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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜
日時: 2010/09/12 20:27
名前: 夜月光介
参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html

第3章 3話 『リリィとホタル』

 ザロクは話が上手く、思い出話を聞いている内に外はすっかり暗くなっていた。
「あ・・・もう7時か。御免ねこんな時間まで付き合わせちゃって・・・」
「いえ、とっても楽しかったです。」
ザロクは欠伸をしながら立ち上がると、部屋のカーテンを閉める。
「明日から数日間リリィさんに送ってもらって1年ぶりの同窓会だよ。僕達は全員
リーグ関係者だから気軽に会いに行けなくなっちゃったのが辛い所だね。」
「ズリとオボンって奴か。」
「そうだよ。昔は皆ナンブシティに住んでいたんだ。今はキンブシティって言う名前に
変わってるみたいだけどね。今の市長が自分の名前にしたかったんだとか・・・」
ナツミはギンガの表情が変わったのを見逃さなかった。
「どうしたのギンガ。」
「いや・・・兄貴の名前と同じだからちょっと面食らっただけだ。多分別人だろ。」
ギンガも立ち上がり、部屋から出ようとドアのノブに手をかける。ナツミも
その後ろに付いていこうとしたがふと出てきた疑問をそのまま口にした。
「あ、そういえば・・・ザロクさんって能力者なんですか?」
「今は殆ど使ってないけどね。クレヤボヤンスだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、ナツミの手は反射的に胸と股間を隠していた。
「ホ、本当に使ってないんですよね!?」
「前は面白がっていたけど、僕ももう24歳だからね。飽きちゃったよ・・・
銭湯の番台に立っている人を想像してもらえば解るだろう?」
「それならいいんですけど・・・」
少々顔を赤くしながらナツミはジムを後にした。

 カテナタウンの施設に戻ってくると、疲労感のせいかギンガはベッドに倒れこんでしまう。
「さっきのクレヤボヤンスってのは何だったんだ?ピンとこなかったんだけどよ。」
「ああ、透視能力よ。物体を透かして見る事が出来る能力ね。」
「なッ・・・!ナツミの裸を見られてたかもしれねぇって事か!?」
「ザロクさん目にマスクしてたから瞳が光ってるのかどうか確認出来なかったし、そんな飢えてる
人には見えなかったから微妙な所なんだけど・・・正直解らないわね。」
「チッ、もし見てたらジムリーダーと言えどもぶん殴ってる所だぜ。」
「でももし見ていたのなら、馬鹿正直に自分の能力を明かすかしら?適当にしらばっくれる事だって
出来たハズよ。私自身としてはそういう人じゃないと信じたいんだけど・・・」
ザロクの瞳が見えなかっただけに、見ていたのか見ていないのかはまるで解らなかった。
ならば何故マスクを付けているのかと暫く水掛け論が続いたが、答えは出ず2人はその論議を
諦め、素直に眠りに付く事にした。

 翌朝・・・2人はそれぞれシャワーを浴び着替えを済ませ、朝食を取ると衣服を外に干し始めた。
「また随分と綺麗に晴れてるわね。雲1つ無い快晴だわ。」
旅は楽しい事だけでは無い。衣服の心配もそうだが食料品の買出し等しなければならない事は
山程ある。そういった面倒な仕事は進んでナツミがこなしていた。
「ふああ・・・しかし足止めが続くな。今日は適当に野試合でもこなすか?」
「そうね。干すのが終わったら私も行くわ。どちらにしても今日は外に出ないとね・・・」
親に貰った金とバトルで得た金だけでは些か心許なかったが、これから先新しい衣服や
食料、それとボールや技マシンの補充は絶対に必要になる。2人にはそれがよく解っていた。
「まだもうちょっとかかりそうだから先にセンターに行っておいて。」
「解った。お前のポケモンもついでに回復してくっから渡してくれ。」
ナツミを残しギンガはポケモンセンターに向かう。

