わたしとあなた ( No.288 ) |
- 日時: 2011/01/29 16:01
- 名前: 桜庭 ID:Njv61xkY
- 第177話 もうひとつの"メインルーム"
ここはゴールドたちが泊まっているオアシス・オブ・ザ・シーズのもうひとつの"メインルーム" 最上級のロイヤルロフトスイーツでただひとり、彼はコーヒーを口に運ぶ。
「う〜ん、おいしい。いつかこの味が分かる時が来るのかな?」
なぁ、キング? とコーヒーカップをテーブルに置くと、その置いた手で自室から持ってきたのだろうチェスのキングを片手で持ち上げると揺ら揺らと不安定に揺らす。
「しかし、まァ。キング、君は予想外の動きを見せてくれるな」
そっ、とキングをナイトの傍に置きなおすと、ポーンを改造させたカイリューだろうか、そのポーンをまたキングの傍に置こうとするが、引き離す。 口元が笑っている。愉しそうに、愉快そうに。
「さてと。ナイトくんは? どう動いてくれるのかねぇ」
お次はナイトをつまみ上げるようにして持ち上げて、また不安定に揺らす。 まるで船に乗って揺れているかのように。
「キングは気づいているみたいだけど? いや、気づいてない……かもな」
自嘲気味に笑いをこぼすと、手元においてあったベルを軽く振る。 ナイトを元の位置に戻すと同時に召使が来た。ナイトとは違う、本当の貴族のような。
「及びでしょうか? ――さま」 「おいおい、その呼び方はよせ。コードネームR<アール>でいい」 「申し訳ございません。Rさま……ご用件は?」
深く礼をする召使の名を呼ぶ"R"は外に出たい。とただ一言いうだけだった。 それほどこの"R"は上級者なのだろうか。軽いともいえない変装はどこか、また愉しそうにしていた。
「ゴールドーッゴールドーッ」 (おや? あの子は……)
メインルームのからこの"メインルーム"への階段を間違えて上がってきてしまったマイが口元を手で覆って、そして走ってゴールドを探していた。 よほど夢中に探していたのだろうか、"R"に気づかずに、思いっきり正面にぶつかってしまうのだが、見た目はヒョロイおじさんの"R"足腰がしっかりとしているので、そのまま後ろに倒れることなくマイを受け止めることが出来た。
「いてて。あっおじさん、ごめんなさいっ」 「ははッ大丈夫だよおじさんは大丈夫だよ。きん――お嬢ちゃんは大丈夫かい?」 「お、おじょっ!? だ、大丈夫です。ほんとごめんなさい……」
おでこを摩り涙目になったマイの涙をハンカチでふき取りながら"R"は言った。 途中で何かを言いかけたが、持ち前のポーカーフェイスでマイは気づかない。 なによりも、ぶつかってしまったことを深く反省しているようだ。
「お嬢ちゃん? きっとこの階段を降りていけばゴールド……くんに会えるはずだよ」 「へ? あ、ありがとうございます」
何も気にしていないよと、言わんばかりに笑顔を振舞う"R"は、マイの背を押してやり来た道へ戻してやる。 不思議そうに首をかしげながらマイは階段を降りていく、ふと振り返れば"R"の姿はどこにもなかった――
(あのおじさん、どこかで見た気がするんだけどなあ) (あッマイ! どこ行ってたんだよ!)
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