神なんて敵じゃない ( No.319 ) |
- 日時: 2011/03/27 08:30
- 名前: 桜庭 ID:jf7LoXb6
- 第184話 神なんて敵じゃない
<ねえ、聞こえる?>
凛としたような、けれど少年っぽいキーの高い声が聞こえた。 否、”脳”に直接呼びかけられた。
「な、なんだァ?」 「けほっけほっ」
部屋に入ろうとした手がドアノブを掴んだまま驚くゴールドに、アイスを勢いよく口の中に入れてしまって咽るマイ。 そんなふたりを主は、先ほどとは変わって少しばかり慌てた口調で謝罪を述べた。
<ご、ごめん! まさか、そんなに驚かれるとは> 「たく、誰だよ。マイー大丈夫かー?」 「けほっ……ん、だいじょぶ。もしかしてミュウ?」 <せーかい!>
背中を何回か摩られて咽が止まり、マイは礼を述べた。 すると、マイは声の主を当ててみせた。 ピコンッと妙な効果音と一緒にミュウが言葉を紡いだ。 立ち話もあれなので、部屋に戻って話すのか固まっていた手で再度ドアノブを回し部屋に入る。 声は聞こえても姿は見えないのだから、外で話してもおかしな風景になるだけだ。
<それでさ、本題。マイ、君は"R"と闘ったね? 結果はどうだったんだい?> 「なんでそれを……負けたけど」 (負けた? マイが?)
そしてミュウは、声のトーンを低くして真面目に話した。 その内容はマイにとっては厳しい現実だし、ゴールドに至っては全く理解できないものだった。 ミュウは少し考えてからまた声を発した。しかし、その声は最後までは聞けなかった。
<そっか……でも"R"は強いからね、仕方な――> 「そんなのっそんなのかんけーない! わたしが弱かったから! 負けたくないし、もう負けない!」
ポケモンの神さまのような存在でさえマイは構わない。 自分の正義を突き通すなら神も関係ないのだから。 その根拠のない叫びにミュウは黙るだけで。そんな重い沈黙を破ったのはゴールドだった。
「マイらしいな。その正義、オレは嫌いじゃないぜ?」 「えへへ。褒められたー」 「褒めてない」 「えっそうなの……」
言い切ったマイの肩をぽんぽんと叩いて、ゴールドは自分を指差した。 それからゴールドたちはいつもの調子に戻るんだからミュウは飽きれているかもしれない。 ミュウは最後に、と前置きをしてから、こう述べた。
<マイは"単純馬鹿"で何気に"喧嘩っ早い"からね。ゴールドは喧嘩腰だし……だから色々と不安もあるけど> 「おいこらミュウ」 「ゴールド……落ち着いてー」
酷い言われようだがマイは気にしてないようだ。単純だから。
<でもふたりとも"友達思い"っていうのは知ってる。たとえ友達じゃなくてもひとを助けようとしてしまう。それが――危険ってこと知ってほしいんだ> 「どうゆうこった?」 <ん〜なんていうか、ひとは見かけによらないっていうでしょ? それだよ> 「ふーん」 「マイ、絶対分かってないだろ」 「わ、わかってる!」
ミュウは、またしてもこのふたりのペースに嵌められて何もいえない。 忠告をしに来たのだろうが、意味がなかった。 やはり、彼らは見守っていくのが一番なのだから。 何者にも動じないその心があれば、案外簡単に試練を乗り越えてしまうのかも。そんなことを思うミュウであった。
「あれ? ミュウの声がしない?」 「帰ったか。挨拶くらいしろよなー」
ゴールドもゴールドで、神に逆らってしまうのか。 いや、逆に今度はゴールドがマイに影響されたのかもしれない。
(あれ、島じゃないか!?) (わー! もう着いたんだ〜!)
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