 リューキューの気温は高い。だがカントー等の湿度も高い夏と違ってカラッと晴れているだけ
まだ気持ちの良いものだ。部屋の中の涼しさを感じると余計にそれが解る。
「ウキミソーチー!ココはカテナタウンポケモンセンターでございます!」
自動ドアを抜けると入り口にいた女性職員が挨拶してくれる。他の男性職員も元気な
リューキューの民である事をアピールしているかの様だ。朝8時の時点でかなりのトレーナーが
集まってきていたが、その中に見覚えのある顔を見つけギンガは思わず声をかけた。
「リリィじゃねぇか。お前トレーナーじゃねぇだろ?」
「んー?私じゃないよん。妹が今回復してもらってる所だから。」
リリィの視線の先には赤色の服を着た少女がおり、カウンターでボールが返ってくるのを
待っている様だった。
「へぇ、妹がいたのか。結構歳が離れてるんじゃねぇか?」
「うん。アタシが18で妹が13だからねぇ。今からオメガショップに行く所なんだ。
暇だったら一緒に来ない?人数が多い方がショッピングも楽しいだろうし。」
「俺達も丁度買い物に行く所だったんだ。まぁトレーナーも多いだろうし、野試合も
ある程度はこなせるだろ。」
「おっけー!決まりだね。」
年上とは思えない天真爛漫な笑顔・・・キツネと同じ様に見えるが微かな違いが確かにあった。
(無理をしている・・・)
何かは解らないがリリィには恐らく深い傷があるのだろう。ギンガと同じ様に・・・

 ギンガもセンターで2人分のポケモンの回復を済ませ、リリィ達と合流した。
「アタシの妹、ホタルって言うんだ。仲良くしてあげてね。」
「初めまして、ホタルです!」
赤がかった黒髪と胸元のルビー、腕に付いているリングもクリムゾンレッドと、褐色金髪のリリィとは
随分違う印象の少女だった。透き通る様な色白の肌もリリィと違う所だ。
「とりあえず君の友達の所へ行ってからショップだよね。ホタルと回るのは久しぶりだから
ちょっと楽しみなんだ。良い商品が沢山あると良いね!」
「私も楽しみ!お姉ちゃんに直接会うのも1年ぶりだし、今日は沢山遊びたいな!」
「リーグ関係の仕事か。」
「私、こう見えてもクニガミリーグでは結構有名なんですよ。」
ホタルも明るい利発そうな少女だった。2人が揃うと賑やかさが増幅されていく気がする。
ギンガはあまり五月蝿いのは苦手だった為、とりあえずナツミと合流する為センターから
外に出た。リリィとホタルも後につき施設へと向かう。
施設の方では洗濯物を干し終わったナツミがギンガの到着を待っていた。
「あれ、ギンガ・・・その2人は誰?」
「あ、初めまして!この街で育て小屋やってるリリィです。宜しくねー。」
「!ナツミさん!?」
一見見ただけでは解らなかったのだが、ナツミは少女が自分の名前を知っている事に
反応し彼女を凝視した。服装や雰囲気が異なっているが顔は同じだ。
「ホタルちゃん・・・」
「あれホタル。顔見知りなの?」
「昨日、社で会ったから・・・」
表情を曇らせたホタルに対してナツミは彼女の思いを察した。
「あの場所では違う自分を演じてるのね。大丈夫、誰にも言わないから。」
「すいません・・・私、あそこでは普段の自分になれなくて。」
社で会った時はやたら躾をされている少女だと思ったが、それは単なる演技だったのだろう。
「あー、兄貴の奴五月蝿いからねぇ。アタシの事も嫌ってるしさぁ。」
「私も堅苦しいの嫌いだからそれを強制するお兄ちゃんも嫌い・・・」
ホタルは暫くの間俯いていたが、顔を上げた時には先程の笑顔を取り戻していた。
「じゃあ、行きましょうか!」
嬉しさを抑えきれないのか走り出したホタルをリリィが追いかけた。
「そんなに急がなくっても店は逃げやしないわよ!」
「全く、しょうがねぇなぁ・・・」
ギンガが見せた久しぶりの笑顔に、ナツミの心は癒される。
(この2人との出会いはギンガにとってプラスに働いたみたいね・・・本当に良かったわ。)

 カテナタウンはシティ程の規模では無かったもののなかなかの賑わいを見せている
大きなショップがあった。看板には『Ω』の文字が大きく描かれている。
「オメガショップはこの辺りじゃ一番大きなポケモンショップだねー。ギノザに比べると
品揃えはまだまだかもしれないけど。」
「3階建ての建物自体が珍しいかもしれねぇな。」
御誂え向きと言うべきか、ショップの横にはバトルフィールドが用意されており、トレーナー達が
バトルを楽しんでいる。リーグ休暇中でも普通のトレーナーはレベルを上げる事に熱心な様だ。
「ま、野試合は後でも出来るだろ。まずは買い物しようぜ。」
「ポケモン関係だけじゃなくて食品や化粧品関係まで網羅してる店なんですよ!」
「それはなかなか凄い店ねぇ・・・」
中はセンターと同じく冷房が完備されており、所狭しと商品が並んでいる。
「普通のボールだけじゃなくて、タイマーボールやダークボールなんかも充実してるわね。」
「あっちにあるのは傷薬か。結構広くて狭い通路になってるから迷いそうだな。」
「とりあえず4人で回るのもなんだから、分かれましょう。」

