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姫物語
日時: 2011/02/06 12:15
名前: 夢柩 ID:Mfc.Bu5k

目次


序章     虚ろう時の慟哭 >>1

第一部 かつて起きたこと
   第一話 少し高めの平穏 >>2
   第二話 動き始めた日常 >>3
   第三話 知るには遅い変化 >>4
   第四話 災いの来たる気配 >>8
   第五話 微かに残る希望 >>9
   第六話 降り掛かるは絶望か >>10

   閑話  深紅の刄 
第二部 紡がれる未来へ
   第一話 想い染めし赤刃
   第二話 力を求める子供
   第三話 動き出す二人
   第四話 紅と交わる戦士
   第五話 死を齎らす戦場
   第六話 想いに紡がれる未来は

第三部
   第一話 鋼の牙と巫女
   第二話 祈り捧ぐ歌姫
   

   閑話  赤い鈴が響く夜 

第四部 断ち切れぬ鎖
   第一話 抜かれた刃と開戦 
   第二話 進む道の彼方 
   第三話 紅に染まる灼銅 
   第四話 襲い来る銀翼 
   第五話 待ち焦がれた再会 
   第六話 咲き誇れ鮮花 
   第七話 望みて戻る鳥籠へ 

   閑話  開幕の合図に鈴は鳴る 

第五部 表と裏と
   第一話 暴れ竜と巨人
   第二話 燻るは炎の意思
   第三話 明かされる罪と運命
   第四話 新たな刃と月夜

   第五話 開かれた扉は終演へ

メンテ

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虚ろう時の慟哭 ( No.1 )
日時: 2010/09/10 15:38
名前: 夢柩

遠くの地に堕ちる陽が空を紅に染める。
夕暮の冷たさを帯びはじめた風が、涙で濡れた頬を撫でるように吹き抜けていった。

「こんなところにいたのか」
不意に聞こえた声に彼は振り向いた。
苔の生した岩のような肌、鋭い目付きは本来の年齢よりも上に見られる原因でもあったが、涙で濡れたそれは、今は歳相応のあどけなさを湛えている。
「元気出せ、何て言えないけどさ……」
そう言いながら彼は視線を逸らす。
炎のような色の身体は、夕陽を浴びて本物の炎のように染まっている。
尻尾に灯る炎がゆらゆらと揺れ、言葉を選ぶ彼の心を代弁しているようにも見えた。
「ブレン、放っておいてくれ」
彼はそう切り捨てるように言うと背を向けた。
「ヨーラン……」
ヨーランは夕暮の紅から夜の藍色に変わりつつある空を見上げ小さく呟く。
「今度こそ、あの鳥籠を開けてやれると思ったんだ……」
その言葉は、彼女を鳥籠に堕としたことに対する懺悔のように聞こえた。
おまえは十分頑張ったじゃないか、それは彼女だってわかっているはずだ、だからおまえを助けようとして自ら籠の中に戻っていった、だからおまえが悔いることは……
言えるはずが無い。
だからブレンは炎のように揺れる尻尾を地面に横たえて口を接ぐんだ。
太陽が地の果てに消え、夜の気配が濃くなっていく。
星が瞬き始めた空から視線を外し、ヨーランは口を開いた。
「俺は……」
その言葉は、酷く重い感情を含んでいた。
深く深く、どこまでも深い負の感情。
そう、諦めにも似た感情を孕んだ言葉だった。
それを聞きたくなくて、その言葉をかき消そうとブレンは叫んだ。





物語は一年前に遡る。





【鳥籠の歌姫と二人の騎士】

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