを取り出すと、バトルフィールドに投げ入れポケモンを出現させた。
「見せてもらうよ、君の強さを!」
『ロロロロロロ・・・』
まるで鈴が鳴っているかの様な声を出すエメラルドグリーンの体色を持つポケモンは、コロコロ表情を
変えながら笑っている。見ているだけで心が落ち着く様な不思議な雰囲気を持っているポケモンだ。
(コダマよりデケェな。進化後か?)
夜、ベランダで林の方を見ている時にコダマを見た事があるギンガはそう思いながら図鑑項目のページを開いた。
『コトダマ・せいれいポケモン・・・森の中で迷った人の道案内をしてあげる事もある心優しいポケモン。
自分の言葉を持たず喋ってきた相手の言葉を鸚鵡返しに話す習性を持つ。』
(やっぱり進化した後だな。コイツの能力は何だ・・・?)
『特殊能力・木霊輪唱・・・1ターン中に相手と同じ技を出した場合、全てのステータスが1段階上昇する』
(まぁそんな事は稀だろ・・・エスパー同士の戦いじゃあるまいし。さてどうしたモンか・・・)
回復ポッドはスタジオ内に設置されていたが出来れば手持ちのレベルは均等に上げておきたい。まだ使用していない
ポケモンはテトラ・ニッケル・カッパーであったが、ギンガはテトラにある技を覚えさせていたのを思い出した。
(エスパー対策として覚えさせておいたあの技がありゃ何とかなるかもな。よし!)
ギンガはバトルフィールドにモンスターボールを投げ入れテトラを出現させる。まだ進化こそしていないものの
野試合を通して強敵と渡り合った事で瞳には自信の色がハッキリと見えていた。
『この俺と戦おうとはな!上等だ。すぐに後悔させてやるぜ・・・』
『コノ俺ト戦オウトハナ!上等ダ。スグニ後悔サセテヤルゼ・・・』
コトダマは自分の言葉を持たない。それ故に相手の心を読む事は難しかった。
「エスパータイプに対してどくタイプか。なかなか蛮勇だね。ドラゴンタイプは確かにステータスは高いけど、
相性の悪さも認めなくちゃいけないよ・・・それじゃ、始めようか。」
キベが指示を出すと、コトダマは挨拶代わりとばかりにサイコキネシスを放ってきた。
『ウオッ!!いきなりかよ。危ねェな・・・』
『ウオッ!!イキナリカヨ、危ネェナ・・・』
ある程度距離を取っていた為敏捷な動きが出来るテトラはそれを回避したが、長距離にいるとあの技を出す事が
出来ない。近付けばサイコキネシスが命中する確率も大幅に高まる。ポイントは何時距離を縮めるかだった。
(奴も小せェから鈍重とは言えねェ。何とか隙を見せてくれれば良いんだが・・・)
「凄腕と言われるだけの事はあるじゃないか。楽しくなってきたよ・・・」
キベは心からバトルを満喫している様であったが、ギンガにとっては苦しい戦いである事に変わりは無い。
『マスター、どうする?無理を承知で当てに行くしか無ェか?』
「いや、ココは一旦様子見だな。長距離攻撃を使って相手のHPを少しでも多く減らすんだ。」
『よし、そうと決まれば・・・くらいやがれ!』
『ヨシ、ソウト決マレバ・・・クライヤガレ!』
猛毒の霧を口から発射するポイズンミストがコトダマに命中したが、同時にテトラの周囲にドーナツの様な
光の輪が発生し、一気に小さくなってテトラの胸を締め付け始めた。
『グッ!!』
「ひかりのわ。毎ターン威力20のダメージを与え続けるひかりタイプの技だよ。まきつくと同じ様に効果は
数ターンに渡って続く。こういう攻撃の方が確実性があって僕は好きなんだよね。」
『ロロロロロ・・・』
手を叩いて攻撃成功を喜んでいるコトダマであったが、ポイズンミストがまともに命中した為、HPとしては
今だ差はそれ程開いていない。ギンガとしては一刻も早く自分が勝利する為の展開に持ち込みたかった。

 ひかりのわのダメージは深刻だった。1回辺りのダメージは少量とは言え、何度も受ければ大きなダメージとなる。
しかも1度攻撃を受けてしまったら2回〜5回のダメージが確定してしまうのだ。そんなダメージを受けている
最中にサイコキネシスをまともに受ければ瀕死は免れない。最早猶予は残されていなかった。
(不味いな・・・もう避ける事を考えていたら負ける。相討ち覚悟で前に出ねェと・・・)
体を締め付けるひかりのわに苦しみながらも、いちかばちかの突撃を試みるテトラ。
「最後の足掻き、って所かな?動きも封じられている君のポケモンじゃコトダマに近付く事は出来ないよ。
僕が引導を渡してあげよう。サイコキネシスでとどめを刺せ!」
『ロロロロロ・・・』
満面の笑みを浮かべながらコトダマはサイコキネシスを放った。その場から走り出す事も出来ないテトラにとっては
絶望的な状況である。だが拘束されているにも関わらずテトラは渾身の力を振るい跳躍した。
「何ッ!?」
跳躍からの組み付き・・・コトダマの背後に着地したテトラはかみくだくを行い、相手のHPを大きく減らしていく。
『どうだ、痛ェか?散々俺を虚仮にしやがって!』
『ドウダ。痛ェカ?散々俺ヲ虚仮ニシヤガッテ!』
テトラの言葉を返しながら必死にコトダマは振りほどこうとするが、ガッチリ組み付いたテトラはおいそれと
相手を逃がしはしない。もう一度噛み付き、コトダマのHPはレッドゾーンに突入した。
「なんて事だ・・・君のポケモンは本当に凄い!」
予想だにしていなかった展開を見てキベは逆に興奮している。圧倒的不利を引っくり返すその諦めない力・・・
6年前に目撃したあの戦いから今までずっと見る事が無かったものだ。
メンテ

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