 ジャンケンで別れ方を適当に選んだ結果、ギンガはホタルと、ナツミはリリィと一緒に店を
見て回る事になった。ギンガは真っ先に栄養剤売り場へと向かう。
「もっと早く大量に買い込んでおければ良かったんだがな・・・流石に1本9800円となると
なかなか手が出ねぇぜ・・・」
「私が買ってる香水とかよりも遥かに高いですもんね。」
たった1本の栄養ドリンクさえも子供では手が届かない世界。ギンガは諦めて技マシン売り場の方へと
向かおうとした。それをホタルが呼び止める。
「あっあの・・・良ければ私がケースで買いますよ?」
「お前が!?」
「あんまりココで堂々と言えたものじゃないですけど、私四天王なので・・・」
リーグ四天王ともなれば年間で支給される額は数千万に達する。勿論チャンピオンならば
2年間で数億稼げる程だ。バトルが強ければ何でも手に入る世界でもある。
「あんまり大きな買い物しないので、余ってる位なんですよ・・・お姉ちゃんも
『助けてあげて』って言っていましたし・・・」
ホタルは腰に付けていたポシェットから財布を取り出すと、カードを抜き出し
店員に見せた。店員は暫く驚きのあまり目を見開いていたが、我に返ると
購入する商品の確認をする。
「どの商品をどれだけ購入されるのでしょうか・・・」
「ポケモンの栄養剤を1種類につき100本ずつ。全部ギンガさんのPCに入れて何時でも
使える様にしてあげてください。ギンガさん、自分名義のIDナンバーを覚えてますか?」
「あ、ああ・・・」
呆気に取られたままギンガはIDナンバーをホタルに伝え、店員がそれを確認すると
全ての商品はPCに転送された。カードを持ったままホタルは歩き出す。
「今度は何を買います?・・・大丈夫ですよ。ギンガさんがチャンピオンになったら
返してもらいますから。それまでは無期限の貸しって事で!」
ホタルの冗談もギンガの驚愕を打ち消す事は出来なかった。
(13歳で四天王とは・・・俺も負けてはいられねぇな・・・)

 一方ナツミとリリィの方は食料品コーナーを見て回っていた。
「旅の間ってあんまり良い食事出来ないでしょ。今日の夜は皆で美味しいものでも
食べない?勿論アタシが奢るからさ。」
「そ、そんな!会ったばかりなのにそんな御好意に甘えるワケには・・・」
「大丈夫大丈夫。ザロクさんからも今日の朝イチで旅費貰ってるし、本業の方も頗る
順調だから。結構こう見えてお金持ちなんだよ、アタシは。」
そう言いながら彼女はカートに生卵や胡瓜、チャーシュー肉、そして麺のパックを入れていく。
「料理だってコレ位なら・・・」
どうやらリリィは冷やし中華を御馳走しようとしているらしい。屈託無い笑顔を見ていると
ナツミも心が癒された。
(この人は私と違う・・・人の心を読むと言うか、掴む事が出来る人なのね。)
「あ、そうだ。後でホタルに新しい髪飾りでも買ってあげよっかな。前のやつも
かなり気に入ってくれたみたいだけど・・・」
「優しいんですね。」
ナツミの言葉に対して、リリィはばつが悪そうに頭を掻く。
「アタシも助けられてるからね。妹に。そりゃ血の繋がった妹だから可愛くないって言ったら
嘘になるよー。あと兄貴があんまりにもアレだからその反動もあるのかな。」
「そのお兄さんって・・・?」
「兄貴もホタルと同じ邪神守民・・・いや元々はアタシも一族の末裔なんだけどさ。
何て言うかプライドが高くてアタシやホタルに真面目な態度を強要するのよ。
守民ならば誰に見られても恥ずかしくない様にしろってね。」
「そうだったんですか・・・」
「アタシも色々あって守民の仕事を辞めちゃってね。紫炎拳古武道を習ったり
ジャンパーの能力を鍛えたりして・・・最終的には育て小屋に落ち着いたの。」
ナツミは自分とは違う、辛い人生を歩んできたであろう彼女の事を思った。
「ナツミちゃんも頑張ってね。ギンガ君から色々聞いたけど、あの子は闇に呑まれかかってる。
私も前に同じ経験をしてるからよく解るの。その侵食を食い止められるのは一番近くにいる
貴方しかいない・・・重いかもしれないけど、好きなら全部受け止めてあげないとね・・・」
「はい、覚悟は出来てます。私もギンガも気持ちは同じですから・・・」
前々からその兆候は出てきていた。ナツミ自身は気が付かなかったがナツミにもその兆候が
出始めている。ナツミはギンガを救いたいと思っていたが、本当は2人が支え合って
危うい状態を保っているのだ。ナツミもギンガもまだその事には気が付いていなかった。

 その後それぞれが食料品・衣服・技マシン・ボール等を購入し、合流した時には既に時計は
12時を回っていた。ショップの屋上には何軒かの屋台があり、そこで適当に
食事を取った後4人はバトルフィールドへと向かう。
「まだ昼時だから他のトレーナーがいないねー。」
「まぁ文句は言えねぇよな。誰か来るまで気長に待つしか・・・」
ベンチに座ろうとしたギンガに対して、リリィは手招きをした。
「アタシとやろうよ。アタシもポケモンを育てていないワケじゃ無いんだよ?」
「面白ぇ、やってやろうじゃねぇか。」
ギンガはそのままバトルフィールドの片側に立ち、ナツミ達は側でその戦いを
見守る事になった。
「リリィさんのバトルの腕が全然解らないだけに怖いわね・・・」
「お姉ちゃんは私と同じ炎タイプの使い手なんです。元々は私じゃなくて
お姉ちゃんが『炎邪神守民』の座に着くハズでしたから・・・」
ナツミはホタルがリリィの心の傷を知っているのだと見抜いた。しかしその
傷の正体を聞くワケにもいかず、ギンガの応援に回る。
「頑張ってねギンガー!」
「お姉ちゃん、負けちゃ駄目だよー!!」
「観客が2人だけってのはこういう場所にしちゃ少ねぇよな・・・」
「まぁ良いじゃないそれでも。ところで君に相談があるんだけど。」
「何だよ今相談って。」
「ただ勝負するだけじゃつまらないからさ。アタシ、ポケモンの卵を持ってるのよ。
客からの預かり物じゃ無いし、炎ポケモンでもない奴ね。君が勝ったら
それをあげる。負けたらあげない。別に君が何を賭けるワケでも無し。
どう、悪くない話でしょ?」
「願ってもねぇ話だな。そりゃ当然承諾させてもらおうか。」
リリィは綺麗な歯を見せながら笑うと、ジーンズのポケットからモンスターボールを取り出した。
メンテ

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ポケットモンスターダークブラック 〜邪神復活〜 ( No.1 )
日時: 2010/09/19 16:42
名前: 夜月光介
参照: http://chiba.cool.ne.jp/kinokohonpo/sirokuro.html

ダークブラック 〜今までのあらすじ〜

エリア『日本』の1ブロックであるリューキュー。極寒のトーホク、穏やかな気候のカントーとは
違う常夏の楽園である。そのリューキューで生まれ育った主人公のトレーナー、ギンガは
自分の両親と姉を殺した悪の組織『ダーク』に対して憎しみを持ち、組織に対する復讐を考えていた。
パートナーであるナツミと共にジムを巡るチャンピオンへの道を辿り始めたギンガであったが、
ダークによる妨害やポケモン密売組織『POD』の企みにより旅は簡単なものにはならない。
物語の鍵を握る『3人の子供達』・『アイミュウ』・『邪神』が主人公をさらなる冒険へと誘う・・・

〜邪神復活〜 第3章 4話 『人ならざるモノ』

 「じゃあ、初めよっか?」
試合の開始を宣言すると、リリィはバトルフィールドにモンスターボールを投げ入れる。
地面に転がったモンスターボールが開き、中から二足歩行の大きなポケモンが姿を現した。
『そんじゃひと暴れしましょうかねリリィの姉貴!』
「私はホタルと同じ炎タイプの使い手よ。炎タイプはやっぱり高火力が魅力よねー。
ギンガ君、アンタの実力・・・これから行なう3vs3で確かめさせてもらおうかな。」
リリィが最初に繰り出したポケモンは黒い鎧が腹を覆っている一風変わった姿のポケモンだ。
鋼鉄の拳には炎が宿り、気合充分と言った様子で両手の拳を何度もぶつけている。
(なかなか手強そうなポケモンだぜ・・・まずは侮らずに情報収集を行なう事が先決だな。)
ギンガはポケギアの図鑑項目を開き、相手のポケモンの名前等を検索した。
『アカボカブ・かえんぶたポケモン・・・黒曜石を口にする事によって体の中で化学変化を起こし、リューキューの
資源の1つ黒曜鉄を作り出す事が出来る。精製された黒曜鉄は体を守る鎧となり、また手や腕と完全に同化した
黒曜鉄は強力な破壊力を生み出すのだ。ちなみに黒曜石から栄養分を吸収する事は出来ず、別に食料を必要とする。』
「あ、私もあのポケモンは知ってるわ。ほのお・はがねの珍しいポケモンでしょ。」
「お姉ちゃんの持ってるポケモンの中では相当強い方だよ。私も昔は負けてばっかりだったもん。」
ホタルはリリィとギンガのバトルを見れる事が本当に嬉しいと言った様子である。ナツミもまた、ポケモントレーナーとしては
まだまだ底が見えないリリィの実力を確かめる為に真剣な表情を見せていた。
(極端なタイプのポケモンだぜ。特殊能力は・・・)
『特殊能力・黒鉄防御・・・ほのおタイプ・いわタイプの技を受けると防御力が1段階上昇する』
(当てなきゃいいだけの話だ。みずタイプのポケモンがいねぇ事が今の所のネックだな・・・
だがはがねタイプで考えれば有利になるポケモンはこっちにもあるんだぜ!)
ギンガはモンスターボールを取り出すと、リリィと同じ様にバトルフィールドに向かって投げ入れる。
閃光と共に登場したポケモンはセシナとの壮絶な戦いを経験しさらなるパワーを手に入れていた。
『マスター、これからももっともっと頑張りますよ!相手に俺達の力を見せてやりましょう!』
オームから進化した『ボルタ』は背もずっと伸び、より凛々しい風貌に変わってきている。
(ポケモンがさらに強力な力を得る為の進化・・・一番重要な事だ。)
進化すれば当然能力は劇的な変化をするものだ。ギンガは再びポケギアでの検索を行なった。
『ボルタ・らいげきポケモン・・・優れた人間に近い肉体から放たれる拳と電撃は完全な技を
覚えると芸術にも近付く程。ストイックな性格でなかなか人間と交わろうとしないが、相手を
主人と認めれば絶対的な忠誠を誓い主人の為に戦い続ける。』
(特殊能力は・・・と。)
『特殊能力・帯電転移・・・自分に対して直接攻撃を仕掛けてきた相手を2割の確率で麻痺状態にする』
(麻痺か。相手はどう考えても直接攻撃オンリーっぽい奴だしな。こりゃ有難ぇ。)
「うん、随分強そうなポケモンを選んできたねー。でもアタシのアカボカブは3段進化済み。対する
ギンガ君のポケモンは3段進化前。この壁は結構厚いよ。乗り越えられるかな?」
「なぁに心配すんなよ。勝つのは俺だ・・・!」
両者共に1歩も引かない。フィールドも緊張感に包まれる。
「正直、ギンガさんのポケモンもかなりポテンシャルは高いからお姉ちゃんも油断は出来ないかも・・・」
「ギンガの勝機があるとすれば相手のペースに持ち込ませない事よね。」
ナツミは冷静に相手を見て目論見を崩していくタイプであるが、ギンガは相手構わず無鉄砲に突っ込み
がむしゃらに攻撃を仕掛ける一気呵成タイプだ。ただ相手が防御力に秀でているとその戦い方では
なかなか勝利を掴むのは難しい。

 バトルフィールドに立つ2匹のポケモンはそれぞれ身構え相手の隙を窺う。
ボルタは攻撃的な構えであったがそれとは対照的に敢えてアカボカブは迎撃の構えを取っていた。
『うおおおおおッ!!』
先に動いたのはボルタの方だ。素早さを生かした凄まじい接近で一気に決着を付けようと怒涛の攻撃を
仕掛ける。だが相手は全く怯まずに全ての攻撃を受ける余裕まで見せ、ボルタに疲れが見えた瞬間
えんてつパンチを見舞った。まともに攻撃を頬に受けてしまったボルタは仰け反るもすぐに
体勢を立て直し一旦距離を取る。2匹の攻防に外野の2人も呆気に取られるしか無かった。
「す・・・すっごーい!!お姉ちゃんのアカボカブにあれだけ突きを入れられるなんて!」
「でも一発のパンチでダメージは同じ位・・・しっかりと防御していたってのもあるけど、
流石にリリィさんのポケモンは一筋縄ではいかなそうだわ・・・」
『立てよ。コレで終わりじゃ無ぇだろう?』
相手を挑発しながらも自身は決して油断せず身構えている。近距離戦は不利だと悟った
ボルタは距離を取ったままきあいだまを放った。防御力攻撃力共に優秀なアカボカブであったが、
こと回避となると素早さが低い為上手くはいかない。
『ぬおッ・・・!!』
衝撃に耐えながらもジリジリ後退していくアカボカブ。必死に防御姿勢のままあわよくば弾き飛ばそうと
していたが、途中で球体は爆発し大きなダメージを負ってしまった。イエローゾーンにまでHPが減る。
『俺だってなかなかやるだろ?』
相手が近付いてこなければアカボカブもあまり得意でない遠距離攻撃を行なうしか無い。アカボカブが
腕を広げ超高速で回転すると炎が渦を巻きやがて巨大な炎の竜巻へと変化した。
『受けてみやがれ、マグマストーム!』
炎の竜巻からアカボカブは抜け出したが、竜巻は確実にボルタに向かって近付いてくる。
だが竜巻を操れる程の力は無い為、素早さで勝るボルタは横っ飛びでの回避に成功した。
『なんだ、確かに凄そうな攻撃だが避けちまえば大した事無ぇな!』
「危ねぇ、後ろだ!」
ギンガの言葉に反応したボルタは咄嗟に身を屈める。その瞬間相手のアッパーがボルタの頭を掠めた。
『チッ、今度こそ凄ぇのを喰らわせてやろうとしたのによ!』
「まだ射程距離よ。今度こそ当てちゃいなさい!」
リリィの言葉通りまだ距離は縮まったままだ。再びメタルアッパーを繰り出そうとしたが今度はボルタの
手痛いマッハパンチの反撃を顎に喰らい一瞬怯む。その隙を見逃さずに再びボルタはきあいだまを放った。
『グアアアアアアッ!!舐めんなッ!!!』
だが今度のはどうだんはある程度のダメージは与えたものの弾き飛ばされ決定打とはならない。
既にアカボカブのHPはレッドゾーンに突入していたが全く油断は出来なかった。
『やってくれるじゃねえか・・・リリィの姉貴に子供の頃から付き従ってもう10年・・・その間
これ程やる奴と会う事は無かったぜ。本気を見せなきゃ失礼ってモンだろ!』
口からも炎を出しながら、鬼気迫る瞳でボルタを睨み付けるアカボカブ。ボルタは一瞬怯んだが
今度はとどめを刺す為にはどうだんを繰り出した。だがそれを避け、跳躍しながらボルタの方へ向かい
拳を振るう。最早避けられないと判断したボルタは同じ様に拳を向けた。

 両方の頬に拳が当たり、両者共に吹っ飛んでフィールド外で倒れ込む。ピクリとも動かない
アカボカブであったがボルタの方は何とか立ち上がりガッツポーズを決めた。
『ハァ・・・ハァ・・・さっきのメタルアッパーを受けていたら負けていたな・・・』
「流石ギンガ君・・・なかなかやるじゃない。今の戦いはアタシから見ても素直にアンタの
ポケモンの方が勝ってた。でも、今度はどうかなー?」
リリィは瀕死状態となったアカボカブをボールに戻すと、次のモンスターボールをバトルフィールドに
投げ入れた。閃光と共に今度は猿の様なポケモンが姿を現す。
『キキッ!俺ッチの相手はまた随分と疲れてるみたいですねェ。大丈夫スか?』
リリィの繰り出してきた2匹目のポケモンは褐色の毛並みに球体の体を持つ一風変わった姿の
ポケモンだった。腕の太さは攻撃的なポケモンの様なイメージを与える。
「こりゃまた面白そうな奴だな。」
ポケギアの図鑑項目を開いたギンガは相手のポケモンを見て率直な感想を述べた。
『ヒヒダルマ・えんじょうポケモン・・・群れを作って生活しており、一番腕が太く力が強いヒヒダルマが
群れを率いるボスの座に着く。知恵が浅く非常に好戦的であるが、その力が通常のポケモンとは
一線を画している為捕獲に慣れたトレーナーであっても大変な苦労を要する。』
(面倒くせぇ相手だな。殴り合いになると今のボルタじゃキツそうだぜ・・・)
特殊能力の項目はさらにギンガを悩ませる。
『特殊能力・全力闘撃・・・技の追加効果は失われるが技の威力が増す』
「追加効果って言うのは『ひのこでダメージを受けて【さらに火傷状態になる】』事ね。だからヒヒダルマは
追加効果で相手を火傷状態にする事は絶対出来ないけどその代わり相手に与えるダメージは多くなるの。」
「まぁ追加効果は普通発生する確率が2割とかそんなモンだしな。賢い選択かもしれねぇよ。」
自分のプレイスタイルの上を行く『殴り特化』のポケモンの出現に対して、ギンガは少々戸惑っていた。
ポケモンによっては様々な作戦を練らなければならないが、リリィの使ってくるポケモンは最初から
作戦も何も存在せず、殴って勝つただそれだけである。それだからこそ勝つのは難しい。
「リリィさんが相手だと私が勝つのは難しいかもしれないわ・・・相手には戦略と言うものが存在しないから
状態異常になろうとも向かってくるハズ。ギンガならまだ相手を見て攻撃してくるでしょうけど・・・」
「それがお姉ちゃんの強さだよ。」
ホタルはリリィの実力を誰よりも承知していた。今でこそリリィを越え四天王の座に着いているホタルであったが、
リリィが自分と同じ炎邪神守民を目指していた頃は彼女と戦っても全く歯が立たなかったのである。

 バトルフィールドに緊張が走る。限界に近いボルタも少しでも差を広げる為最後まで戦う姿勢を崩さない。
一方ヒヒダルマの方は窮鼠に向かっていくのは危険と判断しまずは遠距離攻撃で先手を取る事にした。
『これを避けられるスかね?』
いきなりヒヒダルマの瞳から発射されたレーザーに対応出来ず、ボルタはそのまま倒れ込んでしまう。
(チッ、やっぱり差を広げさせてはくれねぇか・・・イーブンに戻しやがった!)
『コロナビームは俺ッチの技の中でも特に威力の高い技ッスよ。』
「ギンガ君。意外に思うかもしれないけどヒヒガルマは攻撃力の高さだけでなく、素早さと機動力にも
秀でているのよねー。侮っちゃ駄目よ!」
「あれがリリィさんの真骨頂・・・!」
ナツミは自分と彼女が戦った時自分が敗北するであろう事を確信した。タイプの相性の悪さの時点で既に
不利であるが、あれ程の攻撃をくらった際今の自分のレベルで太刀打ち出来るとは思えない。
逆を言えば、この短期間で彼女と張り合うまでに成長したギンガのトレーナーとしての素質の高さには
ただただ驚かされるばかりであった。成長のスピードが並では無いのだ。
(離されるのは悔しいけれど・・・もっと強くなってほしくもあるわね。)
勿論、彼女も強くなる事を諦めているワケでは無い。夢はギンガと一緒に見ようと決めている。
一方ギンガはヒヒダルマの強烈な力に圧倒されつつも次のポケモンを誰にするか迷っていた。
(2段進化のポケモンに対して2段進化を出したい気持ちはあるがまだ2匹目・・・最後の
大将に対しての切り札は取っておきたい所だぜ・・・)

 悩んだあげく、ギンガがバトルフィールドに登場させたのはオキトであった。
まだ他のポケモンに比べると育てが甘いと言う不安があったものの、相性の良さでは
他の手持ちより秀でている。防御力の高さもありギンガはオキトに全てを託す事になった。
「頼むぜオキト。相手は進化してやがるがお前の実力なら踏ん張れるハズだ。」
『・・・・』
オキトは黙ってただ頷くと、戦闘態勢に移行する。
『堅そうな奴ッスねぇ。ココはちぃっと俺ッチの不得意分野ではありますが、試してみる価値は
ありそうッスよ。』
ヒヒダルマは相手の自滅を狙い、戦闘を優位に進める為敢えて状態異常を起こす技を使用した。
元々笑っている様な風貌であるが、さらに歯を剥き出しにして笑う事でオキトに変化が起きる。
『・・・・!?』
突如オキトが混乱状態に陥ったのだ。流石にこれにはギンガも慌てた。
「なっ何だ?」
「コレは追加効果の技じゃ無いからね。最初から状態異常を狙う技だよー。あざわらうは相手の
特殊攻撃の値を2段階一気に上げてしまう代わりに、相手を確実に混乱状態にするの。」
『そんじゃあとはタコ殴りにするだけッスよ!』
素早い身のこなしで相手に近付きほのおのパンチを繰り出そうとするヒヒダルマ。腕の強靭な筋力を
使いバネの様に弧を描いてジャンプするその移動の特殊さも目に付く。
一方混乱状態になってしまったオキトであったが何とか構えの姿勢を取り特殊技サイコキネシスを
繰り出した。混乱状態は確実な戦闘不能では無い為ギャンブル要素があるのが特徴であろう。
『ゲッ!?』
進化もしていないポケモンだとたかをくくった事が災いしたのか、特殊攻撃力2段上昇の状態からの
特殊攻撃をまともに喰らってしまったヒヒダルマ。あっと言う間にHPがイエローゾーンに達する。
「やばッ、ちょっと油断してたかもねー・・・」
『こうなったら遠くからジワジワ攻め立てるしか無いスねマスター。』
ヒヒダルマは傷付いた体に鞭打ち何とか距離を取ると、再び遠距離攻撃のコロナビームを繰り出した。
元々の攻撃力と防御力は高いオキトであるがいかんせん回避力が無い。2発撃たれただけで
ごっそりHPを持っていかれる。それでも2発撃たれてイエローゾーンで踏ん張ると言うのは立派な防御力だ。
『・・・!!』
今だ混乱状態が治らず攻撃を受けていたオキトであったが、イエローゾーンに突入した段階でようやっと
混乱状態が治り、反撃に出る。オキト自身の移動は低いが技の発動スピードはかなりのものだ。
『!』
岩石で構成された掌からさらに沢山の岩石が出現する。いわなだれだ。威力の低さの割に命中率が100%
では無いと言うリスクの高い技だが、怯みの追加効果が付く場合がある。
『うう・・・』
運悪く怯みの追加効果を受けてしまったヒヒダルマに対してもう一度サイコキネシスを見舞うオキト。
レッドゾーンに突入したヒヒダルマは既に息も絶え絶えの状態だ。
「よし、ココで差を付けるぞ!一気にとどめを刺せ!!」
「フフッ・・・ギンガ君。ちょっと甘いよー?」
『俺ッチの最強技で一気にひっくり返してみせるッス!!』
かなり2匹のHPには差があったが、ヒヒダルマが口から吐き出した巨大な火球はオキトでは避けられない程
巨大なものだった。避けられない為軌道を変えようといわなだれを叩き込むが温度があまりにも高い為
溶けるだけで全く効果が無い。オキトはその火球に包まれそのまま瀕死状態となった。
一方ヒヒダルマは自分のHPの全てと引き換えに放った火球の為に倒れ同じく瀕死状態となっている。
(またイーブンかよ!今の攻撃それだけの威力があったって事か・・・)
「かきゅうばくははお姉ちゃんのヒヒダルマが持っているほのおタイプのじばく技だよ。威力は本当に高くて
並の不利な相手でも道連れにしちゃう位なんだ。勿論その代わり自分も負けちゃうけどね。」
「今のは凄かったわ・・・進化前のポケモンとは言え相性不利と防御力の高さがあったのに・・・」
ナツミはリリィの底が見えない強さに驚くと同時に憧れの様なものを感じた。
(ホタルちゃんはやっぱりこの上を行くのかしら・・・?)
ナツミに見つめられている事に気付いたホタルはその意味を察する。
「うん。何時かはナツミさんとも戦う事になるだろうけど、絶対負けないよ!」
「その時は宜しくね・・・」

 両者共にポケモンをボールに戻すと、バトルフィールドはまた一時の静けさに包まれる。
「それにしてもこんなに頑張るなんてアタシ本当に予想外だったよ。アッサリ勝っちゃうかなーなんて
思ってたんだけどね。」
「俺は最終的にはリーグを目指そうとしてんだ。ジムリーダーでも無い奴に負けられっかよ!」
「その思想はちょっと兄貴と似てるかな・・・兄貴も負けず嫌いだったからねー。アタシなんかまだまだ
楽しんでバトルしてる方だと思うよ。ある程度、こういう野試合の時は心に余裕を持たなきゃ。」
真剣勝負ともなれば周りが見えなくなってしまう事もある。リリィの言う通りバトルにおいては油断こそ
出来ないが心の余裕を持つ事は非常に重要だ。それが勝利を呼び込む可能性だってある。
「最後のポケモンは・・・コレにしようかな!」
リリィがバトルフィールドに投げ入れたボールから閃光と共に出現したのは、漆黒の体毛と燃え盛る青い炎の
たてがみを持つ巨大な獅子であった。表情も非常に険しい。
『ほう・・・お前が俺のマスターと戦っているトレーナーか。マスターの若い頃を思い出すな・・・』
「バクハオウ、昔の話はしないで。今は試合中なのよ?余計な事を思い出したくないの。」
『!・・・失礼致しましたマスター。思慮が足らぬ発言でした・・・』
珍しくリリィがあからさまに不機嫌な顔をすると、バクハオウは黙って俯いてしまった。
(やっぱり、リリィの奴には重い過去があんのか・・・気にはなるが今はバトルだよな。)
ギンガは相手の能力を確認する為またポケギアでの図鑑項目を開いた。
メンテ

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